Re:愛してる
作者/おかゆ

5
・・・・とはいえ、私も普通の女子高生なわけで。
あんなに言われたらさすがに落ち込む。
まぁ苛立ちの方が勝ってるんだけど。
「・・・・・・本当に麗華の奴・・ムカツク。死ねばいい」
誰もいない、誰も使わない、誰も気づかない資料室でぶつぶつとつぶやく。
「あ、死ねは言い過ぎたか。じゃぁ転校すればいい・・私の視界に入らないところに行けばいい」
私は近くにあった消しゴムを投げつけた。
ここは私が高校入学して間もない頃に偶然見つけた場所。
始めは軽い好奇心で入ったがだんだん居心地がよくなった。
そして今ではここを私の第二の家のように扱っている。
「・・・・・・はぁ・・・・この間まで友達だったのにもう赤の他人か」
実際他人なんだけど。
でも、まぁ。
楽しかった日もなくはなかった。
「・・・・女子って面倒くさいね・・自分も女子だけど」
「ずっと親友って言ってたのはどこのどいつだ」
「この間までホント・・友達とか言って・・・」
「これだから・・女子は汚いんだよ。やり方とか・・いろいろ・・さ・・・」
独り言をずっと言ってるしかなかった。
だって涙を止める方法を知らなかったんだもの。
6
『可愛くない子ね』
「・・・・、」
久しぶりに昔のことを思い出した。あぁ、なんで今になって。
「・・・そんなこと分かってますって・・」
『可愛げのない子』
生まれてから十数年、何度も言われた言葉。
「はぁ・・」
別に小さい頃はもっと笑顔な子だった・・と思う。
あ、思い出した。
父親が死んでからこうなったのか。
確か今日は遅く家を出るんだとかで珍しく私が学校に行く時間まで家にいて。
私が行ってきますって笑顔でいって、そのあと父さんも仕事に行って。
でも、帰ってこなくって。
お母さんがたくさん泣いていたけど私は泣けなかった。
『父親がなくなったのにあの子、泣いてないんですって』
『心がない子なのかしら』
『泣いたっていいのにねぇ』
『まったくなんて、』
『可愛げのない子』
お母さんは『悲しすぎて逆に泣けなくなったんだよね』って言ってくれた。
それからも私は悲しい事があっても泣かなかった。
いや、
泣けなかったのか。
今もそれなりに笑うことも出来る。
でも泣くことは出来ない。
『可愛くない子』
なんども言われてるけどやっぱりまだなれてなくて。
「・・・・・・」
家に帰りたくない。
お母さんもまだ仕事だし。誰もいないし。
私は何を望んでるんだろう。

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