Re:愛してる
作者/おかゆ

15
「じゃぁもうそろそろお開きにしますか」
「しますかって・・別にあんたが帰りたいときに帰ればいいよ。あ、くれぐれもここのこととか絶対にばらさないでね」
「ばらさないよ」
「ん。じゃぁ」
「・・・・なぁ」
伊藤がドアに手をかけようとした瞬間、彼は私にある質問を投げかけた。
「・・・お前、一人で寂しくないのか?」
それはあまりにも単純で、そして私にとってどうでもいい質問。
「・・・別に」
「そ」
そして一瞬むこうが寂しそうな顔をして、ドアをゆっくりと開けた。
キィ・・となんともいえない音が心地よく感じる。
「・・・・今さらだよ。『寂しい』なんて」
その言葉は静寂な空気の中にとけていった。
次の日。
いつものように麗華たちに冷やかしの目を受け、机の上にある雑巾を元の位置に戻し、机の中にあった紙切れを何事もなかったかのようにゴミ箱へ捨てた。
きっと紙には『死ね』とか書いてあったんだろう。
いちいち相手にしてたら思う壺だ。
麗華たちは面白くなさそうな顔をしてからまた自分達の話に花を咲かせていた。
するとメールが来ていた。
「・・・は?」
差出人はあろうことか伊藤。
私は思わず伊藤のほうを見てしまった。
だって彼は今学校にいるから。
そして伊藤と目が合う。
『今日もお疲れ様』
この一言だけだった。
「・・・まだ始まったばかりだけど」
メールの内容に突っ込みながら私はよく分からない感情を抱く。
・・・・・この気持ちはなんだろう。
16
「市川ー」
「・・何?」
移動で美術室へ行く途中、伊藤が後ろから呼んできた。
「なんでメール返信しなかったの?」
「え、アレのどこにする要素があったの?」
ありがとうとでも打って欲しかったわけ?偽善者なの?
そんなことは言わず、ただ相手が次に言う言葉を待つ。
「・・別にそういうわけじゃないんだけど・・もしかして市川、メールとか嫌い?」
「いや・・嫌いって訳じゃないんだけど」
「まぁ急に送った俺も悪かったわ。ごめんなー」
「・・・なんであんたが謝るのよ」
「なんとなく」
「・・・私と話してるとあんたの株がさがるよ」
「そんなの気にしてんの?」
「だってあんた、人気者じゃない」
「・・・・・、まぁ株とかどうでもいい。俺は」
『じゃぁ先行くわ』といって伊藤は先に美術室へ走っていった。
「・・・・(偽善者)」
私は心の中でもう一度つぶやいた。
しょせん自分が危ない目になったらばっさり切り捨てるんだよ。
・・・・そんなもんだよ。
私はゆっくりと考えながら美術室へむかった。
『瑠璃、話しがある』
昼放課、私が楽しくチャットをしていたメールが来ていたことに気がついた。
差出人は――・・麗華。
「・・・・今頃話し・・?」
何故?またグループに入ってとかどうとか・・?
『今日の帰りに西にあるトイレで話さない?』
「・・・・トイレ」
西にあるトイレ・・そこは薄暗くあまり人が通らない場所だ。
「・・・楽しい話になりそうで・・」
本日何度目かのため息をついて携帯を閉じた。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク