ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-31



「なんすか、じゃないだろ。君の甘ったるい臭いよりはマシだよ。そんな事より、どこにいるかと思えばこんな所で腹ごしらえかハハッ」


真山はハハハハと言いながら千尋の肩をチョビチョビ突つく。

千尋は冷徹な顔で真山を見る。


「ウザ」


千尋はそう呟き、そんな真山を無視して美冬がいた事務室に向かう。


が、後ろから真山がついてきながら言う。


「どこへ行く」


「美冬さんの所です」


「何しに」


「確認です」


「何の」


「ナイフです」


「ナイフ?何で美冬さんがそれを?」


「陣内が渡したそうなんすよ」


「・・・ウザ」


真山が急に呟いてきた。

千尋は苛立ちを隠せない。


「真似しないで下さい。そーゆー所がウザいんすよ真山さん。耳に腐った馬肉でも詰まってんすか?」


「適当な事を言うな、耳アカだ」


「そう言われると何か不潔っすね」


「君にもあるんだぞ!」


「・・・・・」


「おい」


「・・・・・」


「おいって」


「・・・・」


「何か答えろ!・・・そういえば、僕は少し気になった事がある。言い忘れてた」


真山がそう言うと、千尋は立ち止り振り返った。


「何すか」


「急に食いつくな。・・・実はな、さっき本がいっぱいあった部屋があったろ?そこにあった本の年号が気になってな」


「年号?」


千尋はそう言い、不審な顔をした。真山は続ける。


「ああ。一九七七年から一九九七年までの二十年間、一度も作品を出してないんだ、河山さんは」


「どういう意味です?つーか病気か何かじゃないんすか。弟子が死んだショックとか」


千尋は単純に言った。


「にしても二十年って長くないか?それにだ。一九七七年までの小説と、一九九七年からの小説は、話のはじまり方がちょっと違うんだよ」


「ちょっとちがう?どういう風に」


「一九七七年までの作品ははじまりがすべて、【~の迷宮に迷い込んだ者たちへ】と書かれていた。~の部分は作品のタイトルだ。けれど、一九九七年からの作品はその部分がなく、普通にはじまっているんだよコレ」


真山がそこまで話すと、千尋は「ふぅーん・・・」と呟いてから言う。


「じゃあ何ですか。作品を書いた人が違うとでも言いたいんすか」


「そうは言ってない。ただ、ちょっと気になったレベルだ。・・・と最初に言っただろ」


「・・・・・」


「だから何か答えろ!」