白雪姫はりんご嫌い  はるた ◆On3a/2Di9o /作



【37】午後は甘い匂い



「別れたの、直人と」
 甘ったるい匂いの漂う、ウルトラチョコミルクという名のクレープをおいしそうに食べながら結花が言う。「そうなの」と流すように言うと、結花は目を細めながら「興味なさそうね」と笑った。
ファミレスは昼時ということもあり、かなり混んでいてウェイトレスが忙しそうに動き回っている。あたしはアイスコーヒーをストローですすりながら、結花の話を聞く。

「馬鹿な男だったの。すっごい馬鹿」
「どういったところが?」
 そう訊ねると結花はうーんと唸りながらクレープに噛り付く。口元に茶色いチョコが少しついていた。
「……どこが、かしら。あたしもよく分かんない」
 結花はそう言って自嘲的な笑みを見せる。そして尚も甘ったるそうなクレープに噛り付くのだ。そして「まああたしは、分からないくらい馬鹿の男に振られたんだけどね」と締めた。

 窓からは少し暑いくらいの日差しが差し込んで、グラスに反射してキラキラしていた。きれい。結花はそのグラスを傾け、ストローなどを一切使わずミルクティーを飲み干した。

(午後は甘い匂い)