ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-10



「・・・この絵とかも、宝生さんが購入されてきたりするんですかね」


千尋がそう言って白井を見ると、白井は絵に目をやって答えた。


「・・・さあ。この絵の出所は僕にはさっぱり・・・・」


「へぇー」


「でも、描いた人すごい技術とセンスですよねぇ。昔、お母さんが言ってました。人を魅了できるものを造り出せるって言う事は、人として成ってる人間にしかできない事なんだって。きっと、描いた人は幸せな人生を送ってるんでしょうねー・・・」


白井がそう呟くと、千尋は微笑んで「素晴らしいお母さんすね」と呟いた。


と、その時――――。


「くだらないなァ」


と声がきこえた。

千尋と白井はその声の方を向く。


そこには、シャンパンを持った真山がいた。


真山は壁によりかかっていたが二人の元へやってきて、絵を見ながら言った。


「この絵を描いた人物に『幸せ』と言う言葉は似合わない。どちらかと言えば『絶望』や『苦しみ』『哀しみ』と言う言葉の方が相応しいだろう」


真山はそう言って絵を眺めている。

千尋も絵を見ながら言う。


「すぐひねくれるますね、真山さんは」


千尋がそう言い、真山が言い返す。


「確かに人を魅了するものを造り出す事はすごい事だ。だがだからと言ってその人物が素晴らしい人間だったとは限らない。君の母親が言う事は事実かもしれないがそんなものは夢や幻の仮想世界に過ぎない」


真山はそう言って千尋を見た。

千尋はなぜか強気な口調で言う。


「実際、河山宅に飾られてるなんて名誉な事じゃないすかー。幸せだったに違いありませんよ」


「本当にそうか?どんなに素晴らしい賞をもらった人間でも幸せなどと言う幻想的なものに悩み苦しみそして最後に自殺する人間もいる。何度もがき苦しみ荒れ果てようと、運命は変えられない。君はベートヴェンをきいた事があるか?」


そう言われ、千尋は「ありま―――」と言ったがすぐに声がきこえ、さえぎられた。


「わかっている聴いた事がないのだろう。あったとしても君に音楽の素晴らしさなどわかりはしないのもわかっている」


真山が嫌味たらしくそう言うと、千尋はムッとする。


「私にだって音楽の素晴らしさくらいわかります。あのヴァイオリンの音とか・・・」


「それは失礼。君は森のくまさんしか聴いた事がないのかと思ってたよ、ハハッ」


「どうしてで――」


「君は法律の言う名の森に迷い込んだ哀れな少女だからだ。頭の中でララララーとくまと手をつなぎ歌っているに違いない」


「腹の立つ人っすねー。目にコーンフレークでも詰まってんすか」


「詰まっていたらとっくに目が砂糖だらけになってる事だろう。君は勝手に森の有明さんとでも替え歌を作って愉快な仲間たちと歌っているがいい愚か者」
真山はそう言って千尋を見た。


「愉快なのは真山さんでしょ。砂糖だらけになってリアル鬼ごっこで捕まったらどーすか」


「サトウ違いだ」


と、その時白井が間に入る。


「・・・・ま、まあ。喧嘩はよしましょうよ」