Re:愛してる

作者/おかゆ

9


「・・・・・・あ」
「まじで!?っしゃぁ!ありがと!」

そして一人ガッツポーズをしている。

「でもあんたなんか友達も多いし、居場所なんてどこにでもあるだろう」
「・・・・・まぁ、そうかもしれないけど・・・」


なんか居心地が悪いんだ。


彼が言ったのは私が予想していない言葉だった。


「・・・・俺、実を言うと父親が再婚しててさ。母親が血のつながってないってやつ。しかも再婚が中三のときで・・まだ『お母さん』って言いにくいっていうか・・家に帰るとたいていいるから気まずいんだ・・・それに、」
「もういい」


それ以上は聞かない。というより聞けない。



「お前、泣きそうな顔してるから」
「っ、」


さっきまで自分が泣きそう(てか泣いてた)だったのに。
なんで他人の気を使ってるんだ?


「・・・・まぁ家族関係のことなんてなんとなく私と似ている。それに友達のどうこうを私が聞いたって何の解決にもならない」
「・・・・それもそうだな」


そういってニカッと笑った。


「俺とお前は似てる」
「でも確実に違うところがある」
「どこ?」



似てる、なんて口先だけ。

決定的に違うのがある。




「――・・私は今いじめられている。嫌われている・・あんたはみんなに好かれている・・それが大きな違いだ」
「そうか」


そしたら彼は寂しそうに笑った。


「好かれてる・・ねぇ」


私はうなずいた。




「『お前の目にはそう見えてるのか』」





彼はつぶやいた。


10


「何言って・・」
「なぁ、市川。世界には戦争とか飢餓とかで苦しんでいる人がどれだけいるか知ってるか?」
「何を急に」
「いいから」
「・・・・・・知らない」
「だよなー・・俺も知らない」
「何が言いたい」
「じゃぁさ、世界中でいじめにあって苦しんでいる人がどれだけいるか知ってるか?」
「・・・それも知らない」
「じゃぁ、そのいじめで自殺をした人の人数」
「・・・・知るわけがない」
「だよなー・・」


そしてカバンの中からペットボトルのお茶を取り出し一口飲んだ。



「知らない。よな・・」
「何が言いたいんだ」
「そう、知らない・・俺はお前のことも。お前は俺のことも・・何も・・」
「・・・・」

一人でぶつぶつと言い出す伊藤。


「うん・…ごめん。忘れろ」
「いや、きっと無理」
「世界中には飢餓で苦しんでる人もいれば腐るほど食料を持ってる奴だっている」
「うん」
「俺は思うんだけどその腐るほどの食料を飢餓で苦しんでる人に与えたいと思うんだよ」
「・・・私も、思ったことはある」
「・・・いじめられてる人がいるってことは、絶対いじめている人がいる」
「それは当たり前だ」
「でもお前は嫌われてるって訳じゃない。それなりにしゃべる相手だっていた」
「・・・・・」
「つい最近まで『居場所』と呼べる場所があった」
「つい最近まではね」
「でもそれは『本当の居場所』じゃない」
「・・・・っ、そうだけど」




「・・・・・俺も同じだ」







「・・・・・え?」



何を言ってるのか分からなかった。



「―・・正確に言えば俺は裏切られていないけど・・似たようなもんだ・・・きっと今の母親だって俺のことを邪魔だと思っている」
「・・・・被害妄想はやめろ」
「わかってる」


そして彼はゆっくりと立ち上がった。



「・・・・・世界ってさ、不公平だから面白いんだよ」


彼は私に向かってそういった。



「・・・あんた、あれでしょ。ついに頭がおかしくなったでしょう」
「ねぇよ」
「じゃぁ厨二病」
「ない」
「・・・・・まぁ私も思ったことは、ある」
「だろ」
「・・・結局何が言いたいの?」



「・・・・・・俺とお前の共通点。探せば沢山あるだろ?」
「・・・・そうかもね」









確かに私と彼は似ていた。