二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 魔王と救世の絆
日時: 2018/04/30 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)

こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。

※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。

それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。

登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45

プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204

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第69話 本心 ( No.129 )
日時: 2017/01/25 00:08
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「カガチさんに、何を言われたの?」
弱ったハルの心に、サヤナの言葉が刺さる。
「……はぁ」
気づいた時には、ハルはその場に座り込んでいた。
ルカリオがそれに気づき、慌てて駆け寄ってくる。
「サヤナ、すごいね……確かに、サヤナの言う通りだよ」
力なく、ハルは笑う。
「全部話すよ。ジムであったこと」



その後、バトルは中断。
ハルは、ジムリーダーカガチとのバトルであったことを全て、サヤナへ話した。
「……なるほどね」
ハルの言葉を全て聞き終えると、なぜだかサヤナの表情は少し安心したようなものに変わる。
「よかった、これなら、私が何とか解決してあげられるかも」
そう言うと、サヤナは座り込んでハルと目線を合わせ、言葉を続ける。
「ハルがジムに挑む前に、私、ジムから出てきたでしょ」
確かにそうだった。赤いレンガのジムからサヤナが出てきて、バッジを見せてくれたのを思い出す。
「でもね。実はあの挑戦、一回目じゃなかったの。二日前にカガチさんに負けて、昨日も負けて、やっと今日勝ったんだよ。三日間、毎日挑み続けたんだ」
「えっ……?」
それを聞いて驚くハル。
ジム戦なら、一度負けたら勝てる見込みが見えるまで特訓するのが普通だからだ。
「おかしいと思うよね。でも私、初日に負けた後、カガチさんに言われたの。お前が弱いのは、根性が足りないからだって。確かに、カガチさんのポケモンに圧倒されて、気持ちで負けてたの。だめだ勝てないって、そう思っちゃった」
真剣な眼差しで、サヤナは語り続ける。
「だから根性見せてやろうと思って、毎日挑戦しようと思った。昨日は惜しいところで負けちゃったけど、明日も来るって約束して、やっと今日勝てたんだよ。その時にカガチさんに言われたの。『この二日で得た力は所詮付け焼き刃、だがこの二日でお前が見せた根性は本物だった。それを認めて、このバッジをくれてやる』ってね」
だから、とサヤナは続け、

「あの人はとっても厳しいし怖いけど、本当はチャレンジャーのことをよく考えてくれる。意味もなく、弱いなんて言わないと思うんだ」

ハッと、ハルは顔を上げる。
先ほどまでのサヤナとのバトルを、カガチとのバトルを、パラレルとのバトルを、大会でのバトルやその後のスグリとのバトルを思い出す。
メガシンカを得て、自分でも気付かぬうちに天狗になってはいなかったか。
こんな力を使える自分は凄いんだ、そう思い込んで調子に乗ってはいなかったか。
ハルが負けた後、カガチは妙に、お前は、と強調していた。
実際その通りだったのだ。確かにハルは弱い。気が弱く内気で、友達や仲間のポケモンたちの手を借りなければ何もできないような少年だ。
それを忘れて自分は強いと思い上がっているハルへ、カガチは、ハルが忘れてしまっていた大事なことを思い出させようとしていたのかもしれない。
思えばカガチは言っていたではないか。ポケモンとの絆を正しく理解しなければ、本当のメガシンカの力は発揮できないと。ルカリオとの絆はあれど、ハルはその力を正しく理解できていなかったのだろう。そして、カガチはそのことを教えてくれたのだ。
「ハル、元気出してよ」
そんなハルに、サヤナが微笑む。
「ハルは弱いのかもしれないけど、ハルとルカリオはとっても強い名コンビだと私は思ってるよ。さっきのバトルだって、ハルが自信を無くしてもルカリオはハルの力になろうと全力で戦ってた、そんな風に私には見えたよ」
サヤナの言葉に続けて、ルカリオもハルの目をまっすぐに見つめる。
「……ごめんね、ルカリオ」
ルカリオの顔を見上げ、ハルは呟く。
「メガシンカを使えるようになって、僕は勘違いしていたんだ。メガシンカを使える僕は、とっても強くなったんだって。けど、本当は違った」
ようやく、全てに気付くことができた。
強いのは、ハルでもルカリオでもなかった。
「僕たちが強くなれたのは、ルカリオがいたからだったんだ。いや、ルカリオだけじゃない。ヒノヤコマ、エーフィ、ワルビルたちがいるから。サヤナ、スグリ君、エストレさん、ミオ……挙げて行ったらキリがないけど、僕の周りのみんなのおかげで、僕は強くなっていけるんだ。そんな大事なことを、忘れていたなんてね」
ここでサヤナは気付いた。
ハルの瞳に、いつもの明るい光が戻ってきた。
「ルカリオ。やっと思い出したよ。もう大丈夫、絶対に忘れない。だから、これからも僕と一緒に旅して、遊んで、戦ってほしい」
ルカリオの目を見つめ返し、ハルはまっすぐにそう言った。
ルカリオは小さく頷き、手を差し出す。
早く立ち上がれ、そして元気を出せ。そんな風に言っているように、ハルには感じられた。
だからハルは、迷わずルカリオの手を取った。一時は失った気力を再び取り戻し、ルカリオの手を借り、立ち上がった。
「やったー! やっといつものハルに戻ったよ!」
「サヤナも、ありがとう。多分サヤナがいなかったら、当分落ち込んだままだったよ」
「にひひー、友達として、先輩として当然のことをしただけだよー! ハルが元気ないと私も楽しくないしね!」
さて、とサヤナは続け、
「ハルは元気になったけど、それでもカガチさんが強いのは変わらない。だったら特訓をしなくちゃね。バトルの続きをしよう! リベンジ達成できるように、引き続き、私が特訓に付き合ってあげるよ!」
「うん、ありがとう。僕もルカリオも、他の仲間たちだって、次こそ勝ちたい。サヤナの力を借りるよ」
「任せといてー! それじゃあワカシャモ、さっきのバトルの続きだよ!」
「ルカリオ、もう大丈夫。まだ本調子とはいかないかもしれないけど、だいぶよくなったよ。こっちも全力で行こう!」
そして。
バトルフィールドに、再びワカシャモとルカリオが立つ。

第70話 ジムバトル! カタカゲジム・リベンジⅠ ( No.130 )
日時: 2017/01/26 07:41
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /yMGlo86)
参照: カタカゲジム、そのバトルフィールドに、再びハルは立つ。

「お願いします!」

「またお前か。今回は一週間前よりマシなバトルが出来るんだろうな」

あれから、ハルはサヤナに手伝ってもらい、一週間特訓を続けてきた。
そして今。
ハルは赤いレンガのジムを再び訪れ、岩場のバトルフィールドに立ち、カガチと対峙していた。
「もちろんです。カガチさん、あの時はありがとうございました。今度こそ、僕は貴方に勝ってみせます」
「フン、口だけじゃ何とでも言える。一週間の成果は——」
そこで一拍置き、カガチはモンスターボールを取り出す。
「バトルの中で、見せてみろ! 出番だ、サナギラス!」
「最初からそのつもりですよ! 頼んだよ、ルカリオ!」
カガチの一番手は前回と変わらずサナギラス。
対して、ハルの初手はいきなりエースのルカリオ。
「少しはお前の力に期待して、今回のバトルは四対四だ。その他のルールは前回と同じ。それじゃ、始めるぞ」
「分かりました! ルカリオ! 行くよ!」
キーストーンのある腕輪を付けた右腕を天高く掲げ。
ハルは、大きく叫ぶ。

「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカだ!」

ハルのキーストーンから、ルカリオのメガストーンから、七色の光が飛び出す。
二つの光はそれぞれ繋がって一つとなり、ルカリオを包み込み、その姿を変えていく。
波導の力とメガシンカのエネルギーがルカリオの体内を駆け巡り、その体に漆黒の模様を刻んで、ルカリオはメガシンカを遂げる。
体を覆う光が、天を貫く咆哮とともに薙ぎ払われ、メガルカリオが光の中から姿を現す。
「……サナギラス、砂嵐!」
そんなルカリオを見て、まずカガチはサナギラスへと砂嵐の指示を出す。
サナギラスが高速回転して風を生み出し、その風に大量の砂を乗せ、フィールド全体に砂嵐を巻き起こす。
対して、
「ルカリオ、発勁!」
ルカリオが地を蹴り、一直線に飛び出す。
次の瞬間にはサナギラスとの距離を詰めており、青い波導を纏った右手を思い切り叩きつけ、サナギラスを吹き飛ばす。
「波導弾だ!」
さらにルカリオは両掌を構え、波導の念弾を放出する。
標的を狙って正確に飛ぶ波導の念弾が、サナギラスに直撃した。
念弾が爆発して再び吹き飛ばされ、サナギラスはフィールドの岩に激突。
そのまま地面に落ちたサナギラスは、あろうことか既に戦闘不能になっていた。
「……! 俺のサナギラスを、こうもあっさりと……」
流石のカガチでも、これには驚きを隠せなかったようだ。
効果抜群とはいえ、砂嵐しかできずにたった二発で先発のポケモンがいきなりやられてしまうとは、想定すらしていなかったのだろう。
「……まあいい、こんなこともあるさ。サナギラス、戻れ」
サナギラスをボールに戻し、カガチは次のボールを手に取る。
そして、
「ルカリオ、君の出番はまた最後にある。それまで、しばらく休んでて」
ハルも、ルカリオをボールへと戻した。
「フン、どうやら口先だけでは無かったようだな。まず、それは認めてやろう」
だが、とカガチは続け、
「だからと言って俺に勝てるかどうかは別だ。いくら特訓を重ねてきても、俺に勝てなければバッジは手に入らんぞ」
「分かっています。だから勝つために、一週間特訓して来たんです。絶対に勝ちます!」
二番手のポケモンは、ハルが先に繰り出した。
「出てきて、ワルビル!」
ハルのポケモンはやはり砂嵐に強いワルビル。
対して、
「サナギラスがあっさりやられたのは、何も悪いことばかりではない」
カガチの表情は、既に普段のものに戻っている。
「サナギラスは役目を果たしてくれたよ。この砂嵐。しかも、これだけ早くサナギラスが倒れれば、この砂嵐は二番手以降でも長く持続する」
つまり、とカガチは言葉を続け、
「策はまだいくらでもある。出番だ、サンドパン!」
カガチの二番手は、背中に硬い棘をびっしりと背負った砂色の体のポケモンだ。

『information
 サンドパン ネズミポケモン
 背中の棘や両手の爪を武器に
 外敵と戦う。折れてしまうことも
 あるが翌日には生え揃っている。』

前回は出してこなかったポケモンだ。タイプは地面のみ。
「地面タイプなら、相性の有利不利はない。ワルビル、強気に行くよ! シャドークロー!」
ワルビルが両手に黒い影を集めて影の爪を作り上げ、サンドパンへと向かっていく。
対して、
「サンドパン、ポイズンクロー!」
サンドパンが爪を構えると同時、高速で飛び出した。
気付けば既にワルビルの目の前まで迫っており、ワルビルが影の爪を振るよりも早く、毒を帯びたサンドパンの爪がワルビルを切り裂いた。
「っ、速い……! ワルビル、気をつけて。相手の動きをよく見るんだ」
ワルビルはすぐに体勢を立て直し、低く唸る。
対するサンドパンは素早く離脱し、カガチの元へと戻っている。
「サンドパン、ドリルライナー!」
「ワルビル、躱して燕返し!」
サンドパンが両手を突き出し、ドリルのように回転を始めたかと思うと、突然そのまま飛び出してくる。
咄嗟にサンドパンの突撃を躱すと、ワルビルは刀身のように白く輝く腕を構えてサンドパンを追う。
「サンドパン、メタルニードル!」
突如、サンドパンが体を丸め、全身を背中の硬い棘で覆う。
さらにその棘を硬化させて振り下ろされるワルビルの腕を弾き返し、直後、鋼の如く硬い棘を一斉に発射する。
棘は次々とワルビルに突き刺さり、ワルビルは呻き、膝をついてしまう。
「サンドパン、瓦割りだ!」
丸めた体を元に戻し、サンドパンは体勢を崩すワルビルへと勢いよく手刀を振り下ろす。
「まずい……! ワルビル、穴を掘る!」
素早くワルビルは地面に穴を掘り、地中へと身を隠す。
サンドパンの手刀はワルビルを捉えられず、地面に打ち付けられ、直後、サンドパンの足元からワルビルが強襲、逆にサンドパンを吹き飛ばした。
「いいぞワルビル! 続けて噛み砕く!」
ワルビルが大顎を開き、牙を剥いてサンドパンに襲い掛かる。
しかし、
「サンドパン、ポイズンクロー!」
立ち上がったサンドパンはまたも高速で動き出す。
ワルビルが口を閉じてサンドパンに噛み付くよりも早く、サンドパンは毒を帯びた爪を突き出し、ワルビルを突き飛ばした。
「さすがに早すぎる……見た目からして、そんなに速そうなポケモンには見えないんだけど……。……?」
ここで、ハルは先ほどのカガチの発言を思い出す。
(サナギラスは役目を果たした、策はまだいくらでもある……まさか!)
一つの可能性を思い浮かべ、ハルは素早く図鑑を取り出す。
「特性……砂かき……?」
「ようやく気付いたか」
ハルが図鑑で確認し、サンドパンのスピードの正体に気が付いたところで、カガチが口を開く。
「俺のサンドパンの特性は砂かきだ。天候が砂嵐の状態であれば、素早さが二倍ほどに上昇する」
「なんだって……!?」
素早さが上がるというのは、単純かつ強力だ。敵の攻撃は当たりにくくなり、逆に自分は相手を撹乱させることによって試合がより有利に運べるようになる。
しかも、今のサンドパンは素早さが通常の二倍。そのスピードは跳ね上がっている。
「先ほど言ったはずだ。策はまだいくらでもあるとな」
いきなり先鋒を失ってなお、焦りの一つも見せないカガチの威圧感が、ハルを圧倒せんと迫る。

Re: ポケットモンスター 魔王と救世の絆 ( No.131 )
日時: 2017/01/26 11:02
名前: 長山修平 ◆AvrkdgE7to (ID: mNBn7X7Y)

初めまして!TX氏の親友の長山です!

カガチさんは地面ジムですね!

ルカリオは防御面での相性が悪いですね…。




ちなみに…


ドナルド
「ドナルドだったら水タイプや草タイプのポケモンを6匹連れていくんだ♪」


カーネル
「カーネルもタイプ相性には詳しいんじゃ♪」

http:// ( No.132 )
日時: 2017/01/26 16:22
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: o6cQWKqt)

>>長山さん
コメントありがとうございます。

カガチさんは無愛想な地面タイプ使いですね。
サナギラスやバクーダ相手なら弱点をつけますが、他の地面タイプ相手ならちょっと厳しいかもしれませんね。
まぁゲームなら有利なタイプを集めて戦いたいところですが、あいにく小説だとそうは行かないですね。
ハルがどうやって戦っていくのか、楽しみにしていてください。

第71話 ジムバトル! カタカゲジム・リベンジⅡ ( No.133 )
日時: 2017/01/26 22:53
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
参照: 砂嵐を駆使したカガチの戦略が、ハルを襲う!

ハル対カガチ、ハルにとってはリベンジマッチ。
現在はポケモンの数でハルが一歩リード、しかし、
「サンドパン、ドリルライナー!」
「くっ、ワルビル、シャドークロー!」
サンドパンの特性、砂かきによる猛攻に、ハルとワルビルは押されている。
サンドパンのドリルの如き高速回転の突撃を、ワルビルは影の爪を構えてどうにか食い止める。
(やっぱり速い……! でも、どうにかして攻略しないと……)
砂嵐が切れるまで逃げ回るという方法もあるにはあるが、ハルはその可能性は捨てる。
そもそも、あんなに素早いサンドパンからどうやって逃げ回るのか分からないからだ。
となれば、
「何とかサンドパンの動きを見切るしかない……! ワルビル、頼んだよ!」
影の爪を振るってサンドパンを押し返し、ワルビルは力強く吼える。幸い、火力に関してならサンドパンには負けていない。
「サンドパン、メタルニードル!」
「ワルビル、穴を掘る!」
サンドパンが背中の棘を硬化させ、一斉に放出する。
対するワルビルは素早く地中に潜ることによって無数の鋼の棘を躱し、地中から密かにサンドパンとの距離を詰めていく。
しかし、
「サンドパン、躱してポイズンクロー!」
サンドパンの足元が僅かに揺れたのを見て、カガチは回避の指示を出す。
サンドパンが横っ飛びでその場を離れた一瞬後、そこからワルビルが飛び出す。
だが奇襲は外れ、直後にサンドパンが毒を帯びた爪を振り抜き、ワルビルを切り裂いた。
「ワルビル! 大丈夫!?」
鋭い爪の斬撃を受けても、ワルビルはまだ起き上がる。
しかし、
「ワルビル……?」
ワルビルの調子がおかしい。立ってはいるのだが、その足が少し震えている。
このワルビルは相手がどれだけ強くとも恐れるような性格ではない。つまり、何か異変が起きている。
そして、その異変はすぐに分かった。
「っ……毒の状態異常か……」
何度も毒を帯びた爪の攻撃を受けたことによって、ワルビルは毒を食らってしまったのだ。
「好機を逃すなよ。サンドパン、瓦割り!」
毒で動きが鈍ったところに、サンドパンはワルビルの脳天へ手刀を振り下ろす。
「っ、ごめんワルビル、一発耐えて!」
サンドパンの手刀が振り下ろされる直前、咄嗟にワルビルは左腕をかざす。
ワルビルの腕から、ゴキリと嫌な音が響くも、頭への攻撃は何とか防ぎ切り、
「今だワルビル! 噛み砕く!」
返す刀で大顎を開き、サンドパンの腹に頑丈な牙を食い込ませた。
「いいぞ! そのまま投げ飛ばせ!」
ワルビルの最大の武器である、頑丈な顎。
ようやくその顎による一撃を決めたワルビルは、そのまま首を大きく振ってサンドパンを投げ飛ばし、フィールドに置かれた岩へと叩きつけた。
「一気に行くよ! ワルビル、シャドークロー!」
右腕に黒い影を纏わせ、ワルビルは叩きつけられたサンドパンへ襲い掛かる。
しかし、
「まだ終わらんぞ。サンドパン、ポイズンクロー!」
起き上がったサンドパンが、毒を帯びた爪を突き出す。
刹那、お互いの爪の一撃が、それぞれの敵を突き刺す。
だがワルビルの影の爪が捉えたのは棘の生えたサンドパンの背中。対して、サンドパンは的確にワルビルの腹部を捉えていた。
刺し違えた結果、ワルビルが一歩及ばず、力尽きて地面に倒れた。
「くっ……ワルビル、よく頑張ってくれたね」
ハルはワルビルの元へ駆け寄り、頭を撫でる。
ワルビルは目を開き、悔しそうに唸る。
「大丈夫、充分頑張ってくれた。後は任せておいて、休んでてね」
悔しがるワルビルを労い、ボールに戻し、ハルは次のボールを手に取る。
「相手は素早さを武器とする地面タイプ。ここは……エーフィ、頼んだよ!」
ハルの次なるポケモンはエーフィ。ワルビルよりも素早さは高いので、ある程度ならサンドパンの動きについていけると考えてのチョイスだ。
素早さならヒノヤコマもいるが、空を飛ぶヒノヤコマは風の影響をもろに受けるので、砂嵐が収まるまで温存しておきたい。
「次のポケモンはエーフィか……サンドパン、ポイズンクロー!」
ワルビルとの戦いでダメージはそこそこ溜まっているが、まだまだ充分やれる様子。
サンドパンは毒を帯びた爪を構えると、再び高速でエーフィへと突っ込んでいく。
「エーフィ、躱してスピードスター!」
何とかサンドパンの爪を躱し、勢い余って後方へとすっ飛んでいくサンドパンへ、エーフィは二股の尻尾を振って無数の星形弾を飛ばす。
「サンドパン、ドリルライナー!」
対するサンドパンは腕を突き出し、ドリルのように高速回転する。
迫り来る星形弾を全て弾き飛ばすと、床を蹴って勢いよく飛び出し、エーフィを突き飛ばす。
「瓦割りだ!」
高速回転したまま上空へと飛び上がり、サンドパンは上空からエーフィの頭を狙い、手刀を振り下ろす。
だが、
「今だエーフィ! マジカルシャイン!」
エーフィの額の珠が白く輝く。
刹那、エーフィを中心に純白の光が周囲へと放出される。
当然、空中から急降下してくるサンドパンが避けられる訳もなく、サンドパンは純白の光に飲み込まれ、逆に吹き飛ばされてしまう。
「サイコショット!」
起き上がったばかりのサンドパンの腹部へと、サイコパワーの念弾が直撃する。
頑丈な無数の棘を備えて防御面は硬いサンドパンだが、腹部は柔らかく、特防も低い。
ワルビル戦でのダメージも重なり、サンドパンはここで戦闘不能となってしまう。
「サンドパン、戻れ」
カガチが倒れたサンドパンをボールに戻したその時、砂嵐が収まる。
「さあカガチさん、これで砂嵐にはもう頼れませんよ」
「フン、俺の手持ちで砂嵐に頼るのは二体だけ。天候を変えられることも想定しているから、砂嵐がなくなった程度では全く戦況は変わらん。次はこいつだ。出番だ、フライゴン!」
カガチの三番手となるのは、昆虫のような面影を残した緑色のドラゴンポケモン。両目を赤い膜で覆っている。

『information
 フライゴン 精霊ポケモン
 美しい歌声のような羽音を上げて
 砂嵐を起こしその中に姿を隠す。
 昔は砂漠の精霊だとの説があった。』

地面とドラゴンタイプを併せ持つポケモンのようだ。
「ドラゴンタイプか……見るからに強そうだな……」
ドラゴンポケモンは聖なる生き物。故にその最終進化系となれば、相当な実力を持つポケモンに間違いない。
「だけど相手にとって不足はないよね。エーフィ、頑張るよ!」
エーフィにはドラゴンに有利なフェアリー技、マジカルシャインもある。
エーフィはフライゴンから目線を逸らさず、しかししっかりとハルの言葉に応え、頷く。
「よし! エーフィ、サイコショット!」
エーフィの額の珠にサイコパワーが溜まり、そこから念力の弾が撃ち出される。
フライゴンに一直線に飛来していくが、肝心のフライゴンは反応一つ見せない。
しかし。

「フライゴン、やれ」

突然、フライゴンが巨大な翅を強く羽ばたかせる。
歌姫の美しい唄声のような音と共に、収まって地面に落ちたはずの砂が再び舞い上がる。
無数の砂塵は風に乗って、フライゴンを瞬く間に覆ってしまう。
念力の弾は砂の風に阻まれ、フライゴンには届かなかった。
「なっ……!」
思わず驚きを浮かべるハル。
エーフィの一番優れた能力は特攻だ。そのエーフィの一番の主力技が、容易く食い止められてしまった。
「こいつは砂嵐がなくなった時のためのポケモンだ。砂嵐が収まった後だろうが、フライゴンならば地面に落ちた砂を存分に生かせる。言っただろう、砂嵐を起こせば、それだけでサナギラスは充分に仕事をしているんだと」
砂嵐が収まっても、カガチの戦法には何も影響しない。どころか、それすら有利な状況に変えてしまう。
フライゴンは再び翅の羽ばたきを元に戻し、声をあげることもなく、相も変わらずじっとエーフィを見据える。


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