白雪姫はりんご嫌い  はるた ◆On3a/2Di9o /作



【72】世界から消えた君



 ああ、あたしも彼も“世界全体”からしたらちっぽけな存在なんだなあ。あたしは彼がいなくなってからそんなことをふと思った。まるで流れ星みたい、一瞬でぱっと消えちゃった。あはは、何だか笑えてくる。

 理由なんて知らない。彼は自殺しちゃった。『ごめんな、千佳』そんな文章を残して。ねぇ、あたしに大してそんな申し訳なく思うのならそんなことしないで。言ってやりたいのに、彼にそう言ってしまいたいのに。



 当たり前だけど彼が手首を切ろうが首をつろうが自分の頚動脈をしめようが、世界は何事も無かったことのように進む。彼のことは皆忘れて“ああそういえばそんな人いたっけなぁ”というような存在になって終わるのだ。



「死なないで、あたしのそばに居て。あたしを抱きしめて、笑いかけて、触って。あたしに、ねぇ」



 泣けてくる。一人で呟いても何も起こらないという事実に。

好き好き好き好き好き好き好き好き。

何度言えば届きますか、世界は彼を忘れませんか、あたしは彼を忘れませんか。



 ねぇ誰か教えてよ。

そう涙を零した。彼はどこにもいないってことが悲しくて。



(世界から消えた君)