ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-14
「どこにいるかと思えば真山さん、何をしたいんですか」
真山の耳に、千尋の声が届いた。
場所はトレーニング室だ。
なぜこんな部屋があるのかと言うと、知らない。
真山は腹筋マシーンに座っていた。
千尋はドアを開けたまま、真山の所に歩みよってきた。
「スポーツジムにでも行ったらどーすか。そんでいっそ足の親指に五キロのダンベル落として骨折してもらえませんか」
千尋がそう言うと、真山は腹筋をしたまま言った。
「ジムには毎週行ってる」
「・・・・にしては筋肉ないっすね。つーか今腹筋しないでもらっていーすか。汗臭くなるんで」
「このマシーンは僕の通ってるスポーツジムにはないんだよー。いやあ、いいもんだね。これ」
「へぇー。このマッスィーンはそんなにすんばらしいもんなんですか。まあ、どっちでもーですけど、とりあえず起き上がってもらっていーすか」
千尋はそう言いながら彼を見る。
が、真山はやめる気配なく言う。
「グチグチうるさい奴だなあ君は。さぞかしモテない事だろう」
「邪推しないでもらっていーすか。つーか失礼じゃないすか」
「君から、失礼と言う言葉が、出てくるとは・・・な」
何か知らんが真山の言葉は途切れてきている。
そりゃそうだ。
腹筋してながら会話している訳だから。
「ちょ、やめてもらっていーすか」
千尋はイラっとしながら呟く。
「彼女、宝生さんは何か隠しているな、あれ」
千尋の言葉を無視し、真山が続けた。
千尋も応答する。
「知ってますよ、そんくらい。何で気付いたんすかー?」
コピー機の事を、真山を気付いたのだろうか。だとすれば少し見直す。
「・・・んだ」
真山の声がきこえる。
共に吐息が。
吐息と言うよりただただ息が荒くてうるさいだけだが。
「は?」
千尋が訊き返した。
真山は同じように息をぜぇぜぇしながら言った。
「か、ん・・・・。勘だ」
先程の見直すと言う言葉は撤回しよう。
「・・・やっぱアホっすね。真山さん」
千尋がそう言い、真山は驚いたような顔をして千尋を見ると、一度腹筋をやめて言った。
「それが上司に対する言葉か。人生の先輩でもあるこの僕をアホ呼ばわりか。君の頭には紙オムツでも被さってるのか」
「紙オムツを破いて鼻の穴に突っ込んだ方がいーんじゃないすか?・・・・実は、あたしも思ってたんすよ」
「どーせ君の事だ。女の勘だ何だとほざくんだろ?ハハハッ」
知らず知らずに自分の事をバカにしているバカな真山に対して千尋は答える。
「ちゃんと根拠がありますよ」
「何だ?訊いてやろう」
「言いませんよ。あたしが掴んだ事すから」
千尋がそう言うと、真山は腹筋をはじめながら言った。
「水臭いな、君は。バカにされるのが・・・・怖いんだろ、ハハハッ・・・ガハッゴホッ・・・」
後半咳をしているが気にせず千尋が言った。
「臭いのはあんたの汗です。コピー機にインクが漏れてたんすよ。そんで、宝生さんが自分で作ったんじゃないかって思っただけです」
「・・・僕も同じ事を考えていたところだ」
「・・・・」
腹が立つ真山を、千尋は真山を睨みつけた。
「・・・」
と、その時。突然叫び声がきこえた。
「きゃあああ!」

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