ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-27



「河山さんの作品ですよ」


「あ、そういえばそんな事言ってたなあ、滝沢さん」


「にしては多くないすか」


千尋はそう言って周りを見渡した。

真山も見渡す。


「だなあ。確実に他の作者の本も混じってるみたいだ」



真山はそう言うと本棚から一冊本を取り、作者の所を指さした。


【ドラいもん】とある。


「ただの娯楽室だな、ここ」


真山はそう言うとその本を元の場所に戻し、隣にある作者が【河山英寄】となっている本をとって表紙を見た。

【迷宮トンネル】とある。

真山はそれを開き、読み始めた。


と、その時。

扉が開いた。


「あっ・・・・」


そこにいたのは、滝沢だった。

滝沢を見た千尋は立ちあがって言った。


「丁度良かった。貴方に話があります」


「話?わたくしにですか?」


滝沢は不思議そうな表情を浮かべた。








「松本さん・・・ですか」



ホールに来た千尋は、滝沢に松本についての事をきくと滝沢はまたも不思議そうに言った。

その横で、真山は先程の本を呼んでいる。


「確かには私は松本さんと会社が一緒で、彼がどういう人物だったかは知っておりますが・・・・」


「でしたら教えて頂けますか。何かダメな理由でも?」


「あーいえ。教える事は構わないのですが・・・・」


「ですが?」


「やはり急に松本さんについて教えろと申されましても、どう言っていいのかわからないと言いますか・・・」


滝沢はそう言うと少し歪んだ表情を見せた。


「じゃあどうして、松本さんは周りからの評価があまり良くなかったんですか?」


真山が訊いた。

滝沢は「あぁ」と言ってから言った。



「私個人の感想で言いますと、松本さんはやり方が卑怯だと言う事でしょうか」


「卑怯?」と真山。

滝沢は続ける。


「なんと言いますか・・・・。例に挙げますと、主にあったのはお金を積んでまで出版する小説を持って帰ってくる事ですとか、部下や同僚たちが持ってきた原稿を横取りするですとかでしょうか」


「なるほど」


「あ、あとですね。西野さんとお付き合いをされていた頃のお話なのですが」


「何かあったんですか?」と千尋。


滝沢はうなずいて言った。


「確か松本さんが浮気をなされまして、西野さんが怒ったのです。それで松本さんは逆ギレをしまして、社内にあったハサミで西野さんの腕をケガさせたのです。その事が一部の社員に知れ渡りまして、余計に評判が下がったと皆さま言っておりました」


滝沢がそう言うと、千尋はうなずきながら言った。


「じゃあ西野さんには松本さんを殺害する動機があったって事ですねぇ」


「犯人は西野で決まりだな」


と今まで黙っていた真山が言った。


千尋は「きいてたんすか」と真山の方を見る。

滝沢はホホホと笑ってから言った。


「正義感の強い方々だ・・・。素晴らしいです。私の息子にも、見習ってほしかったですよ。あははは・・・」


「息子さん、何されてるんですか?」


真山がきいた。


「えっ?現在ですか?えぇーとですね・・・・。今は普通の会社員をしていますよ」


滝沢は真山の方を見て言った。


「奥さんは」


千尋が言った。

滝沢は微笑みながら言う。


「妻は二年程前に病気で亡くなりました。それ以来、息子と二人です」


滝沢がそう言うと千尋は、


「・・・奥さんがいなくても、息子さん、幸せでしょうね。滝沢さんみたいな人が父親で」


と言った。

滝沢は窓の外を眺めながら言った。


「さあ・・・・。どうでしょうね。息子が思っている事はどうもわからなくて。まあ・・・。幸せに思ってくれていればいいとは思いますがね。有明様がそう言うのなら、信じる事に致します」


滝沢はそう言って窓を開けた。

外からは温かい風が入ってきて、風は三人の髪の毛をなびかせた。