Re:愛してる
作者/おかゆ

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世界が、とまった。
「停学、ですか」
そのときの声はとても冷静で、自分でもびっくりした。
「―わかりました」
自分の顔をよく見たわけではないけど。
笑っているような気がした――…
* * * *
「ねぇ!!市川さんのあれ!!」
「停学だよね?やばくない!?」
「うちは退学だって聞いたよ?」
「どっちにしろアウトじゃん!!」
今日、市川が休んだ。
市川のうわさはまたあっという間に広がった。
「(どんどん有名になってってるなー)」
なんてことを考えながら携帯をだしてメールをする。
「お、翔携帯変えた?」
「あー、うん。まぁ」
「メアド変わってないよな?」
「あー、うん」
「そうか」
スマホっていいよなーとかなんとかいっている友達の話を半分無視して市川にメールを送った。
適当なあいずちをしつつ、すばやく手を動かす。
「(…送信)」
送り終わったときには友達はいなかった。
「お」
送って数分後に返信。
『私は大丈夫だけど』
『あんたは大丈夫なの?』
『私といたからいろいろいわれてるんじゃない?』
「…はぁ」
市川は優しい。
それが他人には見えてないだけで、見た目は冷たいイメージがあるが、普通の人より数倍優しいってことが最近になってわかった。
だから、
だから自分にも優しくなっていいのに。
彼女はそれを許さない。
きっと、過去に友達を裏切ったと思っているから。
「自分の心配しろよって言ってんのに」
大丈夫なんて嘘だろうな。とか思いながら、
小さく笑った。
(今日はどうして過ごそうか、)
50
「…伊藤?」
停学中。特に何もすることがなかったから遅くまで寝ていたら伊藤からのメールで目が覚めた。
『大丈夫か』
「まーた私にメールなんかして」
私は寝ぼけながらも何とか文章を打った。
「(…送信)」
そしてまた携帯をおく。
八時十五分。
私一人しかいない部屋で秒針の音がやけに大きく響いた。
「やさしいなぁ、伊藤は」
最近一緒にいてわかった。
だけど自分はその優しさに甘えてはいけない。
本当は少し。少しだけ気づいていた。
もうじき境界線を越えてしまう。
「(まいったな)」
伊藤の優しさに触れるたび、自分が弱くなっている。
いつか伊藤に裏切られるんじゃないかと思うと――…
「(怖い)」
嗚呼、もう気づいたら九時を回っていたわ。
このままだと10日間なんてあっという間ね、
なんてことを考えながら
涙を流した。
(考えすぎておかしくなりそう)

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