ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-28
「どういう事よ!」
女の声がきこえた。
恐らく西野の声だ。
二人が階段の下を見下ろすと、やはり西野、そして美冬がいた。
「も、申し訳ありません。なくなるとは思っていなかったので・・・・」
美冬がそう言い、西野は溜息をついて言った。
「・・・あんたが預けても大丈夫って言うから預けたんじゃない。ふざけないで」
西野はそう言いながらタバコを口にいれた。
美冬は隣で「申し訳ありません・・・」と呟いていた。
それを見て、二人は階段を下りて行き、真山が西野と美冬に向けて言った。
「どうかしましたか」
そう言うと美冬が先に答えた。
「・・・実は、パーティがはじまる前に皆さまからお預かりしていたカバンの中に、西野様のカバンもありまして・・・」
このパーティがはじまる前、誰もがカバンを預けていたのだった。
美冬がそう言うと、西野が言った。
「そのカバン、なくなったんですって」
西野の言葉をきき、千尋が美冬に言った。
「どういう事ですか?」
美冬は申し訳なさそうに答える。
「西野様の他に、三名程カバンがなくなったんです。今お詫びに回っていて、それで今西野様に・・・」
美冬がそう言うと、千尋が西野に言った。
「そんなに大事な物が入ってたんですか?」
すると西野はタバコの煙を口から吐いてから言った。
「そんな大事な物が入ってなくてもカバンがなくなるなんて嫌でしょ?貴方嫌じゃないの?」
「えっ、あたしカバン預けてないんで。つーか預けててもお菓子くらいしか入ってないんでオッケー牧場です。強いて言えば警察手帳くらいすかね」
「手帳?・・・みんながみんなあんたみたいなバカじゃないのよ。パーティがはじまる前でも落ち着いて管理しなさいよ」
西野がそう言うと千尋は「・・・バカ?」と呟いていたが真山は美冬に言った。
「何でなくなったんですか」
「・・・・わかりません。気づいたら、西野様を含む四名の方のだけなくなっていて・・・・」
美冬はそう言って俯いた。
そんな美冬を見た真山は西野の方を見て言った。
「・・・ま、別にお菓子くらいしか入ってなかったんでしょう?じゃあいいじゃありませんか」
真山がそう言うと西野は千尋を指さして言った。
「それはこの子よ!私には私の大事な物が入ってるの」
「例えば」真山がそう言うと西野は千尋から手を離してから答えた。
「・・・例えば、メモ帳とか、万年筆とか・・・・。出版会社の人間にとって大事な物なんです」
「いいじゃないですか、そのくらい」
千尋はそう言いながら西野の方を見た。
西野は「はっ」と言ってから千尋の胸倉を掴んでに言った。
「良くないわよ。メモ帳には会社の大事な情報が入ってるし、万年筆は亡くなった祖父からもらった珍しい色の万年筆なの!カバンの奥底にキッチリとしまってたのに・・・・。この人のお菓子なんかと一緒にしないでくれますか?」
西野がそう言い、千尋は冷静な口調で、
「離して下さい」と呟く。
西野は苛立った表情で乱暴に千尋の服を離した。
「本当に、申し訳ありません・・・・」
美冬が再びそう言い、西野は大きく溜息をついた。
「荷物、どこに置いてたんですか?」
真山が美冬にきいた。美冬は、
「四階の小ホールです。鍵もかかっていたので万全だったのですが・・・・。なくなる一時間ほど前、私は自分の忘れものを取りにそのホールに行ったんです。その時はまだ皆さまの荷物がありました。まさかあの万年筆が西野様のだとは・・・」

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