白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【74】失恋
自分で言うのもなんだけど、あたしは自分のことを割と賢い人間だと思っていた。
勉強が出来る、とかそういった類のことじゃなくて人付き合いとか生活していくのに関係することに対してだ。私は敵を作らないように心がけて、誰にでも笑顔を見せて、優しく接した。
だからあなたも、あたしに振り向いてくれるとばかり思っていた。
*
「――ごめん。藤田」
声が、頭の中を反響してく。大きなハンマーで叩かれたみたい。うるさい。
「俺、他に好きな子がいるんだ」
今あたしは、どんな顔をしているのだろう。
嫉妬に歪んでる? 悲しみに呆然としてる? 驚きに目を見開いているのだろうか。
「……そっか」
絞り出した声は酷くかすれてた。教室のカーテンがふわふわと揺れる。教室に二人きり、憧れのシチュエーションだったはずなのに。ちっとも嬉しくない。
「ありがと……」
何であたしはお礼を言ったんだろう。頭の中が真っ白だったんだろう。何も考えられず、あたしは震えた。もうこの人はあたしを“普通の女の子”としてみてくれない。“自分のことを勝手に好きになった女”としか認識してくれないのだ。……それはやっぱり嫌だし“告白したことであたしを意識してくれるようになる”だなんて、ポジティブに考えることなんて出来ない。
「ごめん……ごめんな」
何でそんな謝るの。あたしがあなたを勝手に好きになっただけ。それだけ、なのに。
涙は止まらず頬を伝う。
その味はしょっぱくなく、ただただ苦い。
(失恋)

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