Re:愛してる
作者/おかゆ

53
「なんで、瑠璃、だよね・・?」
「・・・っ、」
「あっ・・待って、瑠璃!!」
その場にいるのが嫌になって逃げようとしたら理紗に走って止められた。
「瑠璃、瑠璃。なんで逃げるの?」
そこにいた理紗は。
中学校の頃とは別人で、
とっても綺麗になっていた。
「・・・理紗・・変わったね」
やっと出てきたのはそんな言葉で。
「瑠璃こそ・・というより、学校じゃないの?今日」
「いろいろあって・・理紗のところも早いような気がするけど・・」
「今日は早く学校が終わる日なの」
ここまで話してホッとする。
よかった、普通に話せてる。
「ねぇ、もし時間があったらちょっと話さない?久しぶりに瑠璃と話したいんだ」
そういって理紗は笑うんだ。
あの、綺麗な。あのときの。何も知らなかった。理紗の、笑顔――・・、
「・・・・あ・・」
どうしよう。
また、思い出してしまう。
つらかったのは理紗なのに。
なぜか今すごく気持ちが悪くて、
吐き出しそうで。
あのときを、いじめの瞬間を思い出してしまって。
なんで、
今ここにいる理紗は笑顔なのに。
私の感情はぐるぐると・・・・・・
「・・・・っ」
「瑠璃・・?どうし、」
「いやっ・・・・!!!!」
「え・・?」
つい理紗の手を振り払ってしまった。
「・・あ・・・ごめ、」
震えが止まらない。
あぁ、なんで今。
「瑠璃・・、」
違う、違うの、理紗。
そんな悲しそうな笑顔にならないで。
悪いのは私だから。
「・・・・うん、わかった・・ごめんね」
だから。
謝らないで。
「急にビックリしちゃったよね、ごめん・・でもね、もう一回瑠璃と話しがしたいの」
――・・そんなの、私だって同じだ。
「――・・また、あえる?」
――・・うん。会いに行く。
「すぐ?」
――・・本当は明日にでもすぐに行きたいんだ。
行きたいんだけど――・・、
「じゃぁ、待ってるから・・・・ごめんね」
理紗は子供をあやすように私を抱き寄せた。
私が何もしゃべらなくても理紗が私の言いたいことをわかったように、私も理紗の言いたいことはなんとなく分かった。
・・・・足が動かない。
「・・・・・(理紗、私は弱いんだ)」
高校生になった今でも。
54
―・・扉が閉まります。ご注意ください・・―
遠くの方でそんな音が聞えた。
――・・私は何をやってたんだろう。
言いたいことは沢山あった。
それを言葉にしようとするとのどに張り付いたようになってなかなか言葉にできないのだ。
「・・・・・、」
電車が発車する。今は何時?
「・・・・・ぁ」
小さな声で驚きの言葉を漏らす。
「(私の学校の制服)」
そうか、もうそんな時間なのか。
その集団は私なんて見もしないで、どこかで買ったであろうジュースを片手に楽しくおしゃべりをしていた。
私には遠い世界。
ああして誰かと楽しくしゃべることも、寄り道することも多分ない。
(それはそれで寂しいなぁ、)
そう望んだのは自分なのにね。
「飛鳥それ何ー?」
「あー、これねー、」
「・・?高木さん・・?」
階段から聞き覚えのある声。高木飛鳥だっけ。
「ちょっともぉー。そんなんじゃないから!」
「本当に?」
「ホントだって!!」
あぁ、あんなに仲良く話している。
別にそれがどうこうって訳じゃないけど。
ただほんの少し、わずかに。
うらやましいと思ってしまった。
「(あぁ、もう。理紗に会ってから変なことばかり考える)」
もう一度、あんな風に笑い会える友達ができたら。
それだけでどんな風に世界が変わって見えるんだろう。
―・・発車します。ご注意ください・・―
いつの間にかきた電車に皆乗ってしまっていたようで。
一瞬、高木さんとも目があった気がした。
あわてて目をそらす。
そうだ、目立たないようにしなきゃ。
そしてまたほんの少し彼女の方を見た。
彼女はまた友達と楽しくしゃべっていた。
さっきのは、気のせい。
「・・・・っあー、今電車行ったかー・・」
これまた聞き覚えのある声。
「・・あと7分も待つのかよ」
私の隣に座り、独り言を呟いている『彼』に私は驚きを隠せなかった。
「・・・・・伊藤・・」
「え?・・・・っ!?」
そして歯車はゆっくりと動き出す。

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