二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第113話 実力差 ( No.189 )
- 日時: 2017/06/16 08:10
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: vJF2azik)
王冠に隠されたキーストーンに手を触れ、キーストーンが光を放つ。
しかし、
「……なんちゃってね」
思わず後ずさりしていたハルに対し、パイモンはからかうように舌を出して笑う。
「実はパイモンさん、メガストーン持ってないんだよ。正直面倒だよね、キーストーンと比べてメガストーンはポケモンによって違うから持ってる人が少ない、つまりなかなか人から奪えないんだよね。あ、そうだ。せっかくだからいいこと教えてあげよっか」
何か閃いたようにパイモンは表情を変え、
「フェルム地方って知ってるかな。ポケモンバトルが盛んな地方なんだけどね、あそこには共鳴石っていうおっきな岩があるんだ。あそこのトレーナーは共鳴石を削った石を組み込んだアイテムを使って、手持ちポケモンに一時的に特殊な力を与えることが出来てね。そこの人たちは共鳴バーストって呼んでるみたいだけど……まぁとにかく、共鳴バーストしたポケモンは一時的に強力な力を得られる。そしてね、メガシンカを使えるポケモンが共鳴バーストの力を得ると、メガシンカするんだよ」
「……どういうこと?」
「分かんないかぁ。キーストーンやメガストーンは、その共鳴石から作られている可能性が高いんだよね。つまり、この仮定が正しければ、ぼくたちの科学力を持ってすればキーストーンやメガストーンを作り出すことができる。アゾットって国では強制的にポケモンをメガシンカさせる機械を作ってたらしいけど、それよりも手軽に、そしてポケモンの力を最大まで引き出す正しいメガシンカが出来るんだ」
まぁまだ実験途中だし上手くいくか分かんないけどね、とパイモンは締め括る。
「先日アモちゃん率いる部隊がフェルム地方に潜入、共鳴石の一部を……っと、喋りすぎたかな。さ、バトルを続けよう」
相変わらず薄ら笑いを浮かべたまま、パイモンはバトルへと戻る。
「メタグロス、雷パンチ!」
四本の脚を折り畳み、メタグロスが念力で宙に浮かび上がる。
そのまま前脚に電撃を纏わせ、ルカリオへと突撃する。
「電気技なら……ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手が波導を纏い、長い骨を形作る。
突っ込んでくるメタグロスに対し、骨のロッドを振るうが、
「読み通りだよ? 冷凍パンチ!」
前脚を纏う電気は掻き消え、代わりに後ろの二本足に凍える冷気が宿る。
そのままメタグロスは回転し、後ろ蹴りで波導の骨をへし折り、ルカリオを蹴り飛ばした。
「メタルブラスト!」
四本脚を伸ばして床に立ち、メタグロスはX字のフレームから鋼エネルギーの砲撃を発射する。
「っ、ルカリオ、威力を弱めて! 龍の波導!」
起き上がったルカリオは両手を突き出し、輝く龍を模した波導を放つ。
鋼のエネルギーと輝く龍が激突するが、少しずつ鋼の砲撃が龍の波導を押していく。
「っ……ルカリオ! 波導を、床に!」
咄嗟にルカリオは両手を地面に向け、波導を床へと放って飛び上がり、間一髪で鋼の砲撃を回避した。
「サイコバレット!」
宙へ飛び上がったルカリオに対し、メタグロスはX字のフレームから念力を生み出す。
その念力を実体化させて無数の小型念弾へと変え、マシンガンのように一斉に発射する。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオが骨のロッドを手にし、それを振り回して無数の念弾を迎え撃つ。
だが念弾の一つ一つがかなりの威力を持ち、ルカリオの持つ骨のロッドは次第にヒビが入り、遂には打ち破られて残りの念弾を浴びてしまう。
「ルカリオ! くっ、強い……!」
メガシンカしたルカリオの火力を上回る攻撃力を持つメタグロス。それに加えて防御力、知能指数も高水準。先程のスターミーより明らかに強い。恐らく、パイモンのエースポケモンなのだろう。
「さあさあ、ハル君の力はそんなもんじゃないでしょ? メタグロス、冷凍パンチ!」
前脚に凍える冷気を纏わせ、メタグロスは四肢を折り畳んで宙に浮かび上がり、突撃を仕掛ける。
「ルカリオ、ギリギリまで引きつけて」
両手の波導を高め、ルカリオは目を閉じてその場に佇む。
メタグロスが一気に距離を詰め、冷気を纏った前脚を振り上げる。
「今だルカリオ! 発勁!」
波導の力でメタグロスの位置をずっと確認していたルカリオが、カッと目を見開く。
「予想通りだよ。メタグロス、雷パンチ!」
振り上げた腕をそのまま折り畳み、メタグロスは急に軌道を変えてルカリオのすぐ横を通過し、背後から電気を纏った前脚を突き出す。
「こっちもね! ルカリオ!」
しかしルカリオは攻撃を仕掛けていなかった。
メタグロスがフェイントを仕掛けてくることを予想し、ルカリオはその場で跳躍してメタグロスの突き出した、電撃を纏った脚を躱す。
そのままメタグロスの背中に向けて、青い炎の如き波導を纏った右手を叩きつけた。
「ボーンラッシュ!」
体勢が崩れて地面に落ちたメタグロスへ、ルカリオはさらに右手を纏う波導を長い骨の形に変え、メタグロスへと骨のロッドを叩き込む。
地面技のボーンラッシュは、鋼タイプのメタグロスには効果抜群だ。
「そうこなくっちゃね。メタグロス、サイコバレット!」
骨のロッドを叩きつけたルカリオは素早く距離を取ったが、メタグロスはそれを予測していたようで、ルカリオが飛び退いた方向へ正確に無数の実体化させた念力の弾を発射する。
慌てて念弾を躱そうとするルカリオだが、何発かがルカリオを撃ち抜いてダメージを与える。
「その調子だよ。メタグロス、メタルブラスト!」
念弾を撃ち込まれて体勢を崩すルカリオへ、メタグロスはフレームから強大な鋼エネルギーの砲撃を放つ。
「っ、ルカリオ、躱して!」
何とかルカリオは横っ飛びし、鋼の砲撃を躱すが、
「雷パンチ!」
メタグロスは四肢を折り畳み、前脚に電撃を纏って突撃する。
一気にルカリオとの距離を詰め、今度こそ電撃を込めた前脚でルカリオを蹴り飛ばした。
「………まだだ。まだ終われない! ルカリオ、発勁!」
それでもまだ、ルカリオは起き上がる。
直後、ルカリオの右手を纏う波導が爆発的に展開された。
右腕全体を覆うほどに強大な青い炎の如き波導を携え、ルカリオは力を振り絞り、渾身の力を込めてメタグロスへと向かっていく。
だが。
「最後は正面突破か。嫌いじゃないよ、そういうの」
だけど、とパイモンは言葉を続ける。
「メタグロス、サイコバレット!」
メタグロスが顔面のX字のフレームに念力を纏わせ、その念力を実体化させる。
実体化した念力は無数の小型の念弾を形作り、マシンガンのように一斉に発射される。
渾身の力で突き進んでくるルカリオへ、容赦なく無数の念弾が放たれ、ルカリオを貫いた。
蜂の巣にされたルカリオの右手から、青い波導が消え、床へと倒れる。
「ルカリオ……!」
床に倒れ伏したルカリオの体を光が包み、その姿をメガシンカ前の元の姿に戻す。
つまり。
それは、ルカリオの戦闘不能を意味していた。
「ま、こんなところかな。ハル君、確かに強いけど、ぼくにはまだまだ及ばないってことだね」
ルカリオを戻したハルへ、パイモンはそんな言葉を投げかける。
「でも頑張った方だと思うよ? スターミーを倒し、メタグロスにも傷を負わせた。とりあえず及第点には達してる、ってとこかな」
さて、とパイモンは言葉を続け、
「残念だけどぼくは君たちを手に掛けられない。君たちは救世主の資格がある、今ここで手を掛けると面倒なことになるんでね。だから」
そこまで言って、パイモンは部屋の奥でスピアーに見張られている社長の方に目を向ける。
「計画変更、こっちを人質に使うよ。ここでぐだぐだやってても仕方ない。社長を連れ去って、どんな手段を使ってでもターミナルの権限を手に入れる。力で従わせる、催眠術で操る……方法はいくらでもあるしね。そしてターミナルがゴエティアの手に分かったことが世間に知られたら、社長を殺す。それを君たちとここの社員全員に伝える。完璧だよね、ぼくの作戦」
「っ……!」
ハルが歯噛みするが、圧倒的な実力で叩きのめされている以上、食い止めることは出来ない。
「くそっ……このまま見逃すしかねえのかよ……!」
ジゼも悔しそうな声を上げるが、こちらも攻撃には出られない。自分より強いハルが負けた、その事実があるからだ。
「そうだよ? スピアー、ここにはもう用はない。社長を気絶させて、連れていくよ。社長さん、動かないでねー。身動きしたら本気で刺すから」
パイモンの指示を受け、社長の背後についていたスピアーが毒針を構える。
だが、その時。
ビーーーーーーー!!! と。
唐突に、建物全体に警報のような耳障りな音が鳴り響く。
- 第114話 復旧 ( No.190 )
- 日時: 2017/06/17 09:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
唐突に。
建物全体に、警報のような音が鳴り響く。
「っ!?」
パイモンが驚いたような表情を浮かべたということは、ゴエティアの仕業ではないようだ。
「これは……イザヨイシティのセキュリティ警報だ」
唯一冷静でいたのは、スピアーに毒針を撃ち込まれる直前の社長だった。
「セキュリティ!? そんなバカな、だってここのシステムはアモちゃんが——」
先程までの余裕を失い、途端に慌てた様子になるパイモン
その時。
『よくもやってくれたわネ、ゴエティアサン』
部屋のスピーカーから、機械を通したような女性の声が響く。
「その声は……マキナさん!」
『ご迷惑をお掛けしたわネ、社長サン。たった今、この街のシステム「マキナシステム」が復旧したわヨ』
社長とのやり取りを聞く限り、恐らくこの声の主は最初に話題に出てきた、ジムリーダーのマキナだろう。
「な……バカな、あり得ない! ちょっと待って——もしもし、アモちゃん!?」
慌ててパイモンは小型の通信機を取り出す。
「アモちゃん、どういうこと!? アクセス権限取り返されてるよ!?」
『かたじけない……完璧に掌握したはずなのですが、たった今権限を奪い返され……ダメです、取り返せませんな……! 早く逃げた方がよろしいかと!』
「嘘だろ……アモちゃんのハッキングを、どうやって!」
『パイモン、って言ったかしら? 面白い焦りようネ。カメラのシステムも取り返したから、そっちの状況、筒抜けヨ』
パイモンの様子が見えているようで、スピーカーからせせら笑うような声が流れる。
『こっちにも協力者が来てくれてネ、私のシステムへのドッキングを切り離してくれたのヨ。助かったワ、彼がいてくれて。パイモンサン、貴方たちもう少し有能な見張りを使った方がいいんじゃないかしら?』
「くそっ、だから本当はベリちゃんを見張りに使いたかったのに……協力者? 一体誰が! ノワキのやつらか!」
ハルとジゼもそう考えていた。
しかし、予想は外れた。
『ハル君、久しぶり。パイモン、お前もね。今回はオレの勝ちだぜ』
スピーカーから聞こえて来た声。その声の主は、
「スグリ君! どうしてここに?」
『詳しいことは後で話す。今はそいつらを捕まえるのが先だ』
『そうネ。さて、パイモンサン、この街に電磁バリアを仕掛けたワ。貴方のお仲間もまだここから逃げられていない。捕まるのも時間の問題ネ。ところでよそ見していていいのかしら? 社長サン、逃げちゃったワヨ?』
「っ!」
パイモンが振り向けば、既に社長はハルとジゼが助け出していた。
「メタグロスは傷ついてる……しょうがない、バルジーナ!」
どうにか逃走するしかないと踏んだらしく、パイモンはスピアーとダメージを負っているメタグロスをボールに戻し、骨で着飾ったハゲワシのようなポケモンを出す。
『information
バルジーナ 骨鷲ポケモン
大空を飛び回って地上を観察し
獲物を捕まえて巣まで連れ去る。
捕食した獲物の骨で体を着飾る。』
バルジーナの背中に飛び乗り、パイモンは叫ぶ。
「バルジーナ、ガラスを破って、逃げるんだ! 早く!」
主の焦りを察してか、バルジーナは慌てて飛び立つと、強引に窓ガラスをぶち抜き、飛び去っていった。
「逃げたか……!」
『心配無用ヨ。この街にはセキュリティロボットがいる。バリアで足止めを食らってる間に、対空用ロボットが全員捕まえてしまうワ』
「っ、どこへ行きやがった! 出て来いよ!」
メイゲツたちと交戦していたはずのロノウェだが、突然鳴り響いた警報に反応していた隙に、メイゲツを中心とした部隊は唐突にどこかへ消えてしまった。
「くそっ、どこだ! ビビってんじゃねえぞ!」
怒鳴りながら街の中を歩き回るロノウェだが、そこで異変を感じる。
「っ……?」
体に軽い痺れを感じた。例えるならば、ドアノブに手を掛けた時にその手へ静電気が走ったような。
「何だ?」
何気なくロノウェが空を見上げる。
そこには。
街全体を囲むように、ドーム状に電磁バリアが張られていた。
「……は?」
何が起こっているか分からず、呆然とするロノウェ。
そこへ、
「ロノ! 早く逃げるわよ!」
アーケオスに掴まったアスタロトとパラレルが、ロノウェの元に降りてくる。
「逃げる……? どういうことだ」
「あれ見て分かんないの!? 街のセキュリティが復活したの! 今パイモンがアモちゃんに電磁バリアの解除をお願いしてる! ここから逃げないと私たちは捕まっちゃうの! 分かったら掴まって! 急いで!」
「何だと!?」
ようやく事態を把握したようで、ロノウェは差し出されたアスタロトの手を握る。
三人をぶら下げたアーケオスは、何とか飛び立ち、パイモンと合流する。
「アモちゃん! 解除はまだ!?」
『もう少しですぞ! しかしマキナシステムの干渉が強い……恐らく解除は一瞬、それを逃したらもう打つ手はない! 確実に脱出するのですぞ!』
「分かってる! 早く!」
殆ど怒鳴るような口調で、パイモンは通信機に向かって叫ぶ。
背後からは、無数のロボットが浮かび上がり、ゴエティア一行に迫ってくる。
『3、2、1……今です!』
「バルジーナ!」
「アーケオス!」
アモンのカウントダウンの直後、電磁バリアが一瞬消えた。
その隙を突き、一人を乗せたバルジーナと三人をぶら下げたアーケオスが全速力で飛翔する。
すぐに電磁バリアは復活したが、その時には間一髪、ゴエティア一行はバリアの外へ逃げ出していた。
『どうにか、逃げられたようですな。では、また後ほど』
「危なかったよ……アモちゃん、助かった」
通信を切り、パイモンはアスタロトに掴まれているロノウェの方を向く。
「ロノ、後で説教ね。街の中ちゃんと見張っててくれたら、こんなことにはならなかったんだから」
「っ……済まねえ」
そしてアスタロトもアスタロトで、
「それにしても、あのガキ共……マジで覚えておきなさいよ」
いつもの口調はどこへやら、苛立ちを浮かべながら呟く。
とりあえずは何とか危機を脱し、ゴエティアの四人は逃げるように飛び去っていった。
その後警報は止み、電磁バリアも消えた。
魔神卿たちと用心棒には逃げられたものの、街に残っていた下っ端たちは全員逮捕された。
ハルとジゼはシステム復活によって稼働した移動床に乗り、ポケモンセンターでスグリと合流した。
「お前がスグリか。俺はジゼ、最近旅に出たトレーナーだ。よろしくな」
「へえ、それじゃあオレのライバルが一人増えることになるのかな。オレはスグリ、ハル君の友達だよ。よろしくね、ジゼ君」
初対面の二人が、簡単に挨拶を交わす。
「久しぶりだね、スグリ君。それにしても、どこに潜んでたの?」
「あぁ、実はオレ、隣のユウナギシティってとこにいてね。そこのジムに挑もうと思ったんだけど、バッジを7個持ってないと受け付けないって言われてさ。そこでここのジムに挑戦しようとジムに向かってる途中で街全体が停止、大量のゴエティアが攻め込んで来てね。しばらく木の上に隠れて様子を見てたら、近くで爆発が起きて見張りの人数が減ったから、その隙にジムに向かってジムリーダーのマキナさんを助け出したってわけ。マキナさん、本人の前じゃ言えないけど割と変人っていうか、結構面白い人だよ。とにかく、一緒にジムに来てよ。ゴエティアと戦ってくれた二人に、お礼が言いたいらしいよ」
「分かった。ちょっと待っててね」
ハルとジゼはポケモンを回復させると、スグリに連れられ、移動床に乗ってジムへと向かう。
- 第115話 イザヨイシティ ( No.191 )
- 日時: 2017/06/19 11:47
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
イザヨイジムは、透明なガラスで覆われた研究施設のような場所だった。
「マキナさん。二人を連れて来ましたよ」
スグリが二人を連れて先頭に立ち、建物の中へと入る。
「お邪魔します」
「失礼します」
ハルとジゼもその後に続く。
入り口には通路が続き、そこにはいくつかの扉が並んでいた。
そして、
「あら、いらっしゃい。スグリサン、ありがとうネ」
その中の一部屋の扉が開き、女性が現れた。
髪は灰色の長いストレートヘアーで整った顔立ち、黒い服の上から白い白衣を着た、いかにも研究者、といったような姿の女性。
しかし、
「え……!?」
「は……?」
そんなことはどうでもよくなるくらいに、彼女の体には特徴があった。
「あら、やっぱり気になるかしら? 私にとってはこれが正常体なノ、気にしないでネ」
服を着ているといってももちろん腕や手、足は露出しているのだが、二人が驚いたのは彼女の右半身だ。
彼女の右手や右足は、見て分かるレベルで完全に機械化しているのだ。
「研究の過程で今はこうなっているだけヨ。体に異常はないから、安心してネ」
「は、はぁ……?」
よく見れば右目もおかしい。白目にあたる部分は黒く、瞳は緑色と、明らかに機械に侵食されている。
自分でそう言うということはそういうことなのだろうが、どうしても違和感がある。当然といえば当然だが。
「面と向かっての自己紹介はまだだったわネ。私はマキナ、この街のジムリーダーにして、この街のシステム『マキナシステム』の管理人ヨ」
『information
ジムリーダー マキナ
専門:鋼タイプ
異名:機械仕掛けの女王(デウスエクスクイーン)
趣味:研究、実験』
「ハルと言います。よろしくお願いします」
「ジゼです」
ハルとジゼも、簡単に自己紹介する。
「さっきはどうもありがとうネ。君たち二人とスグリサンのおかげで、この街を守ることが出来たワ。あ、そう言えば」
ふと何かを思い出したようにマキナは話を変える。
「さっきゴエティアを捕まえようとして、セキュリティロボットの警備レベルを最大まで上げちゃったのヨ。そのせいで、関係ない人たちを何人か捕まえちゃったらしくてネ」
「関係ない人? あ……」
「まさか」
ハルとジゼが思い浮かべている人たちは、同じだった。
「ちょうどいいし、ここで解放するワ」
マキナが懐からスイッチを取り出し、ボタンを押す。
すると無数のロボットたちが現れ、拘束していた人間を次々と床に投げ捨てていく。
「やっぱり……」
「メイゲツさん、大丈夫っすか?」
予想通り、関係のない人たちとはノワキタウンの住人だった。
「痛え、くそ……こいつら、突然ぞろぞろと現れて、俺たちを無理やり連れて行きやがった。俺たちは街を守ろうとしてた側だっつーのによ」
「ごめんなさいネー。何しろセキュリティレベルを最大に上げていたものでネ」
頭に手を当てながら舌を出し、とりあえず謝っておくマキナ。
「謝罪の意思が微塵も感じられねえんだが? ……まぁいいか。ハルとジゼが無事だったことだし」
「二人とも、大手柄だったらしいな」
「流石ね、ジゼ。すごいわ」
解放されたヴァレンやネルたちも、ハルやジゼを賞賛する。
「さて、今日は皆さん、疲れているでしょ。私はまだ復旧作業が残ってるからジムも開けないし、皆さん今日はゆっくり休むといいワ。明日には、ジムを再開するわネ」
「それじゃ、ハル、ジゼ。またな」
「ええ、本当にありがとうございました」
「メイゲツさん、お元気で。次に会う時は、成長した俺の姿を見せてやりますよ」
「おう。楽しみにしてるぜ」
ハルとジゼに別れを告げ、メイゲツ一行はノワキタウンへと帰っていった。
「へえ、ジゼ君ノワキタウン出身なのかぁ。あそこはヤバい奴らが一杯いるって聞いてたけど、全然そんな感じしなかったな。優しそうな人たちばっかじゃん」
「ま、あの町の人らは認めた人には優しいぜ。認められるかどうかはそいつ次第だけどな。ハルは見事メイゲツさんに認められたけど」
この短い間で、ジゼとスグリはすっかり打ち解けていた。
「ところでスグリ君、マキナさんがさっき気になったこと言ってたよね」
「ん、なに?」
「マキナさんがシステムとドッキングしていたのを、スグリ君が切り離した、みたいな」
「ああ、あれね」
ハルの疑問に対し、スグリは軽い調子で答える。
「さっき見た通り、あの人って体の半分が機械化してるんだよ。それを利用して、この街のメインシステム『マキナシステム』と機械の体をドッキングさせて、システムの中枢をマキナさん自身の脳で増強してるってわけ。あの人ただでさえ天才的な頭脳持ってるのに、さらに人工知能も移植して、今ではとんでもない知能指数だって話だよ」
「へ、へえ……」
ハルの反応が微妙なのは、驚いていないからではない。
話がとんでもなさ過ぎて、理解が追いついていないのだ。
「引っ越してきたハル君は知らないだろうけど、あの人はマデル地方じゃ有名な研究者だよ。失敗したことがない科学者ってね」
「失敗したことが、ない?」
「そそ。失敗を失敗と考えてない、ってのが正確な言い方だけどね。普通の研究者なら失敗と考えるところを、あの人は成功への一歩って考える。どんな悲惨な失敗でも、それは成功への道筋。今やってる研究は、体に機械を取り込んで半永久的な命を得る研究。それが失敗して体の半分が機械化しちゃったんだけど、それすら成功のための一歩だって捉えてる」
「そ、そうなんだ……」
話がぶっ飛び過ぎてよく分からなかったが、とりあえずマキナという人がとんでもなく凄い人だということは分かった。
「オレが凄いって思うのは研究の成果じゃなくて、その思考回路。オレからしてみたら肉体の半分が機械になったらなんて考えたくもないけど、マキナさんはその成果を得て喜び、それをどう生かせるか考える。その結果産み出されたのが、人間と機械を繋いでフル稼働する『マキナシステム』だってんだから、あの人の思考回路は凄いと思うよ」
「うーん、なるほどねえ……」
そこだけはハルにも同意出来た。
「ま、周りからの評価は両極端らしいけどね。天才科学者だって褒める人もいれば、マッドサイエンティストだって非難する人もいるらしいよ」
「そりゃそうだろ。体が機械に変わって喜ぶなんて、明らかに常人じゃねえしな。少なくとも俺はマッドサイエンティストだと思うぜ」
そんなことを話しながら、三人はポケモンセンターへと戻る。
街を見てくる、とスグリとジゼが外に出た後、ハルはポケモンセンターの地下、バトルフィールドのある交流場へと向かった。
勿論、それには目的がある。
「さて。ラプラス、出てきて」
明日ジムに行く前に、仲間に加えたラプラスのことをもっとよく知っておきたかったのだ。
ボールから出てきたラプラスはハルの方を向き、じーっとハルの方を見る。
「ラプラス、改めてこれからよろしくね。君がどんなポケモンなのか、知りたいんだ。早速だけど、君はどんな味の食べ物が好きなの?」
そう言いながら、ハルは五種類の木の実を差し出す。
ラプラスはしばらくその木の実を吟味していたが、やがて甘い味に程よい酸味のあるソクノの実を咥え、飲み込むと、ご機嫌な声を上げる。
「甘い味が好きなんだね。僕と一緒だ」
嬉しそうなラプラスの様子を見て、ハルも笑顔で返す。
「ところで、ラプラス。君、バトルはしたことある?」
出会って間もないハルの言葉も正確に理解できているらしく、ラプラスは勢いよく頷く。どうやら、バトルが苦手というわけではないようだ。
「じゃあ、これからここにいるトレーナーたちと、何試合か戦ってみない? 僕ももっと君と心を通わせ合えるようになりたいし、それにはバトルが一番だと思うんだ」
ハルの言葉に、ラプラスは力強く頷いた。
「よし、それじゃ、ちょっとやってみよう」ラプラスを連れ、ハルは暇してそうなトレーナーを探す。
- 第116話 ジムバトル! イザヨイジムⅠ ( No.192 )
- 日時: 2017/06/22 08:44
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
何試合かしてみたが、ラプラスの戦績はなかなか悪くない。
「よし、ラプラス。お疲れ様」
ラプラスの頭を撫で、ハルはラプラスへソクノの実をあげる。
「これなら、明日のジム戦でも活躍できるかもね。とりあえず、今日は疲れちゃった。部屋で休もうか」
ラプラスをボールに戻し、一階で回復させると、ハルはポケモンセンターの宿舎を借りて部屋に入る。
今日はゆっくり休んで、明日はジム戦だ。
「ハル! スグリ! 勝ったぜ!」
次の日。
朝早くからジムに挑戦しに行ったジゼが、バッジを掲げて帰って来た。
昨日話し合った結果、ジムの順番はジゼが一番目、ハルが二番目、スグリが最後となっていた。
「おおー、やるじゃん」
「やったね、ジゼ!」
ハルとスグリが、勝って帰って来たジゼを出迎える。
「それじゃ、次はハル君の番だね」
「うん。行ってくるよ」
ポケモンセンターを出て、ハルは街中を巡る移動床に乗り、ジムへと向かう。
「ここだね……」
昨日もきたガラス張りの建物、イザヨイジムに、ハルは足を踏み入れる。
いくつも扉がある細長い通路は、奥まで進むと、突き当たりに扉があった。
ドアの上に書かれた文字を見る限り、どうやら、ここがジムのようだ。
「お願いします」
ドアを開け、ハルは中に踏み込む。
壁も天井も、床までもが真っ白い、何とも異質な部屋だった。
時々ネオンが走るように薄い水色の不思議な模様が壁に移り、バトルフィールドも縁が光によってうっすらと照らされている。
そして。
「よく来たわネ、ハルサン。昨日はありがとう」
バトルフィールドの向こう側に立つのは、右半身を機械化させた、白衣の女性。ジムリーダーのマキナ。
「昨日からずっと、君たちと戦うのを楽しみにしていたワ。どんな戦い方を見せてくれるのか、期待しているわヨ」
「ええ。僕も昨日から楽しみにしていました。ジムバトル、よろしくお願いします!」
ハルの力強い言葉に、マキナはにっこりと微笑む。
マキナがパチンと指を鳴らすと、突然、右の壁にプロジェクターを写したように画面が現れる。
『それではこれより、ジムリーダー、マキナと、チャレンジャー、ハルのジム戦を始めます』
「ジムの審判を務める人工知能ヨ。私が作り出したノ」
突然壁から声が聞こえて驚くハルに、マキナが説明する。
『使用ポケモンは両者五体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点で、試合終了となります。なお、ポケモンの交代は、チャレンジャーのみ認められます』
人工知能が流暢に言葉を話す。
『それでは、両者ポケモンを出してください』
「それじゃ、私からネ」
まずはマキナがボールを手に取り、最初のポケモンを繰り出す。
「おいで、クレッフィ」
マキナの一番手は、丸い顔に丸い目、鍵穴のような口を持つ、宙に浮いたポケモン。腕は頭から生えており、無数の鍵を持って鍵束のような容姿をしている。
『information
クレッフィ 鍵束ポケモン
様々な鍵を集める習性がある。
基本穏やかだが民家に忍び込み
鍵を盗む悪戯好きな個体もいる。』
鋼とフェアリータイプを持つ、非常に小柄なポケモンだ。
「どんなポケモンなのか予想出来ないけど……最初は君かな。頼んだよ、ファイアロー!」
ハルが初手に選んだのはファイアロー。鋼タイプに炎技で弱点を突ける。
「それじゃ始めるわヨ。クレッフィ、まずは電磁波」
まずクレッフィが先手を取って動き出す。
頭の角の先から、微弱な電気を発生させる。
しかし、
「!?」
その放たれる電磁波が、非常に早い。
躱す隙もなく、ファイアローは電磁波を浴びて麻痺状態を受けてしまう。
「これ……前にも似たようなことが……」
そこでハルは思い出す。
以前も補助技を高速で撃ってきたのは、メイゲツのヤミラミ。
そして、その時の異常なスピードの正体は、
「そのクレッフィ、特性は悪戯心……?」
「流石ネ、正解。クレッフィの特性は、補助技を先制で使える悪戯心ヨ」
厄介な特性、悪戯心。
どれだけ速く動いても、相手の補助技が先に発動するのはそれだけで厄介だ。
「仕方ない……スピードを上げてカバーだ! ファイアロー、ニトロチャージ!」
ファイアローが力強く啼き、全身を炎に包む。
そのままファイアローは勢いよく羽ばたき、クレッフィへと突撃を仕掛ける。
「クレッフィ、リフレクター」
対して、クレッフィが体の周りに透明な光り輝く箱のような壁を纏う。
直後、クレッフィは炎の突撃を受けて吹き飛ばされる。
「続けて鋼の翼!」
さらにファイアローは翼を鋼の如く硬化させ、再びクレッフィへと迫る。
「クレッフィ、光の壁」
次にクレッフィは先程とは違う色の光の壁を周囲に纏わせ、その直後に翼を叩きつけられ、地面に落ちる。
「畳み掛けるよ! ニトロチャージ!」
地面に落ちたクレッフィを狙い、ファイアローはさらに炎を纏って突撃する。
「クレッフィ、雨乞い」
地面に落ちたままのクレッフィが何かを唱える。
次の瞬間、炎の突撃がクレッフィを捉え、二度三度とバウンドして床を転がる。
そして。
「え……?」
立て続けに攻撃を受けたクレッフィは、早くも戦闘不能となってしまった。
「クレッフィ、お疲れ様。休んでてネ」
しかし何の焦りも見せず、マキナはクレッフィをボールへと戻す。
あまりにも拍子抜けだ。麻痺こそ受けたものの、ダメージを一切受けることなく、先手を取ってしまった。
「どうしたノ? 何を困った顔をしているノ?」
「いや……クレッフィが思ってたよりもずっと早く倒れたので……」
「私のクレッフィは耐久力が低いのヨ。でもやってほしいことはやってくれたし、充分なんだけどネ」
(やってほしいこと……?)
そう言えば、攻撃を受け続けながらクレッフィは何か補助技をいくつも使っていた。
だが、その正体が何かハルには分からない。
「それじゃ、次は……おいで、ジバコイル」
ハルが困惑している間に、マキナは二番手となるポケモンを繰り出す。
『information
ジバコイル 磁場ポケモン
コイルが三匹引き寄せあっていた
レアコイルが進化し完全に連結。
3つのユニットから強い磁力を出す。』
アリスも使っていた、レアコイルの進化系だ。図鑑の説明の通り、三匹のコイルが完全に連結した姿のポケモン。中央のコイルは特に大きくなり、頭からはアンテナのような突起が生え、その姿はUFOのようにも見える。タイプは変わらず、電気と鋼だ。
さらに、レアコイルが場に出た瞬間、ぽつぽつと水滴が降り始める。
「これって、雨……?」
ハルが天井を見上げれば、いつの間にやら黒い雨雲が天井全体を覆っていた。
「もしかして……これはクレッフィが最後に使った」
「そうヨ。雨乞いの技によって、フィールドに雨を降らせたノ」
「雨か……ファイアロー、ちょっときついよね……」
炎タイプであるファイアローには、雨天は辛いだろう。ハルとしても交代させたいところだが、
(でも、誰に交代する……?)
雨を一番活かせるのはラプラスだが、電気技が怖い。相性を考えるならワルビアルだが、ファイアローと同じく雨は苦手。エーフィ、オノンドも相性はよくないし、唯一完全有利なルカリオはまだとっておきたい。
そんなハルの様子に気付いてか、ファイアローはハルの方を振り返り、頷く。
「任せろ、ってことか。分かった。それじゃ、苦手な環境だろうけど、頼むよ」
降りしきる雨の中、ファイアローは羽ばたいて火花を撒き散らし、自身を鼓舞して啼く。
- Re: ポケットモンスター 魔王と救世の絆 ( No.193 )
- 日時: 2017/06/22 19:49
- 名前: 長山 ◆AvrkdgE7to (ID: jBxFHKzX)
長山です。
ハルはジバコイルと戦闘しますね。
雨の中、ファイアローは力を発揮できるのか!?それとも交代するのか!?
次回も楽しみにしています!
ではまた。
追伸:俺の逃走中、New逃走中5の募集を始めました。ぜひ応募してください
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