二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第130話 本戦 ( No.209 )
- 日時: 2017/07/12 08:45
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
次の日の朝。
朝食を食べた後、ハルは準備を整え、ポケモンセンターを出て会場に向かおうとしていた。
「おっはよー! ハル、調子はどう?」
ポケモンセンターから出たハルを出迎えたのは、サヤナと、
「お久しぶりね、ハル。元気にしてたかしら?」
赤い髪のポケモントレーナー、エストレ。
「エストレさん! お久しぶりです、カタカゲシティ以来ですね!」
ハルの顔を見て、エストレはにっこりと笑う。
「一週間前にニュースでイザヨイシティが大変なことになってるって聞いたけど、無事大会が開催することになってよかったわ。この大会のためにポケモンを調整していましたのよ」
ハルやジゼ、スグリたちがこの街を救ったということは報道されていない。三人ともあまり騒がれるのは好きではないので、マキナにそのようにお願いしたのだ。
「大会で当たるとしたら、ヒザカリ大会ぶりね。前回は負けてしまったけど、今回はそうは行きませんわよ」
「望むところです、僕も負けませんよ。エストレのハッサムを倒してみせます」
エストレもまた強敵だ。必ず勝ち上がってくるだろう。
「さ、そんなことより、早く会場に行こうよ! もう少しで一回戦、始まっちゃうよ!」
「そうね。それじゃあ、向かうとしましょうか」
ハルとサヤナ、エストレの三人は移動床に乗り、街の真ん中の巨大なスタジアムへと向かう。
『さあ、まもなく始まります! ポケモンバトル大会イザヨイリーグ! ある意味でポケモンリーグ大会の前夜祭ともいえるこの大会、優勝するのは一体誰なのか? 実況は私、テレビコトブキのアマネがお送りしております!』
まだ本戦は始まっていないが、会場は既に熱気に包まれている。
テレビ局から派遣されたのであろう女性のアナウンサーが、テンション高くマイクを握る。
『なお、今大会は特別に、解説としてマデル地方四天王の方をお呼びしております!』
アナウンサーの声を受け、会場から期待の声が上がる。チャンピオンだけでなく四天王をもこの目で見られるのだ。当然だろう。
『それでは、ご紹介させていただきます! マデル地方四天王が一角、荒波起こしの貴公子! カイリさんです!』
アナウンサーの声に続き、別の男がマイクを取る。
まるで童話の王子様を模した舞台衣装のような服を身に纏った、青髪のイカした好青年だ。
『どうも皆さん! 四天王のカイリです! 今日はこの会場に集まってくれて、ありがとう!』
カイリがそう名乗ると、観客から次々と黄色い声が飛ぶ。
「うっそー!? まさかカイリさんが来てるなんて! すっごーい!」
横にいるサヤナもテンション爆上げの様子だ。その盛り上がりようはチャンピオン以上。
「え……あの人、そんなにすごい人なの?」
横で騒いでいるサヤナへ尋ねるが、当のサヤナはそれどころではなさそうだ。
「あの人は四天王、カイリ。最近になって現れた、類稀なるポケモンバトルの才能を持ったトレーナーだそうですわよ」
サヤナの代わりに答えたのは、後ろのエストレ。
「だけど、四天王がチャンピオンよりも人気なんてこと、あります?」
「それはあの人の別の顔のせいね」
ハルの疑問に、エストレが答える。
「私はあんまりその手の業界に興味はないのですけれど。所謂トップアイドルよ。『ブルースター』っていう今とっても人気のアイドルグループがあって、そのリーダーとしても活躍してるみたいですわね」
『information
四天王 カイリ
専門:水タイプ
異名:荒波起こしの貴公子(タイダルウェイブ・プリンス)
本業:トップアイドル』
「あぁ、なるほど……」
それを聞いて納得した。
マデル地方四天王、それに加えてトップクラスの人気を誇るアイドルとなれば、それは騒がれるわけだ。
『さあ、それではいよいよ、本戦となる一回戦、第一試合が始まります! 対戦するのは、まずはバッジ六つ、前回のハダレタウン大会ビギナーカップ準優勝の戦績を持つ期待の実力者、コロン選手! ハダレ大会での無念の惜敗を受け、より強くなって大会の場に帰ってきたぞ!』
現れたのは、黄色いコートにサングラスか特徴的な少年。
ちなみにハダレタウン大会ビギナーカップとは、ハルたちが出場していたレギュラーカップの一つ下、バッジの数が三つまでのトレーナーが出場していたランクだ。
『そしてそのコロン選手の対戦相手! いきなり優勝候補の筆頭格が登場です! マデルの人なら誰もが知ってるメガシンカ使い、サオヒメシティジムリーダー! 閃光煌めく戦乙女、アリス選手! ジムリーダーに留まらず、さらに高みを目指すため、この大会へやって来た!』
『ジムリーダーが参戦とは、珍しいよね。彼女とは一度戦ったことがあるけど、本気の彼女は四天王のこの僕を追い詰めるほどの実力だ。本気のジムリーダーが相手となると、コロン君は一回戦から苦しい戦いになるかもね』
一回戦の一試合目からいきなりジムリーダーが登場し、会場は大歓声に包まれる。
ちなみに、本戦からはポケモン二体ずつの勝負、さらに準決勝以降は三体ずつの勝負となる。
審判の準備も整い、いよいよ、本戦の試合が幕を開ける。
『試合……開始ッ!」
戦いのゴングが、鳴り響く。
両者が同時にボールを手に取り、ポケモンを繰り出す。
「ビブラーバ、出て来い!」
「輝け、エレキブル!」
『information
ビブラーバ 振動ポケモン
成長途中の翅を激しく振動させ
超音波を出し獲物を気絶させる。
四枚の翅が育ち切れば進化は近い。』
『information
エレキブル 雷電ポケモン
非常に好戦的な性格。無尽蔵に
電撃を放ち接近してきた相手には
尻尾を巻き付かせ高圧電流を流す。』
観客席のハルにとっては、どちらも初めて見るポケモンだ。
まずはコロンの、四枚の薄い翅で宙に浮かぶ細身の虫のようなポケモン。こんな姿でも龍の血を持つドラゴンポケモンであり、進化するとフライゴンになる。
次にアリスの繰り出した、黄色の身体中に黒い縞模様を刻み、長い二本の尻尾を持つ大柄なポケモン。エレブーの進化系なので、以前使用していたエレブーが進化したのだろう。
「ビブラーバ、大地の力!」
先攻を取ったのはコロン。ビブラーバが金切り声をあげるとフィールド全体が揺れ、エレキブルの足元から土砂が噴き出す。
「エレキブル、構わず進んで! 炎のパンチ!」
だが噴き出す土砂を受けてもエレキブルは地に足をつけて踏み止まり、即座に反撃に出る。
握り締めた拳に炎を灯し、ビブラーバへと向かっていく。
「ビブラーバ、躱して龍の波動!」
翅を羽ばたかせてふわりと上昇し、ビブラーバは炎の拳を躱すと、口を開いて輝く龍の形をした光線を発射する。
「エレキブル、薙ぎ払って!」
拳に炎を纏わせたまま、エレキブルは腕を振り抜く。
炎の腕の一振りで龍の波動を強引に掻き消し、
「瓦割り!」
そのまま大きく跳躍して一気にビブラーバと同じ高さまで飛び上がると、手刀を振り下ろしてビブラーバを撃墜、地面へ勢いよく叩きつけた。
「っ、ビブラーバ! バグノイズだ!」
地面に落とされながらも、ビブラーバは四枚の翅を全力で振動させ、耳をつんざく大音量の音波を放射する。
音波を受けて空中にいるエレキブルが体勢を崩し、地面へ落とされる。
「今だビブラーバ、噛み砕く!」
大きく口を開いて牙を剥き、ビブラーバは倒れるエレキブルへと飛び掛かる。
しかし、
「エレキブル、捕まえなさい!」
素早く立ち上がったエレキブルが体を屈め、長い尻尾をゴムのように伸ばす。
二本の尻尾が瞬時にビブラーバを絡め取り、その動きを完全に拘束してしまう。
「決めなさい! 冷凍パンチ!」
尻尾を振り下ろしてビブラーバを地面に叩きつけ、間髪入れずにエレキブルは冷気を纏った拳をビブラーバへと叩き込んだ。
「ビブラーバ……!」
ドラゴンだけでなく地面のタイプも持つビブラーバは、氷技には極めて弱い。
エレキブルが手を退けると、ビブラーバは身体を凍りつかせて戦闘不能となっていた。
『冷凍パンチが決まったぁ! アリス選手のエレキブル、ビブラーバの攻撃を全く気にも留めず、拳でねじ伏せる! まずはアリス選手が先手を取りました!』
バトルが始まって速攻、アリスはコロンの一匹目を下してしまった。
「うわー……とんでもないパワーだね、あのエレキブル」
「僕がジム戦をやったときはまだエレブーだったけど、あの頃からパワータイプだったしね……さらに磨きがかかってるよ」
観客席で息を呑むハルとサヤナ。
力が有り余っているのか、エレキブルは胸を打ち鳴らして雄叫びをあげる。
腕を振るたびに火花が散り、フィールドに立つアリスとエレキブルを眩しく照らす。
- 第131話 出番 ( No.210 )
- 日時: 2017/07/20 10:06
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「サワムラー、ブレイズキック!」
コロンの二番手、バネのように伸びる足を持つ格闘ポケモン、サワムラーが、炎を纏った強脚を伸ばして蹴りを放つ。
『information
サワムラー キックポケモン
蹴りが得意なバルキーが進化した
姿。熟練したサワムラーはどんな
体勢からでも連続キックを放てる。』
「エレキブル、弾き飛ばして! 瓦割り!」
腕を思い切り振り抜き、エレキブルは手刀でサワムラーの足を弾き飛ばす。
予期せぬ方向へ足が飛び、サワムラーの体勢が崩れるが、
「甘い! メガトンキック!」
くずれた体制を逆手に取り、サワムラーは右手を地につけて逆立ちのような形を取り、すぐさまもう片方の足で渾身の蹴りを繰り出す。
「それを待ってたのよ。エレキブル、捕まえて!」
だがエレキブルは横っ飛びして蹴りを躱すと、サワムラーの足に二本の尻尾を巻きつかせ、捕らえてしまう。
「十万ボルト!」
間髪入れずに、エレキブルの尻尾から高電圧の強力な電撃が放たれる。
電撃は足を伝ってサワムラーの胴体に伝わり、サワムラーを体の芯まで痺れさせる。
「サワムラー……!?」
エレキブルが尻尾を離すと、サワムラーはその場に崩れ落ちる。
目を回して倒れるその姿は、明らかに戦闘不能だった。
『第一試合、決着ぅ! アリス選手、エレキブルのパワーを生かし、単体でコロン選手のポケモン二体を撃破! 圧倒的な実力を見せつけ、二回戦進出です!』
『さすがはジムリーダーのポケモン、見事なパワーだ。相手の攻撃を気にも留めないバトルスタイルも、力自慢のエレキブルと見事にマッチしている。素晴らしいね』
解説のカイリも彼女を賞賛する。
ジム戦でもアリスは強かったが、今のバトルを見た限り、アリスの実力はあの時以上だ。
コロンに一礼し、盛り上がる観客席に手を振ると、いち早く二回戦への駒を進めたアリスはフィールドを去っていく。
その後ジゼが勝利、続けてサヤナも一回戦を突破し、いよいよハルの試合がやってきた。
『さあ参りましょう! 続いての試合、まずは現在バッジ七つ、ハル選手! ゴエティアの乱入で一時期話題となりました、あのハダレ大会レギュラーカップの決勝進出者です! 噂によると、アリス選手に認められたメガシンカ使いだとか! 今大会でもメガシンカを見せてくれるのでしょうか!』
ハルとしてはメガシンカ使いであることを暴露させられるのはちょっとやめてほしい。スグリが言っていたのはこういうことなのだろう。
『そして対するは、現在同じくバッジ七つ、ライタ選手! 今までバトル大会には出場していなかったようで、この大会が初参戦! 予選を危なげなく通過し、本戦の場にやって来ました!』
ハルの対戦相手となるのは、緑色のニット帽を被り、怪獣のような緑のポケモンが描かれた黒い服の、ハルより少し年上くらいの少年だ。
『予選の結果を見ても、実力的にはほぼ同程度のトレーナー同士の戦いだね。熱いバトルが見られそうだ』
『カイリさんの言葉で両者期待が高まります。どんな試合を見せてくれるのでしょうか!?』
ハルとライタ、双方がバトルフィールドに立つ。
『それでは、試合開始ッ!』
審判の準備も整った。アナウンサーの声を引き金に、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「出てきて、ラプラス!」
「出て来い、カブトプス!」
ハルが選んだ一番手はラプラス。
対するライタの初手は、カブトガニのような形状の頭部に刺々しい細身の体を持つポケモン。両手には鋭い鎌を持つ。
『information
カブトプス 甲羅ポケモン
最新技術で蘇った古代ポケモン。
水陸を問わず活動することができ
泳ぐ時には大きな鎌は折り畳む。』
水と岩タイプを併せ持つ、化石から蘇ったポケモンだ。
『おっ、二人とも水タイプのポケモンか。水タイプ使いの僕としては嬉しい展開だね。タイプ相性だけを見ればライタくんの方が少しだけ有利だけど、さて、どうなるかな』
カイリの言う通りカブトプスは岩タイプを持つため、得意の岩技をラプラスに効果抜群でぶつけられる。
しかし岩タイプがあるということは、ラプラスの水技が半減されない。ハルが完全に不利とは言えない状況だ。
「俺から行くぞ。カブトプス、アクアジェット!」
鎌を広げたカブトプスが水を纏い、高速で突撃してくる。
「ラプラス、ハイドロポンプ!」
大きく息を吸い込むラプラスだが、水を発射するよりも早く、水を纏ったカブトプスがラプラスにぶつかる。
ラプラスの体勢が少し崩れ、放たれた大量の水は狙いが逸れてしまい、カブトプスを捉えられない。
さらに、
「なるほど。そのラプラスの特性は、貯水ではないんだな」
アクアジェットの反応を見て、ライタがそう呟く。
ラプラスは二つの特性を持つポケモンだ。一つは急所への攻撃を防ぐシェルアーマー、そしてもう一つが、水技を無効化して自身の体力を回復する貯水だ。
ライタは先制技のアクアジェットを利用し、瞬時にラプラスの特性を確かめたのだ。
「だったら特性はシェルアーマー、水技も気兼ねなく撃てる。カブトプス、ストーンエッジ!」
カブトプスが両手の鎌を勢いよく床に突き刺すと、地面からラプラスに向かって無数の尖った岩の柱が出現する。
「ラプラス、渦潮!」
対してラプラスは美しい唄声と共に大波を巻き起こす。
波の渦が岩を食い止め、カブトプスへと迫るが、
「カブトプス、波に乗って接近しろ!」
カブトプスはなんと自ら渦潮の中に飛び込み、波の中を高速で泳いでラプラスへと近づいていく。
「リキッドブレード!」
波の渦の中からカブトプスが飛び出す。
両手の鎌に水を纏わせ、ラプラスへと斬りかかる。
「ラプラス、フリーズドライ!」
だがラプラスも負けてはいない。上空から襲い掛かるカブトプスへ向けて、激しい氷の吐息を放つ。
両手を覆う水、さらにカブトプス自身へ、冷気を浴びせる。
『おおっと、フリーズドライが決まった! 氷タイプの技ですが、カブトプスにはよく効いているようです!』
『フリーズドライ。氷タイプの技でありながら水タイプのポケモンに効果抜群となる、非常に優秀な技だね。ユキちゃんも好んで使う技だよ』
氷の吐息を直に浴び、カブトプスが吹き飛ばされる。腕の鎌を凍らせるだけでなく、水分を瞬時に凍りつかせる冷気がカブトプスに大きなダメージを与える。
「やるな……カブトプス、氷を砕け! ストーンエッジ!」
凍った鎌を床に叩きつけ、カブトプスは強引に氷を砕くと同時に鎌を地面に突き刺し、再び床から無数の尖った岩の柱を出現させる。
「ラプラス、躱して! 冷凍ビーム!」
対するラプラスは自身の周囲へ冷気の光線を放ち、床を凍りつかせる。
凍った床の上を滑るように移動し、足元から出現する岩の柱を躱す。
「逃すなカブトプス! 辻斬りだ!」
ラプラスを追うようにカブトプスが地を蹴って飛び出す。
意外と素早い動きでフィールドを走り、鋭い鎌でラプラスを斬り裂き、その横を駆け抜ける。
「ラプラス、立て直して! ハイドロポンプ!」
後ろを振り向き、ラプラスは大きく口を開いて高圧の水流を発射する。
「カブトプス、もう一度辻斬りだ!」
カブトプスは鋭い鎌を振るって水流を迎え撃つが、さすがにラプラスの主力技であるハイドロポンプに打ち勝つことはできず、競り合いに負けて押し流されてしまう。
「やはり火力はそこそこか。カブトプス、仕切り直すぞ。一旦戻って来い」
指示に従ってカブトプスは体勢を立て直すと素早く跳躍し、ライタの元へ戻る。
(一回戦から強敵だな……カブトプスの動きにも隙が少ないし、トレーナーも分析力に自信があるみたいだ。気をつけて挑まないと)
ハルとラプラスも仕切り直し、対戦相手のライタとカブトプスを見据える。
- 第132話 凍結 ( No.211 )
- 日時: 2017/07/21 08:25
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
- 参照: 7世代ポケモン、解禁!
「カブトプス、リキッドブレード!」
「ラプラス、冷凍ビーム!」
両手の鎌に水を纏わせ、カブトプスが地を蹴って飛び出す。
対するラプラスは角の先に氷のエネルギーを溜め込み、冷気の光線を撃ち出すが、カブトプスは冷気の光線を掻い潜って駆け抜け、水の鎌を振るってラプラスを切り裂く。
「ラプラス、渦潮!」
斬撃を受けるが効果は今一つ。体勢を崩しながらも、ラプラスは唄声と共に渦を巻く大波を呼び起こす。
「その技は効かないぞ。カブトプス、波に乗れ!」
渦潮に飲まれたように見えたカブトプスだが、先程のように波に乗って泳ぎ回り、ほぼノーダメージで渦から脱出してしまう。やはり渦潮は効き目がないようだ。
「だったら、フリーズドライ!」
大きく息を吸い込み、ラプラスは凍える冷気を込めた吐息を放つ。
「甘い! カブトプス、ストーンエッジ!」
カブトプスが勢いよく鎌を床へ突き刺す。
尖った岩の柱が次々と地面から飛び出し、氷の吐息を防ぎつつ前進、ラプラスの足元から突き出した岩の柱がラプラスを吹き飛ばす。
「続けろ! 辻斬りだ!」
鎌を構えて飛び出し、カブトプスは追撃を仕掛ける。
よろめくラプラスへと一気に迫り、斬れ味鋭い鎌を振り抜く。
「っ、ラプラス、ハイドロポンプ!」
「躱せカブトプス! アクアジェット!」
起き上がったラプラスが大量の水を放つと同時に、カブトプスが体に水を纏う。
放たれた高圧の水流を素早い動きで躱し、水を纏ったままカブトプスはライタの元へ下がる。
「リキッドブレード!」
身体中に纏った水を両手の鎌に集中させ、カブトプスが再び飛び出す。
「そろそろこっちの番だよ。フリーズドライ!」
ラプラスが冷気を込めた吐息を放ち、水の鎌ごとカブトプスを凍りつかせようとする。
「跳べカブトプス! 躱すんだ!」
だが冷気を浴びる直前、カブトプスは地面を蹴って大きく跳躍する。
ラプラスの上を取り、鋭い水の鎌を振りかぶる。
「そうはいかないよ! ラプラス、躱してハイドロポンプ!」
だがその直後、ラプラスが床を滑るように動き、カブトプスの鎌を躱す。
先程と同じく冷気の吐息で床を凍らせ、それに乗ってラプラスは床を滑って移動したのだ。
狙いを外したカブトプスの鎌は地面に突き刺さり、鎌を引き抜いたその刹那、ラプラスの放った高圧の水流がカブトプスを押し流し、吹き飛ばす。
「冷凍ビーム!」
さらにラプラスは角の先から冷気の光線を発射する。
「チッ、防御だカブトプス! リキッドブレード!」
水を纏った両手の鎌を交差させ、カブトプスは防御の姿勢を取って冷気の光線を迎え撃つ。
鎌が凍り付いてしまうが、カブトプスは冷気の光線を正面から受け止め、吹き飛ばされずに踏み止まった。
「カブトプス、反撃だ! ストーンエッジ!」
両手の鎌を地面に突き刺し、カブトプスは氷を砕くと同時に、尖った岩の柱を地面から出現させる。
「ラプラス、ハイドロポンプ!」
ラプラスが大きく息を吸い込み、口から高圧の水流を発射する。
次々と地面から飛び出す岩の柱を激しい水流で食い止め、
「カブトプス、辻斬り!」
カブトプスが地を蹴り、一気に突っ込んでくる。
「ラプラス、一撃耐えて!」
防御の構えを取り、ラプラスはカブトプスを正面から迎え撃つ。
立て続けに振るわれるカブトプスの両手の鎌の斬撃を、何とか耐え切り、
「フリーズドライ!」
返す刀で凍える冷気を込めた氷の吐息を放ち、カブトプスを凍りつかせる。
「今だラプラス! 渦潮!」
美しく、かつ力強い唄声を上げ、ラプラスは渦の大波を呼び起こす。
「カブトプス! 波に乗れ!」
ライタが叫ぶが、今までと違い、カブトプスが波に飲み込まれていく。
いくら泳ぎが得意なカブトプスといえど、体の一部を氷漬けにされてしまっては流石に思うように泳ぐことができないようだ。
ましてただの水ではなく、激しく荒れ狂う渦の波。カブトプスは渦に巻き込まれて激しく掻き回され、波が引いた時には力尽きて戦闘不能となっていた。
『決まったーッ! ハル選手とラプラス、機転を利かせた渦潮でカブトプスを撃破! ハル選手、先手を取りました!』
アナウンサーの実況と共に、会場から歓声が湧く。
「カブトプス、戻れ。休んでいろ」
カブトプスをボールへ戻すと、ライタはハルの方へ向き直る。
「やるじゃないか。正直渦潮は警戒していなかった。だが、次はそうはいかないぞ」
ハルを賞賛した上で、ライタは次のボールを手に取る。
「出て来い、エンニュート!」
ライタの二番手は、黒く細い二足歩行のトカゲのようなポケモンだ。体の一部分に、桃色のラインが走っている。
『information
エンニュート 毒トカゲポケモン
口から放つ毒ガスは他の生物に
とっては猛毒。しかし同種の雄
には魅力的なフェロモンとなる。』
どうやら炎と毒タイプを併せ持つポケモンのようだ。
『あのポケモンは……なんでしょう? 初めて見るポケモンですが……』
観客席からも不思議そうな声が上がっているようだが、
『エンニュートとは、珍しいポケモンを連れているね。近年、アローラというここから少し離れた地方で発見報告のあったポケモンだ。最近は他の地方からアローラへ行く人、逆にアローラから他の地方へ出る人も増えているみたいだし、この大会でも他にもアローラのポケモンを見るかもしれないね』
どうやらカイリは知っているらしい。最近発見されたポケモンのようだが、
「同じポケモンなら、やることに変わりはない。ラプラス、疲れてるだろうけど、もう少し頑張って」
少し疲れた様子を見せつつも、ラプラスは頷く。
「行くぞ。エンニュート、火炎放射!」
エンニュートが両手を下ろして四つん這いになる。
身体中のピンクの毒腺に炎が走ると同時に、口から灼熱の炎が放出される。
「ラプラス、ハイドロポンプ!」
ラプラスもそれに対して高圧の水流を噴き出す。
水技は炎技には有利。水流が火炎放射を撃ち破り、その奥のエンニュートに迫るが、
「エンニュート、ベノムショック!」
既にエンニュートはそこにはいない。
いつの間にかラプラスの横へと回り込み、口から毒の液体を光線のように発射する。
「っ、速い……! ラプラス、渦潮!」
思っていたよりも動きが速い。ラプラスは周囲へ渦の大波を呼び起こすが、
「エンニュート、躱せ!」
やはりエンニュートは素早く跳躍して、渦潮を躱してしまう。
「冷凍ビーム!」
「気合玉!」
ラプラスが角の先から冷気の光線を放つと同時に、エンニュートも上空から身体中の気を込めた念弾を投げつける。
念弾が冷気の光線を突き破り、念弾がラプラスへと直撃した。
「ラプラス!」
効果抜群となる格闘技を叩きつけられ、カブトプス戦でのダメージも溜まっていたラプラスはここで戦闘不能となってしまう。
『エンニュート、速い! ラプラスを翻弄し、すぐさま追いつきました! さあ、この互角の戦いは、ここからどちらに転ぶのか!』
「ラプラス、お疲れ様。休んでてね」
ラプラスをボールに戻し、ハルは次のボールを手に取る。
「ここは君の出番だ。出てきて、ワルビアル!」
ハルが二番手に選んだのはワルビアル。炎と毒タイプなら、地面技が非常によく通る。もっとも、威力が高い代わりに地面に足をつけていないと当てられない地震を当てられれば、の話だが。
「地面タイプか。あまり相手にしたくはないが、勝てないことはない。エンニュート、頼むぞ」
「ワルビアル、タイプ相性で有利とはいえ、相手はなかなかの強敵だよ。油断しないで」
エンニュートとワルビアルはそれぞれのトレーナーの言葉に応え、相手を見据える。
- 第133話 毒炎 ( No.212 )
- 日時: 2017/08/09 21:49
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: taU2X.e0)
「エンニュート、火炎放射!」
まずはライタとエンニュートが動く。エンニュートは四つん這いになり、狙いを定めて灼熱の炎を噴き出す。
「ワルビアル、ストーンエッジ!」
対してワルビアルは地面に拳を叩きつけ、無数の尖った岩の柱を出現させる。
岩の柱は炎を防ぎつつ、エンニュートへと迫るが、
「エンニュート、躱してベノムショック!」
四つん這いのままエンニュートは横っ飛びし、岩の柱を躱す。
そのままワルビアルへ一気に近づき、毒液を光線のように発射する。
「くっ、ワルビアル、こっちも仕掛けるよ。シャドークロー!」
毒液を浴びるが、追加効果は発動しない。ワルビアルは腕に黒い影を纏わせ、エンニュートとの距離を詰める。
「躱せエンニュート! 龍の波動!」
ワルビアルが影の爪を振りかぶるが、エンニュートは素早く飛び退き、爪を躱すと共に、輝く龍の形をした光線を発射する。
ワルビアルの影の爪とぶつかり合い、競り合った末に互いの技は消滅する。
「ワルビアル、地震!」
咆哮を上げ、ワルビアルが地面を踏み鳴らす。
フィールド全体を揺らして衝撃波を飛ばすが、
「エンニュート、躱して火炎放射!」
やはりエンニュートは身軽に跳躍され、躱されてしまい、地震を躱したエンニュートはワルビアルへ向けて灼熱の炎を噴き出す。
「ワルビアル、来るよ! 躱して!」
地震は外したが、ワルビアルは襲い来る炎を飛び退いて躱すと、
「ストーンエッジ!」
拳を地面に叩きつけ、地中から無数の尖った岩の柱を出現させる。
「エンニュート、躱してベノムショック!」
しかしこのエンニュート、かなり素早い。岩の柱の隙間を駆け巡り、柱を躱しながらワルビアルに接近し、毒液の光線を吐き出す。
「続けろ! 気合玉!」
「させないよ! ワルビアル、噛み砕く!」
毒液を浴びたワルビアルを狙い、さらにエンニュートは気合の念弾を作り上げる。
しかし毒液を食らったワルビアルは怯まず、大顎を開いてエンニュートに食い付き、頑丈な牙を突き立てる。
「投げ飛ばしてシャドークロー!」
そのまま力任せに首を振って放り投げ、さらに黒い影を纏った右手でエンニュートを殴り飛ばした。
「龍の波動!」
宙に放り投げられたエンニュートが、不安定な体勢のまま輝く龍の光線を放ち反撃する。
「シャドークローで防御だ!」
両手に影を纏わせ、ワルビアルは手を交差させて光線を迎え撃つ。
波動が直撃しワルビアルが押し戻されるが、それでも地に足をつけて耐え切る。
「ストーンエッジ!」
龍の波動を振り払い、ワルビアルは咆哮と共に拳を床へと叩きつける。
地面から次々と岩の柱が出現し、エンニュートへと襲い掛かるが、
「躱せエンニュート! ベノムショック!」
岩の柱すら足場に利用し、エンニュートは飛び回ってストーンエッジを全て回避し、上空からワルビアルへと毒液を吐き出す。
「ワルビアル、突撃! シャドークローだ!」
エンニュートを見据えたワルビアルが地を蹴って跳躍する。
黒い影の爪で毒液を打ち消し、さらに影の爪を振るい、エンニュートを切り裂いた。
「エンニュート、反撃だ! 気合玉!」
爪の一撃で吹き飛ばされたエンニュートが、体勢を崩したまま反撃に出る。
宙を舞いながらも身体中の気を右手に集めて念弾を作り出し、それをワルビアルへと投げ飛ばす。
「ワルビアル、躱して!」
「逃がさないぞ! 火炎放射!」
気合玉を躱したワルビアルだが、立て続けに空中からエンニュートが炎を噴き出す。
灼熱の業火がワルビアルを飲み込み、赤い身体を黒く焦がしていく。
「畳み掛けるぞエンニュート! 龍の波動!」
ようやく着地したエンニュートが再び口を開き、輝く龍の形をした光線を発射する。
「っ、ワルビアル、何とか防いで! ストーンエッジ!」
身体を焦がされてよろめくワルビアルだが、それでも自身を鼓舞して吼え、拳を地面に叩きつける。
地面から出現した無数の岩の柱は全て砕かれてしまうが、龍の光線は防いだ。
「ベノムショック!」
だが素早いエンニュートは立て続けに攻撃を仕掛けてくる。
体の毒腺が妖しく光り、口から毒液が吹き出され、ワルビアルに休む暇を与えない。
「くっ……シャドークロー!」
黒い影の爪を腕に纏わせ、ワルビアルは毒液を蹴散らし、さらにエンニュートを狙おうとするが、
「エンニュート、火炎放射!」
既にエンニュートの姿はそこにはない。
慌ててハルが辺りを見回すと、その上空。飛び上がったエンニュートの毒腺から火花が散り、その口から丁度、灼熱の業火が放出されるところだった。
「まずっ……ワルビアル!」
咄嗟にハルが叫ぶが、遅い。
紅蓮の炎がワルビアルを飲み込み、火達磨に変えてしまう。
ワルビアルが呻くが、炎はまるでエンニュートが放つ毒の霧のようにワルビアルにまとわりつき、なかなか抜け出せない。
「仕留めろ! 気合玉!」
上空のエンニュートが手を叩き、両手に気合の念弾を作り上げる。
そのまま重力に従って落下し、気合玉を掴んだ掌を直接ワルビアルへと叩きつける。
しかし。
「……ワルビアル! 噛み砕く!」
エンニュートが気合玉を叩き込む、まさにその直前。
力を振り絞ったワルビアルが大顎を開き、エンニュートの胴体へと噛み付いたのだ。
「なにっ!? エ、エンニュート!?」
ライタが慌てた声を上げたその時、既にエンニュートはワルビアルの強靭な大顎に捕らえられてしまっていた。
『おおっと! ワルビアル、起死回生の反撃! 素早いエンニュートの動きを止めました!』
体勢を崩したことにより、掌の気合玉も霧散してしまう。
「……危なかったよ。だけど助かった。ワルビアルは接近戦が得意なポケモン。確実に仕留めるために近づいたんだろうけど、おかげで、チャンスができたんだ」
これが最後のチャンス。それを逃すほど、ハルもワルビアルも弱くはない。
「ワルビアル! 叩きつけて、地震だ!」
首を振るってエンニュートを地面に叩きつけ、ワルビアルは渾身の力を込めて大地を踏みつける。
フィールド全体が激しく揺れ、同時に衝撃波が地を這い、地に伏したエンニュートを吹き飛ばした。
「エンニュート……っ!」
攻撃と素早さに優れる反面、エンニュートは耐久力は低い。さらに炎と毒タイプを併せ持つため、地面技には非常に弱い。
そんなエンニュートが、力自慢のワルビアルの地面技をまともに受ければどうなるか。結果は明白だった。
なす術もなくエンニュートは吹き飛ばされ、そのまま地に落ちて戦闘不能となった。
『決着が付いたーっ! ハル選手のワルビアル、起死回生の大逆転! ライタ選手のエンニュートの猛攻に打ち勝ち、ハル選手が二回戦へと駒を進めました!』
『どっちに転んでもおかしくない、見応えのある試合だった。休まず徹底的に攻撃を続けるライタ君の試合運びは上手かったが、その中で僅かなチャンスを見逃さなかったハル君の判断、見事だった。グレイト! 素晴らしいね』
会場が歓声に包まれるなか、ハルはワルビアルに駆け寄る。
「ワルビアル、よく頑張ったね! お疲れ様!」
ハルがワルビアルの好物、オボンの実を差し出すと、ワルビアルはニヤリと笑って一口で飲み込んだ。
「エンニュート、よくやった。また一緒に鍛え直しだな」
一方、ライタもエンニュートを戻し、ハルへと歩み寄る。
「最後の噛み砕く、それに地震。お見事だった。完敗だ」
「こちらこそ。どっちが勝ってもおかしくない、いいバトルだったよ」
ハルの言葉に、ライタはフッと笑う。
「だが、覚えておけよ。次に会う時には俺が勝つからな」
それだけ告げ、ライタは軽く手を振り、フィールドを去る。
その背中を見送ると、ハルもワルビアルをボールに戻し、フィールドを後にした。
- 第134話 大鋏 ( No.213 )
- 日時: 2017/09/01 12:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: lEyrJ7j9)
その後、一回戦は次々と進んでいき、ハルの知り合いたちは全員一回戦を突破した。
全員の試合をちゃんと見ていたが、特に初めて見るポケモンはいなかった。
そして二回戦、アリスが一番乗りで三回戦に駒を進める。
現在はハルの試合だが、それも既に終盤。
「オノンド、瓦割り!」
オノンドが跳躍し、対戦相手の白い甲殻に身を包んだドラゴンポケモン、コモルーに手刀を叩きつける。
強烈な打撃により、コモルーの体勢が崩れたところに、
「決めるよオノンド! ドラゴンクロー!」
青く輝く竜の力を右腕に纏わせ、オノンドが右手を思い切り振り抜き、コモルーを切り裂く。
「しまった……コモルー!」
白い甲殻に龍の爪痕を刻まれ、コモルーは戦闘不能となって崩れ落ちる。
「コモルー、戦闘不能! オノンドの勝ちです! よって勝者、ハル選手!」
審判のジャッジが、ハルの二回戦突破を確定させる。
「やった! オノンド、よくやったね!」
バトルを終えたオノンドに赤い木の実を渡し、実況の声や歓声の中、ハルはフィールドを後にする。
そして、次の試合。
この試合は、ハルにとって注目の試合となる。
なぜなら、
『さあ、続けて参りましょう! 続いての試合、まずはサヤナ選手が登場! 過去の大会では優勝こそないものの、常に上位に食い込んでくるという安定した実力で、一回戦を危なげなく突破してきました!』
戦う選手のうち、まず一人目はサヤナ。そして、
『対するはジゼ選手! 今大会が初参戦、そしてバッジ数も今大会最少でありながら、いい意味でそれに似つかぬ実力を見せつけ、一回戦を突破! さあ、果たして勝つのはどちらか!』
サヤナの対戦相手は、ジゼなのだ。ハルの友人同士が戦うとなれば、観戦しない理由はない。
「ジゼ君って、ハルの友達だったよね。かなり強いって聞いてるけど、勝つのは私だよ!」
「それはどうかな。俺の自慢のポケモンたちは、そう簡単には倒されねえ。悪いが先に進ませてもらうぜ」
一回戦、サヤナとジゼ共に、ビビヨン一体、リザードン一体で勝ち進んでいる。
口上も終わり、二人は同時にボールを取り出す。
「お願いね、ブロスター!」
「出て来い、メガヤンマ!」
まずサヤナのポケモンは、小さな青い海老のようなポケモン。だが右の鋏だけは、異様なほどに大きい。
『information
ブロスター ランチャーポケモン
巨大な右鋏が生活の生命線。大型
タンカーの船底を容易く貫くほどの
水の砲弾で獲物を一撃で仕留める。』
対するジゼのポケモンは、刺々しい印象を与える翠色の昆虫のようなポケモン。その姿は古代の蜻蛉を印象付ける。
『information
メガヤンマ 鬼蜻蛉ポケモン
弱いポケモンであれば羽ばたきの
衝撃波一撃で気絶させてしまう。
気絶した獲物は噛み千切って食べる。』
サヤナのブロスターは水タイプ、ジゼのメガヤンマは虫と飛行タイプ。タイプ相性だけで見れば、有利不利はない。
「それでは、バトル開始!」
審判の声が試合の開始を告げ、サヤナとジゼのバトルが始まる。
「行くぜ。メガヤンマ、虫のさざめき!」
キチキチと軋むような鳴き声を上げ、メガヤンマが翅を力強く振動させる。
図鑑の説明の通り、翅を振動させただけで衝撃波が発生し、ブロスターへと襲い掛かる。
「ブロスター、躱して!」
対するブロスターは巨大な鋏の後方のノズルから水を噴き出し、ミサイルのように空中へと飛び上がり、衝撃波を躱す。
「エアスラッシュ!」
「水の波動!」
メガヤンマが翅の一振りで空気の刃を放ち、ブロスターは右鋏を開いて砲弾のような水の弾を発射する。
空気の刃と水の砲弾が激突するが、水弾が刃を打ち砕き、メガヤンマを捉えた。
「っ、メガヤンマ、立て直せ! ギガドレインだ!」
強引に体勢を整えたメガヤンマの口元から、触手のような緑色の光線が撃ち出される。
「ブロスター、もう一度水の波動!」
ブロスターが右鋏を開き、再び水の砲弾を発射する。
草技のギガドレインとは相性が悪いはずだが、水弾は緑の光線にも打ち負けず、光線を相殺した。
「あのブロスター、小柄な割に火力が高いな……」
観客席のハルが呟くと、
「水の波動……ブロスターの特性ですわね」
後ろに座っているエストレが口を開く。
「特性?」
「ええ。ブロスターの特性はメガランチャー。波動の技の威力を上げるものよ」
話を聞く限りだとルカリオに欲しい気もするが、とにかくブロスターの高火力はメガランチャーという特性に由来するようだ。
そしてそれを考えると、
「そのブロスターは他にも波動の技を持っていると考えるのが定石。メガヤンマ、虫のさざめき!」
翅を激しく振動させ、メガヤンマが衝撃波を起こす。
「ブロスター、もう一度躱して!」
再びノズルから水を噴き出し、ブロスターは跳躍して衝撃波を躱すが、
「メガヤンマ、続けろ!」
メガヤンマの翅の振動が続く。そのうち四方八方、周囲全体へと見境なく衝撃波が放出されていく。
「それなら、ブロスター! 龍の波動!」
ブロスターの右鋏が青色に輝くが、波動が放たれるのは後ろのノズルから。
爆発的な速度でブロスターは遥か上空へと一気に上昇し、
「冷凍ビーム!」
砲口の如き鋏を開き、拡散する冷気の光線をメガヤンマに向けて放出する。
「っ、メガヤンマ、サイコキネシス!」
ギチギチと軋むような歯ぎしりと共に、メガヤンマは強い念力を発生させる。
念動力で冷気の光線を食い止めようとするが、次々と降り注ぐ光線を受け止めきれず、冷凍ビームが遂にメガヤンマの翅を貫く。
「今だよブロスター! アクアジェット!」
翅を凍らされ墜落するメガヤンマを狙い、ブロスターが鋏から水を噴き出す。
その水を全身に纏わせ、ノズルからも水を噴き出し、猛スピードで突撃する。
しかし、
「メガヤンマ、ギガドレイン!」
地面に落ちたメガヤンマの口元から、触手のようにしなる緑色の光線が飛び出す。
突っ込んでくるブロスターを緑色の光線がみるみるうちに絡め取り、縛り上げてしまう。
さらに突如緑色の光線が発光し、ブロスターの体力を徐々に吸い取っていく。
「エネルギードレイン……だったらブロスター、冷凍ビーム!」
わずかに開いた右鋏から、ブロスターは冷気の光線を放つ。
冷気がギガドレインを伝ってメガヤンマに命中し、触手光線の拘束がわずかに緩む。
「ブロスター、抜け出して! アクアジェット!」
その隙にブロスターは水を纏って勢いよく飛び出し、何とかギガドレインから逃れる。
「危なかった……効果抜群だし、体力も回復されちゃう。気をつけなきゃ……」
拘束時間が短かったので回復量は少ないが、それでもエネルギードレインによりメガヤンマの傷は少し癒えている。
「ここから切り返すよ! ブロスター、水の波動!」
「このまま攻めるぜ。メガヤンマ、虫のさざめき!」
体勢を立て直したブロスターが鋏を開いて水の砲弾を発射し、対するメガヤンマは空中を旋回しながら、翅を激しく振動させて衝撃波を放出する。
水弾と衝撃波が激突し、競り合った末に爆発を起こす。
「ブロスター、アクアジェット!」
爆煙が巻き起こる中、ブロスターは鋏から水を噴き出し、体に水を纏う。
そのままノズルからジェット噴射のように水を噴き出し、黒い爆炎の中へと飛び込んでいく。
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