ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery2 【血祭りバカ騒ぎ】-7
千尋は反省する事なく適当な口ぶりで微笑みながら言う。
「冗談っすよー・・・。もう、短気なんだからIKKOちゃんはァ」
千尋はそう言って由子の腕をツンツンする。
「IKKOって呼ばないで!ちょっとこの子じゃ話にならないわ。そっちのお兄さん!」
由子はそう言って千尋の手を払い、真山を見た。
助けてくれ、と言っているようだ。
真山は千尋を見る。
千尋は真山を見て微笑むと口で「ニヤリ」と呟いた。
「・・・私は!」
ザワザワしている中で、声がきこえ全員が黙り春子を見た。
春子は「わ、私は・・・・」と呟いてから言った。
「その時は商店街に買いだしに行ってました。涼子姉ちゃんもす・・・・」
みんな忘れていたが質問に答えてくれたらしい。
真山は「あ、あぁ」と呟き春子を見た。
「そうでしたか!さあみなさん、これで春子さんと涼子さんのアリバイだけが立証された場合、疑われるのは貴方がた自身ですよォ」
真山はそう言って立ち上がり、部屋を見渡した。
「あ!?てめー誰に向かって言ってやがる!」
和夫がそう言って立ち上った。
今にも真山に殴りかかってきそうな勢いだ。
真山はさっきまでの強気さを捨て、こちらは今にも白目をむきそうだ。
壁際にいる千尋は隣にいる陣内に、「なんとかしてやったらどーすか」と呟いた。
陣内は「む、無理や・・・・」と言った。
こちらもビビッているらしい。
千尋は自分では認めてはいなくはあっても、ビビりだが勢いだけの怒鳴り散らしにはビビらない主義だ。
千尋が恐れるのは前回のようなガスなどの命にかかわるものや幽霊など得たいの知れないものだけだ。
千尋は「情けねー」と呟くと壁から背中を話し、口にくわえたミルクケーキを手に取ると真山と和夫の間に入って行った。
「まあまあまあまあ。そう焦らさんなお兄さん」
千尋がそう言って真山と和夫の肩を掴むと、和夫は「あ?」と明らかに威嚇の表情を浮かべる。
「近所にいましたよ、貴方みたいなワンコ。すーぐ吠えられたもんですよー。っつー事でアリバイ的なアレを話してちょーだい」
千尋がそう言って和夫を見ると、和夫は「何言ってんだよ、お前さん」と言って怒りながらも微笑んでいる。
「いーから早く言えェェェ!」
千尋がそう言うと、和夫は「あ?」と言うが、部屋を見渡した。
里子、春子、涼子は冷ややかな目で見ている。
和夫は千尋に目を戻して言った。
「・・・コンビニにいたよ。カメラにでも写ってんじゃねーの」
和夫はそう言って座り込み、あぐらをかいた。
それをきいた千尋はニヤッと笑って呟く。
「ありがとーでーす。嬉しくて感動してきました」
千尋はそう言って涙を流すフリをした。
和夫は彼女を見て舌打ちをした。
千尋は「えへへへへ!」と笑って壁によりかかった。
その後、無事全員のアリバイをききだした三人は里子に用意された部屋に行き、和式だったがテーブルの周りに集まって話しだした。
ちなみに三階、最上階だ。
「これが、金井家の相関図・・・じゃないか。家系図?っすね」
そう言って千尋はカバンから直筆の家系図を出してテーブルに広げた。
字はかなり汚く、漢字をところどころ間違っており、しかも間違ったと気づいている所も修正液などで消さずに、黒いペンで二本線を引いてその脇に正式に書きなおしている。
まるで小学二年生の絵日記の文章だ。
「いつ書いたんだ、ソレ」
真山の声などきかず、千尋は話しだす。
「まず、現在生きていないのが曾祖父の金井総二郎、妻の文子、里子さんの母親、金井綾子。この三人です。そんで、遺産を狙っているのが他の十人です。明伸さん、康大さん、由子さん、美江子さん、里子さん、涼子さん、春子さん、直人さん、智広さん、和夫です」
千尋はそう言いながら総二郎、文子、綾子の名の所に赤いペンでバツ印を書いた。
「じゃあアリバイがある春子と涼子、和夫は犯人候補から抜けやな」
陣内がそう言って春子、涼子、和夫名前が書いてある所を指さした。

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