二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 魔王と救世の絆
- 日時: 2018/04/30 21:14
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)
こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。
※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。
それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。
登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45
プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204
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- 第53話 Ronove ( No.109 )
- 日時: 2017/01/01 22:24
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
- 参照: 謎のトレーナー、ロー。その正体は、ゴエティア七魔卿が一人ロノウェ!
「GO shout!!! ガマゲロゲ!」
ロノウェの雄叫びと共に繰り出されたポケモンは、身体にコブを持つ大きな蛙のようなポケモンだ。
『information
ガマゲロゲ 振動ポケモン
コブを振動させて空気を揺らし
音波を出せる。拳のコブを振動
させればパンチの威力も増大する。』
水と地面タイプのポケモン、ガマゲロゲだ。
「ニューラ、もう少し頑張ってもらうよ。冷凍パンチ!」
素早く不規則な動きでガマゲロゲとの距離を詰め、ニューラは冷気を纏った拳を突き出す。
しかし、
「甘い甘いぜ甘すぎるゥ! ガマゲロゲ、冷凍パンチ!」
ニューラの拳を受けても怯まず、ガマゲロゲもすぐさま冷気を込めた拳を繰り出し、ニューラを殴り飛ばした。
カウンターで凌いだとはいえバクオングの瓦割りを受けていたニューラはさすがに耐え切れず、戦闘不能となってしまう。
「ニューラ、戻りな。上出来だ」
ニューラを戻し、スグリは次のボールを手に取る。
「まずは一匹ィ! こいつ一匹で残りの貴様のポケモンを全て刈り取ってやるぜ!」
調子付くロノウェに対してもスグリは顔色一つ変えず、次のポケモンを繰り出す。
「出て来い、フローゼル!」
スグリの二番手は同じ水タイプのフローゼル。
「おやおやぁ!? ジュプトルで来ると思っていたんだがなぁ!」
「冷凍パンチを見れば、さすがにジュプトルは出せないね。さて、ちょっと質問をしようか」
バトルを再開させる前に、スグリはロノウェへ疑問をぶつける。
「ゴエティア魔神卿が、なぜこの大会に参加した? この大会は中継されている。テレビに魔神卿の姿が写れば、活動はしにくくなるはずだ」
「逆だぜ逆! テレビ中継を通して、ゴエティアの実力を知らしめる! そうすりゃゴエティアがどんだけヤバい組織か分かるよなぁ!」
「だったらもう一つ上のレギュレーションに出た方がいいはずだ。ここはバッジ数四つから六つ。そんなに強さは伝わらないだろ」
「そこを突くのはナンセンスってモンだぜ!? 急な作戦だったから、ジム周りが間に合わなかったんだよ! 言わせんな!」
会場からは笑い声一つ漏れない。とても笑える空気ではないからだ。
「それにな! 例えこのレギュレーションだろうとも、実力派の選手は目白押し! さらにこの会場を容易く支配する組織力! これだけで十分俺たちのヤバさは分かるだろうがよォ!?」
苛立ちを隠しもせずにロノウェは叫び続ける。
「さあさあ! もういいな!? 待ち切れねえよ、バトルを再開しようぜ! ガマゲロゲ、ハイパーボイス!」
ガマゲロゲが頭のコブを振動させ、大音量の音波を放つ。
「フローゼル、躱してアクアジェット!」
音波を躱すと、フローゼルは体に水を纏い、目にも留まらぬ速度で突撃する。
ガマゲロゲの腹部へと激突、しかし、
「甘いっつってんだろうがよォ!? ガマゲロゲ、瓦割り!」
ガマゲロゲは地に足を付けて踏み止まり、すぐさま手刀を振り下ろして反撃する。
「遅い! フローゼル、リキッドブレード!」
フローゼルが右掌を広げると、水が噴き出し、水の刀を作り上げる。
その刀を握り、手刀を躱し、フローゼルは横腹を狙って刀を振り抜き、ガマゲロゲを切り裂く。
「ガマゲロゲ、冷凍パンチだぁ! 叩き込め!」
ガマゲロゲが両手に冷気を纏わせ、そのまま連続パンチを繰り出すが、
「フローゼル、躱してもう一発だ!」
フローゼルは最低限の動きでガマゲロゲの拳を躱し続ける。
隙が出来たところに、フローゼルは手にしたままの刀をもう一度振り抜き、再びガマゲロゲを切り裂いた。
「ちぃっ、ちょこまかと鬱陶しいなァ! それなら!」
ニヤリと笑い、ロノウェはエレキギターを掻き鳴らし、叫ぶ。
「身も心も痺れさせるぜェ! ガマゲロゲ、バグノイズ!」
ガマゲロゲが額のコブを思い切り振動させ、耳をつんざくノイズを放つ。
ロノウェの掻き鳴らすエレキギターの音と混ざり、その音はフィールドどころか会場全体にまで響き渡る。
「今だぜガマゲロゲ! ハイドロポンプ!」
ノイズを受けて動きを止められたフローゼルへ、ガマゲロゲは大量の水を噴射し、フローゼルを吹き飛ばした。
「……チッ、フローゼル、まだ行けるか?」
スグリの言葉に応えてフローゼルは起き上がり、頷く。
「フローゼル、アクアジェット!」
体に水を纏い、フローゼルは再び突撃する。
今度はガマゲロゲの腕を正確に貫き、そのまま後方へと駆け抜けていく。
「ガマゲロゲ、撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
ガマゲロゲはすぐに振り向き、大量の水を噴射するが、高速で動き回るフローゼルを捉えられず、
「フローゼル、冷凍パンチ!」
旋回して戻って来たフローゼルが冷気を込めた拳を突き出し、ガマゲロゲの腹部を殴る。
「効かねえぜ! ガマゲロゲ、瓦割り!」
「遅い! フローゼル、噛み砕く!」
振り下ろされるガマゲロゲの手刀を躱し、フローゼルはガマゲロゲの腕へと食らい付き、すぐに離れる。
「リキッドブレード!」
さらにフローゼルは水の刀を作り上げてガマゲロゲを背後から切り裂き、すぐに飛び退いてスグリの元へと戻る。
「素早さだけは一流だな!? だがそんな戦法、いつまでも通用すると思うな!」
「だったら破ってみせなよ。フローゼル、アクアジェット!」
フローゼルが体に水を纏い、目にも留まらぬスピードで突撃を仕掛ける。
しかし。
「上等だオラァ! ガマゲロゲ、バグノイズ!」
ガマゲロゲが全身のコブを思い切り震わせ、全方位へと耳をつんざく破壊のノイズを放つ。
空気の振動によりフローゼルを覆う水を掻き消し、フローゼルの動きを完全に止め、
「ハイパァァァボイスゥゥゥゥッ!」
そのコブをさらに大きく振動させ、周りの空気ごとフローゼルを派手に吹き飛ばした。
「フローゼル!?」
フローゼルは床と平行に勢いよく吹き飛ばされ、壁に激突してそのまま戦闘不能となった。
「ちっ……フローゼル、よく頑張った」
壁にめり込むフローゼルをボールに戻し、スグリはルール上最後となるボールを手に取る。
「ヒャーハハハァ! 無駄だ無駄だぜ無駄なんだよォ! それじゃあお次がフィナーレだ!最後のポケモンを出してこいよ! オラオラオラオラァ!」
狂ったようにエレキギターを掻き鳴らし、ロノウェが轟き叫ぶ。
「へっ、こいつで二体抜きしてやるよ。出てこい、ジュプトル!」
スグリの最後のポケモンは、エースポケモンのジュプトルだ。
「来たなジュプトルゥ! ガマゲロゲ一体でそいつも倒し、その後ハルもぶっ潰す! タイトルを獲ってる実力派のトレーナーでも、魔神卿には手も足も出ねえってことを、思い知らせてやるぜぇ!」
「ここまでは想定内だよ。御託はいいから、掛かって来れば?」
ロノウェは恐怖をばら撒く狂った笑みを、スグリは小さく不敵な笑みを浮かべ、互いの敵をじっと見据える。
- 第54話 Astaroth ( No.110 )
- 日時: 2017/01/05 11:44
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
- 参照: 魔神卿ロノウェ相手に善戦を見せるスグリ。そして——
「行くぜぇ! ガマゲロゲ、ハイドロポンプ!」
ガマゲロゲが大きく息を吸い込み、大量の水を噴射する。
「ジュプトル、躱して接近だ」
水柱を躱しつつ、ジュプトルは少しずつガマゲロゲとの距離を詰めていく。
「そのジュプトルも大方スピードタイプだろう! だったら、こっちもその動き、止めてやるぜ!」
会場にエレキギターの音を響かせ、ロノウェが引き裂くような笑みを浮かべる。
「聞かせてやるぜ、破壊の叫び! ガマゲロゲ、バグノ——」
「リーフブレード!」
一瞬だった。
ジュプトルの腕から生える葉が刃のように伸びたかと思うと、一気に急加速し、ガマゲロゲがノイズを放つよりも早く、かつ的確に、ガマゲロゲを切り裂いた。
「な……にィ!? っ……ガマゲロゲ!?」
ガマゲロゲの体がぐらりと傾く。
ジュプトルが構えを解いたその刹那、ガマゲロゲは仰向けに倒れ、戦闘不能となった。
「遅いんだよ、動きがね。そもそも、タイプ相性不利で鈍足なそのガマゲロゲでオレのジュプトルに勝とうってその考えが間違ってんだよ」
スグリがニヤリと笑う。
自身の親指を立て、その爪で首を切るような仕草を見せ。
「あんたの言葉、そのまま借りるよ。お次がフィナーレだ」
「ぐぅぅぅぅ……!」
怒りを隠そうとすらせず、憤怒の形相を浮かべ。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
我を忘れて暴走する獣のように、雄叫びを上げる。
「俺様をコケにしやがったな! ぜってえ許さねえ! 俺様の相棒で、地獄送りにしてやるぜオラァ!」
怒号と共に、ロノウェが最後のボールを取り出す。
しかし。
『ロノウェ、ストップ。それ以上は禁則事項だったはずだよね?』
突如。
会場のスピーカー越しに、マイクを通した女性の声が響く。
会場の全員、その声に聞き覚えがあった。
それもそのはず。
その声の主は、ロノウェが正体を現すまで実況を続けていた女性アナウンサーだったからだ。確か名はタロットと言ったか。
ハルたち観客は思考が追いつかない中、実況席の方に目を向ける。
ゴエティアの下っ端たちに捕えられたはずのアナウンサーが、いつの間にか席に戻って来ていた。
『今回はここまで。そろそろ撤退するよ。今の私たち魔神卿は一定以上の力を出せないんだから』
会場の雰囲気を完全に無視して、アナウンサーは人が変わったように好き勝手に喋り続ける。
しかし。
「何だって……?」
会場の大多数が、気づいた。
絶対に聞き逃すことのできない、一言を。
「『私たち魔神卿』!? それじゃああいつも、ゴエティアなのか!?」
会場のどこかで叫び声が上がる。
それに呼応し、観客席全体が混乱に包まれていく。
『はいはいストップストップ。今から自己紹介するから、ちょっと静かにしてよね』
そんな会場の様子に呆れたように一息つき、女性アナウンサーは一言で会場を支配する。
静まり返った会場に、マイク越しの声が響く。
『それじゃあ今大会最後のサプライズを! 私はゴエティア七魔卿が一人、魔神卿アスタロト! 名前だけでも覚えて帰ってね!』
刹那、実況席の窓ガラスが粉々に砕け散り、そこから始祖鳥のようなポケモンに掴まる女性アナウンサー——アスタロトが飛び出す。
『information
アーケオス 最古鳥ポケモン
飛ぶよりも走る方が得意。
空から獲物を探して襲い掛かり
逃しても走り回って捕らえる。』
「アーケオス、龍の息吹!」
アーケオスは一声上げると、スグリの目の前の床に龍の息吹を放って爆煙を起こし、手出しを防ぐ。
そのままアーケオスに掴まったアスタロトは高度を下げ、ロノウェへと手を伸ばす。
「さ、ロノウェ、帰るよ」
「ぐぅぅぅぅ……! アス、俺ぁ暴れ足んねえぜ。あいつだけでも潰させろ、ちくしょう……」
「もーっ、ダメだってば。これ以上暴れ過ぎると、王様に怒られちゃうよ。ほら、掴まって」
「……チッ」
ロノウェは不満そうな表情を浮かべながらも、渋々ギターを背負ってアスタロトの手を取り、アーケオスに掴まる。
二人に掴まれながらも、アーケオスは軽々と飛び立った。
爆煙か晴れた時には、既にアーケオスは会場の天井付近まで飛び上がっていた。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 次に会うときは、必ずぶっ潰してやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
会場全体に。
憤怒の形相を浮かべたロノウェの怒号が、爆音の如く轟き渡る。
「必ずだぁ! 覚えてろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
その直後。
魔神卿二人を連れたアーケオスは甲高く鳴き、天井を貫き、飛び去っていった。
その後は結局大会は中止となり、ハル対スグリの決勝戦はお流れとされてしまった。
会場がざわついている間に、いつの間にか観客席を取り囲んでいた黒装束の下っ端たちも姿を消してしまった。
「他のレギュレーションでは、ゴエティアの介入は一切無かったみたいだね」
「ってことは、やっぱりあのロノウェって人が言ってたことは正しかったのかな」
「まさか魔神卿が大会に紛れ込んでいたなんて。想像すらしていませんでしたわよ」
会場のロビーで、ハルたち三人はターミナルに映るニュースを眺めている。
ちなみにスグリは正体を現したロノウェと戦っているということで、警察の捜査協力のために話を聞かれておりここにはいない。
「ハルとスグリ君の決勝戦、見たかったなぁ」
「私も残念ですわ。私が認める二人のポケモントレーナーの試合を見られる、またとない機会でしたのに」
先程も言った通り、大会本部は警察の捜査を優先させるため、大会を中止としてしまった。
「僕も決勝で戦いたかったよ、大会のあの場所で。スグリ君相手に、僕のメガシンカの力がどこまで通用するのか知りたかった」
「まぁ仕方ありませんわよ。貴方たち二人は友達なのでしょう? いつでも戦える機会はありますわ」
さて、とエストレはボールを取り出し、
「私はそろそろ次の街へ行くわ。それじゃ、ハル、サヤナ。またどこかでね」
二人に手を振り、パートナーのハッサムを引き連れ、先に会場を出て行った。
ハルとサヤナもポケモンセンターに戻り、しばらく待っていると、
「お待たせ。やっと終わったよ」
警察に呼ばれていたスグリが、ようやく戻ってきた。
「おかえり、スグリ君。大変だったね」
「まぁねー。ロノウェの相手がオレでよかったよ。相手はゴエティアの幹部クラス、負けてたら何をされるか分かったもんじゃない。オレみたいな強いヤツでよかったってところかな」
そう言ってスグリは得意げに笑う。
「それじゃハル君、始めよう」
「うん。交流所だね」
「……えっ? えっ? 何が始まるの?」
ハルとスグリの会話の内容を、全く理解できていないサヤナ。
「実はね、警察に向かう前にスグリ君と約束してたんだ」
「そそ。ここまで進んだのにここで終わりなんて消化不良っしょ。だから」
スグリはそこで一拍置き、さらに続ける。
「今から始めるのさ。オレとハル君の、事実上の決勝戦をね」
- 第55話 決勝 ( No.111 )
- 日時: 2017/01/06 08:45
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: rS2QK8cL)
- 参照: ハル対スグリ、事実上の決勝戦——
ハダレタウンポケモンセンター地下の交流所。
そのバトルフィールドに、二人のポケモントレーナーが立つ。
「大会に沿って、使用ポケモンは三匹。ポケモンの交代は自由。それでいいよね」
「うん。それじゃ、始めようか。決勝戦をね」
中止となったハダレ大会、決勝戦進出トレーナー。
ハルとスグリだ。
傍では、サヤナがじっとそのバトルを見守る。
「出て来い、オンバット!」
「出てきて、ワルビル!」
スグリの初手はオンバット、対するレオはワルビルを繰り出す。
(オンバットから来たか……ワルビルの地面技が当たらないけど、他の技は普通に通る。そんなに不利ってわけじゃないな)
「それじゃあオンバット、まずは龍の息吹!」
オンバットが息を吸い込み、龍の力を込めた強烈な息吹を放つ。
「ワルビル、躱してシャドークロー!」
吹き付ける息吹を躱し、ワルビルは両腕に影の爪を作り上げ、オンバットへと飛びかかる。
しかし、
「遅い遅い、鋼の翼!」
軽やかな動きで影の爪を躱すと、オンバットは翼を硬化させ、ワルビルの額へと翼を叩きつける。
「っ、ワルビル、燕返し!」
翼の一撃を受けたワルビルはすぐに体勢を整え、腕を刀身のように白く輝かせ、再びオンバットへと向かっていく。
「なるほど、必中技ね。それならオンバット、もう一度鋼の翼!」
ワルビルが立て続けに振り抜く腕を、オンバットは鋼の翼で次々と防いでいく。
「今だワルビル! 噛み砕く!」
だがこの次の動きはワルビルの方が早かった。
ワルビルは大顎を開き、オンバットの体に噛み付き、頑丈な牙を食い込ませる。
「まだまだ。オンバット、パルスビーム!」
ワルビルに噛み付かれながら、オンバットはスピーカーのような耳を震わせ、超音波と共に光の弾を放つ。
その光の弾は炸裂すると甲高いノイズを放ち、ワルビルを怯ませる。
「オンバット、アクロバット!」
牙の拘束が緩んだその隙にオンバットはワルビルの大顎から脱出し、ワルビルの背後に回ると、翼を叩きつける。
「オレのオンバットは火力が低いから、相手に捕まると面倒なことになる。そのためにこの技を覚えさせてるんだ」
翼を叩きつけられたワルビルは頭を振って立て直し、オンバットを睨み付ける。
「なるほどね……ワルビル、落ち着いて。冷静に行くよ」
ワルビルをなだめ、ハルは次の指示を出していく。
「よしワルビル、穴を掘る!」
ワルビルは素早く地面に穴を掘り、地中へと姿を隠す。
当然ながら飛行タイプのオンバットに地面技は効かない、つまり、
「地中から別の技で強襲を仕掛けてくるつもりかな。オンバット、気をつけて」
パタパタと飛ぶオンバットは、いつ飛び出してくるか分からないワルビルを警戒して周囲を見渡す。
「……今だ! シャドークロー!」
オンバットの目線を見定め、ワルビルはその死角から飛び出し、両手に纏った影の爪で切り掛かる。
だが。
「オンバット、躱して龍の息吹!」
ワルビルが飛び出してくるのが見えていなかったはずなのに、オンバットは正確にワルビルの影の爪を躱すと、すぐさま龍の力を帯びた息吹を吹き付ける。
「っ!? ワルビル、防いで!」
外したシャドークローをもう一度振り抜き、ワルビルは何とかオンバットの攻撃を防ぎ切った。
「忘れちゃってるかな。オンバットは超音波を自由に操る。人や他のポケモンには聞こえない超音波を放って、隠れたポケモンの場所を探しだせるんだよ」
そう言われてハルは思い出す。
シュンインシティでサヤナがポケモン泥棒に遭ったとき、このオンバットが超音波で犯人を探し当てていた。
「オンバット、鋼の翼!」
「ワルビル、燕返しで迎え撃って!」
翼を硬化させて飛び掛かってくるオンバットに対し、ワルビルは剣のように腕を振り抜き迎え撃つ。
腕をかいくぐるように接近するオンバットだが、必中攻撃の燕返しを躱すことはできず、腕を叩きつけられ吹き飛ばされてしまう。
「今だワルビル! 噛み砕く!」
「っ、やっぱダメか。オンバット、パルスビーム!」
大顎を開き、ワルビルはオンバットを追って牙を剥く。
対して、吹き飛ばされながらもオンバットは耳から超音波と共に光の弾を放つ。
ワルビルの口内に光の弾がぶつかり、炸裂して甲高いノイズを放ち、ワルビルの体勢を崩す。
「今だオンバット、アクロバット!」
一瞬にして進路を切り替え、オンバットはワルビルへと一気に迫り、翼を振り下ろす。
「っ、ワルビル、シャドークロー!」
立て直したワルビルは咄嗟に影の爪を振るいながら振り向き、どうにかオンバットの翼を防ぐ。
(っ、さすがスグリ君のポケモン、動きの切り替えが早い! まるで隙を見せてこないな……)
スグリのポケモンは素早いだけでなく、技と技、動きと動きの切り替えが非常に早い。
僅かな隙を正確に見定めていかなければ、ろくにダメージも与えられずに押し切られてしまう。
「ならやっぱり必中技で攻める! ワルビル、燕返し!」
両腕を刀身のように白く輝かせ、ワルビルは勢いよくオンバットへと向かっていく。
「なら動きを止める! オンバット、パルスビーム!」
しかし対するオンバットは超音波と共にワルビルのすぐ手前、床へと光の弾を放つ。
床に着弾した光の弾は炸裂し、甲高いノイズを放ち、再びワルビルの動きを止めてしまう。
「龍の息吹!」
すかさずオンバットは龍の力を込めた息吹を吹き付け、ワルビルを逆に吹き飛ばす。
「っ、ワルビル!」
「さあ休んでる暇はないよ。鋼の翼!」
さらにオンバットは翼を鋼の如く硬化させ、再びワルビルへと飛んでいく。
「迎え撃つ! ワルビル、燕返し!」
オンバットの鋼の翼に対し、ワルビルは両腕を一瞬で素早く振り下ろし、逆にオンバットを押し返す。
「まだまだ! オンバット、アクロバット!」
押し返されたオンバットはその勢いすら利用し、軽やかにワルビルの背後まで回り込む。
しかし。
「燕返し!」
両腕を床につけたまま、ワルビルは尻尾を刀身のように輝かせ、オンバットが翼を振り下ろすよりも早く尻尾を振り上げ、オンバットを打ち上げた。
「っ、やるじゃんか! オンバット、パルスビーム!」
予期せぬ反撃を食らっても、スグリは動じない。
オンバットも大きく打ち上げられながらも、すぐさま下を向き、超音波と共に放とうとするが、
「ワルビル、叫べ!」
それを見たワルビルは大きく口を開き、力一杯吼える。
何の技でもない、ただの咆哮。
しかし。
突然の轟音を受け、オンバットの放つ音波の波が崩れた。
「な……っ!?」
「今だワルビル! 噛み砕く!」
音の波を崩され、上手く音波を放てなかったオンバットへ、今度こそワルビルは大顎を開いて襲い掛かる。
オンバットに頑丈な牙を食い込ませ、大きく首を振り、そのまま地面へと投げ捨てた。
「っ、オンバット……!」
耐久力が低いのか、オンバットは床に叩きつけられた衝撃も重なり、戦闘不能になってしまった。
「オンバット、戻れ。よくやった」
少し悔しげな表情を浮かべ、スグリは倒れたオンバットをボールに戻す。
「やるじゃん、ハル君。このオレから先手を取るなんてさ」
「いやぁ、たまたまだよ。オンバットの超音波は精密なものだから、横から大きな音を入れればそれを崩せるんじゃないかって、ふと思っただけだよ」
「オレのオンバットにこんな弱点があったなんてね。おかげで特訓メニューが一つ増えた」
だけど、とスグリは続け、
「大会中、オレは気付いた。ハル君、君の手持ちには明確な弱点がある」
「弱点……?」
「ああ。そんなに難しいことじゃないさ。それを今から教えてあげるよ」
すぐにいつもの得意げな笑みを浮かべ、次のボールを取り出す。
- 第56話 弱点 ( No.112 )
- 日時: 2017/01/08 20:41
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /yMGlo86)
- 参照: スグリの言う、ハルの弱点とは——
「出て来い、フローゼル!」
スグリの二番手はブイゼルの進化系、フローゼル。ディントス教の司教を余裕を持って倒した、実力派のポケモンだ。
「水タイプか……ワルビル、相性は不利だけど、もう少し頼むよ」
ここでワルビルは引かせられないので、ハルは引き続きワルビルで戦う。
「それじゃあ行こうか。フローゼル、アクアジェット!」
水を纏ったかと思うと、目にも留まらぬ猛スピードでフローゼルは突撃を仕掛ける。
反撃する隙も与えず、一瞬のうちにワルビルを突き飛ばした。
「くっ、速い……! ワルビル、穴を掘る!」
吹き飛ばされたワルビルは着地と同時に穴を掘り、地中へと姿を隠す。
姿の見えない地中から、密かにフローゼルとの距離を詰めていく。
しかし、
「フローゼル、出てきた瞬間に躱して冷凍パンチだ」
その直後ワルビルがフローゼルの足元から飛び出すも、フローゼルは素早く飛び退いてワルビルの強襲を躱す。
そしてすぐさま冷気を込めた拳を叩きつけ、ワルビルを殴り飛ばした。
「ワルビル!?」
吹き飛ばされて地面に倒れ、ワルビルは戦闘不能となってしまう。
「ワルビル、お疲れ様。休んでてね」
ワルビルをボールに戻したところで、
「ハル君の試合を見てて考えた。ハル君の手持ちポケモンは、水タイプに弱いよね」
唐突に、スグリが口を開く。
「えっ……?」
「ワルビルとヒノヤコマは水技を効果抜群で受ける。ルカリオとエーフィは相性の有利不利はないけど、有効打は持っていない。だからオレはここでフローゼルを出したんだ。オンバットで程よく削ってエンジンを掛けて、フローゼルで一気に抜き去るためにね」
「それが、僕の弱点ってこと……?」
「そそ。だから言ったでしょ、そんなに難しいことじゃないって。水タイプに強いポケモンを捕まえたり有効打を覚えさせれば済むけど、このバトルという展開においては絶対に覆らない弱点だよね」
確かに、ハルの手持ちは総合的に見れば水タイプに弱い。
しかし、
「今そんなことが分かったところで、どうしようもない。僕は僕の考えていた通りに戦うよ」
すぐに切り替え、ハルは次のボールを取り出す。
「出てきて、エーフィ!」
ハルの二番手はエーフィ。ルカリオは取っておきたいし、ヒノヤコマは流石に出せない。
「そう来ると思ってたよ。オレのフローゼルのスピードに、どこまでついてこられるかな! フローゼル、噛み砕く!」
フローゼルが二股の尻尾をスクリューのように回転させ、勢いよく飛び出す。
牙を剥き、エーフィへと襲い掛かる。
「エーフィ、躱してシャドーボール!」
エーフィも素早さには自信がある。
フローゼルの牙を軽やかに躱し、即座に黒い影の弾を放ち反撃する。
「フローゼル、躱してアクアジェット!」
しかしフローゼルも影の弾を跳躍して躱すと、水を纏い猛スピードで突っ込む。
弾丸のように飛び出すフローゼルの突撃は、回避する隙すら与えず、エーフィを突き崩し、
「冷凍パンチ!」
さらに冷気を纏った拳を突き出し、エーフィを殴り飛ばす。
「っ、エーフィ! 大丈夫!?」
床に倒れたエーフィは、それでもハルの言葉に頷き、起き上がる。
(くっ、あのアクアジェット、速すぎないか……?)
やはりこのフローゼル、スグリの手持ちの中でもトップクラスの素早さを持つ。
特に厄介なのがアクアジェットだ。元々の素早さに先制攻撃の特性も加わり、初速から圧倒的なスピードを叩き出してくる。
「だったら、エーフィ、スピードスター!」
ハルが導き出した答えはやはり必中技。エーフィは二股の尻尾を振り抜き、無数の星形弾を飛ばす。
「エーフィも必中技持ちか。ま、関係ないけど……フローゼル、リキッドブレード!」
フローゼルが拳を開くと、その掌から水が噴き出し、水の剣を作り上げる。
剣を手に取り、フローゼルは一太刀で星形弾を真っ二つに砕くと、剣を携えたままエーフィとの距離を詰めていく。
「エーフィ、サイコショット!」
エーフィの額の珠が輝き、念力の弾が放出される。
フローゼルの突き出す剣と激突、爆発を起こし、水の剣を打ち消した。
「噛み砕く!」
爆風の中を潜り抜け、フローゼルは牙を剥いてエーフィへと襲い掛かる。
「来た……! エーフィ、マジカルシャイン!」
対するエーフィの額の珠が白く輝き出す。
刹那、その珠から眩い純白の光が放出され、突っ込んできたフローゼルを飲み込む。
噛み砕くは悪タイプの技。タイプ相性もあり、フェアリー技であるマジカルシャインを押し切ることは出来ず、フローゼルは逆に吹き飛ばされてしまう。
「今だ! スピードスター!」
尻尾を振り抜き、エーフィは無数の星形弾を飛ばす。
「甘い甘い! フローゼル、リキッドブレード!」
立ち上がったフローゼルの手に、水の剣が作り上げられる。
剣を突き出し、星形弾を打ち砕きながらフローゼルは突き進み、剣を横薙ぎに振るってエーフィを切り裂いた。
「フローゼル、冷凍パンチ!」
「くっ……エーフィ、シャドーボール!」
拳に冷気を纏わせるフローゼルに対し、エーフィは漆黒の影の弾を放出する。
フローゼルの拳とぶつかり、腕を覆う冷気を掻き消した。
「サイコショット!」
続けざまにエーフィはサイコパワーを集め、念力の弾を放出。
しかし、
「フローゼル、噛み砕く!」
待ってましたとばかりにフローゼルは大口を開けて牙を剥く。
念力の弾を容易く食い破り、その奥にいるエーフィ目掛けて襲い掛かる。
「躱してシャドーボール!」
それに応じ、エーフィは小さくバックステップし、フローゼルの牙を躱す。
その直後に黒い影の弾が放たれ、フローゼルの脳天に直撃、その体勢を大きく崩した。
「吹き飛ばせ! マジカルシャイン!」
「押し切る! リキッドブレード!」
エーフィの額の珠が白く輝き、フローゼルの広げた掌から水が噴出する。
フローゼルの水の刃が振るわれ、エーフィを一の字に切り裂く。
直後、額の珠から純白の光が放出され、フローゼルを覆い尽くし、光に飲み込んだ。
「エーフィ……!」
「フローゼル!?」
純白の光の前に踏み止まれず、フローゼルは吹き飛ばされる。
それでもまだ低く唸り、肩で息を吐きながら何とか立ち上がる。
そして。
一方のエーフィの体がぐらりと傾き、そのまま地面へと倒れる。
「エーフィ……お疲れ様。よく頑張ったね」
エーフィの方が被弾も多かったため、仕方がない。ハルはエーフィの頭を撫で、ボールへと戻す。
「それじゃあ、これで最後だ。出てきて、ルカリオ!」
ハルの最後のポケモンは、やはりエースのルカリオ。
「最後は思った通り、ルカリオか。フローゼル、気を付けろ。今までの相手とは違うぞ」
フローゼルもダメージは相当なものだか、スグリの言葉に応えて頷き、相手となるルカリオを見据える。
「行くよ! ルカリオ、ボーンラッシュ!」
「来い! フローゼル、リキッドブレード!」
ルカリオが掌から波導を生み出し、フローゼルが掌から水を噴き出す。
骨の形のロッドを手にしたルカリオと、水の剣を手にしたフローゼルが、正面から真っ向勝負を仕掛ける。
- 第57話 エース ( No.113 )
- 日時: 2017/01/10 13:34
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
ルカリオが波導の骨のロッドを突き出し、フローゼルが水の剣を大振りに振るう。
お互いの得物の威力はほぼ互角。
しかしその直後、ダメージが溜まっていたからか、フローゼルがふらつく。
「発勁!」
その隙を逃さず、ルカリオは波導を纏った右手を思い切りフローゼルへと叩きつける。
脳天に波導の拳を叩き込まれたフローゼルはその場に倒れ伏し、戦闘不能となった。
「フローゼル、よくやった。休んでてくれ」
フローゼルをボールに戻し、スグリもこれで最後となる三番目のボールを取り出す。
「最後はこいつだ。出て来い、ジュプトル!」
スグリの最後のポケモンは、エースのジュプトル。
「やっぱりジュプトルか……だけど相手にとって不足なし。ルカリオ、勝つぞ!」
「ジュプトル、メガシンカポケモンを倒せば、オレたちの士気も上がる。本気で行こう」
お互いのトレーナーの言葉に応え、お互いのポケモンはフィールドに立つ。
「ルカリオ、発勁!」
先手を取り、ルカリオが動き出す。
再び右手に波導を纏わせ、ジュプトルとの距離を一気に詰めていく。
「ジュプトル、燕返し!」
対するジュプトルも動き出した。向かってくるルカリオを迎え撃つように、勢いよく飛び出していく。
ルカリオの振り下ろす右手を躱すと、流れるように白く輝く腕を振り抜き、ルカリオを逆に吹き飛ばす。
「リーフブレード!」
さらにジュプトルは腕の葉を刃のように伸ばし、そのまま斬りかかってくる。
「っ、ルカリオ、波導弾!」
ルカリオは素早く立て直すと、右手を構えて掌から青い波導の念弾を放出する。
ジュプトルは腕の刃を振るって念弾を両断し、さらにもう一太刀でルカリオを狙うも、ルカリオはその間に距離を取り、反撃の体勢を構える。
「ルカリオ、サイコパンチ!」
「遅い遅い! ジュプトル、電光石火!」
ルカリオが拳に念力を纏わせる。
しかし動き出そうとしたその時には、既にジュプトルは目にも留まらぬ速度で距離を詰めており、ルカリオを突き飛ばす。
「流石はエースポケモン……ルカリオ! 僕たちも本気で行くよ!」
ハルの言葉を受け、ルカリオは無言のまま頷く。
「来るか……!」
スグリの表情が、ほんの僅かに強張る。
右手を掲げ、ハルは思い切り叫ぶ。
「行くよルカリオ! メガシンカだ!」
ハルの右手の腕輪に填め込まれたキーストーンが光を放ち、ルカリオのメガストーンと光を繋げる。
七色の光に包まれ、ルカリオの姿が変化していく。
波導の力とメガエネルギーが体内を駆け巡り、メガシンカを遂げたルカリオが天高く咆哮する。
「遂に来たか、メガルカリオ……! ジュプトル、メガシンカの強さはサオヒメジム戦で理解してるね。気をつけて戦うぞ」
スグリもアリスとのジム戦に勝利しているため、メガシンカポケモンと戦うのは初めてではないが、それでもメガシンカは他のものとは一線を画す能力。
「……よし! ルカリオ、発勁!」
地面に右手を叩きつけ、爆発的な波導を生み出し、ルカリオは地を蹴って飛び出す。
「ジュプトル、躱してリーフブレード!」
振り下ろされるルカリオの右手を躱し、すぐさまジュプトルは腕の葉を伸ばして斬りかかる。
「ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手を覆っていた波導が形を変え、長い骨の形をしたロッドとなる。
手にした骨のロッドを振り抜き、ルカリオはジュプトルの振るう葉の刃を防いだ。
「波導弾!」
「もう一度リーフブレード!」
ルカリオの構えた掌から波導が噴き出し、青い波導の念弾が放出される。
ジュプトルは再び腕の葉を振るうが、しかしメガシンカしたことで波導弾の威力が上がっている。
先程のように叩き斬ることはできず、波導弾を防ぐのが精一杯だった。
「サイコパンチ!」
「躱して燕返し!」
念力を拳に纏わせるルカリオに対し、ジュプトルは腕を刀身のように輝かせて立ち向かっていく。
真っ直ぐに突き出されるルカリオの拳を躱し、剣を振るうように腕を叩きつける。
「発勁!」
だが腕の一撃を加えた直後、ジュプトルは爆発的な波導を帯びたルカリオの右手を叩きつけられ、大きく吹き飛ばされた。
「燕返し程度じゃ、怯まないってか……! だったら!」
まだ秘策があるのか、スグリの口元が僅かに釣り上がる。
着地したジュプトルが、カッと目を見開く。
「ジュプトル、草の誓いだ!」
ジュプトルが床に手を触れ、力を込める。
直後、ルカリオの足元から、風と共に無数の葉の竜巻が吹き上がった。
「なっ……!?」
予期すらしない下からの一撃に、なす術もなくルカリオは宙に放り投げられる。
「リーフブレード!」
地面を蹴り、ジュプトルが大きく跳躍する。
宙を舞うルカリオへと一気に近づき、腕の葉を伸ばして振り抜き、ルカリオを切り裂いた。
「ルカリオ! 大丈夫!?」
ルカリオが床へと撃墜される。効果今一つとはいえ、的確に急所を切り裂いた一撃だった。
「畳み掛けろ! ジュプトル、燕返し!」
さらにジュプトルは絶対に避けられない必中攻撃を仕掛けてくる。
「っ、ルカリオ、ボーンラッシュ!」
立ち上がったルカリオの右手から波導が噴き出し、骨の形のロッドを作り上げる。
ジュプトルの流れるような四肢の攻撃を、骨のロッドを振り回し、何とか防ぎ切った。
「波導弾!」
一旦距離を取ったジュプトルに対し、ルカリオは両手から骨のロッドの形を変え、青い波導の念弾を放出する。
「ジュプトル、リーフブレード!」
波導弾もまた必中技。ジュプトルは腕の葉を伸ばし、波導弾を防ぐ。
「ルカリオ、発勁!」
「ジュプトル、草の誓い!」
右手に波導を纏わせたルカリオが飛び出すのと同時、ジュプトルは床に手を着き、ルカリオの前進を遮る形で床から無数の葉を乗せた竜巻を柱のように放つ。
竜巻を躱しつつ、ルカリオは少しずつジュプトルとの距離を詰めていく。
「避けてくるなら……ジュプトル、躱してリーフブレード!」
振り下ろされるルカリオの右手を躱し、すぐさまジュプトルは腕の葉を刃のように伸ばし、ルカリオを斬りつける。
「サイコパンチ!」
だがそれに合わせ、ルカリオは念力を纏った左拳を裏拳のように放つ。
葉の刃と念力の拳が激突し、火花を起こして競り合うも、
「波導弾だ!」
一瞬の隙を突いたルカリオが青い波導の念弾を撃ち出し、攻撃直後のジュプトルを吹き飛ばした。
「一気に決めるよ! ルカリオ、発勁!」
「やばっ……ジュプトル、草の誓い!」
ルカリオが右手に爆発的な波導を纏い、ジュプトルへと突っ込んでいく。
対して、ジュプトルの体が緑色の光に包まれる。
体力が少なくなると草タイプの技の威力が上がる特性、深緑だ。
次の瞬間、ルカリオの足元から先程よりも規模を増した葉の竜巻が吹き上がり、ルカリオを宙に吹き飛ばす。
「ルカリオ、そのまま空から発勁だ!」
「迎え撃てジュプトル! リーフブレード!」
打ち上げられたルカリオだが、逆に落下の勢いを利用し、波導を纏った右手を構える。
対するジュプトルは両腕の葉を刃のように鋭く伸ばし、ルカリオを迎え撃つ。
刹那。
両者が、激突した。
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