白雪姫はりんご嫌い  はるた ◆On3a/2Di9o /作



【28】虫食いハート



 大嫌い、大嫌い。言葉を反復する、だって本当にあたしはあいつのことが大嫌いだから。
廊下ですれ違うたびに、あたしの顔を見て意地悪そうな笑みを見せるあいつがあたしは嫌い。気軽に肩に手を乗せてくるのが凄く嫌。『何顔赤くしてんだよ』とか言ってくるけど、あたしは別に顔なんて赤くしてない! そんな態度のせいで、あいつがあたしのこと好きとかいう噂がたっちゃったのが凄く嫌だった。

 そして、さんざんあたしに構っておいて、他の子と付き合い始めちゃったあいつが凄く意味不明。別に好きなんかじゃないけど、今までのあたしへの行動は何だったの。遊びだったの?
寂しくなんてない、悲しくなんてない。ほら、証拠に涙なんて零れてこない。だってあたしはあいつのことが大嫌いだから。何も辛いことなんて無い。

 廊下を歩いてると、可愛い彼女と歩くあいつをたまにみる。
目があっても、もう意地悪い笑顔を見せることは無くなった。話すことも、肩に手を乗せることも。当たり前、だってあいつには彼女がいるんだから。あたしはただの“遊び”だったんだから。

 別に好きじゃない、だけど心にぽっかり穴が開いてしまったみたいだ。

(虫食いハート)