白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【73】アナタとアタシの世界
ナイフに伝う真っ赤な液体を見て呟く。
「愛してる愛してる大好き、こうしたら私を見てあの子を消してあたしだけワタシあたしを貴方は見てくれるわよね最高ね」
暗がりに光る、未だ虹彩が失われていない瞳。瞳孔は開ききって、その瞳の色は恐怖? 驚愕? アタシに知るすべは無い。
「好き好きよあなたが好き。でもあなたは生きている限り呼吸をしているかぎり心臓が動いてる限り他の女の子の事ばかり見るんだもの。絶えられないわアタシ。寂しいわアタシ」
臓物でもはみ出してきそうな大きな深い傷を腹につけた愛しい彼が目の前に転がっている。ねぇあなたはアタシにナイフで刺されて命を奪われて、どんな気持ちかしら。嬉しい? 寂しい? アタシはあなたにどう思われてようと嬉しいわ。あなたの脳内を支配しているのはアタシのことだものね。うふふ。
「ねぇもうアタシのこと『お前誰?』なんていわないわよね。アタシびっくりしちゃった。だって毎日毎日あなたのことだけを見つめ続けてるのにあなたはアタシのこと知らないなんてそんなこと。あなたはおもしろい冗談のつもりでもアタシは少し驚いちゃうわ。ねぇ驚きすぎて思わず殺しちゃったぁ」
てへっとかわいこぶって、彼に微笑みかける。その瞳にアタシはうつってるの? 今となっちゃどうでもいいけど。
「死んで幸せ、あなたが死んでシアワセ!」
アタシは最高の笑顔で呟くわ。暗い夜でも彼がそこにいるだけでとても明るくなれるのアタシ!
(アナタとアタシの世界)

PR
小説大会受賞作品
スポンサード リンク