Re:愛してる
作者/おかゆ

35
「・・・・嘘・・」
「本当よ。だから同じ高校って聞いた時は驚いた。それと同時に喜びもした。次はこの子にしようかなって♪あんたったら、主犯が誰なのかも知らずに、今まであたし達と遊んだり、いじめられたりしてたって・・聞いただけでも笑えるでしょ?」
笑いを殺したような声が耳元で響く。
「――・・ねぇ?なんで、親友をいじめていた主犯が分からなかったの?なんであたし達と仲良くしてたの?・・理紗のこと、何も分かってなかったんじゃない?」
「・・・・っ!!!!」
「理紗、泣いてたよね?髪、切ったよね?制服ぼろぼろだったよね?それ、何でだか分かる?」
麗華はそれが快感だったかのように語りだす。
「――・・私達が、いじめてたからだよ」
「言うなっっっ!!!!」
廊下に響く声。全員がこちらを見た。
「・・・・え?瑠璃、どうしたの?」
『いつもの』麗華に戻る。
「・・・・お前か」
「えっ!?何?・・キャァッ!!!」
私は思わず麗華を押し倒す。
麗華の首に手をかける。
「・・瑠璃っ・・やめて・・」
麗華は目に涙をためる。これは演技。
「お前が理紗をっ・・!!!」
「あれ?でもさ、これが初めてじゃなかった気がする」
「・・?」
「あぁ、そうだ。あたしもちょっと今忘れてたんだけど。『瑠璃が一番最初に殴りかかってきた時』、あたし達はこの話をしてたんだ」
「・・・・・・っ」
そうだ。私は全てを思い出した。忘れていた記憶。
『瑠璃ってさぁ、実は中学校の頃親友がいたんだよ?』
『えぇ!?まじで?』
『それがさぁ、その子が瑠璃と正反対なのよ、性格が!!しかもあまりにもムカついたからさぁ』
『ムカついたから何ー?』
『・・・いじめちゃったんだよね』
「なーんか、忘れてたみたいだから・・でも思い出したんだ。良かったじゃん」
「・・・・っ、」
「――今この間みたいなことしたら・・あんたはどうなると思う?・・しゃべっただけの人間の首をしめた・・こういうの理不尽って言うんだよね?」
「・・・」
首をつかんでいた手をはなす。
「・・・・最低」
私はカバンを持って資料室へむかう。
急がないと。
「市川!!!!!」
急がないと。
「大丈夫?麗華」
「うん・・大丈夫だけど・・どうしちゃったのかな、瑠璃・・」
急がないと。
――――――・・バンッッッ!!!
勢いよく扉を開けて床に座り込む。
急がないと。
「・・・・・ぅあ・・」
一気に流れ出す。
「ああぁあ」
この感情を、
「あぁあぁ・・ああぁあぁぁぁああああぁぁぁあ!!!!!!」
とめることが出来ないから。
36
なんで?
「―――!!」
なんでだ?
「―――――――!!」
私が過ごしてきた高校生活は、友達は、グループは全部――・・
「―――・・っ!?」
突然胃からこみ上げる何か。
口の中がすっぱくなって思わず近くの手洗い場に駆け込んだ。
「―――っ、ハァ・・ハァ・・」
水で流して処理をした。
「――――!!」
もう一度大声で泣いた。
今まで理紗がどこかで幸せに生きていると思えば頑張れた。
なのに――・・
「・・・・っ!!オエッ――・・ハァ・・ハァ・・」
自分のせいで理紗がまだ苦しんでいるのなら・・・
「・・・っ・・」
自分が今までやってきたことはなんだったのか――?
「―――・・市川!!」
どこか聞き覚えのある声。
「・・!?お前、その顔・・・、とりあえず資料室に戻るぞ!お前叫んでたろ、声が遠くからでも聞えた」
そして―・・伊藤は私の手を引っ張り資料室へ連れて行った。
「なぁ、お前どうしたんだ・・?」
どうやら伊藤は最初からは見ていなかったらしい。
「・・・林だろ・・?・・なんで急に林の首なんか・・」
「・・・・、」
理由はいいたくなかった。
言ったら今までの自分を否定するようで―・・
いや、
もう自分は――・・
「・・・・・かな・・」
「は?何言って・・もう一回、」
「・・殺してもいいかな・・、」
「・・・・え?」
「・・私・・許せないの・・」
「おい・・いくらなんでもそれは―」
「違う」
私はゆっくりと首を横に振った。
「自分・・自分を殺しても、いいかな――・・?」
「――!?」
――・・自分は、どうしようもないクズ人間だ。

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