二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 魔王と救世の絆
日時: 2018/04/30 21:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: OiWubliv)

こんにちはこんばんはおはようございます。パーセンターです。
今回は紙ほか板から映像板に進出して、また懲りずにポケモンの二次小説を執筆したいと思っております。
今回は前作との繋がりはほぼ断ち切った完全新作です。
カウントすれば5作目になりますね。まだ向こうの「星と旋風の使徒」は完結しておりませんので、同時進行となります。

※注意事項(?)
・いつものことですがノープランです。更新のペースも早かったり遅かったりします。
・上でも述べていますが、前作までとの繋がりはほぼありません。まだ「星と〜」が完結していませんしね。
・登場するポケモンは第七世代までです。執筆中に第八世代が出てきたらまたその時に考えます
・上に関連して、パーセンターがよく使っているベガポケモンですが、今作では『出ません』。設定上は存在している設定ですが今作には出ません。
・ベガの技は普通に出ます。ついでにオリジナル技も結構たくさん出ます。オリ技の説明は随時公開するのでご安心ください。
・オリキャラとかオリ技の募集も近いうちにすると思います。皆さん協力お願いします。

それでは、新しい主人公の新しい物語が始まります。よろしくお願いします。

登場人物紹介
>>34
オリ技紹介
>>45

プロローグ
>>1
ハツヒタウン編——旅立ち
>>6 >>7 >>8
シュンインシティ編——経験
>>15 >>20 >>28 >>32 >>35 >>36 >>37
カザハナシティ編——ライバル
>>38 >>40 >>43 >>44 >>46
ヒザカリタウン編——出会
>>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65
サオヒメシティ編——Evolution
>>66 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>84 >>85 >>86 >>91
ハダレタウン編——大会
>>92 >>94 >>97 >>98 >>99 >>102 >>103 >>104 >>106 >>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121
カタカゲシティ編——試練
>>122 >>123 >>124 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>134 >>135 >>136 >>138 >>139 >>140 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>151
ノワキタウン編——友情
>>152 >>153 >>156 >>159 >>160 >>162 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>175 >>176 >>177
イザヨイシティ編——実力
>>178 >>180 >>181 >>182 >>183 >>184 >>185 >>186 >>187 >>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>195 >>196 >>197 >>198 >>199 >>200 >>202 >>203 >>204

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第108話 砂鮫 ( No.184 )
日時: 2017/06/09 11:03
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)


『information
 ガブリアス マッハポケモン
 高速で大地を駆け抜けて跳躍し
 ジェット機並みの速度で空を飛ぶ。
 頭の突起はセンサーの役目を持つ。』

パラレルの二番手は、ハダレタウンのアジトで見た、彼のエースであろうガバイトの進化系。
腕と背中にサメのようなヒレを持つ、青い体躯のドラゴンポケモン、ガブリアス。
「ガブリアス……ドラゴンタイプの最終進化系か」
以前戦ったガバイトの時点でかなりの実力を持っていたが、今回はさらにその進化系が相手。
「だけど、今の僕たちなら勝てる! エーフィ、サイコショット!」
額に念力を溜め込み、エーフィはサイコパワーの念弾を発射する。
しかし、
「ガブリアス、ドラゴンクロー!」
砂煙の中に紛れるように、ガブリアスの姿が掻き消えた。
「えっ……?」
突然消えたガブリアスに戸惑うハル。
そして気づいた時には既にガブリアスはエーフィの背後に回り込んでおり、龍の力を纏った爪がエーフィを切り裂いた。
「なっ……エーフィ!?」
龍爪の斬撃を受け、エーフィはその一撃で戦闘不能となってしまう。
「強い……エーフィ、ありがとう。休んでて」
エーフィをボールに戻し、ハルは次のボールを手に取る。
パラレルの目は、無言で告げる。エースを、ルカリオを出せ、と。
「……勿論、そのつもりだよ。出てきて、ルカリオ!」
ハルが二番手に選ぶはルカリオ。タイプ相性は不利だが、相手のエースにはエースをぶつけるしかない。鋼タイプのルカリオならば砂嵐も効かない。
「さあ、メガシンカを使え。全力で俺と勝負しろ。そうすれば、俺はもっと強くなれる」
「言われなくても、そのつもりだよ」
ハルが右手を掲げ、キーストーンが輝く。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンとルカリオのキーストーンの光が繋がり、七色の光がルカリオを包む。
波導の力とメガシンカエネルギーがルカリオの体内を駆け巡り、咆哮と共にルカリオはメガシンカを遂げる。
「準備は整ったな。始めるぞ。ガブリアス、穴を掘る!」
バトル開始と同時に、ガブリアスは硬い金属の床を砕き、地面へ潜る。
以前見た手法と同じ。天井は分厚いようでガブリアスが下階に落ちることはなく、背ビレだけを出したままルカリオへと突っ込んでくる。
「確か背ビレの強度はかなり強かったはず……ルカリオ、躱して発勁!」
地中から強襲を仕掛けてくるガブリアスの攻撃を躱し、ルカリオは右手に燃える炎の如き波導を纏わせる。
「ガブリアス、ドラゴンクロー!」
鋭い爪に蒼い龍の力を纏わせ、ガブリアスが龍爪を振り下ろす。
ルカリオの波導の右手と激突し、互角に競り合う。
「っ、流石はドラゴンポケモン……メガシンカしたルカリオの力と互角に渡り合えるなんて」
せめぎ合った末、両者は離れ、再び構え直す。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手を纏う波導が形を変え、長い骨のロッドを作り出す。
骨のロッドを手にし、ルカリオは地を蹴って飛び出していく。
「ガブリアス、躱せ。大文字!」
しかし、ガブリアスの姿は再び砂嵐の中に掻き消えてしまう。
ルカリオがガブリアスの姿を見失い、直後、ガブリアスはルカリオの斜め後ろに現れ、大きく息を吸い込む。
「ルカリオ、右斜め後ろ! 躱してサイコパンチ!」
ハルの指示で即座に反応し、ルカリオはガブリアスの噴き出した大の字型の炎を跳躍して回避、そのまま上空から念力を込めた拳で殴りかかる。
「躱せ」
しかし、またしてもガブリアスは砂嵐に紛れ、ルカリオの拳を躱してしまう。
「っ、速い……もしかして、特性?」
そこで勘付いたハルは素早く図鑑を取り出し、ガブリアスの特性を確認する。
「……! 砂隠れ……?」
「そうだ」
無表情のまま、パラレルはそう返す。
「ガブリアスの特性は砂隠れ。砂嵐下において回避率が上がる……つまり相手の技を避けやすくなる」
ルカリオの拳を躱したガブリアスは、パラレルの元へと戻ってくる。
「続けるぞ。ドラゴンクロー!」
両腕に蒼い光の龍爪を携え、ガブリアスが地を蹴って飛び出す。
「ルカリオ、発勁!」
ルカリオの右手から、青い炎のように波導が噴き出す。
振り下ろされるガブリアスの両腕を、ルカリオは右手を振るって捌いてゆき、
「波導弾!」
両腕の爪の動きが隙を狙い、右手を纏う青い波導が念弾に形を変えて放出され、ガブリアスの腹部に直撃した。
「よし、ルカリオ! もう一度波導弾!」
ルカリオが右手を突き出し、もう一度波導の念弾を放出する。
「必中技か。ならば……ガブリアス、穴を掘る!」
再びガブリアスは地中に潜り、背ビレだけを出して突撃する。
硬い背ビレは波導の念弾を両断し、ルカリオへと迫る。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
地中から強襲を仕掛けるガブリアスに対し、ルカリオは手にした長い骨のロッドの先端をガブリアスの腹部へ突き立てる。
そのままロッドでガブリアスを押し飛ばして体勢を崩させ、
「発勁!」
すぐさま骨のロッドを青い炎の如き形に変えて右手に纏わせ、ガブリアスへ右手を叩き込む。
「躱せガブリアス。アイアンヘッド!」
だがやはりガブリアスは砂嵐に紛れて姿を消し、ルカリオの右手はガブリアスには届かない。
直後、ルカリオの背後からガブリアスが鋼の如く硬い頭部を叩きつけ、ルカリオを吹き飛ばした。
「燃やせ。大文字!」
さらにガブリアスは大きく口を開き、大の字の形に燃え盛る炎を噴き出す。
「ルカリオ、波導弾!」
炎を前にしてすぐさまルカリオは起き上がり、突き出した右手から波導の念弾を放つ。
青い念弾は大文字の中心で炸裂し、炎を打ち消す。
「ガブリアス、ドラゴンクロー!」
「ルカリオ、発勁!」
ガブリアスが爪に蒼い龍の力を構え、ルカリオは右手に燃える炎の如き波導を生み出し、両者同時に地を蹴り、突撃する。
力を纏ったお互いの腕が激突し、火花を散らして激しく競り合う。
「アイアンヘッド!」
だがその直後、鋼の如く硬化されたガブリアスの頭がルカリオの額に叩きつけられ、ルカリオを吹き飛ばす。
「続けろ。穴を掘る!」
さらにガブリアスは床下へ潜り、背ビレだけを出して一気にルカリオとの距離を詰める。
「っ……そうだ、ルカリオ、屈んで!」
ガブリアスが地中から飛び出してきたその瞬間、ルカリオはその場に屈む。
咄嗟のことにガブリアスは目測を誤り、ルカリオのすぐ真上を通過してゆき、
「発勁!」
ルカリオはそのまま真上に波導を纏った右手を突き出し、ガブリアスを宙に打ち上げた。
「……っ!」
「今だ! ルカリオ、波導弾!」
打ち上げられたガブリアスに向け、ルカリオは青い波導の念弾を放出する。
「ガブリアス、大文字!」
だが空中でガブリアスは大きく息を吸い込み、大の字型に燃える炎を噴き出す。
波導の念弾は炎の中心を捉えて炸裂し、お互いの技は打ち消される。
「ガブリアス、急降下しろ。ドラゴンクロー!」
「ルカリオ、迎え撃つよ! 発勁!」
ガブリアスが空中で両腕の爪に蒼い龍の力を纏い、急降下してルカリオを狙う。
対するルカリオは右手から青く燃え盛る炎の如き波導を噴き出し、地を蹴って勢いよく跳躍する。
ガブリアスの龍爪とルカリオの波導の右手が激突し、競り合った末に爆発を起こす。

第109話 双顎 ( No.185 )
日時: 2017/06/12 09:40
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

不敵に笑うアスタロトが、二番目のボールを取り出す。
「欺け、クチート!」
出てきたのは意外に小柄なポケモンだった。黄色い体の愛嬌のある小人のような姿をしているが、その頭部にはポニーテールのように巨大な顎を備えている。

『information
 クチート 欺きポケモン
 頭の大顎は鋼の角が変形したもので
 攻撃に使用するが食事はできない。
 大顎で獲物を砕き本来の口で食べる。』

クチート、鋼とフェアリータイプを併せ持つポケモンだ。
「フェアリータイプ、しかも威嚇の特性かよ……ドラゴンクローが使えなくなっちまったな。だけど鋼があるから炎技はよく通る。リザードン、こいつも焼き尽くせ」
ジゼの言葉に、リザードンは咆哮で返答する。
「よっし! リザードン、火炎放射!」
もう一度大気を揺るがす咆哮を放つと、リザードンは灼熱の業火を噴き出す。
「クチート、躱しなさい!」
クチートはぴょんと跳躍し、リザードンの炎を躱すと、
「ストーンエッジ!」
着地すると同時に大顎を地面に叩きつけ、床から次々と尖った岩の柱を出現させる。
「岩技はやばい……リザードン! 躱して雷パンチ!」
翼を羽ばたかせてリザードンは突き進む。地面から突き出す岩を次々と躱しつつクチートとの距離を詰めていき、電撃を纏った拳を振り抜き、クチートを殴り飛ばした。
「ふぅん、やるじゃない」
それを見て、アスタロトは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ちょーっとパワーで負けてるかしらん? まぁクチートの能力はそれほど高くないからねー、少なくとも“今の”クチートは」
今の。
その言葉に、ジゼは何か嫌な予感を感じる。
少なくとも、そのまま聞き逃すことはできないニュアンスを含んだような。
「しょうがない、やっちゃいますか。クチート、準備できてる?」
アスタロトの言葉を聞いてクチートは振り返り、ニヤリと笑って頷く。
それを見てアスタロトは満足そうに頷き、髪を結った花のシュシュを解いた。
「……?」
怪訝な表情を浮かべるジゼを尻目に、アスタロトは花のシュシュを手に取る。
薔薇の花を模した赤いシュシュ。そして、その真ん中に、
「っ!? それは……!」
ジゼは気付いた。
薔薇の花の中で煌めくそれは、紛れもなくキーストーンだった。

「英雄の背に、欺瞞の牙を——クチート、メガシンカ!」

クチートの大顎の中の、一本の牙。
そこには、隠すようにメガストーン、クチートナイトが着けられていた。
アスタロトの持つキーストーンの光に、クチートのメガストーンが反応し、光を生み出す。
双方の光が繋がり、クチートは七色の光に包まれ、その姿を変えていく。
体が一回り大きくなるが、何よりも目を惹くのは頭部。
シルエットでも分かる。光の中で、頭の大顎は二つに分かれていく。
「メガシンカ☆メガクチート!」
そして光を薙ぎ払い、クチートはメガシンカを遂げる。
下半身と手首にかけて薄い桃色が入り、巫女装束のような袴を思わせる姿へと変化する。
そして一番の特徴は、やはり頭部の大顎。ただでさえ異質だった大顎が、まるでツインテールのように二つに増えているのだ。
「チッ……メガシンカ使いか」
「残念ねえ、お子ちゃま。私のクチートはメガシンカを遂げて特性が変化するのよん。それも、とっても強い特性にね」
「なに……?」
アスタロトの言葉を聞き、ジゼは図鑑を取り出し、メガクチートの情報を引き出す。
そして、その瞬間、ジゼの表情に驚愕が浮かぶ。
「力持ち……マジかよ……!」
「知ってるみたいね。なら、説明はいらないかな?」
力持ち。その特性は、攻撃力が2倍になるという単純かつ強力なもの。
「メガシンカにより耐久力が上昇、さらに特性で足りない火力は充分に補える。後の足りない部分は、私の頭脳で補う。それじゃあ、続けるわよ」
悪戯っぽい笑みを浮かべたまま、アスタロトが指示を出す。
「クチート、ワンダーボム!」
クチートの二つの大顎の中に、ピンク色の霧を固めたような弾が作り上げられる。
顎を開くと同時にそれを振るい、クチートは二つの霧の弾を投げつける。
「っ! リザードン、回避!」
翼を広げて飛翔し、リザードンは一つ目は躱す。しかし二つ目を躱し切れず、弾が直撃、同時に鮮やかなピンク色の爆煙が迸る。
「クチート、今よ! メタルブラスト!」
体勢を崩したリザードンへ、クチートが背を向ける。
大顎が開き、そこから砲台のように鋼エネルギーの砲撃が発射される。
鮮やかな爆煙でリザードンの視界が塞がれ、鋼エネルギーを避けられず、リザードンは砲撃の直撃を受けて吹き飛ばされる。
「リザードン、気合入れ直せ! こっからが勝負だぜ!」
幸いというべきか、フェアリー技も鋼技も効果は今一つ。
起き上がったリザードンは火を吹いて吼え、自身を鼓舞する。
「よし! リザードン、シャドークロー!」
リザードンが腕に黒い影を纏わせる。
しかし、
「クチート、不意打ち!」
一瞬の隙をついてクチートがリザードンの懐へと潜り込み、大顎を振るってリザードンを弾き飛ばした。
「その調子よ! クチート、ストーンエッジ!」
クチートが両顎を床に叩きつけ、尖った岩の柱を出現させる。
メガシンカ前と比べて、二倍近い量の柱が次々と床から突き出す。
「リザードン、躱して火炎放射!」
しかしそれでもリザードンは岩の柱の間を突き抜け、クチートへ向けて火を吹き、灼熱の業火を浴びせる。
「クチート、ワンダーボム!」
炎を撃ち込まれたクチートだが、体勢を崩したまま二つの顎を使って霧の爆弾を投げつける。
「弾けリザードン! 雷パンチ!」
両腕に電撃を纏わせ、リザードンは二つの霧の弾へ拳を叩き込む。
ジゼは霧の弾を弾き返すつもりだったが、リザードンの拳に当たった瞬間にワンダーボムは爆発し、鮮やかなピンクの爆煙がリザードンを覆ってしまう。
「ワンダーボムは充分な威力を持つ上に、着弾した瞬間に炸裂する。物理攻撃で弾き返そうとしても無駄よん? クチート、メタルブラスト!」
爆煙に包まれたリザードンを狙い、再びクチートは二つの大顎を砲台のように構え、鋼エネルギーを口内に溜め込む。
「リザードン、また来るぞ! とにかく煙を薙ぎ払え!」
翼を激しく羽ばたかせ、リザードンは周囲の霧を何とか振り払う。
だが直後、クチートの大顎から鋼エネルギーが放出される。
「上等! リザードン、火炎放射!」
リザードンは大きく息を吸い込み、咆哮と共に紅蓮の業火を噴き出す。
だが、リザードンの高熱の炎を持ってしてもやはり特性により攻撃力が跳ね上がったクチートの砲撃に打ち勝つことができず、少しずつ押され、ついには砲撃を受けてしまう。
「私のメガクチートに攻撃力で勝てるわけないっしょ! クチート、ワンダーボム!」
両顎で霧の爆弾を持ち上げ、クチートは頭を振ってリザードンへ二つの霧の爆弾を投げ飛ばす。
「これは躱すしかないんだよな……リザードン!」
今度こそリザードンは二つ飛んで来る霧の爆弾を躱し、
「雷パンチ!」
拳を握り締め、電撃を纏わせたところで、
「クチート、不意打ち!」
再びクチートは一瞬の隙をついてリザードンへ接近し、大顎を振るってリザードンを叩き飛ばす。
「だったら焼き払う! リザードン、火炎放射!」
起き上がったリザードンが大きく息を吸い込むが、
「隙だらけよん? クチート、不意打ち!」
再びクチートが攻撃前の隙を突いてリザードンの腹部に大顎を叩き込む。
しかし、
「構うな! リザードン、放て!」
根性でクチートの打撃を耐え切り、リザードンはクチートへ向けて紅蓮の業火を噴き出した。
「っ!? クチート、躱して!」
慌ててアスタロトが回避の指示を出すが、間に合わない。
肉を切らせて骨を断つ一撃がクチートに直撃し、その鋼の体を焼き焦がしていく。

第110話 保護 ( No.186 )
日時: 2017/06/13 10:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /uGlMfie)

ルカリオの右手とガブリアスの龍爪は、一歩も引かずに互角に渡り合った末、爆発を起こした。
爆煙で視界が塞がれ、互いの姿は見えない。
「ルカリオ、気をつけて。相手の位置を探っておこう」
ガブリアスの波導を読み取り、ルカリオは相手の位置を探る。
だが。
「今だ、ガブリアス!」
位置を探り当てた時には、もう遅い。
ルカリオの足元からガブリアスが強襲を仕掛け、ルカリオを吹き飛ばしたのだ。
「ルカリオ! っ、いつの間に……!」
「これで終わりだ。ガブリアス、ドラゴンクロー!」
雄叫びを上げて、ガブリアスは龍の力を纏った爪を構え、ルカリオを追う。
地面に落ちたルカリオへ、ガブリアスの龍爪が迫る。
しかし、
「まだだ……」
ハルには感じられた。ルカリオの体内で、さらに強くなる波導の力。
ルカリオの波導によってか、メガシンカによるシンクロか。ハルには、ルカリオの感情が分かった。
「ルカリオ、まだ終わらないよね! 立って!」
ハルの言葉がルカリオに届き、ルカリオの瞳がカッと見開く。
刹那。

ルカリオの掌から、龍の形をした輝く光線が発射された。

龍の光線の直撃を受けたガブリアスが、水平に吹き飛ばされる。
「なにっ……!? 龍の波導だと……!」
流石のパラレルでも想定外だったようで、驚愕を隠しきれない様子だ。
「ルカリオ……龍の波導を使えるようになったんだね!」
喜ぶハルに答え、ルカリオは静かに笑い、頷く。
そして龍の波導を受けたガブリアスは壁に叩きつけられ、戦闘不能となっていた。
「っ……最後の最後でひっくり返すとは。やはり絆の力、侮れない。以前と比べ、メガシンカもある程度使いこなせているようだしな」
ハルには聞こえない程度に小さい声でパラレルは呟き、ガブリアスを戻す。



リザードンの放った灼熱の業火が、クチートを焼き焦がしていく。
「切り裂け! リザードン、シャドークロー!」
爆煙に包まれたクチートを狙い、鋭い爪に暗い影を纏わせ、リザードンは一気に畳み掛ける。
だが。

「クチート、ストーンエッジ!」

炎を叩き込まれたクチートは倒れなかった。
顎を地面に叩きつけ、床から鋭く尖った岩の柱を突き出す。
「まずっ……」
ジゼが回避の指示を出そうとした時には、既に遅かった。
龍殺しの剣のように、岩の柱がリザードンを貫き、炎の龍を天井に叩きつけた。
「リザードン!?」
岩の柱が消えると、リザードンは力なく地面に落ちる。
最大の弱点である岩技を叩き込まれ、リザードンは戦闘不能となってしまっていた。



「さて、おしまいね。いいところまでは行ったんじゃないかしらん? でも、負けちゃったら意味ないわよねえ」
嘲るような笑みを浮かべ、アスタロトがクチートを引き連れたまま、ジゼに詰め寄る。
しかし、
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
直後、クチートは横から突然の襲撃を受け、骨のロッドを叩きつけられて吹き飛ばされた。
「えっ!?」
「ルカリオ、発勁!」
驚くアスタロトには目もくれず、ハルは指示を続け、ルカリオは青い炎の如き波導を纏った右手を叩きつけた。
残り体力が少なかったクチートはその二発の攻撃で力尽きて倒れ、メガシンカも解けて戦闘不能にされてしまう。
「なっ……クチート! ちょっと、何してくれてんの!?」
「仲間を守っただけだよ。ルカリオ、よくやった」
バトルが終わったと判断し、ルカリオのメガシンカも解ける。
「さあ、どうする? パラレルは僕が倒したよ。お前のエースのクチートも戦闘不能だ。僕たちの勝ちだよね」
「チッ……」
ハルに詰め寄られ、アスタロトはいかにも忌々しそうに小さく舌打ちするが、
「……おっと、いけないいけない。あのポケモン欲しかったけど、仕方ないわね。パラレル、撤収よ」
すぐに普段の猫撫で声に戻り、モンスターボールを取り出し、アーケオスを繰り出す。
「おい、逃がさねえぞ」
ジゼが一歩進むが、
「あら、いいの? 私とパラレルはあくまで時間稼ぎ。私たちを捕まえようとする間に、本命のパイモンが目的達成しちゃうかもよ? 上に進んで街を守った方がいいんじゃないかしらん?」
アスタロトは嘲るような笑みを浮かべたまま、そう返す。
「っ、どうするよ、ハル」
「ここでこいつらを見逃したくはない。けど、今は街を解放するのが先だよ。悔しいけど、上に進もう」
迷った末、ハルはイザヨイシティを優先する。
「それじゃ私たちは退散ね。パラレル、掴まりなさい」
アスタロトとパラレルがアーケオスの足を掴む。
直後、アーケオスは窓ガラスをぶち抜き、ビルから飛び去っていった。
「さあ、進むよ」
「あいつら、次に会ったら絶対取っ捕まえてやる」
とりあえず、アスタロトとパラレルは撃退した。
ハルとジゼがさらに上階へ進もうとしたところで、
「君たち、ちょっと待ってくれ」
不意に呼び止められた。
二人が振り向くと、声の主は数人の研究者たちの一人だった。
アスタロトに抵抗し、蹴散らされたのだろう。白衣は汚れて顔にも所々傷が目立つ。
「大丈夫ですか……?」
「ああ、我々は何とかな。しかし……保護していたポケモンたちはほとんど奪われてしまった。この研究は中止になるだろう」
座り込んだまま、研究者の一人は肩を落とす。
「ごめんなさい、僕たちがもう少し早く来ていれば……」
「助けに来てくれた君たちに、文句は言えない。それより、何かお礼をしないといけないね」
そう言って、その男は一つだけ残ったボールから、ポケモンを出す。アスタロトが自分のものにしようとしていたものだ。
背中に甲殻を纏った青い首長竜のようなポケモン。ヒレのような四肢を見る限り、水辺に生息するポケモンだろうか。

『information
 ラプラス 乗り物ポケモン
 高い知能を持ち人間が使う難しい
 言葉も理解できる。密漁により
 個体数が減少しているポケモン。』

水と氷タイプを持つ、ラプラスというポケモンのようだ。
「こいつは群れからはぐれ、弱っていたところを私たちが保護したんだ。人懐こいが賢くてな、悪い人間には決して懐かない。どのみちこの研究は中止になるし、そもそもこんな事件が起こってしまった以上、もうこの子を私たちが守る資格はない」
だから、とその男は続け、
「このラプラスを、君たちに託す。ここにいるより、君たちと一緒に行った方がラプラスも喜ぶはずだ。私たちの代わりにこの子を守り、広い世界を見せてあげてほしい」
そう言って、二人にボールを差し出した。
「……ハル、お前が受け取れ」
「え、いいの……? でも……」
「俺は無法者の町で生まれ育ってきた。悪人かどうかは分からないけど、善人じゃない。少なくともハル、お前に比べたらな」
「そんなことないよ。例え環境が悪くても——」
「それに」
ジゼはさらに続け、
「そいつを守るって意味なら、なおさらだ。俺はあの女に負け、お前は二人倒した。お前の方が適任だって、さっき証明されてんだ。そいつを守るには俺じゃ力不足だ」
「……分かった。じゃあ、そうするよ」
白衣の男からモンスターボールを受け取り、ハルはラプラスの前に立つ。
「ラプラス、僕と一緒に来てくれる?」
ラプラスは少し戸惑っていたようだが、やがてにっこりと笑い、頷く。
「……うん、分かったよ。それじゃ、これから君は僕の仲間だ」
ハルの言葉に答え、ラプラスはハルの持つモンスターボールに触れる。
その巨体がボールに吸い込まれる。一瞬だけ赤い光が点滅するが、すぐに止まった。
「それと、君たちにはこれも。少ないが、ポケモンの傷薬だ」
さらに男たちはハルとジゼへ傷薬を渡す。
「ありがとうございます。必ずこの街を解放します」
「さあハル、行くぞ。あまり時間がない」
「うん」
研究者たちに礼を言い、ポケモンを回復させ、二人はさらに上階へと進んでいく。

第111話 目的 ( No.187 )
日時: 2017/08/22 13:35
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: rS2QK8cL)

「社長さぁん、これでも駄目? 条件は悪くないと思うんだけどなぁ」
アルスエンタープライズ本社13階、最上階の社長室。
そこで社長と話すは、行儀悪くテーブルの上に腰掛け、不気味な笑みを浮かべる少女にも見える少年。
時代を間違えたような王冠と赤い派手な衣装に身を包み、悪戯っぽい光を浮かべた瞳で社長を見据える。
「……どんな条件を出されても返答は同じだ。顧客を危険に巻き込むような、そんな契約はできない!」
そして。
向かいの椅子では、震えながらも語気を強めて少年に言い返す初老の男性。
「そう言われてもさぁ、こっちも引き下がるわけにはいかないんだよね。今の街の状況、知ってるでしょ? ぼくが荒っぽい手段に出る前に、サインしてくれないかなぁ?」
そしてそんな社長の言葉を受けても、少年はせせら笑うのみ。
「しっかし強情だねえ。大分お金は積んだつもりなんだけどなぁ。それとも名だたる大企業の社長、これだけの金でもまだ安く見えるってことかな?」
「金の問題ではない! 顧客の信頼を裏切るような真似はできんと言っとるんだ!」
「……そうかぁ。流石に、そろそろこっちも荒っぽい手段に頼りたくなってきたんだけど」
遂に痺れを切らしたのか、少年が懐からモンスターボールを取り出す。
その時。

「そこまでだよ!」

カードキーによって社長室の扉を開き、ハルとジゼが部屋へと入ってくる。
「パイモン、社長を離せ。この街も解放するんだ」
ハルが踏み出し、テーブルに座る少年——パイモンへとそう言い放つ。
「ちぇっ、もう到着かぁ。思ったより早かったなぁ」
急に不機嫌そうな表情になったパイモンが、ハルの方を向く。
「てゆーか、ここに来たってことはパラレルもアスたんも負けちゃったのか。ああ、アスタロトのことね。倒したの、どっち?」
「最終的には僕だよ。戦ってくれたのはジゼだけど」
「へえ、やるじゃん。実はアスたんって、ああ見えてかなり頭いいんだよね。ぼくとまともに話が合うくらいにはさ。七魔卿の中じゃバトル自体は一番弱いけど、それでも誇っていいと思うよ」
本気出してたか知らないけどね、とパイモンは続ける。
「アスたん、専門技術学べばアモちゃん——分かるかな、アモンの代わりに参謀くらいなれると思うのになぁ。アモちゃんも賢いけど、たまに考え方が古臭いんだよねぇ。アモちゃんみたいなのはバトルの方が向いてるよ、多分」
「お前、イザヨイシティを乗っ取って、何が狙いだ」
話がずれてきたパイモンの言葉は無視し、ジゼが口を開く。
しかし。
「ん? あぁ、その話ね。そっちはアスたんとロノが考えたことだから。そもそもさぁ」
パイモンの返答は、ハルとジゼの予想とは全く違っていたものだった。
「イザヨイシティなんて、そんなのどうでもいいんだよね。ぼくの目的は、このアルスにあるんだから」
「は……?」
「どういうこと……?」
疑問を隠せないジゼとハルに対し、パイモンはさらに続ける。

「アルス・ターミナルに関する全ての権限をゴエティアに引き渡せ。こっちの要求はそれだけなんだけど」

ハルたちの思考が、一瞬停止した。
「じゃ、じゃあなんで街の制圧なんか……!」
「それ? アスたんに『交渉の間邪魔が入らないようにして』って頼んだら、アモちゃんに協力してもらって街ごと制圧しちゃったんだよね。アモちゃんがゴエティアの拠点から街の動力『マキナシステム』にハッキングして丸ごと乗っ取って、セキュリティを含めた一切の機能を停止させて、その間にアスたんがロノを引き連れて一気に制圧。何もそこまでする必要なかったんだけど、邪魔は入らないから結果オーライ……まぁ結局こうして邪魔が入ってるんだけどねえ」
これが、ゴエティア。
たった一つの契約を取るためだけに、街一つ、それもマデル地方最大の街を容易く制圧する。
「馬鹿な……『マキナシステム』を、ハッキングした?」
そして、パイモンの言葉に反応したのはアルスの社長と思われる初老の男性だった。
「『マキナシステム』はこの街のジムリーダー、天才学者マキナが作り上げた、彼女にしか扱えない最高傑作。それを乗っ取るなど、出来るはずが……」
「だーかーらぁ」
面倒臭そうにパイモンが口を開く。
「そっちの常識で物事を考えてもらっちゃ困るんだよね。普通の人間じゃ出来ないことが出来るのがぼくら魔神卿なんだよ」
さて、とパイモンは再びハルの方に向き直り、
「ハル君はイザヨイシティを解放しに来たんだよね? つまり、ぼくを倒しに来たわけだ」
「そうだよ」
「へぇ。だったら」
パイモンは手にしたモンスターボールをハルへと向ける。
「今のぼくを相手に君がどこまでやれるか、試してあげるよ。シュンインの林で会った時と比べて、君がどれくらい成長してるか、ぼくとしても気になるしね。ただあんまり時間は掛けたくないから、勝負は二対二でどうかな? 君が勝ったら、この街は解放するけど」
「分かった。元よりそのつもりでここに来たんだ。ジゼ、下がってて。勝負だ、パイモン!」
「ふふ、そうこなくっちゃ。それじゃ、始めようか」
不敵な笑みを浮かべて、パイモンは手にしたボールからポケモンを繰り出す。
「やっちゃえ、スターミー!」
現れたのは、青い星型のボディが連結したようなポケモン。その中心部には赤いコアがあり、淡く発光している。

『information
 スターミー 謎のポケモン
 初期に発見されているポケモンだが
 その生態は未だ不明。赤いコアから
 謎の電波を送受信しているらしい。』

図鑑の説明を見ても謎だらけだが、とりあえず水とエスパータイプを持つポケモンであることは分かった。
「スターミー、邪魔なものどけちゃおう。サイコキネシスだよ」
スターミーは場に出ると赤いコアを光らせ、念力を使って、部屋にあるテーブルや椅子を社長ごと全て部屋の隅へと移動させる。
「スピアー、社長が何かしないように見張ってて。変な真似したら刺していいから」
さらにパイモンはスピアーを出し、スピアーは社長の背後に移動すると、鋭い毒針を社長の首元に近づける。
「さ、ハル君、ポケモンを出しなよ」
「よし……出てきて、オノンド!」
スターミーに対し、ハルが選んだのはオノンド。
「それじゃ、始めよう。スターミー、まずは十万ボルト!」
バトル開始と同時、スターミーが回転を始める。
赤いコアに電気がチャージされ、そこから高電圧の強力な電撃が放出される。
「オノンド、躱してドラゴンクロー!」
スターミーの放つ電撃を躱しつつ、オノンドは龍の力を纏わせた爪を構えて突撃する。
「ん、スターミー、弾いちゃおっか」
対するスターミーは躱そうとしなかった。
代わりに、その場で超高速で回転し、振り下ろされたオノンドの攻撃を逆に弾き飛ばしてしまう。
「はーい今だよ。冷凍ビーム!」
振り下ろした腕が弾かれたオノンドに対し、スターミーは赤いコアから凍える冷気の光線を発射する。
体勢を崩して対応が遅れ、オノンドは冷気の光線の直撃を受けて吹き飛ばされてしまう。
「っ、氷技を持ってるか……オノンド、大丈夫?」
冷気の光線を受けても、オノンドは何とか立ち上がるが、
(しかしなんて威力だ……確かに効果抜群だけど、それにしたって……)
このスターミー、かなり火力が高い。もう一撃受けて耐えられるか怪しい、さらにもう一撃受ければ確実に戦闘不能。それくらいの火力は持っている。
「さあ、どう来るのかな? 来ないなら、こっちからだよ。スターミー、サイコキネシス!」
中央のコアを妖しく光らせ、スターミーが念力の波を放出する。
「オノンド、シザークロス!」
長い牙を二連続で振るい、オノンドは念力を食い止めると、
「もう一度だ!」
再び牙を構え、突撃していく。
「スターミー、もう一回弾いちゃえ」
対してスターミーも再び高速回転を仕掛け、オノンドを迎え撃つ。
そこで、ハルは咄嗟にカザハナジム戦を思い出す。回転を得意とするカポエラーを、あの時、どう攻略したか。
「……オノンド! 中心のコアだ! いくら回転しようと、中心なら関係ない!」
床を蹴って飛び上がり、オノンドは赤いコアへ牙を振るい、スターミーを切り裂く。
「へーえ、やるじゃないの。スターミー、もう回転戦法は使えないね。別の戦い方を仕掛けよう」
そしてそんなハルとオノンドを見て、パイモンは寧ろ楽しむような笑みを浮かべる。

第112話 奪還戦 ( No.188 )
日時: 2017/06/15 11:23
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

アルスエンタープライズ本社13階、社長室。
そこで対峙するは、少年ハル、そして魔神卿パイモン。
「スターミー、ハイドロポンプ!」
牽制射撃やカウンターに徹していたスターミーが、いきなり全力の攻撃を仕掛けて来る。
星型の一角を手のように振るい、その先端に水を溜め込み、高圧の大量の水を発射する。
「っ! オノンド、躱して!」
今まで見た水技の中でも、トップクラスの威力。
何とかオノンドは水流を躱すが、それで精一杯だった。
「さすがに強い……だけど、負けられないよ! オノンド、ドラゴンクロー!」
水流を躱したオノンドは鋭い爪に蒼い龍の力を纏わせ、スターミーへと向かっていく。
「スターミー、躱して冷凍ビーム!」
スターミーは高速回転しながら横滑りし、振り下ろされるオノンドの爪を躱してその背後へと回り込む。
「オノンド、炎の牙!」
赤いコアから冷気が放出されると同時に、オノンドは牙に炎を纏わせて冷気の光線を迎え撃つ。
炎で冷気を打ち消そうとするも、有利なタイプ相性の技ですらオノンドが少し押されてしまう。
「十万ボルト!」
スターミーの赤いコアが電気を溜め込み、黄色く輝く。
溜め込んだ黄金の光を一気に放出するように、高電圧の強力な電撃が放出される。
「躱してシザークロス!」
電撃は強力だが、ハイドロポンプほどの勢いはない。
一直線に放たれる電撃を躱し、オノンドは勢いよく飛び出すと、長い牙を二度振るい、スターミーを切り裂いた。
「捕まえちゃって! スターミー、サイコキネシス!」
しかしその直後、スターミーが赤いコアから強い念力を放出する。
念力はオノンドに掛けられ、強力な念力によって動きが拘束されてしまう。
「っ、しまった……オノンド——」
「もらいぃ! スターミー、冷凍ビーム!」
ハルが指示を出すよりも早くパイモンの声が響き、スターミーがコアを白く輝かせ、冷気の光線を発射する。
凍える冷気がオノンドを捉え、地面に叩き落としてその身を氷漬けにしてしまう。
「決めちゃおうか。ハイドロポンプ!」
氷の中に封じられたオノンドへ、スターミーが超高圧の水流を放つ。
氷を容易く砕き、オノンドを水柱に飲み込んで吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「オノンド!?」
水が消えれば、びしょ濡れになったオノンドは既に戦闘不能となっていた。
「っ……オノンド、お疲れ様。休んでて」
オノンドをボールに戻したハルは、スターミーの方へと目線を向ける。
(なんてパワーだ……ベリアルのヘルガーでさえ、こんなに強くは……)
以前戦った他の魔神卿と比べても、パイモンは強い。戦闘専門を名乗るベリアルと比較しても、だ。
「こうなったら、君しかいない。出てきて、ルカリオ!」
二番手にハルが繰り出すのは、やはりエースのルカリオ。
「だよね、そう来るとは思ってたよ。ちょうどいいや、メガシンカを使えるハル君のその力、ぼくも見てみたいと思ってたんだ」
「だったら、今から見せてやる。ルカリオ、行くよ!」
ハルの言葉に頷き、ルカリオはメガストーンの腕輪をつけた右腕を掲げる。
「僕と君の、絆の力に応えて! ルカリオ、メガシンカ!」
ハルのキーストーンと、ルカリオのメガストーンが反応し、光が両者を繋ぐ。
七色の光を纏い、メガシンカエネルギーと波導が体内を駆け巡り、ルカリオはメガシンカを遂げる。
「ルカリオ、ボーンラッシュ!」
ルカリオの右手に青い波導が宿り、形を変えて長い骨を形作る。
骨のロッドを手にして、地を蹴って飛び出し、スターミーとの距離を一気に詰める。
「スターミー、ハイドロポンプ!」
星型の一角を手のように振るい、スターミーは高圧の水流を放射する。
「ルカリオ、躱して! ジャンプだ!」
大きく跳躍し、ルカリオは水柱を躱すと、上空から骨のロッドをスターミーへと叩きつける。
「スターミー、十万ボルト!」
中央のコアに電撃を溜め込み、スターミーは高速回転を始める。
ルカリオの周囲を駆け回りながら、黄色く輝くコアから電撃を発射する。
「ルカリオ、もう一度ボーンラッシュ!」
右手に持ったままの骨のロッドを振り回し、ルカリオは電撃を防ぐ。
「冷凍ビーム!」
「波導弾!」
冷気の光線を放つスターミーに対し、ルカリオは骨のロッドを青い波導の念弾に変えて放出する。
双方の技が競り合い、その末に氷が砕けるように光線が散り、念弾がスターミーのコアへと直撃した。
「へえ、やるじゃん? スターミー、サイコキネシス!」
強い念力を操り、スターミーは念力の波を放射する。
「ルカリオ、躱して!」
目に見えない念力の波を、ルカリオは波導の力で読み取り、念力を躱す。
「撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
宙に飛び上がったルカリオへ、スターミーは高圧の大量の水を発射する。
「ルカリオ、発勁!」
右手に炎の如き波導を纏わせ、ルカリオは水柱へ右手を叩きつける。
再び両者が競り合うも、今度はその末にルカリオが押し戻された。
「十万ボルト!」
スターミーが中央のコアに電気を溜め込み、そのコアが黄色に輝く。
「ボーンラッシュ!」
対するルカリオが右手に骨のロッドを構え、駆け出す。
放たれる電撃を骨のロッドで防ぎ、
「龍の波導!」
長い骨は龍の頭へと形を変え、輝く龍となって突き進む。
龍が直撃して波導が爆発し、スターミーが吹き飛ばされる。
二度バウンドしつつ床を転がり、スターミーは戦闘不能となった。
「あっれぇ、やられちゃったかぁ。しくじったしくじった、スターミー、戻って」
スターミーをボールに戻すパイモンの表情に焦りはない。寧ろ、バトルを楽しむように薄ら笑いを浮かべている。
「流石だねえ。ジムリーダーからメガシンカを継承されただけのことはあるね」
それじゃ、とパイモンは懐から次のボールを取り出す。
「やっちゃえ、メタグロス!」
現れたのは、巨大な鋼のボディに四つの頑丈な鉄の脚を持つポケモン。顔にはX字のフレームが装着されている。

『information
 メタグロス 鉄脚ポケモン
 四つの脳でスーパーコンピュータ
 を上回る知能指数を叩き出す。
 相手の動きを先読みして戦う。』

以前からパイモンが使っていたメタング、その進化系だ。
かなりの重量なのか、脚を踏み出すだけで硬い爪が床に食い込み、軽く部屋が揺れる。
「さあ、掛かっておいでよ」
パイモンは突き立てた人差し指を動かし、ハルを挑発する。
「かなり強そうな相手だけど……やるしかないよね。ルカリオ、波導弾!」
右手を突き出し、ルカリオは掌から青い波導の念弾を発射する。
「メタグロス、サイコバレット!」
メタグロスの顔面のX字のフレームが光り、念力が放出される。
その念力は実体化して無数の小さな念弾を作り上げ、マシンガンのようにその念力の弾が撃ち出される。
波導の弾は蜂の巣にされて破壊され、残った念力の弾がルカリオへ襲い掛かる。
「っ、ルカリオ、躱して!」
素早い動きでルカリオは残った念力の弾を次々と躱していくが、
「メタグロス、よーく狙って。メタルブラスト!」
メタグロスがX字のフレームから鋼エネルギーを砲撃する。
ルカリオの避け方を予測していたのか、素早いルカリオの動きを的確に捉え、強大な鋼エネルギーがルカリオを吹き飛ばした。
「図鑑に書いてあったでしょ? メタグロスは四つの脳を使った圧倒的な知能によって相手の動きを分析できる。ルカリオも波導によって相手の動きを分析するのが得意なポケモンだけど、ぼくのメタグロスはそれ以上だよ」
さらに、とパイモンは続け、

「知ってるかな。メタグロスってポケモンはね、メガシンカが出来るんだ」

ぞわり、と。
ハルの背筋に、冷たいものが走る。
「ダンやアスたんを見てるんなら、知ってるよね。魔神卿たちはメガシンカの力を求めている。まだ石を持ってないやつもいれば、持ってるやつもいるけどね。ちなみに——」
不敵な笑いを浮かべながら、パイモンは被っている王冠の中央に填められた赤い宝石を指で叩く。
宝石が外れ、その中からは輝く丸い石が露わになる。
「——ぼくは、持ってる側の人間だよ」
赤い宝石より強い輝きを放つその石は、紛れもなくキーストーンだった。
「覚悟はいいかな、ハル君? 君とぼくの実力の差ってものを、見せてあげよう」


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