ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ
Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-7
そう言いながらおじさまは二人に名刺を差し出した。
【●●出版 滝沢博隆】と書かれていた。
それを見て真山が言った。
「へえぇ。やっぱり貴方みたいな出版社の人が来てるんですか」
どーでも良いことを当たり前のように訊く真山に、滝沢はキレイに整えられた白髪をいじってから言った。
「えぇ、やはりそうではないかと思いますが・・・・。あの失礼ですが貴方がたはそうではないのですか?物好きな方々ですね」
滝沢はほほっ、と笑った。
その言葉をきいて千尋がききかえした。
「物好き?」
「あ、えぇ。先生のお書きになる小説はどれも、素晴らしいのですが大人向け、と言いますか・・・」
「どーゆー事です?」
「お読みになった事ないのですね。その、グロテスクな描写が多いと言いますかね」
「へえぇ~。そうなんですか。それが先生の良さだとか言われてますよね」
滝沢はテンションをあげて言ってきた。
「それはもちろん!先生のお話は素晴らしくて、デビュー作の『迷宮ロード』から最新作『迷宮レストラン』など、どの作品も大ヒットです。一番のヒット作品は『迷宮ディナー』ですかね」
滝沢がそう言った所で真山が言った。
「作品すべてに『迷宮』ってついてるんですか?」
「思い返してみればそうですね。デビュー作から今に至るまでの八十七作品すべてに『迷宮』ってついておりますね」
「何か意味があるんですか?」
「・・・・さあ。その事は、わたくしも一度先生に尋ねてみた事があるんです。けれど、先生はどうしてもその事だけは話してくれないのです。今やその謎を知っている人間はこの世にいないかと。作品を何より大事にしてきた方なんです。作品の買収話がきても、原稿だけはゆずらないと言うお方です」
滝沢がそう言うと真山は名刺をポケットにしまってから言った。
「それなのに新作原稿新人にやっちゃうんすね」
千尋はそう言って彼を見た。
滝沢は「さあ・・・」と言ってから答えた。
「ここだけのお話ですと、先生のご年齢はもう七十一・・・・。そろそろ原稿を誰かに託したいだとか」
小説大会受賞作品
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