二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第39話 王剣 ( No.84 )
- 日時: 2016/12/10 09:07
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 50k5ovTJ)
- 参照: 教皇ディントスが操るは、二匹の強力なゴーストポケモン——
「それでは我々も始めよう。神道を示せ! ギルガルド、シャンデラ!」
こちらはハルとアリス対ディントス。
ディントスが繰り出すのは先日のギルガルドに、紫の炎を揺らすシャンデリアのようなポケモン。
『information
シャンデラ いざないポケモン
腕の炎を妖しく揺らし人やポケモンを
催眠状態にして操る。催眠が解けると
その魂を吸い取って食べてしまう。』
ギルガルドとシャンデラ、どちらも司教の持つポケモンの進化系だ。
「ハル君、ワルビルを出して」
アリスが、ハルへと指示を出す。
「ライボルトのサンダーブラストは強力だけど、ダブルバトルだと味方も巻き込んでしまうの。地面タイプのワルビルなら、電気技を防げるから」
「分かりました。それじゃ頼んだよ、ワルビル!」
アリスの言う通り、ハルはワルビルを繰り出す。相手ポケモンとの相性も悪くない。
「さあ出てきなさい! 輝け、ライボルト!」
そしてアリスのポケモンはライボルト。
「容赦しないから! ライボルト、初っ端から飛ばして行くわよ! メガシンカ!」
ライボルトが吼えると同時に、首元のメガストーンが輝き、アリスのキーストーンと光を繋ぐ。
ライボルトが光に包まれ、体毛が稲妻の如く鋭く逆立つ。
「メガシンカ——メガライボルト!」
電撃を纏ったライボルトが天高く咆哮を放ち、ディントスを威嚇する。
「準備は整ったようだな。それでは行くぞ! シャンデラ、まずは火炎放射!」
「ライボルト、躱してサンダーブラスト!」
シャンデラがライボルトを狙って紫色の業火を放つが、ライボルトは素早い動きでそれを躱し、纏った電撃を衝撃波と共に周囲へと解き放つ。
「ギルガルド、キングシールド!」
電撃の衝撃波は相手のポケモン二体へ同時に迫り来るが、ギルガルドがシャンデラの前に立ち、神々しい純白の結界を張る。
結界に触れた瞬間に、電撃の衝撃波は消滅してしまう。
「ハル君、キングシールドに気をつけて」
相手から目線を離さず、アリスはハルへ言葉を掛ける。
「あの結界に直接触れると攻撃力を下げられてしまうの。私のライボルトは特殊技しか持っていないからいいけど、君のワルビルは物理技ばかり。幸い連発はできないから、気をつけて戦ってね」
「分かりました、ありがとうございます」
礼を言い、ハルはギルガルドへ向き直る。
「連発できないなら、今だ! ワルビル、噛み砕く!」
「援護するわよ! ライボルト、シグナルビーム!」
ワルビルは床を蹴って飛び出し、大顎を開いてギルガルドへ牙を剥く。
ライボルトはシャンデラに対して激しく光を放つ光線を瞳から発射し、シャンデラを牽制する。
「シャンデラ、シャドーボール!」
対するシャドーボールは漆黒の影の弾を放ち、シグナルビームを相殺。
その隙にワルビルは牙をギルガルドへと食い込ませる。
だが。
手応えがない。鉄の板を容易く食い破るパワーを持つはずのワルビルの牙が、ギルガルドの盾に牙を食い込ませることができない。
「甘いな。ギルガルドは耐久力の低いポケモンだが、盾を構えた今の姿、シールドフォルムであれば話は別。並大抵の攻撃は受け付けん」
さらに、とディントスは続け、
「それだけではないぞ。剣を抜いてしまえば、ギルガルドの攻撃力は天下一品。その力、受けてみよ」
ぞわり、と。
ハルの背筋に、悪寒が走る。
「まずい……ワルビル、離れろ!」
ワルビルが牙を離し、ギルガルドから距離を取ろうとする。
だが、遅い。
「ギルガルド、聖なる剣!」
盾から刀身を引き抜き、ギルガルドは刀身のその身体に光を纏わせ、黄金の斬撃をワルビルへ叩き込んだ。
「っ! ワルビル!」
悪タイプのワルビルに、聖なる剣は効果抜群。二体の威嚇で攻撃力は下げているのに、かなりの威力だ。
「調子に乗らないでもらおうかしら! ライボルト、サンダーブラスト!」
「甘い。ギルガルド、キングシールド!」
すぐさまライボルトが電撃の衝撃波を放出する。
シャンデラが電撃の直撃を受けるも、ギルガルドは再び盾を構えて結界を張り、電撃を防いだ。
「シャンデラ、エナジーボール! ギルガルド、ヘビーブレード!」
体勢を立て直したシャンデラが自然の力を集めた光の弾をワルビルへと放ち、ギルガルドは刀身を引き抜き、重々しい金属の体をライボルトへ叩きつける。
「ワルビル、シャドークロー!」
「ライボルト、火炎放射!」
ワルビルは右手に黒い影を纏わせ、影の爪を振り抜いて光の弾を引き裂く。ライボルトも灼熱の炎を吹き出し、ギルガルドの斬撃を防ぎ切った。
「だったらワルビル、穴を掘る!」
ワルビルは床に穴を開け、すかさず地中へと身を隠す。
「どちらを狙ったか……まあいい、察しは付く。ギルガルド、イビルスラッシュ!」
今度は剣に闇の力を込め、ギルガルドは再びライボルトへと向かっていく。
「ライボルト、躱して火炎放射!」
瞬時に何度も剣を振るって連続の斬撃を放つギルガルドに対し、ライボルトは次々とそれを躱し、隙を見て灼熱の炎を吹き出す。
「今だ、ワルビル!」
その時、ワルビルが地中から飛び出す。
狙いはシャンデラ。足元から飛び出し、シャンデラへ殴りかかるが、
「やはりな。シャンデラ、エナジーボール! ギルガルド、キングシールド!」
シャンデラはすぐさま自然の力を集めた光の弾を放ってワルビルの攻撃を防ぎ、ギルガルドも盾を構えて純白の結界を張り、炎を消滅させる。
「シャドーボール!」
さらにシャンデラは黒い影の弾を放ち、ワルビルを吹き飛ばした。
「いつキングシールドが来るか分からないこの状況、まさかギルガルドをわざわざ狙うとは思えん。シャンデラを狙ってくることくらい想定済みだ」
「くっ……ワルビル、大丈夫?」
ワルビルはゆっくりと起き上がり、忌々しそうに唸る。
「さらにこのシャンデラは耐久力こそ並程度だが、ギルガルドを僅かに上回る火力を持つ。ゴーストタイプ最強の防御力に最強の火力を持つこの二匹相手に、君たちのポケモンはどこまで戦えるかね」
不敵な笑みを浮かべ、ディントスはさらに言葉を続ける。
「我らがディントス教を潰すためにわざわざ出向いて来ているのだろう? それならばこの二匹を突破する力くらいは備えてきているのだろうね」
ディントスの言葉に呼応してギルガルドが剣を抜き、シャンデラが頭部の炎を勢いよく吹き上げる。
「ギルガルド、ヘビーブレード! シャンデラ、火炎放射!」
ギルガルドが刀身を構えて動き出し、それを援護するように後方からシャンデラが灼熱の紫炎を放つ。
「私が食い止めるわ! ライボルト、サンダーブラスト!」
「分かりました! ならワルビル、穴を掘る!」
ライボルトが電撃を乗せた衝撃波を周囲に解き放ち、ワルビルは穴を掘って地中へ身を隠す。
衝撃波がギルガルドの剣の一撃を止めるも、その直後に襲い来る炎まで対応することは出来ず、ライボルトは紫の炎を浴びる。
「ギルガルド、イビルスラッシュ!」
さらにそのライボルトを狙い、一度は攻撃を止められたギルガルドが再び動き出す。
「させない! ワルビル!」
そのギルガルドの真下から、ワルビルが飛び出す。
キングシールドの可能性は考慮したが、今はライボルトへの追撃を止めるのが最優先だ。
しかし。
「ヘビーブレード!」
ワルビルが飛び出したその瞬間、ギルガルドはその場で回転し、ギルガルドを狙ったワルビルへと重い金属の剣の体を叩きつける。
硬い床をも抉る一撃が、ワルビルを捉えた。
「っ、ワルビル!?」
その威力の高さは、見ただけで分かる。
凄まじい勢いで、ワルビルが後方へと吹き飛ばされた。
- 第40話 『V』 ( No.85 )
- 日時: 2016/12/11 19:37
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: ディントスが信仰する謎『V』の正体は——?
「さて、まずは一匹。残るはジムリーダー一人だけ、私の勝利も時間の問題! シャンデラ、シャドーボール!」
ギルガルドが後退し、代わりにシャンデラが進み出て、漆黒の影の弾を撃ち出す。
「ジムリーダーを甘く見てもらっちゃ困るわよ! ライボルト、躱して火炎放射!」
素早い動きでライボルトは影の弾を躱すと、ギルガルドに向けて灼熱の業火を吹き出す。
「ギルガルド、キングシールド!」
しかし、やはり単調な攻撃ではギルガルドには届かない。
ギルガルドが盾を構えて神々しい純白の結界を張り、炎を消滅させてしまう。
「っ、やっぱりきつい……」
そもそも、二対一という状況がアリスにとって根本的に苦しい。
ギルガルドとシャンデラはどちらも高い火力を売りとするポケモン。流石のメガライボルトでも、両者の攻撃を同時に打ち破ることは出来ない。
かといって片方を狙うと、もう片方の狙いの的となってしまう。さらにギルガルドはキングシールドを持つため、そもそも攻撃を当てるのが難しい。
「もう流石になす術もないだろう。二対一になった時点で、勝負は決まったようなもの。そろそろ決めてしまおうか」
ディントスの口元が吊り上がり、ギルガルドが剣を抜く。
「ギルガルド、聖なる剣! シャンデラ、火炎放射!」
ギルガルドが刀身を黄金に輝かせ、切っ先を向けてライボルトへ飛び出す。
同時に、シャンデラの頭部から灼熱の紫炎が撃ち出される。
だが。
(……?)
そこでディントスは違和感を感じた。
向かいに立つアリスとハルの表情に変化がない。焦りのようなものが全く見えない。
さらに、吹き飛ばしたはずのワルビルの姿が、どこにもない。
そして。
ディントスがそれに気付いた時には、既に遅い。
「ワルビル! 穴を掘る!」
今度こそ。
ギルガルドの真下からワルビルが勢いよく飛び出し、思い切り拳を叩きつけ、ギルガルドを殴り飛ばした。
「な……にぃ……!?」
驚愕を露わにするディントス。
この穴を掘るは、前もってアリスと共に考えていた作戦だ。
大きく吹き飛ばされてディントスがワルビルへの意識を逸らした時に、密かに地面に潜って地中から強襲を仕掛ける。まさに作戦通りだ。
「貴方はさっき自分で言っていた。 盾を構えていない——つまり今のギルガルドは、耐久力が低いって! だったらワルビル、噛み砕く!」
大顎を開き、ワルビルはギルガルドの刀身へと牙を突き立て、食い込ませる。
そのまま大きく首を振ってギルガルドを投げ飛ばし、硬い床へと思い切り叩きつけた。
「なっ……! ギルガルド!」
防御力の極めて低い今のギルガルドが、効果抜群の二連撃を耐えられるはずもない。
目を回し、盾は手から離れてぐったりと倒れ、戦闘不能になっていた。
「……我がギルガルドが、こうもあっさり……! 貴様……!」
先ほどまで余裕を浮かべていたディントスの表情に、怒りが浮かぶ。
ハルの元へと戻ってきたワルビルだが、流石にダメージも大きいようで、少しふらつく。
「ハル君、大手柄よ。だけどワルビルも疲れてるし、ボールに戻してあげて。こうなっちゃえば後は私一人で充分だし、万が一ハル君に二匹倒されると私の出る幕がなくなっちゃうしね。私にもいいとこ持たせてよ」
「分かりました。それじゃ、後はお願いします! ワルビル、よくやった! 休んでて!」
ワルビルを労ってボールに戻し、ハルは二人の戦いを見守る。
「随分と甘く見られたものだ! ギルガルドの火力を上回る我がシャンデラを甘く見てもらっては困るのだよ!」
「あんたこそ、今の状況分かってるのかしら」
激昂するディントスに対し、薄ら笑いを浮かべるアリス。立場は完全に逆転した。
「あんたは最大の盾を失った。ギルガルドと違って火力しかないシャンデラなら、私のライボルトで楽に突破できるのよ。生憎、私のライボルトも火力には自信があってね」
刹那。
両者が同時に技を繰り出す。
「シャンデラ、火炎放射!」
「ライボルト、サンダーブラスト!」
シャンデラが頭部から灼熱の紫炎を吹き出し、ライボルトは電撃を乗せた衝撃波を解き放つ。
だが先ほどはギルガルドやワルビルにも向かっていた衝撃波が、今度は全てシャンデラへと収束して放たれる。
どちらが上かなど競うまでもない。電撃の衝撃波が炎を打ち破り、そのままシャンデラをも捉える。
「もう一度!」
電撃を受けたシャンデラに、再び電撃の衝撃波が迫り来る。
躱すことも迎え撃つことも出来ず、シャンデラは再び電撃の衝撃波の直撃を受けた。
「シャンデラ……!」
ドサリ、とシャンデラが地面に落ちる。
目を回しているその姿は、完全に戦闘不能だった。
そして。
スグリと司教ミョルのバトルは、完全に一方的だった。
フローゼルに圧倒され、ミョルのニダンギルは瞬く間に戦闘不能まで追いやられてしまっていた。
「そもそもあんたら、マルチバトル専門だよね。そんな人間がシングルバトル得意のオレと戦ったら、そりゃあ負けるっての」
フローゼルの頭を撫で、スグリは余裕の表情を浮かべながら、敗北したミョルとグングにそう言い放った。
いずれにせよ、トップの三人が敗北した時点で、ディントス教の敗北はほぼ決定的だった。
「さあ、キーストーンを返しなさい。あんたはもう逃げられないわよ。この状況を見れば、それくらい分かるでしょう」
アリスが一歩踏み出し、ディントスへと詰め寄る。
「……そうはいかん。間も無く我らが主、『V』様が御出でになる。我らは敗北したが、ディントス教はまだ敗北してはいない! いくら貴様らが強くとも、『V』様には勝つことなどできぬわ! キーストーンを返して欲しければ、それまでに力尽くで奪い取ってみるんだな!」
ここまで来て、なおも抵抗するディントス。しかし、
「へえ。それじゃ、遠慮なく」
スグリがモンスターボールからポケモンを繰り出すと同時に、黒い影が飛び出し、ディントスを突き倒す。
ディントスの懐から何かを抜き取り、スグリの元へと戻って来た。
「ナイス、ニューラ。アリスさん、これがキーストーン?」
『information
ニューラ 鉤爪ポケモン
小柄だがずる賢く獰猛な性格。
鳥ポケモンの巣を狙って強襲し
親を追い払って卵を食べてしまう。』
すらりとした黒い猫のようなポケモン、ニューラの爪の先には、光るキーストーンがあった。
「なっ……貴様……!」
「オレのニューラは出癖が悪くてね。つってもあんたが力尽くで取ってみろって言ったんだし、文句ないよね? はいアリスさん、キーストーンは無事に取り返しましたよ」
「ありがとう、スグリ君。さてディントス、今度こそこれで終わりね。今の私にはあんたを許すほど広い心は持ってない。ここで縄に——」
アリスの言葉は、それ以上聞こえなかった。
ガラスの砕ける音と共に大聖堂のステンドグラスの窓が砕け散り、人間が姿を現したからだ。
「……!」
「『V』様!」
アリスたちが臨戦の体勢に入り、ディントスはすがるような声を上げる。
現れたのは純白の修道服を纏った女性だった。ディントスと比べて派手さが無い分、その姿は寧ろディントスより神々しい。
その身体にはサイコパワーを纏っているようで、宙に浮き、さらにその背後には鳥のシルエットのような姿の、説明のつかない異形のポケモンを連れていた。
『information
シンボラー 鳥もどきポケモン
古代都市の守り神だったポケモン。
都市が朽ち果てた今もその記憶を
残し常に同じルートを飛んでいる。』
「何者! 名を名乗りなさい!」
ライボルトを繰り出し、アリスが鋭い言葉をぶつける。
対して、
「私こそが『V』。ディントスにディントス教を創始させ、活動をさせていた者。そしてもちろん、私の本名は『V』などという名前では無い」
ゆっくりと、そして滑らかな声で、その女は口を開く。
「私の名はヴィネー、ゴエティア七魔卿の一人。魔神卿・ヴィネーです」
- 第41話 Vine ( No.86 )
- 日時: 2016/12/12 09:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: qPVFeoJe)
- 参照: 謎の信仰対象『V』の正体は、新たなる魔神卿——
「魔神卿……だって?」
真っ先に反応したのは、ハルだった。
つまり、
「ディントス教は、ゴエティアの下部組織だったってことなの……!?」
流石に驚きを隠せないアリスたち。
そしてそんなことは気にも留めず、ヴィネーは宙に浮いたまま、ディントスを見下ろす。
「さて、ディントス。どうやらキーストーンを奪還されてしまったようですね。貴方には期待していたのですが、残念です」
「申し訳ありません、ヴィネー様! しかし、キーストーンはまだこやつらが握っております! 貴方様が手を下せば、まだ取り戻せるはず!」
「悲しいことですが、これだけの四人を相手取って勝つだけの力は今の私にはない。今の私には守護は出来ても、攻撃はできないのです」
感情の読めない瞳で、ヴィネーは淡々とそう告げる。
「さて、どういたしましょう。キーストーンの回収に来たのですが、生憎キーストーンは取り返されてしまいました。貴方たちを連れて帰ろうにも、私は今回単身でここに来ている。全員を引き連れて帰るだけの力はない。私のシンボラーも、私を含めて三人を持ち上げるのが限界です。つまり、今私が助けられるのは二人」
うぅむ、とヴィネーは少し黙り込むが、やがて小さく笑みを浮かべる。
「シンボラー、サイコキネシスです」
救う人間を決めたのか、ヴィネーの背後に浮かぶ異形のポケモン、シンボラーが強い念力を発し、ヴィネーが選んだ二者に念力を掛ける。
「行きますよ、ミョル、グング。最早この場所に用はありません」
司教の二人、ミョルとグングが、念力を受け、宙に浮かび上がった。
「えっ……?」
驚くアリスやハルたちだが、一番驚いていたのは紛れもなく、ディントスだった。
「……!? 『V』——ヴィネー様! 私は!? この私はどうなるというのですか!?」
「ああディントス。貴方はここまでよくやってくれました。貴方が私へ差し出してくれたポケモンたちは、ゴエティアで有効活用させていただいています」
ですが、とヴィネーは続け、
「貴方には教祖という地位を与え、元々私の部下であるミョルとグングという優秀な配下を貸し、ギルガルドとシャンデラまでも与えた。ですが貴方はその力の上に胡座をかいて好き勝手に振る舞い、挙句に私の一番の目的であるキーストーンの確保に失敗した」
「確かに今回はしくじりましたが、しかし! もう一度チャンスをいただければ、今度こそキーストーンを見つけて参ります! 私はヴィネー様の一番の信仰者!」
「残念ですが」
そんなディントスに対し、ヴィネーは冷淡に結論だけを突き付ける。
「これは交渉や相談ではない。決定事項です。貴方も何度も口にしていたではありませんか。私は資格のある者にしか救いを与えない。貴方には資格がなかった。それだけのことです」
見下すように、冷酷に、ヴィネーはそう告げて不気味に笑う。
「しかし……それでは! 私はこの後、どうすれば!?」
「さあ? 貴方はもう私の配下ではありませんし、私に歯向かおうと何をしようとも自由です。お好きなようにしてはいかがでしょうか」
そう言われても、ギルガルドとシャンデラは既に戦う力は残っていない。
ようやく現実を受け入れたのか、ディントスは小さくため息をつき、その場に座り込んだ。
「貴方がまだ適切な判断が出来る人間でよかったです。もし私に攻撃しようとしていたら、今頃貴方の首が飛んでいるところでしたよ。私のキリキザンによってね」
薄ら笑いを浮かべるヴィネーの手には、モンスターボールが隠し持たれていた。
「……待ちなさい! ゴエティアの魔神卿だっていうなら、なおさら逃がさないわよ!」
飛び去ろうとするヴィネーたち三人へ、アリスが叫ぶ。
「おやおやジムリーダーさん。残念ですが、今回私たちは貴女達と戦うことはできないのですよ。貴女はともかく、後ろの子供たちを傷つけるとパイモンちゃんに怒られてしまいますからね。ですので、今回はここで退場させていただきます。シンボラー、サイドチェンジ」
ヴィネーがシンボラーに指示を出した次の瞬間。
ヴィネーとシンボラー、ミョル、グングの姿が消え、気配も消え去った。
その後、ディントスや残された信者たちは、一人残らず警察に身柄を拘束された。
気力を抜かれてしまったようで、ディントスは抵抗一つせずに大人しく連行されていった。
「全てを分かってしまうと、ディントスも可哀想な男ね。好き勝手に利用されて、最後は見捨てられるなんて」
ハルたちを引き連れてジムに戻ったアリスが、どこかやるせなさそうに呟く。
「警察はディントスから話を聞き出して、ゴエティアの捜査に利用するみたい。話によると憑き物が落ちたみたいに大人しく取り調べに応じてるみたいよ。まるで人が変わったみたいだったって」
おそらく、今のその姿こそがディントスの本当の姿なのだろう。
その身に余る力をヴィネーから与えられ、力に溺れておかしくなっていたのかもしれない。
「ヴィネーに操られてたみたいなものだし、すぐに釈放されるかもね。父さんとも仲直りして、今度こそ真面目に世のために活動してほしいな」
さて、とアリスは顔を上げ、
「とにかく、キーストーンも無事取り返した。今度こそ、ハル君にメガシンカを継承するわよ!」
すぐに笑顔を取り戻し、ハルの方を向く。
が、
「……えっ!? ハル? 継承って、どういうこと!?」
ハルが返事を返すより先にサヤナに横槍を入れられてしまう。
「え? あ、えっと……」
「ハル君とルカリオの絆の力をより高めるために、ハル君にメガシンカの力を継承するのよ。サヤナちゃんにスグリ君も、よかったら見に来る?」
「行く! ハル、すごいじゃん! メガシンカを使えるようになるなんて!」
「オレも見に行きますよ。にしても、ハル君がメガシンカを? 知らない間に追い抜かれちゃったかな?」
「いやいや、そんなことないよ。スグリ君にはまだまだ勝てないし……」
そんな会話をしながら、アリスに連れられ、ハルたちは再びリデルの待つメガシンカの塔、エボルヴタワーへと向かう。
- Re: ポケットモンスター 魔王と救世の絆 ( No.87 )
- 日時: 2016/12/12 12:11
- 名前: 竜 ◆CmqzxPj4w6 (ID: 63VIkG8S)
お久しぶりですね。ゴリアンロケットの竜です。
1つの悪(といってもディントスという下部組織の一部ですが)が滅びましたね。個人的にもあんな性格の司教は堕落するだろうと踏んでいたので安心しました(笑)
ここで新たな魔神卿…キリキザンを使っているということはあくタイプ使い?いや、サイコパワーで浮いてるからエスパー使いかも…?あく・エスパー使いかもしれない…。どちらにせよ敵として本格的に厄介ですね。
こちらはそろそろ終盤に入っております。今のクトゥルフが終わり次第非日常が開始されるのでお楽しみに。かなりカオスになりまする(笑)
更新頑張って下さい!(サンムーンのアローラ図鑑が完成しました!)
- http:// ( No.88 )
- 日時: 2016/12/14 11:50
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
>>竜さん
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
ディントス教は潰れ、今回の件だけで言えば一件落着ですね。とはいえ黒幕がゴエティアなので、あくまで今回の件に関しては、だけですが。
ディントスはやったことを見ればもちろん悪人なんですが、その一方で黒幕ヴィネーに唆された被害者でもあります。
魔神卿のポケモンには特にタイプの偏りは持たせていませんので、明確な〇〇タイプ使いとかはないです。
ただ、やはりパイモンやダンタリオンに並ぶ程の強敵ということだけは間違いありません。
ハルたちが魔神卿の面々と本格的に戦うのは、もう少し先になりそうです。
図鑑完成おめでとうございます。私も図鑑は完成させて、無事ひかるおまもりを手に入れられました。
あとこれは個人的なお願いなのですが、今後の展開の関係でオリキャラのエストレのポケモンを一匹増やしていただけると嬉しいのです。
ご検討の方よろしくお願いします……。
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