二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 魔王と救世の絆
日時: 2018/04/30 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)

こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。

※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。

それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。

登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45

プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204

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http:// ( No.54 )
日時: 2016/11/05 17:24
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

>>霧風赤司さん
オリ技ありがとうございます。
コイル系統の専用技が特に好きですね。
コイルたち自体出しにくいポケモンではないので、登場した時に是非使用させていただきます。
スナイプリーフはマジカルリーフと少し差別化が難しいですが、使うポケモンで書き分けられたら是非使わせていただきます。

第16話 Dantalion ( No.55 )
日時: 2016/11/05 23:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 次なる町に向けて進むハルに、事件発生!

ハルはサヤナと別れた後、計画していた通りヒザカリタウンに向けて、カザカリ山道に足を踏み入れていた。
カザカリ山道は、その名前の通りにカザハナシティとヒザカリタウンを繋ぐ道だ
山道であることや、ここまでの道路と比べると道がしっかり舗装されていないこともあって、なかなか歩きづらい。
また近くには比較的標高の高い山があるため、たまに山に生息するポケモンが食料を求めてこの山道や街まで下りてくることもあるという。
「結構きつい道だな……中腹には休憩所があるみたいだから、とりあえずそこまで進んで一旦休もうか」
ターミナルで地図を表示しながら、ハルは山道を進んでいく。
そんな時だった。
「……?」
道を少し外れた茂みの中から、一匹のポケモンが飛び出してきた。
体つきは猫のようで、長い耳が特徴。首回りをふさふさの体毛が覆っている、小柄なポケモンだ。

『information
 イーブイ 進化ポケモン
 非常に不安定な遺伝子を持っている。
 住んでいる環境に合わせて進化する
 ことで体の作りを変えて環境に適応する。』

図鑑によるとノーマルタイプのポケモンらしい。
だが、今はそんなことはどうでもよかった。なぜなら、ハルのような素人目でも分かるほどにイーブイは弱っていたからだ。
「ちょっ……ど、どうしたの? 大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、イーブイを抱きかかえる。体に深い傷を負っているのが分かった。
「ここからだと……カザハナシティに戻った方が近いかな」
恐らく野生のポケモンだろうが、ハルとしては無視できない。急いでポケモンセンターに届ける必要がある。
しかし。
「おいおい、ちょっと待てよ」
「そのイーブイは私たちが狙ってるの。邪魔しないでもらえるかしら」
イーブイを追うかのように、男女の二人組が現れた。
「お前たちは……!」
つい最近見たような、黒装束に身を包んだその姿。間違いない、ゴエティアの下っ端だ。
「知っているなら話が早い。そのイーブイは俺たちが見つけたんだ。返せよ」
「そうよ。私たちは野生ポケモンを捕まえて戦力にしようとしているだけ。何も悪いことなんてしていないでしょう?」
下っ端たちの言葉を聞いた後、ハルはもう一度イーブイの傷を見る。
「……これから仲間に入れようと思っているポケモンなら、なんでこんなに酷い傷を負わせたんだ!」
「うるっせえな。どうせ捕まえるポケモンなんだから何しようと勝手だろ! 面倒だな、力尽くで取り返すぜ! 行け、ヤブクロン!」
「出て来な、キノココ!」
下っ端二人がポケモンを繰り出す。ゴミ袋のようなポケモンと、キノコの傘のようなポケモンだ。

『information
 ヤブクロン ゴミ袋ポケモン
 不衛生な場所を好んで生息する。
 餌となるゴミを求めて路地裏を彷徨い
 ゴミのポイ捨てをする人を付け回す。』

『information
 キノココ きのこポケモン
 夜に活動するため昼間は落ち葉の下で
 じっとしている。腐葉土が好物で
 雨が降った後にも活発に動き出す。』

「毒タイプに草タイプ……リオル、サイコパンチ! ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
ハルが叫ぶと、ベルトに付けたボールからリオルとヒノヤコマが飛び出す。
リオルは拳に念力を纏わせて、ヒノヤコマは全身を炎で包んで突撃し、ヤブクロンを殴り飛ばし、キノココを突き飛ばした。
予想外に耐久力が低く、ヤブクロンとキノココはその一撃だけで倒されてしまった。
「っ……嘘だろ!」
「私のポケモンが一瞬で……!」
焦る下っ端たち。下っ端から注意を逸らさず、ハルは木の実を取り出す。
「イーブイ、とりあえずこれをあげるから、もうちょっと頑張って……!」
体力回復効果のあるオレンの実を食べさせ、最低限の体力は回復させる。
だが、その時。

「お待ちなさい」

道を外れた獣道の奥から、別の人物が姿を現した。
「……ダン様!」
慌てて下っ端二人が背筋を伸ばして敬礼した。ハルもつられてそちらに目を向ける。
自然に果てしなく溶け込んでいない男だった。奇術師のような真っ白な帽子と真っ白な燕尾服に身を包み、顔には真っ白なメイクにいくつものトランプの模様のスタンプを押し、黒い杖を持っている青年だ。
「邪魔です。お主らは用済みだからもう帰れ」
ダンと呼ばれたその——声を聞く限り——男は、わざわざ敬礼した下っ端を突き飛ばし、ハルの目の前に立つ。
「リオルを連れた少年……なるほどなるほど。パイモンの言っていた人間ですな」
その男は、色々な人間の話し方が混ざったような奇妙な口調で話す。
「俺の名はダンタリオン。パイモンは知っているな? あれと同じ、ゴエティアの魔神卿の一人です。名前が長いので、組織の人間からは『ダン』と呼ばれております」
そう名乗り、ダンタリオンは不敵な笑みを見せた。
「私は変装が得意でしてな、昨日からカザハナシティに忍び込んでずっとお前をつけてたのさ。シュンインシティでは俺たちの邪魔をしたそうだが、その真意が知りたかったので。お友達を助けたかったのか? それとも、我々ゴエティアに敵意を持っているのか?」
目まぐるしく口調が変化し、聞いているとこんがらがってくる。
「そこで今回、あの者たち二人を向かわせてお前の真意を探った。その結果確信したぞ、お主は明確に我らゴエティアに敵意を持つ人間じゃとな。さらに」
ダンタリオンの口元が釣り上がり、明確な邪気を含んだ笑みを浮かべる。
「パイモンのお気に入りとなれば、間違いなく危険な存在。あれは所詮我儘なクソガキだが人を見る目だけは一流だからな、危険な芽は早めに摘み取るに限ります。よって、この俺様がここで直々に貴様を始末する」
そう言って、ダンタリオンはボールからポケモンを繰り出す。
「奈落に落とせ、ゴースト!」
ダンタリオンが繰り出したのは、胴体と手が独立した文字どおり幽霊のようなポケモンだ。

『information
 ゴースト ガス状ポケモン
 あらゆるものをすり抜けて移動し
 暗闇に隠れて獲物を狙う。しかし
 気配までも完全に消すことはできない。』

「名前通りゴーストタイプのポケモン……なら頼んだよ、ヒノヤコマ!」
ゴーストに対して、ハルはヒノヤコマを繰り出す。
イーブイの容態も心配だが、ダンタリオンを退けなければ進むことも引き返すこともできない。
「では行きますぞ。ゴースト、シャドーボール!」
ゴーストが両手を構えて黒い影を固めた漆黒の弾を発射する。
「ヒノヤコマ、躱して疾風突き!」
ヒノヤコマは素早く影の弾を躱すと、嘴を突き出して目にも留まらぬスピードで突撃する。
シャドーボールは後方まで飛んでいき地面にぶつかる。決して弱くはない一撃だがパイモンのスピアーと比べれば威力はよっぽど控えめだ。
「ゴースト、躱せ!」
だが思ったよりも身軽にゴーストはヒノヤコマの突撃を躱すと、
「気合玉!」
体の奥から闘気を生み出し、それをエネルギー弾として放出する。
ヒノヤコマに直撃、効果今一つの割になかなかダメージは大きい。
「っ、ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
力強く鳴いて全身に炎を纏い、ヒノヤコマは再び突っ込んでいく。
「ゴースト、シャドーボールです」
対して再びゴーストは漆黒の影の弾を放つ。
突っ込んでくるヒノヤコマに正面からぶつけてその勢いを止め、
「もう一度シャドーボールだ!」
もう一発、影の弾を放出する。
「ヒノヤコマ、こっちももう一度ニトロチャージ!」
だがヒノヤコマは影の弾を躱し、すぐさま炎で体を覆い、高速で突っ込んでいく。
炎の突撃がゴーストに直撃した。
その瞬間。

「ナイトバースト」

ゴーストを中心としてその周囲へドーム状に漆黒の衝撃波が放たれ、ヒノヤコマを吹き飛ばした。
「……!? ヒノヤコマ!」
なす術もなく吹き飛ばされてヒノヤコマは地面を転がる。
衝撃波と煙が晴れた時、そこにいたのはゴーストとは似ても似つかぬ、全く別のポケモンだった。

第17話 横槍 ( No.56 )
日時: 2016/11/06 16:48
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 新たる魔神卿ダンタリオンの奇術が、ハルに襲い掛かる!

『information
 ゾロアーク 化け狐ポケモン
 幻影を自由自在に操り外敵を化かす。
 熟練したゾロアークが見せる幻影は
 最先端の科学技術をも騙すほど精巧。』

赤黒い鬣に真っ黒な体の、二足歩行の狐のようなポケモン。
「ゾロアーク……?人を、化かす……」
図鑑説明を見る限り、ボールから出てきた時点で既にゴーストに化けていたのだろう。
「火炎放射!」
さらにゾロアークは灼熱の業火を吹き出す。
「っ、ヒノヤコマ!」
地面に倒れるヒノヤコマに炎を浴びせて残りの体力を削り取り、戦闘不能にしてしまう。
「フフフ、呆気ねえ呆気ねえ。それでは、これで終わりにしましょうか」
闇の力を溜め込んだゾロアークが、ハルとの距離を詰めてくる。
「ゾロアーク、ナイト——」
ゾロアークが漆黒の衝撃波を放つ、その直前だった。

「ハッサム、アイアンヘッド!」

どこからか女性の声が響き、さらに真紅の弾丸がゾロアークに直撃し、吹き飛ばした。
正確には、真っ赤なポケモンが猛スピードでゾロアークに激突した。

『information
 ハッサム 鋏ポケモン
 虫の頑丈さと鋼の硬さを併せ持つ
 鉄壁の体。鋼鉄の鋏で捕らえたものは
 どんなに硬くても粉々にしてしまう。』

流線型の体つきをした真紅のボディを持つ虫ポケモンだ。
そして、そのハッサムの持ち主と思われるトレーナーの少女。
身長がとても高くスタイルも良い。赤と黒が主体のフレアスカートを着ている。
「……何者です」
「あなたは……?」
ダンタリオンは忌々しそうに、ハルは呆然とその少女の顔を見る。
「私の名はエストレ、たまたま通りかかったトレーナー。エストレさんとお呼びなさい。それより」
ハルの顔を見てそう告げた後、即座にエストレはダンタリオンの方に向き直る。
「生身の人間に対して直接攻撃を仕掛けるなんて、どういう了見なのかしら」
「……ククク」
苛立ちを募らせていたはずのダンタリオンだが、突然笑い出す。
「貴女も私の邪魔をするのですね。よろしい、だったら先にお前から始末する! ゾロアーク、火炎放射!」
立ち上がったゾロアークが再び灼熱の業火を吹き出す。
「ハッサム、躱して剣の舞!」
致命傷となる炎技だが、それを躱してハッサムは激しい戦いの舞を舞う。
「ハッサム、アイアンヘッド!」
「ゾロアーク、ナイトバースト!」
ハッサムが真紅の弾丸の如く突撃し、ゾロアークは両腕を地面に叩きつけて漆黒の衝撃波を巻き起こす。
威力は互角。魔神卿のポケモンであるゾロアークと互角に競り合えるハッサムが凄いのか、剣の舞を使ったハッサムと互角に渡り合えるゾロアークが凄いのか。
最後にはお互いに一旦離れ、再度攻撃を仕掛けようとする二者。
しかし、

「必殺針!」

ここにいる誰のものでもない声が響くと同時、上空から黄色い弾丸が飛来し、ハッサムを突き飛ばす。
続いてゾロアークをも突き飛ばし、一撃でゾロアークを戦闘不能にした。
次は一体誰かとハルがそちらを見れば、つい最近見たポケモン、スピアーだ。そして、空からはメタングに乗ったパイモンが降りてくる。
「また会ったね、ハル君。そして失礼、お嬢さん。ぼくの名前はパイモン。今回は君たちに用はないから安心して。用があるのはこいつだから」
そう言って、パイモンはダンタリオンの方に向き直る。
「ダン、ぼく言ったよね。ハル君はぼくのお気に入りだから手を出すなってさ」
「ああ。言ってましたね」
何の気なしにダンタリオンがそう返すが、その瞬間、パイモンの顔が怒りに染まる。
「なんだお前その態度はさぁ! この子を手に掛けたら容赦はしないって、忘れたのかよぉ! あぁ!?」
「それが何か? 危険な芽は早めに摘んでおくに限るでしょうが! それとも何か? このまま危険因子を放置して組織の崩壊を招くつもりか!?」
「バカかよお前はさぁ! 百年間の屈辱を果たす王の目的すら忘れたのかお前は! そんなことも分かんねえんようなバカなんならぼくがお前を処刑すっぞ! 今、ここで! この子たちと違ってお前の代わりなんていくらでもいるんだからさぁ!」
「ぐっ……だったら、この場はお任せしますよ。そこまで言うんなら後処理はお前に頼んだ、じゃあな」
そう吐き捨ててダンタリオンはゾロアークを戻すと本物のゴーストを繰り出し、ゴーストの能力でその場から消えてしまった。
「チッ……あー、イライラすんなぁ。同じ七魔卿のクセに何であんなにバカなんだ? まともに話が通じるのはアスたんくらいだよ……いっそ頭のいい忠実な部下でも雇った方が早いんじゃないかなぁ……」
残ったパイモンはぶつぶつと独り言を呟きながら、ハルとエストレの方を向く。
「いやぁ、ごめんねぇハル君。ダンの野郎はやたらと突っ掛かってくるバカだから扱いに困るんだよね。ちゃんとぼくが釘を刺しておくから、以後は安心してね」
だけど、とパイモンは続け、
「今回はダンの独断行動だけど、あんまりぼくたちの邪魔をし過ぎないほうがいいよ。ただ戦うだけならともかく、ぼくたちの計画の邪魔をされるのはごめんだ。ぼくは確かにハル君、君に期待してはいるけど、逆に言えばそれだけ。君のお友達にはなんの興味もないんだからね? そこのお嬢さん、君もだよ?」
じゃあね、とパイモンはスピアーを戻し、メタングの上に座ったまま飛び去っていった。
「エストレさん……助けていただいてありがとうございました」
「私は人として当然のことをしたまでよ。それより、そのイーブイを早くポケモンセンターに連れて行ってあげなさい」
「あ……そうだった! とにかく、ありがとうございました!」
命の危機に瀕しかけたので忘れそうになったが、腕に抱えたイーブイが重傷なのを思い出し、ハルは急いでカザハナシティへと戻る。



ポケモンセンターに駆け込み、ハルはイーブイを預ける。
ジョーイさん曰く、もう少し遅かったら危ないところだったらしい。
ロビーでしばらく待っていると、
「お待たせしました。まだ傷跡は完全には消えていませんけど、ここまで回復すれば普通に生活を送れますよ」
イーブイを抱え、センターの奥からジョーイさんが出てきた。
「よかった……今度からは、悪い人に会わないように気をつけるんだぞ」
ハルはイーブイの頭を撫で、外に帰そうとしたが、
「……?」
肝心のイーブイがハルの元を離れない。
「あら? そのイーブイ、君のポケモンじゃないの?」
「え? あ、はい。道中で怪我をしていたのを見つけたので、ここまで連れてきたんです」
ハルがそう返すと、ジョーイさんは、まあ、と驚いたような表情を浮かべる。
「すっかり君に懐いているようだったから、てっきり君のポケモンなのかと思ったわ」
「……はい? 懐いてる? このイーブイが、僕に?」
「そうよ。折角だから、君のポケモンにしてあげたら? そのイーブイもきっと喜ぶと思うわよ」
ハルがイーブイの方に向き直ると、イーブイもハルの顔を見上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「僕はそれで構わないけど……イーブイ、僕と一緒に来る?」
座り込み、イーブイと目線を合わせて尋ねる。
ハルの言葉に、イーブイは笑顔で頷いた。
「……分かった。それじゃ、今日から君は僕の仲間だ」
そう言って微笑み、ハルは空のモンスターボールを取り出す。
イーブイの前に差し出すと、イーブイは自分からボールに触れ、ボールの中に入った。ボタンの点滅は、すぐに止まった。
「……よし。それじゃイーブイ、これからよろしくね」
その後、ジョーイさんに礼を言い、ハルは改めてヒザカリタウンを目指す。

第18話 山道 ( No.57 )
日時: 2016/11/06 19:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 次の街を目指し、ハルは山道を進む。

「ふー、やっとここまで来たよ……」
カザカリ山道を進み、中腹まで辿り着いたハルは、迷わず休憩所へ足を踏み入れる。
そこまで体力に自信はないので、ハルにとって山道はなかなかつらい。
休憩所に入り、ハルが常設されている椅子に腰掛け、少し休んでいると。
「失礼しまぁす」
人が休憩所にやってきた。ハルと同じ、旅のトレーナーだろうか。
「あら、先客がいるみたいね。君も旅するトレーナー?」
女性だ。鮮やかな金髪のセミロングで、毛先は水色。大きな荷物を背負い、青白いグラデーションのかかった服に作業着のようなズボンを履いている。正直、あまり上下の服の組み合わせがあっていないように見える。
「ええ。ハルといいます」
「ハル君、いい名前ね。私はアリス。君と同じ、しがない旅のトレーナーよ」
アリスと名乗ったその女性はドスンと荷物を床に降ろし、ハルの横に座る。
「この山道、大変だよねー。ヒザカリタウンを抜けてサオヒメシティまで行きたいんだけど、荷物も重いし辛くて辛くて。私は空を飛べるポケモンも力持ちなポケモンも持ってないから、大変よ」
「そ、そうなんですか」
はー、と息を吐き、アリスは無造作に足を組んで手で顔を仰ぐ。気さくだが割と大雑把な人物だ。
「……ねえハル君、まだ体力残ってる?」
突然、そんなことを聞かれた。
「え? ま、まあ……最低限は残ってますけど」
次に何を言われるかをだいたい予測し、ハルはそう返す。
ポケモントレーナーなら、おそらくこう言ってくるだろう。

「じゃあさ、私とポケモンバトルしない?」

……やっぱり。



そんなこんなで、ハルとアリスのカザカリ山道でのバトルが始まった。使用ポケモンは一体ずつ。
「それじゃ行くよ、ライボルト!」
アリスのポケモンは、黄色い鬣を持つオオカミのようなポケモン。

『information
 ライボルト 放電ポケモン
 電気を周囲に呼び寄せる力を持ち
 自身に雷を落としてエネルギーを蓄える。
 鬣から放電したり雷雲を作ったりできる。』

「電気タイプのポケモン……なら、初陣だよ、イーブイ!」
対するハルのポケモンは、新顔のイーブイ。今日が初陣となる。
「早速始めるよ! ライボルト、放電!」
ライボルトが吼え、鬣から周囲へと放電し、電撃を撒き散らす。
「イーブイ、潜る!」
イーブイは素早く地面へと潜り、ライボルトの電撃を躱すと、すぐさまライボルトの足元から飛び出す。
潜るは地面タイプの技。電気タイプのライボルトには効果抜群だ。
「いいぞイーブイ! 続けてスピードスター!」
さらにイーブイは無数の星形弾を放ち、ライボルトへと追撃を掛ける。
「やるじゃん! ライボルト、負けてられないよ! 目覚めるパワー!」
ライボルトは素早く起き上がると、周囲に薄い水色のエネルギーの球体を放ち、星形弾を相殺する。
「イーブイ、噛み付く!」
イーブイは素早くライボルトとの距離を詰め、ライボルトの鬣に噛み付く。
「っ! ライボルト、振り払って!」
ライボルトはしつこく首を振ってイーブイを引き剥がそうとするが、イーブイはなかなか離れない。
「だったら放電よ!」
振り払うのを諦め、ライボルトは鬣から電気を発し、周囲に放電する。
口を離して躱そうとしたイーブイだが、避けきれずに電撃を浴びてしまう。
「さあ今度はこっちの番! ライボルト、シグナルビーム!」
ようやくイーブイを引き剥がしたライボルトが、激しい光を放つ光線を発射する。
電撃を浴びて動けないイーブイに光線が直撃し、吹き飛ばす。
「イーブイ! 大丈夫!?」
吹き飛ばされて地面に落ちたイーブイだが、起き上がってハルの言葉に応える。
「さあ、まだまだ行くよ! ライボルト、目覚めるパワー!」
「イーブイ、潜るで躱して!」
ライボルトが薄い水色の無数のエネルギーの球体を放ち、それに対してイーブイは再び地面に潜り、隠れてしまう。
「同じ手は通じないわ! ライボルト、放電!」
ライボルトが鬣から電撃を生み出す。
放つ電撃を足元へ集中させ、地面を叩き割ってイーブイを地上へ引きずり出した。
「え……!?」
「今よ! ライボルト、シグナルビーム!」
強引に宙に打ち上げられたイーブイに対し、ライボルトが激しく光を放つ光線を発射する。
空中で身動きできず、イーブイは光線の直撃を受けてしまう。
「放電!」
その隙を逃さず、ライボルトは咆哮とともに鬣から電撃を放出、イーブイを巻き込んで周囲へと放電した。
「イーブイ!」
放電に巻き込まれたイーブイが力なく地面に倒れる。
イーブイは戦闘不能、よってこの勝負は、アリスの勝利だ。



「アリスさん、強いですね……」
バトルが終わった後、二人は休憩所に戻って話し込んでいた。
自分から申し込んだバトルだからと、アリスは持っていた薬でイーブイを回復させてくれた。
「そりゃ、ライボルトは私のエースポケモンだもの。このイーブイ、まだ仲間にして間もないでしょう? 私、そういうの分かるんだよね」
「ええ、その通りです。確かに、昨日捕まえたばかりです」
ちなみにそのイーブイは今アリスの膝の上でブラッシングされている。
「やっぱり? 戦っててそんな感じがしたわ。強いとか弱いとかじゃなくて、まだ君の戦い方っていうのかな、そういうのをよく分かってないような気がしたの」
だけど、とアリスは続け、
「その割には、何だかとっても君に懐いているみたいよ? まだ分からない中で、一生懸命ハル君のために頑張ろうとしていたように私には見えたわ」
「……そうなの、イーブイ?」
イーブイの顔を見て尋ねると、笑顔と威勢のいい返事が返ってきた。
「さて、と……よいしょっ」
イーブイをハルの元に返し、重そうな荷物を担いで、アリスは立ち上がる。
「この後はヒザカリタウンに行くんでしょ? 確かヒザカリでは近いうちにバトル大会が開かれる予定だったはずよ。ハル君も出てみたらどうかしら? 私はなるべく早くサオヒメに行かないといけないから出場できないけどね」
確かヒザカリタウンにはジムリーダーもいたはずだ。しばらくはヒザカリタウンに留まることになるだろう。
「それと」
休憩所を出ようとしたところで、アリスは振り向く。
「今日は一対一のバトルだったけど、次に会う時にはもっと沢山の君のポケモンを見たいわね。きっと、そのイーブイみたいに君と仲がいいんだと思うわ」
「……はい。次に会うときがあれば、またバトルしましょう。今度は、僕が勝ちます!」
「その言葉、忘れないわよ? じゃあね」
笑顔で手を振り、アリスは休憩所を去っていった。
「……よし。僕もそろそろ行くか」
イーブイをボールに戻し、ハルも立ち上がる。
次の目的地、ヒザカリタウンは、山道を下ってすぐそこだ。

第19話 ジムバトル! ヒザカリジムⅠ ( No.58 )
日時: 2016/11/07 22:51
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: ハルを待ち受ける三人目のジムリーダーは、超爆烈少女!

山道を下っていくうちに、ゴツゴツした岩だらけの道は次第に舗装された道へと変わっていく。
「よし、やっと着いたぞ」
ターミナルを開いて、ハルは現在地を確認する。
画面には『ヒザカリタウン』、そう表示されていた。


次なる町、ヒザカリタウン。
山から流れてくる水と、町の名の由来にもなった強い日差しによって、植物にとってはまさに天国のような町だ。
ただし人が住む町としてみればまだまだ田舎町。そのため、町興しのためにジムを作ったり、バトル大会を開くために小規模ではあるがスタジアムを作ったりするなど、ポケモンバトルによって自然を壊さないように気をつけながら町全体に活気を与えようとしているらしい。
そんな街に着いたハルだが、
「……ジムに挑戦する体力は、残ってないな」
普通のバトルと比べて、やはりジムバトルは緊張感が違うし、その分体力も使う。端的に言えば、疲れる。
山道を抜けてきたこともあるし、ゴエティアとも一悶着あり、さらにアリスというトレーナーとバトルまでしているハルは、とてもジム戦に挑むほどの体力はない。
ジムに挑む以上、新戦力となるイーブイも鍛えておきたい。
「今日はポケモンセンターの地下で特訓したり、ポケモンの調整に使って、ジムは明日挑むことにするか」
そう呟いて、とりあえず、ハルはポケモンセンターへ向かう。



翌日。
ターミナルの地図を片手に、ハルはジムを訪れていた。
カザハナシティの道場のようなジムと見た目は違えど、やはり和の雰囲気が見て取れるジムだ。町の景観を崩さないようにしているのだろうか、屋敷のように見て取れる。
「失礼しま……えぇ?」
扉を開いて中を覗いたハルだが、そこで素っ頓狂な声を上げる。
それもそのはず、建物の外装と内装が違いすぎるのだ。
ジムの中は赤と金色で派手に彩られていた。当然、床も壁も木製ではない。バトルフィールドだけは普通の作りがされているようだが。
何だか部屋自体も蒸し暑く、あちこちに大きな観葉植物が置かれている。
そして、
「おはようございまぁす! ジムの挑戦ってことで、よろしいですかね!?」
元気一杯の大声が返ってきた。
声の主はフィールドの向こうに立つ少女。彼女がジムリーダーなのだろう。
オレンジ色の服の上に、赤色の長袖のシャツの袖を腰のところで結んで掛けており、黒いショートパンツを履いている。炎のような真紅の髪はポニーテールにして結んでいる。
「私はポプラ! ここのヒザカリタウンのジムリーダーを務めてるよ! よろしく!」

『information
 ジムリーダー ポプラ
 専門:炎タイプ
 異名:爆熱天使(ブレイズエンジェル)
 座右の銘:完全燃焼』

ポプラはそう叫ぶように名を名乗る。
「あ、はい……僕はハルです……」
ポプラのテンションに圧倒されながら、ハルは自己紹介する。
「ハル君だね! 私に勝ちたいってんなら、そんなビビってちゃだめだぜ! 燃える炎みたいに、バトルの前からでも相手をガンガン押していかなきゃなー!」
爽やかな笑みを浮かべて、ポプラは指を三本突き立てる。
「そんじゃー早速始めるか! 使用ポケモンは三体! ポケモンを交代していいのはチャレンジャー、つまりハルだけ!」
バトルも始まっていないのに、既にハルはポプラの勢いに完全に押されてしまっている。
だが、
「……はい。よろしくお願いします!
やることは分かっている。ジム戦をして、勝てばいいのだ。
「おぉ! いい表情になってきた! それじゃあ、バトルを始めるぜ!」
三つ目のバッジを賭けた、ハルのジム戦が始まる。



「それじゃあまずは私から! 燃えろよ燃えろ、メラルバ!」
ポプラの一番手は、松明のような形状をした虫ポケモンだ。

『information
 メラルバ 松明ポケモン
 五本の角から炎を出して攻撃する。
 ある地域では太陽から生まれたポケモン
 として信仰の対象になっている。』

「炎と虫タイプなら君の出番だ。出てきて、ヒノヤコマ!」
ハルが繰り出したのはヒノヤコマ。炎技も虫技も効果は今一つで、相性がいい。
「ヒノヤコマ、まずはニトロチャージ!」
ヒノヤコマが力強く鳴き、体を炎に包み、メラルバに向かって突撃を仕掛ける。
「メラルバ、こっちもニトロチャージ!」
メラルバも角から炎を吹き出して全身に纏わせ、跳躍してヒノヤコマへと突っ込んでいく。
炎の弾のように、二体が正面から激突する。
「ヒノヤコマ、疾風突き!」
嘴を突き出し、ヒノヤコマは目にも留まらぬ速度で突っ込む。
「メラルバ、躱してシグナルビーム!」
対するメラルバはぴょんと跳躍してヒノヤコマの突撃を躱すと、その瞳から激しい光を放つ光線を発射する。
「っ、ヒノヤコマ、アクロバット!」
光線がヒノヤコマの背中に直撃するも、効果は今一つ。
そのままヒノヤコマは空中を旋回し、素早く軽快な動きで距離を詰め、メラルバを突き飛ばす。
「メラルバ、ギガドレイン!」
メラルバの五つの角から光の触手が飛び出し、ヒノヤコマへと向かってくる。
「ヒノヤコマ、もう一度アクロバット!」
ヒノヤコマが再び軽快に動き出す。
軽やかに光の触手を躱しながら、メラルバへ一気に接近していく。
しかし。

「メラルバ! ワイルドボルト!」

メラルバの周囲の空気がバチバチと音を立てて弾ける。
その体が電撃を纏い、正面からヒノヤコマを迎え撃つ。
再び正面から二者が激突するが、すぐさま均衡が破れる。
電撃を纏ったメラルバが、ヒノヤコマを逆に突き飛ばした。
「電気技……! ヒノヤコマ!」
飛行タイプを持つヒノヤコマには、電気技は効果抜群。
「苦手タイプの対策はできてるぜ! 本当は水タイプ対策の技だけどな!」
ふふふー! とポプラは陽気に笑う。
「っ、さすがはジムリーダー……タイプ相性がいいからって、簡単には勝てない……!」
イチイやヒサギもそうだったように、苦手タイプ対策はバッチリということだろう。やはりジムリーダーは一筋縄ではいかない。
「当然! さあメラルバ、ニトロチャージ!」
五本の角から炎を吹き出し、メラルバが炎に包まれ、火の弾のように飛び出す。
「ヒノヤコマ、躱して!」
体勢を崩しながらも、何とかヒノヤコマは立て直して上昇する。
ただ完全に躱し切ることはできず、メラルバの攻撃がヒノヤコマを掠めた。
「ヒノヤコマ、ここから反撃だ! エアカッター!」
ヒノヤコマが激しく翼を羽ばたかせ、無数の風の刃を飛ばすが、
「メラルバ、躱してワイルドボルト!」
ニトロチャージでスピードが上がっているメラルバに躱され、メラルバは電気を身体中に纏って突っ込んでくる。
「ヒノヤコマ、ニトロチャージ!」
ヒノヤコマは炎を纏い、メラルバの電撃の突進を迎え撃つ。
お互いの力は互角、しかし、ニトロチャージの追加効果により、ヒノヤコマのスピードが上昇する。
「疾風突き!」
速度の上がったヒノヤコマが、嘴を突き出して猛スピードで突撃。
目にも留まらぬ速度で、メラルバを突き飛ばす。
「やるじゃんやるじゃん! メラルバ、シグナルビーム!」
「ヒノヤコマ、アクロバット!」
メラルバが瞳から激しい光を放つ光線を発射し、ヒノヤコマは素早く飛び回る。
鞭のように振るわれる光線を掻い潜り、メラルバとの距離を詰めていく。


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