ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-20



「この屋敷の階段は個数で言うと三つ。中央と、東側と、西側です。あたしと真山さんは東側から来ました。三階は中央より西側に大きな壁があって、通り抜けはできないようになっていました」


千尋はそう言うと、西野が言った。


「そうだとしても、あんたら二人が部屋に入ってたなら、山口は東階段を下りて、松本さんを殺してまた東から上がってきて、あんたらが行ったのを確認すれば殺害は可能じゃない」


「それは無理です」


千尋の意図がわかった真山が言った。


「なんでよ?」


西野は真山を睨むような目で見た。

真山は真面目な顔で言う。


「僕らは確かに、部屋の中にいました。けれど、部屋のドアは開けっ放しだったんですよ」


「だから何なのよ。気付かなかったって事もあるでしょ」


西野がそう言い、真山が首を振り、千尋が言った。


「陣内さん、廊下を歩いてみて下さい」


そう言われた陣内は首を傾げながら廊下をスタスタと歩く。


――カコン。カコン。カコン。


「音を立てないようにして歩いて下さい」

と千尋。陣内は一度立ち止まると、ゆっくりと歩き出す。


――カコン。カコン。カコン。


「・・・そうか、音や」


気付いた陣内が立ち止って呟いた。


「音?」と西野。

「ここの廊下は、どうしても足音が響いてしまうようになっています。この廊下はフローリングでも特殊なもので、教会や海外などでよく使われる素材です。どうしてこういう造りになっているんですか宝生さん」


千尋はそう言って美冬を見た。

棒立ちしていた美冬は、「えっ」と呟いてから言った。


「・・・・先生が、誰が来てもすぐ気付けるようにと・・・・」


「今の理由をきいた限りでもわかると思いますが、誰かが歩けば必ず気付ける仕組みになっています。しかし、あたしたちは足音などききませんでした。つまり、東側を通り抜ける事は不可能なんですよ」


千尋はそう言うと、山口は「ほ、ほら見ろ」と言って陣内を指さして言った。


「ふざけるな!俺を疑うなら指紋が出てからにしやがれ!」


と言った。

陣内は「何やねん!誰にだって間違いはあんねん!」と叫ぶ。


その時、美冬が呟いた。


「・・・そもそも、どうしてこの部屋が開いていたんでしょう?」


「何言ってるの?全部解放してるって言ったのは貴方と先生じゃない。開いてるのは当たり前でしょ」


西野はそう言って美冬を見た。

美冬は首を横に振って言う。


「ちがうんです。このお部屋と先生のお部屋、倉庫はカギをしめていたんです。鍵を持っているのは先生だけですし・・・」


「じゃあ何や、この部屋に入れるんはその河山とか言う先生だけっちゅう事ですか?」


陣内は目をギョロギョロとしながら美冬を見た。

美冬は「はい」と答える。


しばしの沈黙が流れる。