Re:愛してる
作者/おかゆ

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「「あのさ、」」
そして声が重なって、またお互い黙り込む。
「あ、えと・・理紗、どうぞ」
「えっ?いいよいいよ!!瑠璃先言って!!」
そしてまた黙り込んでしまう。
「・・・・・なんかさぁ、本当に久しぶりすぎて・・話したい事、いっぱいあったんだよなぁ」
「私も」
「でもさ、理紗にあった瞬間話すこと全部、忘れちゃって」
「私も」
「でも、すごく、あえたことが嬉しかった」
「・・・・・私も」
そして本題に入ろうとする。
のどに言葉がつっかえるようでうまくしゃべれない。
あぁ、なんでいつもこんなときに言葉が出ないんだろう。
「(悔しいなぁ)」
「――私ね、」
ふと、理沙がしゃべりだした。
「・・・私、麗華たちから・・・その、いじめられてた、時、瑠璃がいつも助けてくれたじゃん?私はいつもそれに甘えてた・・・瑠璃は普通に私を守ってくれるけど、本当は心の中では困ってるんじゃないかって・・・思ってた」
「ちがっ・・」
「瑠璃は優しいんだよ・・・優しくて、私はいつもその優しさに甘える形となったけど・・・本当は瑠璃だってこんな私となんか一緒にいたくないんだろうなって思ってて・・いつもいつも瑠璃は笑って、笑って、私を励ましてくれて・・」
泣き出しそうになった理紗に何て声をかけていいかわからなくなって。
それを察したのか理紗は続けてしゃべる。
「・・・・・それでね、私・・・ある時・・・いじめがもうちょっとひどくなったとき・・・本当にほとんどの人が私に近づかなくなったとき、そのときも瑠璃は私のそばにいてくれたよね・・私、すごく嬉しかった、でもそれと同時に瑠璃は心の中で私のことを笑ってるんじゃないかって・・馬鹿にしてるんじゃないかって・・・思えてきてっ・・・」
そしたらあんなことが起こったんだ、と自嘲気味に笑った。
「制服とか髪の毛とか、たいそう服とか・・ボロボロになって・・・バチが当たったのね」
ごめんね
そう呟いた瞬間理紗はついにポロポロと泣き出した。
あぁ、この子はなんでいつもそうなんだ。
全部自分ひとりで背負おうとする。
私にも少しぐらい、背負わせてよ。
「馬鹿だな、」
そう呟いた私の声は、この子に届いてただろうか。
馬鹿にしていたつもりはなかった。
理沙は一番の親友だった。
親友なのに、大好きなのに、
一番大変なとき、一番そばにいてやれなかった。
「馬鹿だな・・・私は」
そして私は理紗を抱きしめた。
「!?・・・瑠璃?」
戸惑う理紗に、私が流した涙は見えないはず。
「・・・・・本当にごめんね」
(やっぱり理紗は短髪より長髪のほうがよく似合ってる)
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「瑠璃?どうしたの?」
突然のことに驚いたのか、涙は止まっていた。
「・・・・・・私も、いっぱい・・理紗以上に謝りたいことがあったんだよ・・」
「・・?」
一呼吸おいてからゆっくりとしゃべる。
「・・・・理紗はさ、いつも強かった。そんな何にでも負けないような強い理紗が私は大好き。だからなのかな・・私も理紗に甘えてたんだよ」
「・・・甘えてたのは、私のほうだよ」
「ううん・・理紗はそう思ってるかもしれないけど・・・今も昔も変わらない。私は理紗が大好きだよ。あのとき、理紗が一番つらいときにそばにいてあげれなかった・・・逃げたんだよ。知ってるでしょ?」
「・・・・違うよ」
「違わない。聞いてたんだよ・・あいつらの笑い声とか、理紗の叫び声とか、なんで先生やほかの生徒が誰もこないんだよって思いながら、一番近くにいた私は聞こえないフリをしてたんだよ」
「違う」
「誰かこれを止めてと思ってたんだ。助けてって思ったんだ。誰かじゃないよね、私があの場にいて助けないといけなかったんだ・・・・・あそこにいって、麗華たちを一発殴るなりなんなりすればよかったんだ」
「違うって言ってるでしょ」
「終わった後に私は理紗の前に行って・・・理紗は優しすぎるから、私のことかばってくれて・・私は謝ることしかできなかったのに」
「瑠璃っっ!!!!」
「―――・・・本当のバチが当たったのは・・・・・・私の方だ」
その瞬間、抱きしめていた理紗の腕が力なく抜けた。
「・・・・・・そ、んな・・そんな、こと、ちが、」
「違わないよ・・・・全部本当のことだ・・・あの時、理紗は全部知ってたでしょ?」
「・・・っ、」
「私ね、今停学中なんだ」
「!?」
「麗華の首絞めてさ・・私、気づくのが遅かったんだよ・・・最近だったんだよ・・理紗をいじめてた主犯が私と同じ高校だったなんて」
「・・・嘘・・」
「向こうは知ってたみたいでさ、いまだに理紗のことちょくちょく脅してたなんて・・・私、知らなくて・・腹が立って私、押し倒して首絞めちゃったの」
あーあ、とため息混じりに言った。そして理紗を開放する。
「それなのに、少しの間だけど私、麗華と一緒にいた」
「・・・・・、」
「離れた瞬間寂しいとも思った」
「・・・・・っ」
「・・・・・全て、麗華から聞いてると思うけど」
『ごめんね』
(そう、口に出した瞬間彼女は――――)

小説大会受賞作品
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