Re:愛してる
作者/おかゆ

17
――私はそういう人間なのです。
「・・・・・・・・話ってなんですか、麗華さん」
わざとらしくさん付けで呼んでみた。すると麗華は声を押し殺して笑う。
「別にそんなに緊張しなくてもいいよ」
無駄に声が反響した。
「・・・・じゃぁ何?」
「あれ?荷物は?」
「・・・そんなのどうだっていいでしょ?早くしてよ。こっちだって忙しいの」
麗華の顔が少し歪んだ。私だってイラついてるんだ。
実際、荷物はあの資料室においてきてある。
長い話になると考えたから荷物があると疲れると判断した。
「・・・・ねぇ、さっき移動教室の時伊藤と話してたでしょ?伊藤と仲いいの?」
「・・・・、」
あぁ、なんだ。そういうことね。
・・・・嫉妬、か。
「ねぇ・・・メアドとか持ってるの?」
・・・こんなにも笑えるのか。
「伊藤ねぇ・・・自分で頼めばいいじゃん」
「そんなこと言われても・・・ほら、友達でしょ?」
・・・・、
・・・・そういうときにだけ友達という言葉を使うなんてね。
「・・・便利な言葉だなー・・友達・・」
この間私裏切ったばかりじゃん。
「てかさー、マジで伊藤と瑠璃ってどんな関係?」
「いやいや、ただたんにちょっとしゃべっただけでしょー?麗華も考えすぎだって」
近くで携帯をいじりながら麗華といつも一緒にいる取り巻きが声をあげた。・・いたのか。
「でもー、メールがどうとかって言ってたよねー?」
「メールしてる仲?みたいな」
「メル友?付き合ってる?まじウケルし」
そして上品ともいえない笑い声が廊下に響く。
「・・・・てかさ、どうでもいい。早く用件を言ってくれない?」
「はぁっ!?だから、」
「メアドとかなら本人に聞けばいいじゃん。それとも何?仲良く出来るように協力しろって?あ、逆?私が伊藤と話すなってこと?」
なんだろう。言葉がとまらない。
次から次へと出てくる言葉。それに比例するかのように麗華の顔が歪んでいく。
「・・でもさ、こんな私と『お話し』とか馬鹿みたいな嫌がらせやる暇があったら伊藤と近付けるように女磨きでも頑張っ―」
パンッッッッ――・・
「瑠璃のクセに何いってんの!?はっ?調子のんなよ!?伊藤が話しかけたのは友達のいないあんたがかわいそうだったからってだけだろ!?ちょっと黙って聞いていれば何えらそうにっ・・」
痛い。
頬をたたかれた。
「・・・っっまじでっ!!」
バシャァァッ――・・
「ふざけんなっ!!」
麗華はトイレにある水道につなげてあるホースで私の顔を思いっきりぬらす。
「・・・・・・っ、」
「あー、それおもしろそう。うちもやらせてー」
ほかの取り巻きどもが仲間に加わる。
冷たい。
嗚呼、冷たい。
冷たくて。
気が狂ってしまいそうだ―――・・。
18
「だいたい瑠璃って超生意気ぃ」
「なんかいつも平気そうな顔してさー!なんとか言ってみたらどうなのぉ?」
嗚呼、うるさい。
「自分は強い人間ですみたいな?まじ笑えるー!」
そばにあったモップで腹をつかれる。
その拍子によろけてこける。嗚呼、本当。荷物持ってこなくて良かったよ。
「私達が掃除してあげるっ♪」
「っ、」
水をかけられ、モップで頭をこすられ、トイレの床に口をつける羽目に。
―・・今時こんな古典的なやり方するんだ。てかいたんだ。
なんてことを考えながらも冷たさや痛みに絶える。
「てか泣かないのー?えらーい」
・・・ホント、なんで私は泣いてないんだろう。
「あんたって本当にかわいそう!!ゴミ以下だもんね!あ、だからうちらが掃除してあげてるのかぁ」
・・・・わかった。
私はこいつらを哀れんでいるのか。
逆切れした挙句にこんなことでしか自分のストレスを発散できない哀れな人間。
「・・・・ゴホッ・・」
クズ以下の人間にゴミ以下なんていわれて私は怒りよりも哀れみの方が買っていた。
まったく。
――・・『めんどくさいですね』
ガンッッッッ――・・
麗華は本日何度目かのモップを私に当てようと振りかざした瞬間にそれを私がつかんだ。
「っ!?」
『まったく、人が下手にでていれば・・調子にのってるのはどちらですか?』
「は・・?」
『逆切れした挙句こんなことでしか日々のストレスを発散できない哀れな貴方達に、本当に掃除されるのは誰なのかを・・・教えてあげましょうか?』
そこで私の意識は切れた。

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