Re:愛してる

作者/おかゆ

41


「翔・・・」

帰り道、久しぶりに陸上部の練習がなかった俺は一人で帰ろうとしたら愁に呼び止められた。

「久しぶりに一緒に帰ろうよ」
力なく笑った愁。

「・・・そうだな」

あのとき一瞬、嫌という気持ちがまざった。

   *   *   *


「・・今回はどんな役やるんだ?」
「んー・・まぁ普通の男の子なんだけど」

友情ものなんだ


今度やる劇の内容を少し楽しそうに話した。


「見る?台本」
「あ・・じゃぁ」

愁から台本を受け取りぱらぱらとめくる。



「『俺はもうお前なしでは生きていけないんだ』」
「なんだよ急に」
「劇、劇。なんか顧問の先生がねー?こうゆうのにはまっちゃってさー」
「本当に友情ものなのか?」
「俺が今いったところは主人公の過去。彼女に対して言う台詞なんだけどそのあと彼女が病気で死んじゃうんだよ」
「うわー、ありがちだなー・・んで、台詞がクサくね?」
「まぁこれは全校生徒の前で発表しないから別にいいんじゃない?」


愁はまた軽く笑って俺に言った。


「俺もきっとお前がいなきゃダメだわ」



「・・・・なんだよ、急に」
「いや、なんかさ。思ったんだよ・・いつも翔に助けてもらってばかりだなーって」
「そんなこと・・」
「あるよ」


愁が珍しくきっぱりといった。



「あの時、助けてくれてありがとう」
「・・・・っ、」


『あの時』は聞かなくても分かった。


なんでだ?

愁からの『ありがとう』が聞きたかったはずなのに、




なんでこんな泣きたい気持ちになったんだ―――・・?


「・・・そ、そういえば俺ら最近遊んでないよな」
「あ、そうだねー」


こんな気持ちが嫌になって話題を変えた。


「今度遊ぶか」
「・・いいね!卒業までには遊びたいね」
「そうだな」
「お菓子持ってこうよ!」
「子供かよ」
「いいねー、久しぶりだから!!すごく楽しみだ!」


今度は本当に楽しそうに、嬉しそうに笑った。






今思えば、


















あれが俺の見た愁の最後の笑顔だったのかもしれない。


42


今日も愁はいじられていた。



加害者はそれがもはや『快楽』であるかのように。

被害者はそれがあたりまえかのようにたえ、

傍観者はそれが日常となっていて。

とにかく皆が狂ったかのように。


俺はクラスに居たくなかった。


 *   *   *  


「翔・・・!!」

今日も部活は休みだった。

「一緒に帰ろ」



・・本当に、女っぽい奴。少しうっとうしいとも思った。



「・・なぁ、」

とまらなかった。

「なんでお前はいつも」


イライラが、なぜか。


「俺ばっかに頼ってさ」


押さえきれなくて


「正直うっとうしいんだけど」


なんでだ・・・・?


「たまには自分で何とかしたらどうなんだ?」


嗚呼、俺馬鹿だ。


「一人になるのが嫌だったから俺と本当はつるんでたりしてな」

やっと止まった俺の口。愁を見ると絶望したような顔。

「・・翔どうしたんだ・・?」
「確かに・・そうかもしれないけど・・」
「でも俺は・・っそんなことおもってなか、たのに・・」
「お前、最低だ」
「俺のことそう思ってたのかよ・・」



愁の声が遠くの方で聞える。



「・・・・・分かった。お前がそう思ってるなら俺はもうお前に近付かない。悪かったな」



やっと届いた。

「・・は?」

「じゃぁな、翔」



一瞬だけ寂しそうな顔をしてそれからまたいつもの笑顔になった。

でもその笑顔は自嘲するような笑み。



「――・・」



愁は最後に俺に一つの言葉を言って俺より先に歩いた。



「・・・・んだよ」












("ありがとう"とか、)
(なんで言ったのか俺はまだ知らない)