ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-23



「彼は柳出版の金城正康様です。よく先生の原稿に文句を言っているのを見た事があります」


美冬がそう言うと千尋はジュースの入ったコップにストローで息をいれ、ブクブクとしてから言った。


「んじゃ、河山先生とやらも金城さんと知り合いなんすね?」


「はい。何度かお会いしておりますので」


美冬は千尋の方を見て答えた。


「あやしいな、あの金城って奴。金城は松本とは?」


と、真山。

根拠はあるのかないのか知れたものではないが。


「さあ・・・・。私の知る限りでは会っているのは見た事がないですね」


美冬はそう言って首を傾げた。


「ふぅーん。僕的には知り合いだと思いますが」


根拠があったようだ。


千尋は一応きいてみる。


「どうしてですか?」


「金城は松本恵介の事を『松本』って言ってた。殺された人間の名前を知っているのは西野のような元からの知り合いと西野からきいた僕と有明だけ。名前を知ってるって事はあの人、最初から松本の事知ってたんだろ?」


思えばそうだった。

松本恵介が殺されたが警察は一度もその名を口にはしなかった。


「なるほど。汗臭い割には考えるんすね」

と千尋。


「知り合いじゃなくても全員犯人候補だから何とも言えないがな。でもあんなに食ってかかってたのに殺したって言うのも考えにくいな」

と真山。


「あの、金城様が犯人である可能性は低いかと・・・・」


美冬が言った。

二人はそっちを見て、千尋が言った。


「何でです?」


美冬はうなずいてから答えた。


「金城様は確かに出版社の方ですが、お家はかなりのお金持ちですし、それに、上司がいないので原稿を売る必要も、上司に見せる必要もないのです」


「上司がいないって?」


「平たく言いますと、社長さんだと言う事です。このパーティに来たのはたぶん原稿が狙いではなく、ただ暇だったから来たと言った感じでしょう」


美冬がそう答えると真山が言った。


「じゃあもし、金城さんが犯人なんだとしたら目的はライバルを消す事じゃなくて松本個人を消す事って訳ですか。でも、社長だったとしたって自分の会社で出版したいって願望あるだろ」


そう言うと、千尋が言った。


「そんなんで普通人殺しますか」


千尋はコップにさしたストローをいじりながら呟くように言った。


「わからないぞ、人は。ちょっとした衝動で殺人を犯す人間だっているんだ。人気者を妬む奴がいないって方がおかしい話だ」


「それでも、あまり目立った事をする方がおかしくありませんか。金城さんのように」


「そう思わせるのが奴の狙いって可能性も否定できない。けど君の言ってる事も否定はできない。犯人がこの屋敷の中にいる以上、放ってはおけない」


「お屋敷の外に森があったじゃないですか?そこに隠れてたりとかは?」


「それはないだろ。パーティで一度は誰かに顔を見られてるはずだからな。そんな事したら最初に疑われるのはそいつだ」


「あー、そっか。でも松本さん、どうして恨みをかってたんでしょ」


「そこだなー。どーやって調べるか」


真山がそうやって頭を悩ませていると千尋が言った。


「あ、滝沢さんにきけばわかるんじゃないですか?知り合いじゃなかったかもしれませんけど、きいてみる価値はあると思いますよ」