Re:愛してる

作者/おかゆ

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――ここは遊びだ。


「おはよー」
「あ、おはよー」


「今日小テストあるって」
「え、マジ?」


高校に行っても中学の延長上だ。
皆まだ子供だ。
だけど子供ではない。

皆は演技をしている。


「あいつマジうざくない?」
「あー、だよね」


たとえ思ってなくても口にしなきゃいけないときがあるのだ。
たとえ嫌でも演技をしなきゃいけないときがあるのだ。


「あんたはどう思う?」
「えっ!?あ、あぁ・・うちも嫌いかな」
「だよねー?」


あわせないと、仲間はずれにされるので。

だから今日も皆は悲しそうに、楽しそうに遊ぶ。

私はそれが嫌いだ。



「・・・いたのか」
「もともと見つけたのは私だ」
「まぁ・・そうだな」



あのときから、私と伊藤との間に何か。

亀裂。

ゆっくりと。



「・・・そういえば、テストどうだった?」
「まぁまぁ。そっちは?」
「俺多分ダメだ」


なんて。

いつものようにしている話なのになんか。


切ない気持ちになって。


「・・伊藤」
「んー?」
「・・友達って、いつからなってるもんなの?」

つい思ってることを口に出して。

「・・・・んー・・なんだろうな」

つい、伊藤を困らせて。


「・・・自分を隠してまで『友達』をやるのなら・・それは本当に友達って言わないから・・だから、」

おいおい何を言っているんだ自分。


「・・・・、そうだよなー・・」
「・・・・うん・・」


今日はめったにしない話ばっかする。


「親友なんて・・出来たらそれは、奇跡なことで・・」



それは、


「伊藤はいた・・の?」
「・・え?」
「あ、」




あのときの話の続きを聞きたいから。


32


「・・は?」
「や、あの、その・・違くて・・えと、」
「どうした、市川・・」


おかしい。

いつもの私じゃない。
伊藤を傷つけないようにと気を使っている自分がいて。


「・・・・ごめん」
「なんで謝るんだよ」

そして伊藤が机に寝転がる。


「・・・・・なんで・・、謝るんだよ」


もう一度。伊藤はゆっくりとつぶやいた。


「・・・・っ、」

何かを思い出したかのように手で顔を隠す。


「・・・伊藤?」
「あー・・ごめん、市川・・うん。親友はいたよ・・中学のときに」
「あっ?あぁ・・そうなんだ・・今も仲いいの?」

すると伊藤の手がかすかに動いた。


「・・・あ、うん。仲・・いい、かな」


答え。かすかに戸惑う伊藤の声。


「・・・・伊藤、中学校の頃・・なにかあったの?」

私は思い切って聞くことにした。


「・・・・・」


沈黙。肯定を表した。


「・・・・・あった、うん。あった・・・」

そして自分で確かめるように私に言った。


「でも今は・・言いたくない・・」
「そう」
「ごめんな」




そしてへラッと笑った。