白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【76】シューティングスター
「ごめん、好きなやつが出来たんだ」
――たったその一言で、あたしたちの恋愛は一瞬にして消え去った。
涙なんてこぼれる暇もない、驚愕に目を見開くことしか出来ない。「何で……?」やっと漏れた声は酷く掠れていた。でも彼はあたしの声も無視して、背を向けて去ってしまう。
学校の校舎の裏の広場であたしは彼に別れを告げられた。簡単に言えばふられたのだ。
付き合って半年が経とうとしていた。お互いの気持ちが冷めていたことなんて、とっくに気づいていた。楽しかったのは最初の一ヶ月だけ。すぐにメールだのデートだのが面倒くさくなる。自分一人の、あるいは友達との時間が大切になっていって、すれ違いが生じた。
――あたし、何してんだろ。
そう思うとやっと涙があふれてきた。別に悲しくも寂しくもなんともないというのに。
サワサワと木が風に揺らぐ音がする。校庭の方からは部活動の掛け声何かが聞こえてきて騒がしい。
「――とっくに、冷め切ってたのにね」
一人でそうつぶやくと、より一層虚しさは増した。
あたしは確かに彼が好きで、彼もまたあたしのことを好きだったはずなのだ。だけどその瞬間は一瞬で、流れ星が流れちゃうくらいのスピードで過ぎ去った。
ありがと、さよなら。
誰かにあたしはつぶやいた。
(シューティングスター)

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