ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】
広大な湖があり、緑が生い茂っている。
その日は、晴れていたためにその美しさが余計映える。
「なあこれ見てくれよ!完成したんだ」
ある一室で、一人の男が言った。
男が話しかけたのは近くにいた女だった。
女は笑顔で彼の元に歩いてきて、彼の持っているものに目を向けると笑顔を絶やさぬまま言った。
「うわあ!すごい。これ、ずーっと前から作ってたやつでしょ?やっと完成したんだ」
「うん。一番最初に、お前に見て欲しくて」
「ありがとう。じゃあ見てもいい?」
そう言って女は男の持っているものを受け取り、それに視線を注いだ。
男はそんな女を見ると、息を吸い込んでから言った。
「なあ。これがもし成功したらその時は、俺と――――」
「おはようございまーす」
そんな気の抜けた挨拶をしながら警察署に入ってきたのは有明千尋(ありあけ ちひろ)、二十四歳である。
刑事試験には一発で合格し、頭脳は確かな彼女である。
「有明!何遅刻してんだよ!今日はこの間起きた殺人事件の捜査会議って言ったろ!」
そんな千尋に言ったのは千尋の上司だ。
「すいません」
千尋は怒ってきた上司と目を会わせる事なく適当にあやまった。
いつものほほーん、として何も考えていないかのような顔をしているが、彼女は彼女なりに結構考えているつもりだ(?)。と、その時。
千尋たちの課に男が入ってきた。
「あ、マヤマさん。おはようございまーす。今日は遅いですね」
マヤマと言われた男は千尋の上司。
堅物で頭は良いかもしれないが単純な事が考えられない。
しかも美人好きでデリカシーのないバカだと千尋は思っている。
彼、真山計(まやまけい)は千尋を一度見ると睨むような目つきをして目を逸らし、そのまま上司である陣内の所へ行った。
「すいませんねぇ、駅が混んでまして。僕が切符を買ったのですが色々あって切符を落としてしまい、それから切符販売機に並び、十分のロスをしました。それからホームに行ったのですが通勤ラッシュに巻き込まれ――」
バカみたいな説明を、陣内は止めて言った。
「は、はい。わかりました。早速なんですけどね真山さん」
言いながら、陣内は一枚のファイルを真山に渡した。
関西弁が鼻つくが気にせず言う。
「なんですか、コレ」
真山はバカにしたように呟いた。
表情は至って真面目だが。
そして一応説明をしておくが陣内は課長代理なだけで後から移動してきた真山の方が格は上である。
千尋は面白がったように立ちあがり、真山の隣に突撃すると、真山の手からファイルを奪って中身を見た。
「なーんですか、コレ」
ちょっと違うが真山と言っている事は一緒だ。
「『殺人予告』があった小説家パーティ事件やけど」
陣内は知らん顔で呟いた。千尋は笑いながら言う。
「たかだか『殺人予告』があったくらいであたしたちが行かなくちゃいけないんすかー」
「いやいやっ!たかだかじゃないがな有明ー。この小説家はパーティで引退するらしいやわ。っちゅう事は殺人が起こっても不思議やない」
「どーせ金積まれたんでしょ」
千尋が釘を刺す。
「・・・・まあ、ちょっとばかしなァ」
陣内は言いながら右手で金マークを作った。
いちいち腹が立つなと思いながら真山が言った。
「わかりました」
真山はそう言うとカバンを持って課を出て行った。
千尋は少々の沈黙のあと、「えっ」と呟いて自分もカバンを持ってその場を後にした。
「待って下さいよ真山さん」
千尋がそう言いながら真山の隣に来るが、真山は歩く速度を変える事なく言う。
「有明、朝は何を食べた」
「は」
千尋は思わず聞き返す。
「いいから答えろ」
真山の声は冷たい。いつもの事なので気にせず続ける。
「今日はー・・・・。確か食パンっすね」
「食パンに何をかけた」
「何ってー、ジャムと生クリームとハチミツ、あぁ、あと卵黄とキュウリを。それに砂糖とチョコレートソースをかけて焼いたやつで。超バカうまなんすよー!これアリアケスペシャルです」
「・・・」
「何でですか?」
「・・・・・」
「あのー」
「・・・・」
「いや答えて下さいよ」

小説大会受賞作品
スポンサード リンク