白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【3】甘酸っぱい恋、それはあたしとは無縁
好きです、その声が外だというのに、空間で響いたような気がした。
彼は驚いたような顔をしてえ、と声をもらす。そして焦ったような照れたような、なんともいえない表情を見せる。
彼の答えは分かってる。『他に好きな子が居るんだ、ごめん』きっとそう。
だってあたしは知ってるの。彼があたしなんか見てくれていなかったってこと。知ってる上での告白だった。
「俺は」
彼がゆっくりと口を開く。次の言葉を待つ。答えなんて分かってるのに。
「他に好きな奴がいるから」
そこまで聞いたところで耳を塞いだ。知ってる、知ってる。わたしの恋愛なんて甘酸っぱいんじゃなくて、ただただ苦いだけだったんだって。だからこれ以上惨めにさせないで。
「知ってるわ。あたしの、妹が好きなんでしょ?」
そう知ってる。妹が『お姉ちゃんのクラスの人に告白された』と言っていて、それが彼だということも。妹はそれを振ったということも。
「あたしは妹の代わりに愛されるなんて耐えられない。だから振られて良かった」
彼にそう言うと「ありがとう」そして「ごめん」とつぶやかれた。馬鹿みたい、どこまでも優しい彼。どうして謝るの。
そんな彼をあたしは大好きだった。だけど彼は、あたしのことを見てくれなかった、それだけのこと。
(甘酸っぱい恋、それはあたしとは無縁)

PR
小説大会受賞作品
スポンサード リンク