白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【34】涙色サンセット
(涙色サンセット)
「お前うざい、死んじゃえば?」
脳味噌が爆ぜたみたいに、頭がガンガンと痛い。あたしは一体、今何を言われてるのだろう。目の前に居る、昨日まで親友だった女の子に。
「何か言ったらー? 馬鹿すぎて、何も言えなくなっちゃったのー?」
親友の隣に居る、何か明るい茶髪の見るからに頭の悪そうな女がそう言って高い笑い声をあげる。聞くに堪えない。だからお前は影で『笑い方が魔女みたいでキモイ』って陰口叩かれるんだばーか。……なんていってやりたいけど、残念ながら喉に何かがつっかえたように、何も言葉が出てこない。
それは突然のことだった。朝、教室に入ると中の空気が凍りついたみたいに静まり返り、そして教室全体の視線があたしへと向いた。「え、何?」そう言っても誰も何も答えない。なかったことのように、会話が再開される。
――あ、あたし虐められてるのかな。即座にそう理解した。驚くほど冷静な自分に、軽く鳥肌がたった。教室の上には刻まれたノート。よく見るとあたしのじゃなくて、何も書かれて無いまだ新品のノート。馬鹿馬鹿しい嫌がらせ。あたし自身のノートだと、先生に告げ口されたら終わりだもんね。乾いた笑いが口からこぼれる。
あたしが虐められる理由なんて分かってた。
“このクラスの中心的な存在に君臨する女子の好きな人が、あたしに告白してきたから”。簡単すぎて笑える。あんたに魅力が無いんじゃないって笑顔で聞いてやりたいけど、馬鹿は馬鹿みたいに攻撃してくるからやめた。くだらないことに労力を使いたくない。
親友は尚もあたしを睨みつけてる。ああ、こいつも隣にいる茶髪女(名前は確か山崎)に利用されてるのか、馬鹿だな。そう思っても、きっと相手には通じない。
場所は校舎の裏、もう使用されて無い旧校舎の近く。人通りなんて無いし、誰も助けに来てくれない。漫画とかでは、格好良い同級生とかが助けに来てくれるはずなんだけどね、さすがに現実は違う。
はぁ、と溜息をついてあたしは一言、
「凄いうざいよあんたら」
そう言い放った瞬間、右頬が凄く熱くてはじけたような痛みを感じていた。あ、平手打ちされたと気付いた時には、もう涙目の親友が目の前に立ち尽くしていた。
泣きたいのはこっちだばーか。
そう言ってやりたい。あーあ、馬鹿みたい。
(涙色サンセット)

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