二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 魔王と救世の絆
日時: 2018/04/30 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)

こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。

※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。

それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。

登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45

プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204

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http:// ( No.179 )
日時: 2017/05/29 23:05
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「こいつらだって精一杯今を生きてんだ。それを否定することなんて出来んさ」

メイゲツ 男 32歳
容姿:真っ黒なスーツを着た長身の男。目つきも悪く、左目は長い銀色の前髪で隠している。白い翼のようなネックレスを付けており、その真ん中にキーストーンが填められている。キーストーンはノワキタウンの少年、ジゼに譲ったため、今は持っていない。
性格:割り切った性格で高いカリスマ性を持つ。自らを「外道」と称し、自分たちの生活を脅かす者たちに対しては容赦なく叩きのめすが、カタギの人間には絶対に手を出さなかったり、仲間の事は常に気にかけていたりと意外と優しい一面もあり、認めた人間に対しては義理堅い性格でもある。
異名:「無法なる頭領(アウトローヘッド)」
備考:ノワキタウンのジムリーダー。ゴミ捨て場の街をホームにし、そこに住む人々のリーダーでもある。無法者だが、彼がいなくなるとノワキタウンの治安がさらに悪くなるためジムリーダーの職は今のところ剥奪されていない。
戦術:テクニカルな攻撃技や補助技を使いこなし、トリッキーだが攻撃重視の戦法を取る。タイプ相性や戦い方で不利を取るポケモンをわざと出し、その上で相手ポケモンを倒して流れをこちらに引き寄せる荒技が得意戦術。
ジムバッジ:デーモンバッジ

手持ちポケモン

ヤミラミ(♂)
特性:悪戯心
技:シャドーパンチ、パワージェム、鬼火、ダークロアー

ドラピオン(♂)
特性:カブトアーマー
技:ミサイル針、炎の牙、ポイズンクロー、辻斬り

ノクタス(♂)
特性:貯水
技:ニードルガード、ハイドロポンプ、悪の波動、ニードルアーム

アブソル(♀)
特性:強運←→マジックミラー
技:スプラッシュ、ギガスパーク、怒りの炎、イビルスラッシュ
備考:メガストーン所持

第104話 始動 ( No.180 )
日時: 2017/05/31 07:55
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

ゴエティア七魔卿の一人、奇抜なメイクと単眼のバンダナという恐怖を煽るような風貌の男、ロノウェは、相変わらず背中にエレキギターを担ぎ、何をするわけでもなくイザヨイシティの街中を歩き回っていた。
アスタロトから、バトルは強いが頭が良くないと言われ、頭使わなくても出来るからと街中の見張りをお願いされているのだが、
「……暇だ」
ぼそりとロノウェは呟く。
そもそも、マデル地方で最も大きな街を容易く制圧した事実がある時点で、警察も簡単には入ってこれない。何せ、向こうからすればこちらは正体不明の謎の組織。情報も無しに入ってくるようなバカな真似はしまい。
つまり、見張りを頼まれたはいいが、やることなどほとんどないのだ。
白い大きな建物の前でロノウェは大きく欠伸をし、仕事は下っ端に任せて昼寝でもしようかと考えた、その時。

ドォォン!!! と。
イザヨイシティの一角に、爆音が響き渡る。

「!?」
今まさに眠ろうとしていたロノウェの眠気が、吹き飛んだ。
慌てて音がした方を向けば、何やら黒煙が上がっている。
「何だ何だ……?」
明らかに異常事態。爆発となれば、何者かがイザヨイシティへ侵入、戦闘が始まっている可能性が高い。
急いでロノウェが駆けつけると、既に下っ端たちも何人かそこに来ていた。
そして。
爆心地には、銀髪で左目を隠した黒いスーツ風の男を中心に、何人もの人間が立っていた。
それを見たロノウェの口元が吊り上がる。
「お前ら、侵入者だな?」
下っ端を押しのけ、ロノウェが一歩進み出る。
「お前は」
「俺様は破滅と破壊の申し子、ゴエティアの魔神卿、ロノウェ。貴様らの名に興味はねえ。哀れな侵入者共に、災厄の呼び声を聞かせてやるぜ」
背中に担いだエレキギターを掴み、ロノウェは引き裂くような笑みを浮かべるが、
「なるほど。貴様がロノウェか」
目の前の黒いスーツの男は、顔色一つ変えない。
「ネル、手を貸してくれ。俺とお前の二人で、こいつを片付ける。残りのメンバーは周りの雑魚共を始末しろ」
「了解です、メイゲツさん」
メイゲツと呼ばれた黒いスーツ風の男は的確に指示を出し、周りのメンバーも指示通りに動き出す。
ロノウェの前には、メイゲツと呼ばれた男と、ネルと呼ばれた青いツインテールの少女が立つ。
「ほう、二対一か。面白え、面白えぜ! せいぜい俺様を楽しませてくれよなぁ!」
ギュイイイイイン! とエレキギターを掻き鳴らし、ロノウェは雄叫びを上げ、モンスターボールを取り出す。
「Go shout! バクオング!」
ボールの中からは、騒音ポケモンのバクオングが姿を現わす。
「ネル、気をつけろよ。無理に攻めようとするな、作戦通りにだ」
「ええ、分かっています」
メイゲツとネルも、同時にボールを取り出す。



そして。
ロノウェが離れた隙を狙い、ヴァレンとハル、ジゼは白い大きな建物——アルスエンタープライズ本社の中へと侵入する。
一階のロビーには特に人影は見当たらない。黒装束の人間の姿も、社員の姿もない。
「ハル、ジゼ。隠れていろ」
ヴァレンは受付の奥にハルとジゼを隠れさせ、
「出て来い、ケンホロウ」
ボールを取り出し、相棒のケンホロウを繰り出す。
そしてヴァレンは辺りを見回し、自動販売機を見据える。
「ケンホロウ、そこの自動販売機へ、フェザーガンを」
ヴァレンは迷わずそう指示し、ケンホロウは翼を羽ばたかせて鋭い羽を飛ばし、自動販売機へ突き刺す。
異常を起こした自動販売機はバチバチと火花のような音を散らす。
その直後、爆発を起こした。
「っ……!」
受付の奥でハルとジゼが伏せるが、ヴァレンは顔色ひとつ変えない。
そして、異変に気付いたゴエティアの下っ端たちが、階段やエレベーターから続々と降りてきた。
「侵入者だな!」
「何者だ、怪しい奴め!」
黒装束の集団がヴァレンを取り囲むも、ヴァレンはやはり顔色ひとつ変えない。
下っ端たち全員がボールを取り出し、ヴァレンに注意を向けた、その隙に。
「ハル、今のうちだ」
「うん。行こう」
ハルとジゼは下っ端たちに気づかれることなく、上階へと進んで行く。



そして。
「……見逃さないよ、ハル君。下っ端の目は誤魔化せても、ぼくの目は誤魔化せない」
最上階には、監視カメラに繋がるモニターを眺める男が一人。
王冠を被った、腰まで届く長い黒髪の少年、パイモンは行儀悪くテーブルの上に座り込み、不敵な笑みを浮かべる。
「しっかし、ハル君かぁ。それにあのもう一人の子、この間ヴィ姐とベリちゃんが言ってた子だよね、救世主の素質があるって。うーん、ここで始末するわけにはいかないかぁ……ま、しょうがないね」
独り言を呟き、パイモンは懐から小型の通信機を取り出す。
「おーい、アスたん?」
それに向けて、パイモンが言葉を投げると、
『何かしら、パイモン』
通信機の向こうから、女の声が聞こえる。
「おっ、通じた通じた。アスたん、今何やってんの?」
『この建物内を物色してる。今いる部屋すっごいわよ、生態保護・研究室とかいう部屋でね。レアなポケモンがたっくさん。根こそぎ貰っちゃっていいかしらん?』
「えっ、ほんとに? そりゃあいい、纏めてかっぱらっちゃおうよ……っと、それはいいんだけど」
向こうの女の話に乗りかかったパイモンだが、話の軌道を元に戻す。
「二人。この施設に、侵入者がいるんだ。どうせ負ける下っ端をわざわざ向かわせる気もないし、こっちの仕事もなかなか進まないから、足止めをお願いしていいかなぁ? 一人護衛も付けるからさ」
『足止め……ってことは、救世主候補ね。分かったわ、適当に時間を稼いどく。上手くいけば追い返してやるけど、期待はしないでね。あんまりバトルには自信がないから』
「分かってるよ。アスたんは話が通じるのが早くて助かるねぇ。それじゃ、頼んだよ」
『はいはーい。その代わり、そっちもさっさと終わらせてよ? あと私が今いるこの部屋9階だから、護衛はそこに送ってね』
「任せといてよ。そんじゃ」
要件は告げ終えたのか、パイモンは通話を切って振り返る。
この部屋にいる人間は、パイモンだけではなかった。
不気味な笑みを浮かべて、パイモンは机の向かい側にいる人間に声を掛ける。
「それじゃ社長さん、話の続きをしようか。こっちの要件は一つ。この会社の——」

第105話 アルス ( No.181 )
日時: 2017/06/02 08:36
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「エーフィ、マジカルシャイン!」
ハルのエーフィが額の珠を白く輝かせ、純白の光を放出する。
光が辺りを包み込み、周りの下っ端たちを纏めて吹き飛ばした。
「よし。エーフィ、このまま一緒に行くよ」
ハルはエーフィをボールに戻さず、建物の中を進んで行く。
一階でヴァレンが暴れてくれているおかげか、黒装束の数はそこまで多くない。
「それにしても」
通路を進みながら、ジゼが口を開く。
「この街を占拠して、奴ら、何が目的なんだ……?」
「うーん、魔神卿がここに二人もいるってことは、アルスエンタープライズの何かを狙ってる可能性が高いと思うけど……」
ハルも何度かゴエティアと戦ってきたが、ゴエティアがどんな組織なのか、詳しいことは全く分かっていない。
分かっているのは、『王』と呼ばれる人物がゴエティアを仕切っていること。そして『王』は救世主と呼ばれる人間を探しており、パイモンはハルのことを救世主の素質があると認識している、ということ。そのくらいだ。
「狙っているとしたら、マデル地方トップ企業のアルスの科学技術なのかなぁ」
「社長を脅して、アルスをゴエティアの傘下に置く、なんてこともあるかもな」
ともあれ、考えていても仕方がない。
残っている少数の下っ端を蹴散らしつつ、ハルとジゼはとにかく上階を目指す。
その途中、
「うわっ!?」
曲がり角を曲がったところで、ハルは白衣を着た研究員の男性とぶつかりそうになった。
「わっびっくりした……君達は? 奴らの仲間じゃないよね……」
「はい。ハルといいます」
「ジゼだ」
二人がゴエティアのメンバーではなくてホッとして力が抜けたのか、研究員は床へと座り込んでしまう。
「よかった……奥の部屋の方に社員みんなで逃げ込んでいたんだが、物音がしなくなったので、僕が様子を見にね……。しかし、どうして君達みたいな子供だけで? 怖くは、ないのかい」
「あいつらには俺たちのホームを荒らされ、リーダーが大事にしてた物を奪われた。腹綿煮えくり返ってんだよ。やられたら、やり返す」
男性の言葉に答えたのは、ジゼだった。
「ちゃんと策はあります。とにかく、安全なところにいてください」
ジゼの言葉にハルは付け足し、男性を避難させる。
「……そうだ。君達、これを使ってくれ」
奥に避難する前に、男性はハルとジゼにカードを渡す。
「これはアルスのカードキーだ。この先の部屋にはこれがないと入れないものもあるし、社長室のある最上階へもこのカードがないと進めないんだ。これくらいしか君達のお手伝いを出来なくて、申し訳ない」
「いいえ、助かります。それじゃもうしばらく、じっとしててください」
「さあハル、行くぞ。さっさとこの会社、この街を解放する」
「うん。それじゃ、ありがとうございます」
カードキーを手に入れ、ハルとジゼはさらに上階へと進んで行く。



アルスエンタープライズでは、日用品やトレーナーグッズの開発の他に、もう一つ力を入れて行っている研究がある。
希少なポケモンの保護、及び生態の研究。傷ついたポケモンや個体数の少ないポケモン、密猟者やポケモンハンターに狙われて数が減少しているポケモンを保護しつつ、その生態を調べ、そのポケモンにとってより住みやすい環境を、元々の自然を侵さない範囲で自然界に作り、その上で保護したポケモンを野生に戻すという、先進的な研究を行っている。
密猟はともかく、数が少ないとはいえ人の手が掛かっていない野生のポケモンに積極的に人の匂いをつけることに反対の声もあるが、今のところこの研究は良好な成果を上げ続けている。
その研究を行っているのは、アルスエンタープライズ本社9階。
この階には生態保護・研究室以外の部屋はなく、水辺、草原、乾燥地など、様々な環境の部屋に分けられて研究が行われている。
それらの部屋はガラス張りにされ、全ての部屋をコントロール室となる一つの部屋から観察、及び管理することができるようになっている。
そして今。
「……へえ。ちゃんとモンスターボールで管理してるのね。偉いわぁ」
この研究室、及び保護されているポケモンたちは、ゴエティアの手に掛かろうとしていた。
紫の長い髪を後ろで結び、紫のバラの模様が描かれた緑色のワンピースを着ていた女。その女たった一人に、研究員たちは叩きのめされ、ガラス張りの仕切りは全て叩き割られていた。
「お、お前……目的は、何だ……」
「んー? それは私の目的か、組織の目的か、どっちかな? 私のことなら決まってんじゃない。レアなポケモンが一杯いるから、このアスタロト様が、こいつらぜーんぶいただきに来たのよん?」
アスタロトと名乗ったその女は舌を出して嘲るように笑うと、ボールに入ったポケモンを手に取っていく。
「わぁ! こっちは化石から復活するポケモン、オムナイト! こっちは……ノコッチじゃない、マデルにも野生の個体がいたんだ? あと、それからそれから……」
まるで一度にたくさんのおもちゃを与えられた子供のように、アスタロトははしゃぐ。
「売り捌いて儲けてもいいし、王への供物に変えてもいいし……使い道に迷うわぁ、うふふ。まぁとりあえず、みーんな持ってっちゃうね。下っ端ー、これ持って、先に本部に戻っててよ」
ボールに仕舞ったポケモンたちを纏めて袋に入れ、アスタロトはその袋を下っ端に渡す。下っ端はその袋を受け取ると、そそくさとその部屋を出て行った。
「ああ……大事な、ポケモンたちが……」
「あんたたちが大事なのはポケモンじゃなくて研究成果でしょ。さて、あとは、この子か」
地面に倒れる研究員たちを一蹴し、アスタロトは唯一下っ端に運ばせなかった最後のボールを手に取る。
「このポケモン、綺麗だわぁ。この子だけは他の奴らに渡すのももったいないわね……よし、決めた!」
ボールを掲げ、アスタロトは目を輝かせる。
「この子は、私のポケモンにしちゃおっと! 他のポケモンみんな組織に献上するわけだし、一匹くらい貰ったっていいわよね——」
だが、その時。

「そのモンスターボールを、離せ!」

この場にいる誰のものでもない少年の言葉と共に、黒い影の弾が飛来し、アスタロトが持っていたボールを弾き飛ばした。
「うぐっ!? っ、来たわね!」
手首に衝撃が走ったのか、片手を抑え、アスタロトはシャドーボールが飛んで来た方向を振り向く。
「ゴエティア、そこまでだよ。今すぐここから立ち去るんだ」
エーフィを従えたハルが立ち、その後ろにジゼが立つ。
「ぐぬぬぬっ……いいとこだったのにぃ。仕方ないわ、あんたたちに制裁を下すのが先みたいね。パラレル! おいで!」
アスタロトの表情に、苛立ちが浮かんでいく。
そしてアスタロトの叫び声に応じ、その後ろからもう一人の人影が現れた。真っ黒な丈の長いコートを身に纏った、長めの黒髪の少年。
パイモンの雇った用心棒、パラレルだ。
「パラレル、あんたどっちと戦いたいか、好きな方選んで。私がもう一人を相手するから」
アスタロトの言葉を受けてもパラレルは一切返答はせず、その瞳にハルを見据える。
「久しぶりだな、ハル。この場でもう一度、手合わせ願おうか」
やはりパラレルの狙いはハルとのバトルのようだ。
「っ……ジゼ。サポートしてもらう予定だったけど、そうもいかないみたい。魔神卿と戦ってもらってもいいかな」
「へっ、誰の心配してるんだよ。俺がこの魔神卿をぶっ倒す。任せとけよ」
対戦カードは決まった。
「ありがとう。それじゃ勝負だ、パラレル!」
パラレルと向かい合い、ハルはモンスターボールを手に取る。
「感じ悪いわねー、パイモンの部下……まぁいいか。でかい口聞けるのも今のうちよ、お子ちゃま」
そしてアスタロトもボールを手に取り、ジゼと対峙する。

第106話 砂嵐 ( No.182 )
日時: 2017/06/06 09:51
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「前回は一体だけだったが、今回はポケモン二体ずつの勝負だ。いいな」
ハルの前に立ちはだかるのは、パイモンが雇ったゴエティアの用心棒、パラレル。
パラレルがモンスターボールを取り出し、ポケモンを繰り出す。
「我が力を示せ、ネンドール!」
パラレルのポケモンは、土で作った宙に浮く人形とでも言うべきか、とにかく奇妙な姿のポケモン。さらに顔全体を囲むように八つもの目がある。

『information
 ネンドール 土偶ポケモン
 二万年前に栄えた古代文明によって
 作られた痕跡があるが詳細は不明。
 両手からはビームを発射できる。』

図鑑によれば、地面とエスパータイプを併せ持つポケモンのようだ。
対して、ハルの横に立つエーフィが、ネンドールの相手をすべく自ら進み出る。
「分かった。それじゃエーフィ、君の出番だ」
「始めるぞ。ネンドール、砂嵐!」
バトルが始まると同時に、ネンドールは高速回転と共に体から砂を撒き散らし、部屋一帯に砂嵐を吹かせる。
「くっ、砂嵐か……いきなり厄介だな……」
カタカゲジムで経験した通り、砂嵐下では岩、地面、鋼以外のタイプのポケモンは少しずつ体力を削られてしまう。
「天候的には不利だけど、エーフィ、ここは頼んだよ。まずはスピードスター!」
ハルの言葉にエーフィは頷くと、二股の尻尾を振り、無数の星型弾を飛ばす。
「ネンドール、サイコキネシス!」
対してネンドールの八つの目が妖しく光り、強い念力を発生させる。
飛んで来る星型弾に念力を仕掛け、弾同士をぶつけて破壊すると、
「冷凍ビーム!」
土塊のような両手を胴体から切り離して宙に浮かせ、その両手から凍える冷気の光線を発射する。
「エーフィ、躱してシャドーボール!」
冷凍ビームを掻い潜り、エーフィは額の珠から黒い影の弾を放出する。
ネンドールの頭部に影の弾が直撃し、空中で仰け反るが、
「大地の力!」
両手が動き、地面に突き刺さる。
その直後、エーフィの足元から土砂が噴き出し、エーフィを空中へと打ち上げる。
「ネンドール、サイコキネシス! 砂嵐を操れ」
体勢を立て直したネンドールが両手を引き寄せ、八つの目を光らせて念力を発生させる。
砂と風に念力を仕掛けてその動きを操作し、砂の竜巻を作り上げ、エーフィへと向かわせる。
「エーフィ、マジカルシャイン!」
対するエーフィの額の珠が白く輝き、その周囲へと純白の光が放出される。
エーフィを守るように周囲に放たれた光が、砂の竜巻を防ぎ切った。
「ならば直接攻撃。もう一度サイコキネシス!」
「エーフィ、こっちはサイコショット!」
再びネンドールの八つの目が妖しく光ると同時に、エーフィの額の珠に念力が溜め込まれていく。
ネンドールが強い念力の波を撃ち出すと同時に、エーフィが念力の弾を放出する。
二つの念力はぶつかり合い、競り合った末に念力の弾が打ち勝つも、弱まった念弾は砂嵐に妨害されて掻き消されてしまう。
「ネンドール、大地の力!」
「エーフィ、躱してスピードスター!」
ネンドールが両手の先端を地面に差し込み、エーフィの足元から土砂を噴出させる。
だがエーフィは跳躍してそれを躱すと、二股の尻尾を振り抜き、無数の星型弾を飛ばす。
「冷凍ビーム!」
星型弾が命中するが、ネンドールは僅かに体を揺らす程度で留まり、両手の先からすかさず冷気の光線を発射する。
空中のエーフィにビームが直撃し、エーフィは床へと撃墜される。
「エーフィ! 大丈夫?」
叩き落とされたエーフィはすぐさま立ち上がり、体勢を整える。スピードスターの反応やエーフィの被ダメージから考えるに、どうやらこのネンドールは火力よりも耐久力に優れたポケモンのようだ。
「攻撃を続けろ。ネンドール、サイコキネシス!」
「ならエーフィ、こっちはシャドーボール!」
ネンドールが強い念力を発生させ、念の波へと変えて周囲へ放出する。
対するエーフィは念力の波を躱しつつ額に黒い影を溜め込み、黒い影の弾を発射する。
「冷凍ビーム!」
対するネンドールの両手の先から、冷気の光線が撃ち出される。
影の弾を氷漬けにして破壊し、さらに周囲の床を薙ぎ払う。
冷気の光線は床を凍らせ、着地したエーフィが滑って体勢を崩す。
「大地の力!」
そしてその隙を逃さず、ネンドールが床から土砂を噴き出させ、氷を砕き、エーフィを吹き飛ばした。
「捉えろ。冷凍ビーム!」
「させない! マジカルシャイン!」
宙に打ち上げられたエーフィを狙い、ネンドールが両手の先から冷気の光線を放つ。
対して、エーフィは額の珠から純白の光を周囲に放出し、光線を防いだ。
「あの中心だ。光が消えたところを狙え。サイコキネシス!」
純白の光が収まったところを狙って、ネンドールは念力を発生させ、念力の波を放つ。
しかし、
「今だ! エーフィ、シャドーボール!」
既にエーフィはそこにはおらず、ネンドールの近くまで接近しており、額の珠から黒い影の弾を放つ。
ネンドールの腹部に直撃した影の弾が炸裂し、その体勢を大きく崩す。
「エーフィ、サイコショット!」
「っ、ネンドール、立て直せ。サイコキネシス!」
続けてエーフィが念力を一点に集めた弾を発射するが、ネンドールは強い念力を操り、念力の弾を何とか食い止める。
「続けてスピードスター!」
「もう一度サイコキネシス!」
エーフィが尻尾を振り抜き、無数の星型弾を放つが、再びネンドールは強い念力を操作して星型弾の動きを操り、弾同士をぶつけて破壊してしまう。
「だったら、シャドーボール!」
エーフィの額の珠が黒く染まり、黒い影の弾が放たれる。
「ネンドール、大地の力!」
対するネンドールの両手が、今度はタイミングをずらして地面に刺さる。
まずネンドールの目の前に土砂が噴き出し、影の弾を防ぐ。
続けて第二波がエーフィの足元から噴射し、エーフィを宙へ打ち上げた。
「攻撃を続けろ。サイコキネシス!」
さらにネンドールは八つの目を怪しく光らせ、宙を舞うエーフィに念力を掛ける。
「っ、エーフィ! 抜け出して!」
同じエスパータイプゆえ、念力は効き目が薄い。ネンドールがエーフィを床に叩きつけようとするが、その前にエーフィは何とか自らの動きを封じる念力を打ち破った。
「……風が弱まって来たか」
パラレルがふと呟く。
ハルも気づいた。時間の経過により砂嵐の効果が切れかかっているのか、部屋一帯に吹き荒れる砂嵐が勢いを失くして来ている。
「ネンドール、もう一度砂嵐だ」
ネンドールは高速回転と共に体から砂を撒き散らし、フィールドに再び強い砂嵐を吹かせる。
しかし。
「エーフィ、シャドーボール!」
砂嵐を使ったその瞬間は、ネンドールは隙だらけとなる。
一気にネンドールとの距離を詰め、至近距離から黒い影の弾を放出する。
ネンドールの顔面に直撃し、その体勢が崩れる。
「一気に攻めるよ! エーフィ、マジカルシャイン!」
エーフィの額の珠が白く輝き、エーフィを中心としてその周囲に純白の光が放出される。
「っ、ネンドール——」
パラレルが指示を出そうとするが、間に合わない。
回避する余裕もなく、ネンドールは白い光の中に飲み込まれた。
徐々に弱まっていく光の中で、ネンドールはゆっくりと床に墜落し、戦闘不能となる。
「……ネンドール、戻れ」
無愛想なまま、パラレルはネンドールをボールへと戻す。
とりあえずは、ハルが先手を取る。しかし、まだまだ油断はできない。
「では、次はこのポケモンだ」
砂嵐の中、黒いコートをたなびかせ、パラレルは二番手のボールを手に取る。

「我が力を示せ、ガブリアス!」

第107話 紫水 ( No.183 )
日時: 2017/06/07 08:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「こっちも始めるわよ。害せ、ベトベトン!」
アスタロトが繰り出すのは、全身が毒々しい紫色のヘドロで出来たポケモン。

『information
 ベトベトン ヘドロポケモン
 湿地帯に生息するが時には餌となる
 ゴミを求めて街に現れることがある。
 体の成分はどんな草木も枯らす猛毒。』

考えるまでもなく、見た目通りに毒タイプのポケモン。
「それじゃ……出て来い、レパルダス!」
対するジゼの一番手は、紫の美しい毛並みを持つスマートな猫のようなポケモン。悪タイプのレパルダスだ。
「行くわよ! ベトベトン……っ?」
アスタロトが指示を出そうとしたところで、唐突に部屋全体に砂嵐が吹き始める。
戦っているハルの方にジゼが目をやると、パラレルという少年のものと思われる泥人形のようなポケモンが、砂嵐を起こしていた。
「っ、パラレルのやつ、余計なことしてくれる……まぁいいわ。ベトベトン、気合玉!」
ベトベトンが口を大きく開き、体内の力を口内の一点へ溜め込む。
「レパルダス、辻斬り!」
しかしその気合の念弾を放出するより早く、レパルダスはベトベトンとの距離を詰め、鋭い爪でベトベトンを斬り払う。
「随分と速いのね……ベトベトン、火炎放射!」
「今まで厳しく鍛えられて来たからな! レパルダス、躱してシャドーボール!」
ベトベトンが大きく息を吸い込み、灼熱の炎を噴き出すが、レパルダスは軽やかに炎を躱してみせると、黒い影の弾をベトベトンの頭部へ撃ち込む。
「辻斬りだ!」
影の弾が直撃し動きを止めるベトベトンへ、さらにレパルダスは目にも留まらぬ斬撃を浴びせる。
「引き剥がしなさいベトベトン! ヘドロウェーブ!」
ベトベトンの体の下から周囲へ猛毒の液体が広がる。
だが一定の範囲まで広がったところで、突如ベトベトンを囲むように紫の水柱が噴き出す。
「っ……レパルダス!」
最初の波を跳躍して躱していたレパルダスだが、それゆえに水柱を躱すことができずに吹き飛ばされてしまう。
「燃やしなさい! ベトベトン、火炎放射!」
大きく息を吸い、吹き飛ぶレパルダスへ向けて、ベトベトンは灼熱の業火を噴き出す。
「チッ……レパルダス、影分身!」
対して、起き上がったレパルダスが周囲に無数の分身を作り出す。
ベトベトンの吐いた炎はレパルダスの分身の一つを打ち消すだけに終わり、直後、ベトベトンの周囲を無数のレパルダスが囲む。
「ぜーんぶ打ち消しちゃいなさい! ベトベトン、ヘドロウェーブ!」
ベトベトンの体から紫水が漏れ出し、その周囲一帯に紫の水柱が噴き出す。
レパルダスが作った分身たちは、全て打ち消されてしまう。
しかし、
「今だぜレパルダス! アイアンテール!」
紫水が消えたその瞬間、本体のレパルダスがベトベトンへと飛び掛かり、長く伸びた尻尾を鋼の如く硬化させ、ベトベトンの脳天に尻尾を叩きつける。
「気合玉!」
「させねえぜ。燕返し!」
大きく口を開いたベトベトンが、口内に身体中の気を溜め込む。
だがやはりそれを放つより早くレパルダスの鋭い爪に切り裂かれ、攻撃を中断されてしまう。
さらにレパルダスは後ろに跳躍し、反撃を避けるためにすぐさま距離を取る。
しかし。

「ベトベトン、岩石封じ!」

レパルダスが着地するその寸前、ベトベトンがヘドロの腕で地面を叩く。
地面に足を付けたその瞬間、レパルダスの足元から岩が飛び出し、その動きを封じてしまう。
「なにっ……!?」
「やっちゃえ! ベトベトン、気合玉!」
岩で動きを封じられたその隙。それを見逃すはずもなく、ベトベトンの口から渾身の念弾が放出される。
スピードが持ち味のレパルダスだが、攻撃力は飛び抜けて高いわけではない。自身を拘束する岩を打ち破ることができず、念弾が岩ごと破壊し、レパルダスを捉え、その身を吹き飛ばした。
格闘技の気合玉は悪タイプのレパルダスに効果抜群。耐久力も低いレパルダスには、かなりのダメージだろう。
「攻撃攻撃ぃ! ベトベトン、火炎放射!」
さらにベトベトンは口から灼熱の業火を発射して追撃を仕掛ける。
「っ、レパルダス、躱してシャドーボール!」
立ち上がったレパルダスは身軽な動きで炎を躱すと、黒い影の弾を放ち反撃する。
「もう隠す必要もないわね。ベトベトン、岩石封じ!」
右手を床へと叩きつけ、ベトベトンは自身の目の前に岩を出現させ、シャドーボールを防ぐと、
「ヘドロウェーブ!」
体から紫水を流し、周囲に紫の水柱を噴射する。
「躱せレパルダス! 辻斬りだ!」
素早く飛び退いて水柱を躱し、さらにレパルダスは地を蹴って飛び出すと、鋭い爪を構えてベトベトンに斬りかかる。
「ちょこまかと小賢しい……! ベトベトン、岩石封じ!」
切り裂かれたベトベトンは体勢をすぐに立て直すと、駄々を起こしたように連続で床を殴る。
ベトベトンの拳の振動に呼応し、レパルダスの足元から次々と岩が飛び出し、その動きを止めようとする。
レパルダスも砂嵐を気にせず素早く周囲を駆け回り、床から出現する岩を躱し続ける。
「アイアンテール!」
ベトベトンの背後に回り、レパルダスは上空から尻尾を硬化させ、ベトベトンの後頭部へと尻尾を振り下ろす。
だが、
「後ろ、斜め上! ベトベトン、捕まえなさい!」
ベトベトンのヘドロの体から大きな手が伸び、レパルダスの尻尾を掴む。
「っ!」
「一丁上がりっと! 気合玉!」
尻尾を掴んで宙吊りにしているレパルダスを放り投げ、さらにベトベトンは渾身の気合を込めた念弾を吐き出す。
天井に叩きつけられたレパルダスは間髪入れず、気合玉の追撃を受ける。
念弾を撃ち込まれて床に落ち、レパルダスは戦闘不能となってしまった。
「くそっ……レパルダス、よくやった。休んでろ」
ジゼはレパルダスの頭を撫で、ボールへと戻す。
「あはは! 大したことないわね! 腕を磨いて出直してきたら? それとも怖気付いて、出直すこともできなくなっちゃうかにゃーん?」
猫撫で声でアスタロトがせせら笑う。
対して、
「さあ、準備は整った。勝負はここからだぜ」
アスタロトのことなど見えていないかのように、ジゼは次のボールの中のポケモンに語りかける。
一体目を先取されたとは思えない程に自信に満ちた笑みを浮かべ、手にしたモンスターボールを突き出す。

「紅蓮の炎で勝利を導け! リザードン!」

灼熱の炎と共に咆哮が轟き、炎を司る龍がボールから現れる。
「ふうん、二番手はリザードンか。岩石封じが上手く刺さるわね。ベトベトン、まずは火炎放射!」
不敵に笑うアスタロトの指示に応じ、ベトベトンは大きく口を開き、炎を吐き出す。
対して、
「町を荒らしたクソ共に、報いを受けさせてやれ! リザードン、火炎放射!」
リザードンが大きく息を吸い込み、咆哮と共に紅蓮の業火を噴き出す。
両者の放った炎がぶつかり合うが、競り合うこともなくリザードンの炎がベトベトンの炎を貫き、ヘドロの身を焼き焦がす。
「っ!? ベトベトン!」
「討ち取れ! ドラゴンクロー!」
灼熱の炎を浴びてよろめくベトベトンへ、さらにリザードンは腕に凄まじい龍の力を纏わせ、ベトベトンを叩き斬る。
ベトベトンは吹き飛ばされ、地面に落ちて戦闘不能となってしまう。
「……あらぁ? やられちゃったじゃん。ベトベトン、休んでなさい」
特に余裕を崩すこともなくアスタロトはベトベトンをボールへ戻すと、
「それじゃ、次はこの子かしら」
舌舐めずりし、次のボールを手に取る。


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