Re:愛してる

作者/おかゆ

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「・・・はぁ、」
教室にいづらくなった私は携帯を持って廊下に出た。



<ひまわりさんが入室しました>

ゆーし>>お、ひまわりじゃんw

ひまわり>>あれ?今日はゆーしさんだけ?・・はぁ。

ゆーし>>なんだその言われよう。まぁいいや。

ひまわり>>なんでいるんですか?

ゆーし>>いちゃ悪いのかw

ひまわり>>いえw別にww

ゆーし>>おいwww・・・まぁなんか今俺のいる場所が居心地が悪いからチャットに来たってだけだよ。

ひまわり>>あー、そう・・私もそんなとこ。

ゆーし>>聞いてねぇよw

ひまわり>>てか心さんは?

ゆーし>>無視かwおい、俺のことは無視かww

ゆーし>>心はいつもならいると思うけどなー。

ゆーし>>お前がいるからか?

ひまわり>>ふざけんなw


   ・
   ・
   ・


いつもどおり暇なら。とチャットをして楽しむ。

そしていつものように色々言われて。
いつものように授業が終わったら資料室に行ってただボーっとしている。
何も、変わらない。

何も。




『俺も同じだ』


「・・っ、」


昨日うっかり伊藤に私の中学の頃を話してしまった。
別に同情してもらおうとか、そういうわけじゃない。

でも結果これでいいと思った。


『俺たち、友達になることって出来ないのかな』


伊藤が突如言い出した言葉。

そういえば彼も本当の居場所がないとか言ってたっけ。

「・・・・・友達、」

と考えた所でやめた。


これ以上触れ合ってはいけない。




境界線の前まできたら止まる。




境界線の位置はちゃんとわかっているつもりよ。


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「今日もお疲れ」
「・・・・、」

資料室の机でふせていると突然扉のあく音がし、伊藤が入ってきた。

「・・いちいち言わなくていいよ。そんなの」
「そうか?」
「実際今日は軽かった」
「嫌がらせが?」
「そう」

そして伊藤は近くにあった漫画を手にとって読んだ。


「・・・お前、こんなのも読むの?」
「・・あぁ、それ」

伊藤が手にしたのは以前麗華達にいいよと進められてしぶしぶ買ったベタな恋愛漫画だった。

たいして面白くなく、麗華達はこういうのがいいのかとさほど興味もない状態で資料室に置きっぱなしにしていた。

「・・うわ、記憶喪失とか・・」
「ベタでしょ?そのあと主人公のキスで記憶喪失が戻るの」
「は?マジか・・ありえねー」

そういってまたペラペラと読み進めていた。


「『ごめん・・俺、記憶を失って・・すごくお前を傷つけた・・』」
「・・・・!?・・うまいじゃん・・」


伊藤の演技が物凄くうまかった。

「『記憶を失ってたとはいえ・・お前は俺を見捨てずに助けてくれた・・もう一度言う、俺・・お前のことが好きだ・・っ!!』」
「・・・すごい、」

ありきたりな台詞も誰かが感情をこめて言うとここまで違うのかと感動。

「何?中学の頃とか演劇やってたの?」
「んー?・・あー・・まぁ俺の友達がさ、こういうの好きでよく付き合わされてたんだよ。そしたら・・・まぁ・・こんな風にちょっと出来るようになったんだけど」


まさかこんな所で使うとは。と笑いながらつぶやいた。


「にしてはノリノリだったけど」
「まぁ少し楽しかったし」

彼は綺麗に笑った。
そして、

「・・・・・でもまぁ、俺はその友達と縁を切っちゃったけど」
「はっ?」



彼は何かすごいことをしゃべった気がする。