Re:愛してる
作者/おかゆ

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停学六日目。
個人的に一番ちょうどいいと思った。
四日もあれば色々と考えることも出来る。
だからまた学校に行く勇気も出る。
『今日、時間ある?あって話がしたいんだ』
久しぶりのメール。もっと前に打っとけば良かったかな。なんて考えも数分後に来た理紗のメールで吹き飛んだ。
『うん、いいよ。じゃぁこの間会った場所で待ち合わせしよっか。』
『ありがとう』
「・・・・・・?」
なんで理紗はありがとうなんて言葉を使ったのか、私にはわからなかった。
そして忘れないように伊藤にもメールを打つ。
『今日の四時半過ぎにこの間言った場所で理紗と話す。』
そして数分もしないうちにメール。
『終わり次第向かう』
「・・・・別に来なくてもいいのに」
まったく、本当に伊藤は優しすぎる。
「(それがたまに、すごく重い)」
こんなに優しくされてしまっては、私は伊藤に何を返せばいいのか分からなくなる。
でも今は。今はそんなこと考えている場合じゃない。
手がかすかに震える。
何度も大丈夫と唱えた。
もう私は過去の私じゃないのに。十分向き合う覚悟は出来ているはず。
「―――っ、」
『大丈夫だから』
(ああ、どうか私に勇気を。)
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ふわり。
ねぇねぇ、あのね、いいお話。
昔のお話なんだけど。
とっても切ない優しいお話しの、その後の話。
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―――――――――――――・・
「・・・・・瑠璃」
いつの間にか眠っていた私を優しく起こしてくれた理紗。
「もう、学校終わったの?」
「もうって、私が来てから30分は寝てたよ?」
寝すぎといって笑う理紗が変わってなくて思わず抱きしめた。
「えっ!?ちょっと、瑠璃・・?」
「ごめんね、理紗」
理紗に会う前、眠ってしまう前、始めに何を言おうか考えていた。
考えて、考えて、考えた結果こんな言葉しか出てこなかったけど。
それでもまだたりない。こんなんじゃ、まだ。
「・・・・・最近どう?」
「え?んー・・すっごく楽しいよ。皆明るくて楽しい子ばかりだし・・」
違う。
そんなのが聞きたかったわけじゃない。
本当は不安なんでしょう?
ほら、そう言って右手の甲をさすってる。嘘をつくときによくやるクセ。
「・・・・・・そういえばさ!!私最近手芸にはまったんだー」
「へぇー・・どんな物作るの?」
「ちっちゃい小物とか人形とか」
「すごいね・・・今度見せてよ」
無理に話題を変えても会話が続かない。
「いつぶりだろうね・・よくここで遊んだ記憶があるなぁ」
「そうだねー」
本当は話したいことなんて山ほどあるのに。
でも私達が話さないのは多分、
あの日のことを触れたくなかったから――・・。
でも進まなきゃいけない。もう逃げちゃダメだから。
「「あのさ、」」
同時。2人が声を出した。
―――――
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――――――――――――
ふわり、ふわり。
すれ違いばかり起こした少女達の、その後のお話。
あれれ?その後のお話が白紙だよ。
『ねぇ瑠璃これ今の私達みたいだね?』
どこかで懐かしい友人の声。
本当だね、似ているね。と少女は思う。
そして、
蚊の鳴くような声で呟いたんだ。
(じゃぁこの続きは今から起こる出来事なのかな、)

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