白雪姫はりんご嫌い はるた ◆On3a/2Di9o /作

【64】きらきら光る夜空の星
自分は普通の人間だって思いたくなかった。
溢れ返るほどいる数の人間の中の一人って思われたくなくて、何か特別な何かが自分にはあるって信じてた。実際は勉強も運動も人並み程度で、多くの人たちに埋もれて目立たないような存在だったのに。だけど僕はどこか人とは違うところを探して、そして見つけられなかったのだ。
マンションのロビーから外に出る。冷蔵庫を開けて、麦茶がもうなくなっていることに気付いたためコンビニに買いに行こうと家を出たときにはもう午前零時をまわっていた。夏の夜中というのは昼間と比べて気温は下がるが、どことなくじめっとした暑さが残る。だけど中々心地よかった。
僕の住んでいるマンションは駅の近くにあるため、夜中といえども道路には車が走っている。街頭がちかちかと点滅していて、どことなく綺麗だった。
ふと空を見上げると、真っ黒な空が広がっていた。星は数えるくらいしか見えないが、それでもきらきらと輝いている。――あ、やっぱり僕は普通の人間だった。夜空を見ていると、そう思ってしまう。そう、僕はどこにでもいる普通の人間だったのだ。
どうしようもないな、僕。そう思うと笑えてきた。コンビニが見えてくる。二十四時間営業のコンビニから漏れる光は、少し眩しかった。
(きらきら光る夜空の星)

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