ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-30



「えっ」


山口はそう言って意外にも財布を出して一万を探し始めた。


千尋は「冗談すよ・・・」と呟いて左手をしまった。

本当言うと冗談ではなく欲しいのだが恐喝に当たってしまうので控えておく。


「意外っすね。もっと不真面目でこっちから礼言えっつっても『頼んで訳じゃねーよ!』とか言いそうな人に見えましたけどねツトム君」


ツトム君、は山口さん家のツトム君の唄のツトム君だ。


わかりにくいがわかって欲しい所である。


「普段だったらそうしてたかもしれんが、あんたにそう言う訳にゃいかん。何せ、危うく誤認逮捕されるところだったんだ」


山口はそう言って微笑んだ。

千尋も微笑みながら言う。


「・・・でも、何で犯人はグッチーのカバンに入れたんすかねぇ、ナイフ」


千尋がそう言い、山口は「さあ・・・」と呟く。


「・・・つーか、あのナイフどーしたんすか?」


「あぁ、あれなら陣内とか言う男が持って行ったよ」


山口がそう言い、千尋は途端に走り出した。


「あぁ、ちょっとあんた!」


と言う山口の声がきこえたが無視して千尋は陣内の所に向かった。


あの男の手に握られたままでは何も進歩しないどころか証拠が消えてしまう可能性が大いにある。

「すまん、なくしてもうたー」「捨てたわ、あんなん気持ち悪いわあ」などと言われる事は見当がついている。


真山もアホ、陣内もアホ、周りにはアホしかいない。


「陣内さん、ナイフどこにやりました?」


案の定、陣内は会場ホールでシャンパンを飲んでいた。


隣にはサングラスをかけたアホみたいなオッサンがいるが気にせず千尋がそう言うと、陣内は酔っているようだが普通に答えた。



「あぁ?ナイフ・・・・。あぁ、宝生言う人に渡したわ」


「はあ?」


千尋は顔を渋めた。


「あん人、何かそれ私に渡せ言うから渡してやったわ。どーせ今調べられへんしなあ」


陣内がそう言い、千尋は陣内を見ながら舌打ちを連続してする。


「何やお前!ワシは上司やぞ!」


陣内、ではなく隣のオッサンが言った。

アホらしい。


千尋はそんな二人は放っといて会場ホールを出た。





 「有明」


廊下で声がきこえた。

この低音で無駄に格好良い声は真山だ。


「なんすか、汗臭いんすけど」


千尋は驚く事なく前に立っていた真山に言った。


汗びっしょりだ。

何をしてきたのかは知らないがかなり、驚くほど疲れている。


あぁ、スクワットか。

と思い出しながら千尋は真山を見た。