ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-8



「誰かに自分の原稿託すなんて随分と暇な老人さんですなあ。弟子はいないんですか」


「いえ・・・。実は先生、二十年ほど前までは弟子がいたんです。確か、『マミヤコウタ』さんだったような気がするのですがね。その弟子さん、ある事で亡くなられてしまって。それ以来先生は秘書を雇って弟子はとらなくなったんです」


「ある事?」


「それは不明です。先生以外の方は知らない事実ですよ。私にも、マミヤ様と同じくらいの息子がいたものですから、つい気になてしまって」


「じゃあ何で死んだって事は周りに言いふらしてるんです?言う必要ないと思わないんですか」


真山がそうきくと、滝沢は「はて・・・」と頭を掻いてから言った。


「言いふらしていた訳ではありませんが、わたくしは無理矢理きいてしまったものですから、わたくしが知っているだけです。そのせいで、先生は少年のように、たまに、部屋を抜け出してどこかへ行ってしまうなど大変でした」


「どうも胡散臭いですねぇ」


そう言いながら千尋が滝沢を見ていると一気に照明が暗くなり、マイクを通した女の声がきこえた。


「皆さま、本日は河山英寄、後継式パーティにお越し頂きありがとうございます。わたくし、河山の秘書、宝生と申します」


美冬がそう言うと再びパァっと照明がつき、辺りは明るくなった。


「あっ、美冬さんだ」


真山はそう呟いて彼女を見た。

先程の秘書だ。

千尋は目からキラッキラな星を出している真山を横目で一度見ると呆れ顔で美冬に視線を戻した。


「では、河山先生から一言頂きます」


美冬はそう言って隣お車椅子に座っている老人にマイクを渡した。

ホクロが異様にデカい。

彼が河山英寄だろう。河山は、一度咳払いをしてから言った。


「ごっほぉん・・・。みなさん、お越し頂きありがとう。今日は後継式じゃ。ワシが原稿を託す相手は後で発表しようと思う。それまで存分に楽しんで行ってくれ。なお、この屋敷の部屋は現在全部解放中じゃ。このパーティはワシの引退式も踏まえておる。最後にワシの作品や屋敷を見て欲しい。ワシはもう歳でこんな状態であまり動けんが、何かあったら宝生君に言ってくれ。それじゃ皆さん、楽しむがよい」


河山がそう言うと、会場に拍手が巻き起こった。真山も雰囲気に合わせて拍手する。


ふと隣を見るが千尋は拍手をせず、周りを気にする事なく並んだ食事を食べていた。


彼女が貧乏だと言う事を忘れていた。

そして周りの人間たちは急に動き出し、この会場を後にする者が増え始めた。


「真山さん、あたし廊下の方行きますけど行きませんか」


千尋は真山を見ながら、モグモグと口を動かしながら言った。


「・・・ちょっと待て、僕は君のように暇じゃないんだ。一人で来たまえ愚か者」


真山はそう言い、ホールに戻って行った。