コメディ・ライト小説(新)
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- 最強次元師!! 《第一幕》 -完全版-
- 日時: 2025/06/22 21:01
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 82jPDi/1)
毎週日曜日更新。
※更新時以外はスレッドにロックをかけることにいたしました。連載が終了したわけではございません。
*ご挨拶
初めまして、またはこんにちは。瑚雲と申します!
こちらの「最強次元師!!」という作品は、いままで別スレで書き続けてきたものの"リメイク"となります。
ストーリーや設定、キャラクターなど全体的に変更を加えていく所存ですので、もと書いていた作品とはちがうものとして改めて読んでいただけたらなと思います。
しかし、物語の大筋にはあまり変更がありませんので、大まかなストーリーの流れとしては従来のものになるかと思われます。もし、もとの方を読んで下さっていた場合はネタバレなどを避けてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします!
*目次
一気読み >>1-
プロローグ >>1
■第1章「兄妹」
・第001次元~第003次元 >>2-4
〇「花の降る町」編 >>5-7
〇「海の向こうの王女と執事」編 >>8-25
・第023次元 >>26
〇「君を待つ木花」編 >>27-46
・第044次元~第051次元 >>47-56
〇「日に融けて影差すは月」編 >>57-82
・第074次元~第075次元 >>83-84
〇「眠れる至才への最高解」編 >>85-106
・第098次元~第100次元 >>107-111
〇「純眼の悪女」編 >>113-131
・第120次元〜第124次元 >>132-136
〇「時の止む都」編 >>137-175
・第158次元〜 >>176-
■第2章「 」
■最終章「 」
*お知らせ
2017.11.13 MON 執筆開始
2020 夏 小説大会(2020年夏)コメディ・ライト小説 銀賞
2021 冬 小説大会(2021年冬)コメディ・ライト小説 金賞
2022 冬 小説大会(2022年冬)コメディ・ライト小説 銅賞
2024 夏 小説大会(2024年夏)コメディ・ライト小説? 銅賞
──これは運命に抗う義兄妹の戦記
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.41 )
- 日時: 2018/10/17 22:36
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SyVzJn9Z)
第038次元 君を待つ木花ⅩⅤ
ベルク村の領主ヴィースの家宅は広大な平地の中に建っている。その地面の一部が、地下深くからごっそりと抉られ隆起や陥没などを起こし、もとの平坦で整然とした景色を完全に過去のものとしていた。この事態を招いた元凶は何食わぬ顔でその黄色い眼をギョロリと剥いている。
フィラの次元の力、『巳梅』
鮮やかな紅色の鱗を持った大蛇は、ベルクの地に再臨した。
「そうだフィラさん、レトが……!」
「ええ、わかっているわ。私に任せて」
フィラはレトヴェールのもとに近づくとその場でしゃがんだ。倒れているレトの顔を覗きこむ。
(気を失ってる……。でもよかった。頭だけはしっかり守っているみたいだわ。頭部の外傷がほとんどない。その代わり、腕や脚に打撲痕が多いけど……。しばらく、立つことはできなさそうね)
レトの身体をじっくりと診ていたフィラの背中に、怒気を含んだ甲高い声が投げつけられた。
「なによなによなによぉ! 3対2なんて、ヒキョウなんじゃなぁい!」
「卑怯ですって? あなたたちがそんな言葉を知っていたなんてね」
「は、ハァッ!? なによアンタ! いきなり出てきて何様のつもりぃ!?」
「私はフィラ・クリストン。この村の、ベルクの民よ」
フィラの臙脂色の瞳に熱が灯る。リリアンは一拍置いたのち、ハッと小さく嘲笑した。
「やっだ傑作ぅ! アンタがフィラねぇ!? いまさら現れるなんて、どーゆう神経してんのよっ! キャッハハハぁっ! オモシロいじゃなぁい。アンタとアタシちゃんたちの次元の力……どっちが強いか勝負したげるわ! ──思穿ッ!!」
リリアンが笛に口元をあてると、ロクは青ざめた表情ですばやくフィラのほうを向いた。
「フィラさん! 下がっ──」
「大丈夫よ」
フィラはロクよりも前へ出た。落ち着き払った声音で、紅色の大蛇『巳梅』へと呼びかける。
「巳梅ッ!」
主の声に反応した大蛇が、その太い首元をねじってリリアンのほうへ顔を向けた。すると大蛇は大きく口を開けて、絶叫した。
「キャアアアアッ!!」
大地が震撼する。空が上下に振れた。──ような錯覚がした。強烈な音波と大蛇の咆哮とが正面からぶつかり合うと、刹那、爆風が巻き起こった。
相殺したのだ。それも拮抗する予兆も見せず。両者の繰り出した力は完全に塵埃と化し、風に乗って吹き抜ける。
「す、っご……」
ロクの口から思わず感嘆の声がもれた。打って変わってリリアンは、金切るような声で喚き散らした。
「はあァッ!? なによいまのぉ! キィィー! どいつもこいつも、大ッキラぁイ!!」
地団駄を踏みあからさまに怒りを露わにしているリリアンを尻目に、フィラは冷静に庭全体を見渡した。
(あの笛の音は巳梅の咆哮でなんとか対応ができる。幸い、縄を使う男の子のほうは岩に挟まってて身動きがとれない。これ以上この場が長引くのはよくないわ。あの子たちの体力もとっくに限界を迎えているはずだもの。はやく終わらせるためにも、私にできることは……──)
「……ィラ、さん」
「レトくん? 気がついたのね、よかったわ」
「ロクを、高く飛ばせ」
え、とフィラは小さく声をもらした。レトの掠れた声はロクにまで届かなかった。驚くフィラをよそに、レトは呼吸を乱しながら言葉を紡ぐ。
「飛ばして、そんな高くない、とこまで……」
「え、なに? なにをどうすればいいの?」
「水路を……」
そこまで言って、レトはまた気を失った。少女とまちがえそうな可憐な顔で小さく寝息を立てている。フィラはぽかんとしてその寝顔を眺めていた。
「フィラさん、レトどうかしたの!?」
「え、いや、それがいま、水路がどうのって……」
「水路……? ──っ! フィラさん下がって!」
ロクが叫んだそのとき。ロクとフィラのもとに音波が奇襲した。即座に対応に躍り出たロクは両手を突き出し、雷電を解き放った。
「アンタ、そろそろ元力も限界なんじゃなぁい? ムリしないでくたばってなさいよぉ、ドブス!」
「そっちこそ……! 大人なんだから、ムリすると体壊しちゃうかもよっ!」
「はああッ!? 調子こいてんじゃないわよ、ガキがッ!」
小さな背中で立ちふさがるロクをフィラは慌てて制した。
「無理はしないで、ロクアンズちゃん! ここは私と巳梅で、」
「ムリなんかじゃないよフィラさん」
「え?」
「やってみせる。守ってみせる。そのための力なんだ!」
ロクとレトの身体が、疲労が、元力が限界を迎えている。
だからなんとかして早くこの戦いを終わらせなくてはいけない。これ以上2人に無理をさせたくない。という一心で共闘を願い出たフィラだったが、どうやらそれは勝手な思い込みだったようだと彼女は身震いした。
「……そう。そうよね。でもお願い、ここは任せてロクアンズちゃん」
「フィラさん」
「私たちの力で、なんとかしてみせるわ」
ロクがこくりと頷いた。フィラは『巳梅』に向かって叫んだ。
「巳梅! もう1度、力強く鳴くのよ!」
『巳梅』が顎を下ろしていく。人ひとり丸呑みできそうなほど広がった喉の奥が、震動したそのときだった。横から飛んできた縄がその頭部に絡みつき、ガチンと鋭牙をかち合わせた。
「そうカンタンには、させねーよ……!」
盛り上がった土の大塊に身体を押し潰されながらも、リリエンは懸命に手を掲げていた。その腕には縄が巻きついている。腕から伸びる縄は、『巳梅』の頭部を捕らえてピンと張っている。言わずもがな彼による奇襲だった。
「さっすがねリリエン! あの鳴き声さえなけりゃ……こっちのモノよっ!」
リリアンは絶好のチャンスだと言わんばかりに狂喜した。笛を持ち上げ、口元に添えようとする。
(ま、まずいわ、どうしたら……! 巳梅はいま口を塞がれててあの音を相殺できない。あの音を直接喰らうわけにはいかないし、なんとかしないと……なんとか、)
『ロクを、高く飛ばせ』
フィラは、すこし前にレトが言っていたことを思い出した。彼がなにを思ってこう発言したのか、その真意までは探れなかったが、彼は苦し紛れにそう告げたのだ。落ちるか落ちないかというところで意識を保ちながら、"ロクアンズを空へ飛ばせ"と、それだけはしかとフィラに伝えた。
信じるしかない。迷っている時間はない。
フィラは意を決した。
「巳梅!!」
その名を叫ぶ。主の声がまっすぐ大蛇のもとへ届く。
『巳梅』は、がんじがらめに縛られた頭でわずかに後方を振り返り──
自身の"尾"を地中で泳がせ、ロクの足元から出現させた。
「──ぅえっ!?」
瞬間。ロクの足が宙に浮いた。それもほんの一瞬だった。彼女は、空へ向けて打ち上げられていた。
「……は? ちょ、ちょっとちょっと待ちなさいよッ! ……あっ、あんな高いとこまで行っちゃったら……──音なんて、届かないじゃないのよぉっ!」
上昇。急上昇。ぐんぐんと引っ張られていく。心地の悪い浮遊感が風とともに纏わりついて──
ロクは、身体を回転させながら、大空の中を泳いでいた。
(う、うそ……! なんで……っ!?)
空の上からは、広大な庭と、それを取り囲む森が見える。『巳梅』によって荒らされた庭の一部は文字通りの惨状だった。ヴィースの家宅から向かい側のほとんどがその有様だということが、空の上からだと十分に理解できた。
しかし。
家宅の、裏庭側。そちらは戦場になっていないため平坦な土地が広がっている。
(……あれ? もしかして)
ふいにロクはあることを思い出した。
『これを仮に家とする。そんで、水源は……』
「水源……」
『それがいま、水路がどうのって……』
「水、路……」
枝先で砂を引っ掻いて描いた、ただの記号みたいな家の絵が、
ぱっと頭に浮かび上がってきた。
『家からちょっとずれたとこの、ずっと真下』
──頭の中にある回路が、かちっと音を立てて、繋がった。
『巳梅』によって荒らされた場所からは水が湧き出てこなかった。もしも本当にヴィースの家宅の近くに大きな水源があるのだと仮定するならば、『巳梅』が荒らしていない領域の地下深くにその水路が流れているということになる。
つまりは、裏庭。
ロクはヴィースの家宅の裏庭のほうを睨んだ。平地が広がっている。なにかを耕しているのか、土地の色が一部異なっているのがかろうじてわかった。
標的とは、これまでとは比にならないほど距離があった。
ロクは、自身が発する電気がどれほど距離を出せるのか、その限界を痛感したばかりだ。それはおよそ十数メートル。いまロクがいる空中から地上への距離を考えると、絶望的な数値だった。
──それでも、と。
固く握った拳から雷が飛散した。
「──ぜったいに、届かせてみせる!!」
体内に蔓延っている小さな元力の粒子。それらひとつひとつが、主の声に呼応する。
繰り寄せろ、練り上げろ、──極限まで。最大限で最高値の元力が右の拳に集っていく。雷が唸る。右半身だけが体温を急上昇させる。
電熱が、空気を焦がすとそれが、
新しい扉を開くための鍵となった。
「"六元"──解錠!!」
詠唱が、天を衝く。
「────"雷砲"ッ!!」
突き出した拳。放した指先から、
一閃。
──"雷の光線"が、気流を裂き、撃ち放たれた。
まさに怒涛の勢い。熱線が地上を目がけて奔け抜ける。大気を焼き切りながら、空と大地とを裁断したそれは、次の瞬間。
地上に堕ちた。
一触即発。鉛のような爆発音が轟いた。次いで灰煙が辺り一帯に蔓延した。土塊が跳ねて離脱し、熱風爆風突風が連鎖し、視界が一瞬、暗闇に還る。
そのとき。
水がひとすじ、大地の隙間から手を伸ばした。
割れた大地の底から大量の水が噴き出した。空に向かって、透明の花が咲く。あこがれた地中の外へ幼虫たちが顔を覗かせるように、待ちこがれた青空に水しぶきが架かった。
噴き出た水は、抉られた地盤の底へとまっさかさまに落ちた。みるみるうちに水が溜まっていく。同時に、ヴィースの家宅が大きく傾き、その溜まり場に向かってひっくり返った。
「そ……そん……な」
ドボン、と横広の家屋が水の溜まり場に落ちて大きく水しぶきをあげた。否、それはもはや池などではなかった。
──"湖"
目を瞠るほど巨大な湖が、その美しい水面に射す太陽の光を、キラキラと照り返している。
「ウソ……ウソよ、ありえない、ありえない。こんな、」
そのとき。ガタガタと肩を震わせていたリリアンの上体を、なにかがきつく絞めあげた。全身が真紅色に染まっている太い体躯を見下ろしリリアンは顔をしかめた。
(し、しまったッ!)
『巳梅』は、頭部に縄を巻きつけたままの状態にも拘わらず、その長い肢体でリリアンを完全に捕縛した。リリエンは岩塊に挟まれていてもとより身動きがとれない状態だ。
小さく安堵の息を吐いたフィラは、
瞬間、思い出した。
「──そうだわ! ロクちゃんが、まだ!」
焦った様子で空を見上げる。と、上空に飛ばしたロクアンズが大声を張り上げながら地上へと戻ってくるのが見えた。
「ああああああああ──ッ!?」
地面が迫ってくる。近づいてくる。物凄い速さで自分が落ちているのが嫌でも理解できた。雷の力はもう使えない。切迫した脳内は、ついに、まっしろに返った。
が。
紅いなにかが、視界に飛びこんできた。
「ぉ、わあっ!?」
ロクは、その紅くて細いなにかに飛びついた。ロクにはそれが『巳梅』の尾の先端であることがすぐにわかった。が、彼女はその尾と衝突すると1度だけ大きく宙返りし、そこから坂道のように延々と続いている鱗肌の上をごろごろと転がり落ちた。
そうしてどんどん降下していくと、その長い坂道の終着点が見えてきた。『巳梅』の肢体が地面と接触している部分だ。リリアンを捕らえているためにぐにゃりと曲がっている『巳梅』の上体からずっと下の部分では、まるで芋虫が歩くように一部だけ盛り上がっている。
ゆえに、ロクの進路の障害とも言えるその突起部分に、彼女は為す術もなく真正面からぶつかった。
「ぶっ!」
ロクの身体はそこでようやく静止した。ずるり、と頭が落ちる。ロクは後頭部を押さえながら顔を起こした。
「……ったたぁ……。へへ、助かっちゃった。ありがとねっ、巳梅!」
『巳梅』は頭だけで振り返って、キュルル、と鳴いた。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.42 )
- 日時: 2020/05/16 21:43
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: YYcYgE9A)
第039次元 君を待つ木花ⅩⅥ
青く澄み渡っていた空は、いつの間にやらじんわりと朱く滲みつつあった。落ちていく陽の光は、大きな湖の水面に温かく降り注いでいる。
ロクアンズは、『巳梅』によって捕らえられていたリリアンと岩塊に挟まれていたリリエンの2人を拘束した。腰から提げているポシェットには、簡単な治療具のほかに麻縄などの拘束具も備えてあった。常にそれらを持ち歩くようにしているのだとロクに告げられたフィラは深く関心した。
しっかりと拘束を施された2人は地面の上に座りこみ、怪訝そうな顔をしていた。
「さてっと。こんなもんかな」
「……。アタシちゃんたちを、殺さないんだ」
「あたしは人を殺したりはしないよ。それに悪いのは領主さんで、あなたたちじゃないでしょ?」
「いっしょよ。アタシちゃんたちだってやってたもん。蛇狩り」
「へ?」
フィラは聞き間違えでもしたかと、すぐに2人の会話に割って入った。
「まっ、待ってちょうだい。あれは13年前に起きたことよ? それじゃあ、あなたたち……」
「アタシちゃんたち、20だけど? 今年で。7のときに拾われたの。ヴィースさんに」
「拾……われた?」
ロクが小さく聞き返した。リリアンはぶすっとした表情のまま続けた。
「そーよ。アワれんだりしないでよね。べつに悲しくもなんともないから。14年前に、第二次メルドルギース戦争とかゆーのが停戦になったのはとーぜん知ってるでしょ?」
「うん。それは知ってるけど……」
「アタシちゃんたち、ドルギースと取引してた、あの奴隷商人のとこにいたのよ。そんでドルギースに売られて……次元師として戦って。なんか生き残っちゃったってワケ」
第二次メルドルギース戦争が停戦になったのは、両国の前線に駆り出されていた次元師たちによる戦闘の火花が、大きくなりすぎたためだった。だが、たった6、7歳の幼い子どもまで戦場に立たされていたという実情までは、今日まで知らなかった。
「じゃあ、あなたたちはあの戦争で前線にいたの?」
「だからそうって言ってんでしょ。一瞬だけね。そんで政会のやつらに保護されてからはしばらく施設? みたいなとこにいたケド、停戦になったからすぐ出てって、てきとーにフラフラしてたら……ヴィースさんに会って拾われて。村までいっしょに連れてってもらってそこで世話んなりながら、あんたたちの大事な大事な蛇どもを殺してたってワーケ。だから同罪。わかった?」
「そう……だったんだ」
「アワれむなっつったでしょ。だぁからガキは嫌いなんだっつの。あんたからしたら、アタシちゃんたちだって子どもだったんじゃんって言いたいだろうケド、あんたたちとアタシちゃんたちは違う。なんでも与えてもらって、あたりまえみたいにヘラヘラしてさ、キレイゴトばっかでホントムカつく。あんたが思うほど大人はキレイじゃないし、子どもだってあんたが思うほど……キレイなもんばっか見てないっつぅの」
リリアンは視線を逸らした。ロクは閉口したままなにも返さなかった。すると、じっと黙っていたリリエンが小さく口を開いた。
「アンタさ、さっきどっちも選んだよな」
「え?」
「金髪の男か、この村か。どっちか片方っつったのに。アンタはどっちも選んで、どっちも手にした。……なんでそんなことができんの? 命は惜しくないってか。アンタにはやりたいこととか野望とかもないってワケか」
「あるよ。あたし、神族を全員やっつけたいんだ」
「は?」
「そのためにはもっと強くなんなきゃいけない。あたしには大事なものと大事なものを比べて、どっちか片方しか、なんてできない。だからどっちも救える道を自分でつくるんだ」
「なにソレ。バッカじゃない? 神様倒したいとか」
顔をあげたリリアンが、ハッと嘲笑した。
「神様なんてどーでもイイじゃん。あいつらのせいでこんなヘンな力持たされてるワケでしょ? 次元の力がどうやって生まれたなんて知らないケドさ、そのせいでこっちは戦争の道具にされて、神様に恨みがあるわけでもないのに「やっつけてくれ」なんて一方的に義務感押しつけられて、イイ迷惑だっつぅの。敵は神様なんかじゃなくて、人間よ。腐りきってて手に負えない、バケモノみたいな人間のほうなのよ」
神様に恨みがあるわけでもないのに。語調こそ荒っぽいが、リリアンの見解は真に的を得ていた。
元魔に肉親の命を奪われた。大切な人を危険に晒された。生まれ育った町を侵食された。
こういった直接的な恨みや憎しみなどが神族に対して向かない限り、次元師として選ばれた人間たちは「なんのために戦っているのか」という疑問を常に抱えることになる。もとより正義感の強い人間ならばそのような悩みを持つこともなく「これが使命だから」と区別ができるのだろうが、ほとんどの次元師は前者のように、神族に対しての己の感情を見失ってしまうのだ。
「……あたしは」
ロクは小さく呟いた。空から降ってくる雪の結晶をつかまえるみたいに、手のひらを優しく握りしめた。
「目の前に助けられるものがあって、差し伸べる手がここにあるなら、ぜんぶ救いたいって、思うんだ」
「……。悪いケド、ぜんぜんわかんない。いつか自滅しそうアンタ。つぅかしちゃえ、ばぁか」
「……」
ロクはなにも答えなかった。リリアンとリリエンもそれ以上ロクに突っかかることはなかった。
そのとき。ロクはなにかを思い出したように、あ、と声をあげた。
「そういえば! 領主さんどこいった!?」
フィラも、ロクの大きな声につられて辺りを見渡す。が、ヴィースの姿はどこにもなかった。
隙を見て逃亡したか。だが意外ではなかった。相変わらず賢い判断するなと思った、その矢先。
「こいつのことか?」
「えっ?」
ロクは思わず自分の耳を疑った。
しっかりとしていて、青年を思わせるような爽やかな声音だった。数日前に本部で聞いたきりになっていた懐かしい口調に気が緩む。
コルドが、全身を鎖で縛られたヴィースと思しき人物とともに草陰から現れた。
「こっ、コルド副班!?」
「ようロク。合流できてよかった。こいつなんだが、いきなり草陰に飛び出してきたもんで一応拘束しといたんだ。話を聞いてみたら、どうやらこいつが件のヴィースっていう男で、ベルク村の領主らしいことがわかってな」
「なんちゃら隊とかいう政会の使いっ走りが!」
「此花隊だ。その政会までいっしょに行くんだ。よく覚えておけ」
ヴィースを適当にあしらうコルドに、ロクは不思議そうな面持ちで訊ねた。
「でもコルド副班、なんでここに?」
「先に行っといてくれって言ったのは俺だぞ。……まあ、お前たちを追ってローノに向かって、『ベルク村に行きました』なんて言われたときには気絶しかけたけどな」
「ご、ごめんなさい……勝手なことして」
「体は無事か?」
「え、う、うん」
「ならいい」
コルドは大きな手でロクの頭をくしゃりと撫でた。ロクはすこし苦笑ぎみに、へらっと頬を緩ませてみせた。
2人のやりとりをぼんやりと眺めていたフィラに向かって、ヴィースが声をかけた。
「おい。オレをぶん殴るんじゃなかったのかぁお前さん。絶好のチャンスだろうが、あァ?」
「言われなくったってあんたなんか! ねえフィラさ……。フィラさん?」
「いいえ。もういいわ。あなたの家、湖に沈ませてしまったもの。それにそのおかげで、村の人たちがこれから水に困ることはなくなった。だからもう十分よ」
「ンだそれ。あの紅い蛇を焼いて殺しちまったってのを忘れたのかァ? 哀れだなァ、あの蛇も」
「あんたねえ!」
身を乗り出すロクを静かに制して、フィラはヴィースと向かい合った。
「それでも、よ。ウメだってきっと喜んでくれるわ」
「……あァ?」
「村の人たちが、これからもちゃんと生きていけるように、大事なものを手に入れることができたの。ウメも、白蛇様たちもみんな……村の人たちのことが大好きだったから。私たちがあの子たちを、大好きだったみたいに。だから忘れなんかしないわ。この先なにがあっても、ぜったいによ」
会話はそこで途切れた。ただ、ヴィースが小さく舌を打つ音だけがした。
「よく見たらお前、ボロボロじゃないかロク。レトは大丈夫なのか?」
「それが、レトのほうがひどいの。すぐ手当しなきゃ」
「お前もな。持ってきた治療薬、足りるといいけど……」
「私が2人を看ますよ。ローノから持ってきているので。……でも、その前にすこし……」
フィラはちらっと後ろを振り返った。その視線の先に気づいたロクが、くっとコルドの隊服の裾を引っぱる。
「先に行こう、コルド副班! あの人たちも連れて」
「え? でもあの女の人にすぐ看てもらったほうがいいんじゃ……」
「あとでいいんだよ! ほらっ、行こ!」
ロクはコルドとほか4人を率いて森の中へと消えていった。その姿が見えなくなる頃には、庭に1人と1匹だけが取り残されていた。
彼女たちは向かい合った。
「……巳梅、ありがとう。あなたのおかげでいろいろと助かったわ。感謝してもしきれないくらい」
夕焼けがあかく燃えている。橙に灼けた湖が、この世のものとは思えないほどに美しかった。長閑な風がその水面を軽やかに撫ぜている。
『巳梅』は鳴きも頷きもしなかったが、その琥珀色の眼でまっすぐフィラを見つめていた。
「私はウメを忘れないわ」
フィラが高いところへ手を泳がせると、『巳梅』は頭を下ろした。紅い鱗を受け止めながらフィラは柔らかく笑みをこぼし、
「そして」と言った。
「それ以上に、あなたがずっとそばにいてくれたことを忘れないわ。……ねえ巳梅。これからも、私と、いっしょにいてくれる……?」
なにかひんやりとしたものが首筋に触れた。それは、『巳梅』の硬い頬だった。フィラの肩にその大きな頭部が乗りかかると、わずかに、すり寄ってきているのがわかった。
フィラの言葉に応えるように、『巳梅』はキュルルと喉を鳴らした。
「ありがとう巳梅。本当に、ありがとう」
紅い、夕日が落ちていく。木も草も風も、湖も、空も。燃えるような紅に染まっていた。
それもたったの一瞬だ。すぐに夜は闇色を連れてやってきて、光を呑みこむのだろう。しかしそんなことは彼女たちにとって恐れでもなんでもなかった。
1人と1匹は心の中に、夕焼けにも似た熱を抱いている。
「あなたのそばにいるわ。これからもずっと……ずっとよ」
それは色褪せることのない梅色の花。
──「約束よ」と、フィラは目を真っ赤にしてそう言った。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.43 )
- 日時: 2018/12/21 21:11
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: hgnE84jl)
第040次元 君を待つ木花ⅩⅦ
村に戻るとすでに村人たちは寝静まっていて、聞こえてくるのは夜虫の鳴き声だけだった。手元の暗い中でもフィラはさすがの身のこなしでロクアンズとレトヴェールに治療を施した。もとより疲労で眠り続けているレト同様に、ロクも施しを受けてすぐに眠りについた。
翌日。ロクは村人たちを連れて湖へと向かった。
広大な湖をその目にした村人たちは歓喜に身を震わせていた。お互いを抱きしめ合い、涙を流し、湖の水を飲んだり浴びたりし、「白蛇様」と唱えている者もいた。
はしゃぎ回る村人たちの姿をロクは嬉しそうに眺めていた。するとロクのもとに村人たちがどっと押し寄せてきて、各々が感謝の言葉を述べた。
「ありがとう! ありがとう!」
「あなたたちのおかげよ」
「本当にありがとう!」
「ありがとう、じげんしさま!」
ロクは照れ臭いように頬を掻いて、「どういたしまして!」と満面の笑みで返した。
レトはいうと、いまだ床の上で眠り続けていた。昨日の戦闘で負った傷が癒えないのと身体を酷使しすぎた結果だろうと、フィラがレトの様子を伺いながら言った。
「ロクアンズちゃんはもう元気そうね」
「うん! あたしは1日寝たら、元気になった!」
「ふふっ。それはよかったわ」
「お前はそこだけが取り柄みたいなところあるもんな」
「そ、そんなことないよコルド副班! だってあたし、昨日六元の扉を開くことができたんだよ! ね、すごいでしょ!」
「そうだったのか。みるみるうちに成長していくな、お前。置いていかれそうだ」
「へへ。コルド副班なんかこてんぱんにできるくらい強くなるんだもんね~」
「頼もしくてなによりだ」
果実の絞り汁を湯で溶かしたものを口にしながら、コルドが「そうだ」と話題を切り替えた。
「挨拶を済ませたら村をあとにするぞ、ロク。ローノに下るのにも時間がかかるし、そこから本部へ戻る道も長い。しばらく本部を空けたからな。さすがに説教だけじゃ済まされなくなってくる」
「そっか。さびしいけどしょうがないね」
「また来れる機会がきっと来るさ」
「うん。そうだよね!」
身支度を済ませたロク、フィラ、そして眠っているレトを背負ったコルドの4人は、ヴィースら3人を連れ、見送りに集まった村人たちと別れの挨拶を交わしていた。
「それでは皆さん、どうかお元気で」
「ありがとう! じげんしさま!」
「よかったらまたきてね」
「うん、また来るよ! みんなも元気でね!」
村人たちの群れの先頭にいたツヅが、小さな体躯を丁寧に折り曲げて言った。
「ほんとに、ありがとうございましたで、このごおんはいっしょう、わすれられません」
「こちらこそだよ。あたし、ここに来れて本当によかった。ありがとうツヅさん」
「そんな。とんでもありません」
「おばあちゃん。また会えなくなっちゃうけど、どうか元気でね」
「フィラ。げんきでやるんだよ。白蛇様もウメ様もきっとあんたをみまもっていてくださる。もちろんわたしたちベルクの民も、みんな」
「……ありがとう」
「おれいのしなとしてはとおくおよびませんけれど、わたしたちのせいいっぱいのきもちでして、どうかうけとってください」
ツヅがそう言うと、群がりの中にいた村人の2人が大きな樽を持ってロクたちの前までやってきた。
「このむらでつくっていたおさけです。ろくあんずさまがたにはまだおはやいしろものですが、どうぞみなさんでめしあがってください」
「え? いいんですか、こんな貴重なものを……。他所ではかなりの値を張る代物だとお聞きしましたが」
「いいんです。わたしたちは、おかねいじょうにかちのあるものをいただきました。これくらいのものしかおわたしできませんで、せめてものきもちです」
「そうですか。それではありがたく頂戴いたします、ツヅ村長殿」
コルドがそう言って頭を下げる。と、ツヅは一度だけ後ろを振り返り、村人たちの群れを一瞥した。そしてまたロクたちを見上げる。
ツヅは身を屈め、片方の膝だけを立てた。するとほぼ同時に村人たちも一斉に同じ体勢をとった。立てた膝の上で両手を重ねる。
「じげんしさまがたに、白蛇様のご加護があらんことを」
臙脂色の頭が一同に伏した。ロクは身が震えるのを感じ、この光景を忘れないようにと瞼の裏に熱く焼きつけた。
「うん! またねっ!」
そうして、ロクたち一行はベルク村をあとにした。
村からローノへ戻るのにその近道を知っているというフィラを筆頭に、ロクたち一行は順調に山を下っていた。
途中、フィラからこんな提案があった。
「巳梅に乗って下れば自分たちで歩くこともないし、すぐにローノに到着できると思うけどそうしましょうか?」
「ううん。あたしは歩きでいいや」
「どうして?」
「この山の感じを覚えておきたいんだ。土がどんなだったとか、草木の匂いとか、そういうの。忘れないように」
「……。そう。でもわかるわその気持ち。13年前、私もそう思いながらこの山を下ったもの」
フィラが懐かしむように言った。フィラの提案を断ったロクだったが、彼女はすぐに「あ」と声をあげた。ベルク村の住人たちから礼として賜った酒の大樽を持つ担当をしていたロクは、「じゃあこの樽をお願いしてもいい?」とちゃっかり前言撤回をしたのだ。フィラは笑って、「ええ」と快諾した。
翌日、正午に差しかかる頃。驚くべき早さでローノの町へと到着したロクたち一行は、支部の隊員たちを仰天させた。
理由はもちろん、その早さではない。数日前、ベルク村という辺鄙な土地に向かったロクとレトに対し「どうせ戻ってこられるわけがない」と支部の隊員たちは嘲笑していた。その発言にコルドは反感を抱き、「2人が無事に帰還できたら、ベルク村の事態を軽視していたことを認めるか」と提案していたのだった。
支部の門を叩くなり、コルドは挨拶をした。
「お久しぶりです、援助部班副班長殿。戦闘部班一同、無事に帰還致しました」
「……。これはこれは、ご無事でしたかコルド副班長殿。さぞ、大変でしたでしょうな。山の中で行き倒れでもしていたんでしょう? その2人は。それをこうして連れて戻ってくるなどと」
「なにを仰られているのかわかりませんが、この2人はベルク村におりましたよ。そしてそこで村の住人たちと触れ合い、問題を解消し、こうして無事に戻ってきたのです」
「問題だと? でたらめを申さないでいただきたい。次元師様としての尊厳を保ちたい気持ちもわかりますが」
「そうですか。それでは残念ですが、こちらは差し上げられませんね。せっかく皆さんにも振る舞って差し上げようかと思っていたのですが」
「は? なにを」
コルドがちらっと目配せした先にはロクがいた。ロクはそれに凭れかかっていた身体を起こし、両手でその側面を挟み持ちあげると、支部の隊員たちの目の前にドンとその大樽を置いた。
「ひっ!」
「お酒だよっ。あなたたちが話してた、超おいしいっていうウワサのお酒!」
「……」
「あちらにはベルク村の領主、ヴィースを含める3名を拘束して待機させています。本人たちにはすでに政府までの同行の許可を得ています」
「あ、ああ……」
「認めてくださいますね? あなた方の過失も、この子たちの勇気ある行動も」
コルドの気迫に押されたのか、支部の責任者である男はがっくりと項垂れて「ああ」とだけ言った。
支部の隊員たちがヴィース、リリアン、リリエンの3人の保護に出るのと入れ替わるように、ロクたち4人の次元師が支部の施設内へと足を踏み入れた。
入ってすぐのところにある広い談話スペースの腰掛けにレトは寝かせられた。フィラはというと、持ち運び用の肩掛けバッグを下ろし、中に詰めこんでいた薬品類を丁寧に取り出していた。談話スペースの一角に大きな薬品棚が置かれていて、そこに1つ1つ戻していく。
「棚にあるの、ぜんぶフィラさんの?」
「そうよ。ここの支部は広くないから実験用のものも上のほうに置いてあるの。それに自分で調合したりもするから、私しか扱っていないわ。この支部では私が唯一の医療部班だしね」
「フィラさんはどうして医療部班に入ろうと思ったの?」
「もともと好きだったのよ。こういうことをするのがね。村にいたときから新しい薬草を見つけては、どういう効能があるのかとか自分なりに調べたりしていたわ。だれも解き明かしたことのない難病の治療法を見つけることが夢なの」
「へえ……。そっかあ」
ロクは残念だとでも言いたげに、すこしだけ口を尖らせた。
「ねえフィラさん」
「なあに?」
「あたし、フィラさんに戦闘部班に入ってほしい」
フィラが目をまるくする。ロクはそれを気には留めずに、早口で捲し立てた。
「だってフィラさん、これからも『巳梅』といっしょに戦いたいってそう思ったんでしょ? それならこっちに来ようよ! ……ここの支部で医療部班はフィラさんだけだし、夢もあるって言ってたから、そんなカンタンなことじゃないかもだけど……でも、でもきっと本部にいたらもっとたくさん研究できるよ! ここより大きいし、道具とかもいっぱいあるよ! だからフィラさん」
「……」
「戦闘部班で、本部でいっしょに戦おうよ!」
フィラは固く口を結んでいた。ロクは、フィラの様子がおかしいことにようやく気がついた。
「フィラさん?」
「……そう、ね。戦闘部班には入れるかもしれないわ。でもごめんなさい、本部には行けないの」
「どうして? ここで1人の医療部班だから? だったらほかのとこにいる人と交代したっていいんじゃないかな? だってフィラさんは次元師なんだよ? みんな納得してくれるよ」
「そうじゃないの、ロクちゃん。私がここに勤務することになったのは……上からの指示なのよ」
「う、上?」
フィラはロクの目を見つめ返し、告げた。
「──ラッドウール・ボキシス総隊長。此花隊という組織の中で、もっとも地位の高い御方。そして……私の祖父よ」
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.44 )
- 日時: 2018/10/25 09:37
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 0aJKRWW2)
第041次元 君を待つ木花ⅩⅧ
「ラッドウール・ボキシス総隊長。此花隊という組織の中で、もっとも地位の高い御方。そして……私の祖父よ」
ロクアンズは言葉を失った。予想通りの反応が返ってきて、フィラは一呼吸置いた。
「私が13年前にベルク村を飛び出したって話はしたわよね?」
「え、ああ、うん」
「どうしてだか覚えてる?」
「えっと……ウメのことを逃がしたせいで、領主さんが怒って村の人たちにひどいことしたり、巳梅の力で村をめちゃくちゃにしちゃったり……したから?」
「そうね。それがほとんどの理由よ。でもたったの11歳だった私が、村を飛び出してあの山を下りて、どこかへ行くなんてあまりにも危険だとは思わない?」
「そう、だね……アテがあればべつだけど……」
「そのアテが、此花隊にあったのよ」
フィラが告げた『祖父』という言葉を、ロクは脳内で繰り返した。
「どうしても村を出て行きたかった私は、昔村からいなくなった祖父のことを思い出したの。祖父は有名な次元研究所の人で、そこで偉い立場にいて、だから孫の私の顔を見ればそこの組織で引き取ってくれるって、そう思った」
「それで此花隊に入隊したんだ」
「ええ。村をいっしょに飛びだしてくれたセブンって男の子もね」
「え」
ロクの口から小さく声がもれる。まただ。またフィラの口から『セブン』という名前を耳にしたロクは硬直した。
その疑問符の意味を知る由もないフィラはロクの顔に一瞥もくれることなく、棚に薬瓶を戻しながら続けた。
「いっしょに入隊試験も受けて、無事どっちも受かることができた。祖父は……ラッドウール隊長はもちろんセブン君を知っていたし、彼が18歳ながらにして頭脳明晰であることもわかってたから、セブン君はその歳で、しかも入隊早々に隊長補佐に就いたの」
「セブン班長がっ!?」
「え?」
「あ、いや、なんでもない。……あの、フィラさん、1つ聞いてもいい?」
「ええ。いいわよ」
「そのセブン……君の、本名は?」
ロクがおずおずと聞いてくるので、フィラはすこしだけ訝しんだ。が、たいして気にする素振りも見せずに即答した。
「セブン・ルーカーよ。もしかして会ったことがあるのかしら? ロクちゃんも本部にいるんだものね。隊長のおそばにいるはずだけど」
ロクは黙っていた。まちがいない、とも思った。此花隊に入隊する際、初めて顔を合わせたそのときに一度だけ聞いたことのある名前そのものだった。
本当に自分の上司であるあのセブンだったのだ。だがしかし彼の髪色も目の色も鈍い黄色で、臙脂色ではなかったはずだ。ロクはますます困惑していた。
「……? まあ、それでね、私も本部に置かせてもらえるのかなって勝手に思っていたんだけど……。どうやら隊長は、私が村でしたことを知っていたみたいだった。だから私を医療部班の班員として真っ先にローノへ送り込んだんだわ」
「ど、どうして?」
「……さあ、私にも、その真意まではわからないわ。でもわざわざ私を、ベルク村の管轄をやっているローノに送るっていうことは、そういう意味よ。罪を償わずして逃げることは許さない。祖父だってベルク村の民なのよ。おなじ民として、そう言いたかったんじゃないかしら」
「そんな、家族なのに」
「でもこれが現実なのよ」
最後の1つの瓶を置いて、フィラはロクのほうを向いた。
「だから私は、本部には移れないの。ローノを離れられないから」
「……」
「でも私、戦闘部班への異動はしようと思うわ。私も次元師だもの。薬と睨めっこばかりしていられない。あなたたちがやってきたみたいに戦わなくちゃね。離れ離れになってしまうけど」
明るい語尾だったが、フィラの表情には翳りが差していた。無理をしているようにも見えてロクは慌てて言葉を投げかけた。
「でも、でもセブン……君って人がいるんだよ? 本部には。フィラさん、13年間一度も会ってないんじゃないの?」
13年もの間、一度も会わなかったからこそフィラはセブンがいまだに隊長補佐であると勘違いしている。そのことにロクは気がついていた。
「え? それはそうだけど……。でも、いまさら会ったって、どういう顔をしていいかわからないわ。13年よ? 入った時が、あの人18だったから、いまは31とかになっているんじゃないかしら。私のことなんか忘れてるわ。それに彼は隊長補佐だもの。私なんかよりずっと高い地位にいて、私みたいな一介の隊員とは会う暇もないでしょう」
寂しそうに笑みを落とすフィラに、ロクはそれ以上なにも返せなくなった。
ロクは特段、フィラにどうしても本部へ移ってほしいわけではなかった。ただ、いまの会話からロクは、なぜだかフィラが自分の望みを悉く諦めているように思えたのだ。自責の念か。もとより反省色の強い性格なのか。ロクはいまだ納得がいっていない様子で、ぼそっと吐いた。
「でもフィラさん、つらくないの? ここにいるの」
フィラは口を閉ざした。
つらいに決まっている、と心の中ではすぐに返事をした。
村にはいられないと思って山を下りた。当てにしていた祖父には故郷近くの町に行けと命令され、来た道を戻り、以来ずっとローノで過ごしてきた。ベルク村をこけにするような陰口が耳を刺しても、山から下りてくるベルク村の人間の死体を目にする度に心臓を刺されるような、そんな痛みを蓄えてでも、命令に従ってきた。生きた心地はしなかった。けれどそれ以外に生きていく方法が浮かばなかった。
──居場所がないのだ。13年経ったいまでも。
時折考えはする。夢を見たりもする。しかし何度考えてみても、ここでやっていくしかないのだという結論に落ち着いてしまう。だからフィラは口を開かなかった。
そこへ、コルドが顔を覗かせた。
「ロク。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだが」
「あ、はーい!」
コルドに手招きをされ、ロクはぱたぱたと彼のもとに駆け寄った。
「なあに?」
「報告書を書かなくちゃいけなくてな、お前にも協力してほしいんだ。なんせ俺が村に辿り着いたときには、すでに事が済んでいたみたいだったからな」
「うん、いいよ」
「向こうに資料室がある。そっちへ行こう。談話室は人が多いからな」
建物の扉をくぐってすぐに広い談話室が見えるため、それ以外の部屋はないものだとロクは勝手に思っていた。半信半疑でコルドのあとについていくと、たしかに建物の入り口から見て右手にはまっすぐ奥へと続く廊下があった。廊下を進んでいくとその突き当たりには、部屋の扉らしきものが備えつけられていた。
「ほんとだ! 部屋あったんだ」
「これまでの報告書の写しが置いてあるらしい。あとは町の資料とかもな」
「へ~」
資料室内は広くはなかった。だがその壁にはぎっしりと本棚が敷き詰められていた。中央に空いたスペースには小振りの机に椅子が2つだけと、必要最低限のものしか置かれていない。本棚と机との距離は人が1人通れるくらいだ。実に簡易な作業場だった。
椅子に腰かけるなりコルドは机の端に置かれている円筒に手を伸ばし、そこに差してある筆を手に取った。が、あろうことかその筆先は乾いていた。彼は眉を下げた。
「しまった。ロク、近くに墨の入った瓶とかないか?」
「ええ? 本棚しかないよ、コルド副班」
「困ったな」
首の裏を掻きながら立ち、コルドが軽く周囲を見渡した。そのとき。
本棚からはみ出ていたらしい本の背に肘がぶつかる。「いっ!」と声をあげたコルドがその本の表紙を見やると、
そこには『ローノ 報告書』と記されていた。コルドはその冊子を取り出し、中を開けた。
「コルド副班、どうしたの?」
報告書を書くのに参考にでもするのだろうかと思ったロクだったが、コルドの表情がどこか真剣みを帯びていて、疑問に思った。
「いや、班長がな。よくローノからの報告書を読んでらっしゃるものだから、ローノになにか思うところがあるんじゃないかと思ってな」
「……」
「でもどの頁を見ても、書いてあるのはほとんど無災の報告、市場の情勢、町の住人からの要望なんていう普遍的なものばかりだ」
ぱらぱらと捲られていく紙面をただ呆然と眺めていた。が、突然ロクはコルドの手をつかみ、その動きを止めさせた。
「ねえコルド副班、どうして頁のあちこちで、書いてる人がちがってるの?」
「ああ、この定期報告書は、1人だけが書くものじゃないからだよ。1枚の紙に何人もが記入できるんだ。日によってべつの人間が書いていたりもするし、報告の内容によって記入する人を分けているかもしれないしな。たとえば犯罪の報告はある人だけど、市場の報告はべつの人、とかな」
「……書く人がちがう……。これ、フィラさんも書いたりするかな」
「え?」
「見せて!」
ぴょこんと跳ねて、ロクはコルドの手元から報告書の冊子を奪い取った。紙面の左端から、日付欄、報告内容欄とあって、その一番右端には名前を書く欄があった。ロクはその部分を睨みつけるようにして見ている。
「フィラ……フィラ……あった! あ、でもここだけだ。ほかのとこには……あ、こっちにも! でも……たまにしかないなあ、フィラさんの名前」
「どうかしたのかロク」
「……。セブン班長、もしかして報告内容は読んでないんじゃないかな?」
「え? そんなわけないだろう」
「フィラさんだよ。フィラさんがここにいるから、読んでるんだ」
「? な、なんのために?」
「決まってるよ! セブン班長は、フィラさんのことを忘れてなんかない。むしろ逆だよ!」
ロクは目を輝かせてそう言った。コルドはそれに気圧され、目をぱちくりさせた。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.45 )
- 日時: 2018/10/29 09:23
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: QVI32lTr)
第042次元 君を待つ木花ⅩⅨ
ローノから送られてくる定期報告書を入念に読みこんでいたというセブンだが、彼が確認したかったのはローノの現状ではないと、ロクアンズは断言した。
幼なじみのセブンとフィラは13年前、ともにベルク村を飛び出し此花隊に入隊した。しかしセブンは本部、フィラはローノ支部に配属となり、以来2人は疎遠になっていた。セブンはローノにいるフィラのことが気になっているからこそ報告書を読んでいるのだ。ロクはこくこくと、1人で何度も頷いた。
当然、セブンとフィラの関係を知らないコルドは首を傾げた。
「逆というのはなんのことだ。ロク、1人で盛り上がらないで俺にもわかるように説明してくれ」
「えっとね、うーん……つまり~……」
セブンとフィラのことを説明するのには、一言や二言では足りない。コルドはベルク村で起こったことをフィラの口から聞いてはいたが、あくまでも断片的にだ。そこにセブンの名前は出されていなかった。
一から説明したい気持ちもやまやまだがその手のことが大の苦手であるロクは案の定すべての過程をかなぐり捨て、極論を述べた。
「コルド副班、フィラさんが戦闘部班に入ってくれたらうれしいよね!?」
「な、なんだ急に。まあ、それはもちろん願ってもないことだが。班長も言っていたよ。各支部にいる次元師たちに声をかけているところだ、ってな。だがそもそも世界に100人しかいない次元師がどれくらいの数此花隊にいるのかと聞かれれば、難しい問題だ。あの人が異動してくれたら班長もお喜びになるだろう」
「だよね! よ~しっ。コルド副班、2人でフィラさんを説得しよう!」
「よし。そういうことなら俺も協力しよう」
ロクアンズとコルドは結託し、まっさらな報告書を置き去りにして資料室を出た。談話スペースにいるフィラのもとへと急ぐ。
フィラは、腰掛けで横になって寝ているレトヴェールのそばについていた。
「フィラさんっ」
「あら。おかえりなさい。どうかした?」
「あのねフィラさん、あたしどうしてもフィラさんに戦闘部班に入ってほしいんだ」
「え? ええ……。それは考えて……」
「戦闘部班は立ち上がったばかりで、班員も少ないんです。各支部にいる次元師に声をかけているところですが結果は芳しくありません」
「立ち上がったばかり……そういえば、今年の初め頃から活動されているんでしたよね」
噂を耳にした程度だったフィラは何の気なしに聞き返した。
「ええ、そうなんです。戦闘部班の班長と総隊長様の類まれなるご尽力のおかげで、今年から。特に、十何年という時間の中寝る間も惜しんで政府にかけ合ってきたセブ」
「わあああっ!」
握りこぶしをたたえ熱をこめて語り出したコルドを制するように、ロクは彼のコートの裾を引っ張った。伸びる衣服につられてコルドはたたらを踏んだ。
ロクはできるだけ声をひそめて、コルドに耳打ちした。
「だめだよコルド副班! セブン班長の名前出しちゃ」
「え、そうなのか? お前がさっきしきりにセブン班長セブン班長って言ってたから、てっきり2人に関係があるのかと思って俺は……」
「だからだよっ! まったく、これだからコルド副班は。わかってないなあっ」
「な、なんだと?」
コルドは眉をぴくりとしかめた。まだ年端もいかないロクに、男女のことがわかっていないと言われたような気がしたコルドは、ロクの襟元にある分厚いフードを掴んで持ち上げた。足がわずかに浮き、ロクは慌ててつま先で宙を掻いた。
「うっわわ! こ、コルド副班!?」
「報告書を書くのを忘れていたな。手伝え」
「ええ~! 急!」
「いいから行くぞ!」
フードを引っ張られ連行されていく姿を呆然と見送っていたフィラに向かって、ロクは叫んだ。
「ふ、フィラさん、またあとでね! 戦闘部班の班長さんに、いっしょにあいさつ行こうねー!」
ロクの姿が視界から消えてなくなると、フィラはぽつりと呟いた。
「……本部、か……」
もう二度と訪れることはないと思っていた。ともに故郷を飛び出してくれた幼なじみと離れ離れになってしまった場所でもある。そしていま、彼は、どういう顔になっていてどう毎日を過ごしているのだろうか。
フィラはすぐに顔を横に振った。13年という時間の厚さを感じ取ってしまっただけで、虚しく思えてきたからだ。
ローノを出発して、半日が経過した。エントリアの街並みにはほんのりと橙が差している。もうすぐ夕刻を迎えるという頃に、ロクたち4人は此花隊本部の門をくぐった。ヴィース、リリアン、リリエンの3人はローノ支部に引き渡したため、4人で戻ってくるという形になった。
レトヴェールはというと、いまだ目を覚まさないという状態が続いていて、コルドの背中で大人しくしていた。到着してすぐ医務室で休ませることになった。
医務室の扉を閉め、3人は長廊下へと出る。いまいる場所は中央棟の2階だ。3人は、戦闘部班の班長室がある東棟へ向けて歩きだしていた。
「ねえロクちゃん、戦闘部班の班長ってどんなお方?」
「えっ」
フィラは純粋に知りたがっているようだったが、ロクにとってそれは核心を突く質問だった。ロクは目を泳がせ、しどろもどろになりながら答えた。
「え、えっとね~……うーんと……や、やさしい、人!」
「そう。優しいお方なのね」
「う、うん……。たま~に抜けてるけど」
「そうなの?」
「うん。あとね、班長室入ったら、居眠りしてることもあるんだ~」
「まあ」
「でもほんとにいい人だよ。あたしやレトのこと、子どもだってバカにしたりしないし、すっごい面倒見てくれる。次元師を戦争の道具にしないためだからって国の上の人たちは次元師の集団をつくるのをだめにしたでしょ? でも班長は、次元師をちゃんと育てるんだって、仲間をつくるんだって、そう思って立ち上げたんだって。ここに入るときに班長がそう言ってたんだ」
「そう……素敵な人ね」
「……。班長はいい人だよ。フィラさんも、会えばきっとすぐにわかるよっ」
「ええ。お会いするのが楽しみだわ」
中央棟と東棟を繋いでいる長い通路を渡り、3人は東棟に足を踏み入れた。階段を昇り、『班長室』と明記されている部屋の前までやってくる。すると、ロクはそわそわしながらコルドのほうを見やった。が、彼がいつもの真面目顔を据えて突っ立っていたので、見かねたロクはわざとらしく「あ!」と大きく声をあげた。
「そういえば~、今日のこの時間って、班長は部屋にいないとかなんとか言ってなかったっけ~? ねえ、コルド副班?」
「え? ……あ、ああ! そうだそうだ~。忘れてたよ。いまは会議の時間で、班長はいないんだったー」
「そうなんですか? じゃあ、また改めて」
「や! すぐ戻るよ班長! もうすぐ終わるはずだから! ねっ、コルド副班!」
「そ、そそ、そうだなロク! ということでフィラさん、どうぞ部屋の中でお待ちください。俺たちが行って、班長にお伝えしてきますので」
「え? そ、そうですか?」
「ええ。なのでどうぞ、中へ。あ、ついでに今回のことを書いたこの報告書を、班長の机の上に置いておいてくれませんか」
「はあ……」
なかば無理やり書類を持たされ、フィラは班長室の中へと押しこまれた。扉を閉めてから、はあ、と一息つくコルドに対してロクは小さな声で叱責を浴びせた。
「コルド副班! ローノを出る前にちゃんと話し合いしたのに! もー!」
「ちゃ、ちゃんとできたんだからいいだろう。それに班長が会議のときを狙おうって提案したのは俺だぞ」
「……うん。たしかにそうだ。あとは班長がちゃんと戻ってくるかどうか、どこかから見守っとかないと」
「本当に、2人きりにできるだろうか」
「できるよ! あたしたちがここまでやったんだもん。ぜったい成功するって!」
廊下の突き当たりにある階段から2人は身を乗り出して、様子を伺っていた。逸る心を抑えながら、セブンの登場を今か今かと待ち構えていた2人の真横を、
人影が過ぎった。
「……え?」
その人物は、班長室に向かって歩いていた。
室内で1人、フィラは棒のように立ったまま辺りをきょろきょろと見渡していた。壁沿いには本棚がずらりと並べられている。部屋の扉と向かい合うように、班長の仕事場であろう長机が奥の窓際に置かれていた。フィラは、手に持っていた報告書を机の上に置こうと動きだした。
机の上には筆やら書類やらが散漫していた。整理する時間がないのだろうか。それとも整理する能力が欠けているのだろうか。フィラは、ロクから聞いた「たまに抜けている」という言葉を思い出し、後者かなと小さく笑った。
机の左側には紙束が山のように積まれている。フィラはふいに、その山に目をやった。その山の一番上にあった書面は、ローノの報告文だった。
「ローノの報告書だわ。ひと月前のものね。……あら? 下にあるのは半年前のものね。こっちは……1年以上前のだわ。なんでこんなにバラつきがあるのかしら」
定期報告書はひと月ごとに作成される。ローノの情勢を確認したいのであれば少なくとも直近の数か月のものに目を通すはずだが、ここにある書類のまとめ方、およびその内容はまちまちで、なんの目的で搔い摘まれたものだかフィラにはさっぱりわからなかった。
しかし、そのどれもに、自分が書いた報告文が載っていることに気がついた。
「これ、ぜんぶ、私が書いた文章が載ってる……?」
そのときだった。
ギィ、と扉を開く音がした。
フィラは振り返った。班長室の扉を押し開け、中へ入ってきたその人物は──
「……え……」
入り口の上部にぶつかってしまうのを避けるためか、高い位置にある白頭をすこし下げていた。いままでに出会った男性の中では群を抜いて背丈が高い。その上、体格は暴れ馬を悠に手懐けられそうなほどがっしりしていた。隊服の袖に腕を通さずただ両肩に引っかけているだけの彼は、毅然とした態度で班長室へと足を踏み入れた。
彼はフィラを視認した。
「おじい、……総隊長」
ラッドウール・ボキシス。此花隊の総隊長という責務を背負うその男の視線から、フィラは一瞬で逃れられなくなった。
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