Re:愛してる
作者/おかゆ

7
「・・・・暇だ」
資料室の中をぐるりと見回し、特にやりたいこともやらなければいけないこともなかった。ただ居場所がなかったからここにきただけ。
「落ち着いたし・・帰ろうかなぁ」
独り言をつぶやく。資料室の中には家から持ってきたある程度のお菓子や遊べそうな物はある。
「あー、だりー」
「!?」
男子生徒の声。こっちに近付いてくる。
でもここにはめったなことがない限り入ってくることは――・・
「・・・あれ?なんでここあいてるんだ?」
「!?」
しまった。扉を完全に閉めてなかった。
「・・・・・・・」
やばい。隠れる?あ、でも隠れる場所がない。
「・・・・・失礼しまーす」
キィ・・と言う音とともに薄暗い部屋から光がささった。
「・・・・・」
「・・・・・」
無言。お互い、無言。
「・・・・・えと・・市川?」
まさかのクラスメイト。
「お前、何してんの?」
お前こそ、何勝手にあけてんの?
8
「・・・・おま、何でいるの?」
そこに立っているのはクラスメイトでかなりもてるといわれている(実際そうでもないと思うが)伊藤 翔。
嫌でも耳に入ってくるので覚えた。
「・・・・・こんにちわ、伊藤君」
「いや、いいよ猫かぶらなくて」
「・・チッ」
ばれていたのか。
「いやいやいや、それより俺の質問に答えろよ」
「君こそなんでここを開いた」
「好奇心で」
「好奇心であけるものか?普通」
「あけるだろ」
「もしあけて見られてはいけないようなことを見てしまったらお前はどうする」
「・・・・・例えば?」
「・・・まぁ、それは考えろ」
しつこい。
「・・って、なんでお前の質問に答えてんだよ俺!そうそう!俺の質問に答えろよ」
・・なんでこんなに上から目線なんだ?
「――・・たまたまだよ」
もう面倒くさい。てきとうに言って早く帰ってもらうか。
「・・たまたま。君みたいに。扉が開いていたから入ってみたた・・それだけ」
「本当か?」
「ホント、ホント」
「じゃぁなんで漫画とか教科書とかあるんだよ」
そして彼はずかずかと入っていき、床に落ちてた教科書を拾った。
「・・・お前のだろ。これ全部」
「・・・」
これ以上何もいえない。
「・・・全部言ったら・・・あんた、ここから出て行ってくれる?」
「理由にもよるけどな」
そして彼は近くにあった椅子に腰掛け、カバンを下ろした。
「・・・・ここ、入学してちょっとした頃に偶然見つけた場所でちょくちょく愛用してるの。ここ、私の居場所」
はっきりと言った。そう、ここは居場所なの。
薄暗くてちょっとほこりっぽくて、でも住み心地がいい。
「だから、」
「確かにここいいよなー」
「はっ?」
え、何?今なんていった?
「確かに。俺もここ好きかも。俺もちょくちょく来ていい?」
「・・・・・・・・・ッハァ!?何言ってんの!?出て行ってくれるって言ったじゃ―」
「理由にもよるけどなってちゃんといったぜ?」
ムカツクほど意地の悪い笑顔で私に言った。
「俺もここ、居場所にしたい」
その時、ほんの一瞬だけ。伊藤が真剣な目をしていってきたからつい、
「・・・・・・別に、いいけど・・」
なんていっちゃったじゃない。

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