コメディ・ライト小説(新)
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- 最強次元師!! 《第一幕》 -完全版-
- 日時: 2025/06/22 21:01
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 82jPDi/1)
毎週日曜日更新。
※更新時以外はスレッドにロックをかけることにいたしました。連載が終了したわけではございません。
*ご挨拶
初めまして、またはこんにちは。瑚雲と申します!
こちらの「最強次元師!!」という作品は、いままで別スレで書き続けてきたものの"リメイク"となります。
ストーリーや設定、キャラクターなど全体的に変更を加えていく所存ですので、もと書いていた作品とはちがうものとして改めて読んでいただけたらなと思います。
しかし、物語の大筋にはあまり変更がありませんので、大まかなストーリーの流れとしては従来のものになるかと思われます。もし、もとの方を読んで下さっていた場合はネタバレなどを避けてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします!
*目次
一気読み >>1-
プロローグ >>1
■第1章「兄妹」
・第001次元~第003次元 >>2-4
〇「花の降る町」編 >>5-7
〇「海の向こうの王女と執事」編 >>8-25
・第023次元 >>26
〇「君を待つ木花」編 >>27-46
・第044次元~第051次元 >>47-56
〇「日に融けて影差すは月」編 >>57-82
・第074次元~第075次元 >>83-84
〇「眠れる至才への最高解」編 >>85-106
・第098次元~第100次元 >>107-111
〇「純眼の悪女」編 >>113-131
・第120次元〜第124次元 >>132-136
〇「時の止む都」編 >>137-175
・第158次元〜 >>176-
■第2章「 」
■最終章「 」
*お知らせ
2017.11.13 MON 執筆開始
2020 夏 小説大会(2020年夏)コメディ・ライト小説 銀賞
2021 冬 小説大会(2021年冬)コメディ・ライト小説 金賞
2022 冬 小説大会(2022年冬)コメディ・ライト小説 銅賞
2024 夏 小説大会(2024年夏)コメディ・ライト小説? 銅賞
──これは運命に抗う義兄妹の戦記
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.11 )
- 日時: 2018/05/29 22:44
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: .pwG6i3H)
>>日向さん
こちらでは初めまして! 某青い鳥ではお世話になっております、瑚雲です!
スレッドへのコメントありがとうございますー! 嬉しいです!
日向さんからのお言葉に、いまとても嬉しい気持ちでいっぱいです。7年前というと、私はきっとまだカキコで1年過ごした程度で、中学1年生のときだったと思います。文章力もないしコミュニケーション能力もないし、そんな私の作品のことを見つけてくださった日向さんには、感謝してもしきれません。
完結よりも内容だ! みたく発言していたことには、実はいまさらながら後悔しています;
「完結おめでとうございます」って、たくさんの方が言ってくださったのに、なんでそれを否定していたんだろうって……私自身嬉しかったはずなのに、内容や評価に囚われてずいぶん醜態をさらしました。
私もいまさらですが、心から嬉しいです。日向さん、ありがとうございます!
7年前ともなると、だいぶ恥ずかしい気持ちが勝ってきますね笑
でもこんなに嬉しいお言葉をいただけて大丈夫か……今日死ぬのかな……なんて思いつつ、日向さんにそう思っていただけていたことが恐縮でなりません。
この完全版も、旧版を読んでくださったその事実に恥じない作品にしたいなと思えました。それにすこしだけ自信を持ってもいいのかな、とも。ほかでもない日向さんのおかげです。
最新話のロクですか! いやあ見事に、「すごいすごーい!」しか言ってないですね笑
曲がりなりにも戦闘ものを謳っているので、ドンパチしてないところが果たしてどう映っているのは本当はめちゃくちゃ不安だったのですが……よかったです、ひとつほっとしました……。
更新中のエピソードは、「王女と執事」がキーワードなので……もしかしたらもしかするかもしれません!笑
こうして、旧版では普通に登場していたけど、完全版ではまだ出てないキャラクターについて語るのも新鮮で楽しいです。知ってくださっている方がいるというのは、とても書きがいがあります……!
最後になりましたが、
前の作品を見つけてくださったこと、読んでくださったこと、そしてまた新たに書き始めたこの作品を読んでいただけていること。本当に嬉しいですということを全力でお伝えしたいです。
改めて、日向さんコメントありがとうございます!!
ぜひまた、どこかでお話をさせてくださいー! ではでは!
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.12 )
- 日時: 2020/01/19 11:17
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: ObYAgmLo)
第009次元 海の向こうの王女と執事Ⅲ
「遠路はるばる、ようこそおいで下さいました、メルギースの次元師様。心から歓迎します」
「ジースグラン国王陛下、お会いできて光栄です。コルド・ヘイナーと申します」
アルタナ王国、王城。城内へと足を踏み入れたコルドとロクアンズは、国王が待っているという寝室へと通された。
大きな寝台から上体を起こす白髪の男――ジースグランが差し出した手に、コルドは自分の手を優しく重ねた。
ロクアンズは、なんとなくつまらなさそうな顔で、そんな二人の様子を眺めていた。
「こんな姿で、申し訳ない……。本来ならば、王華の間で挨拶をしたいところを……」
「いえ、とんでもございません。どうかご自愛なさってください、国王陛下」
「……ところで、そちらのお嬢さんはもしや……」
「ああ、こちらはロクアンズという者です。ロク、挨拶を」
「あ、うん」
突然名前を呼ばれ、ロクは間の抜けた返事をした。
ジースグランの白い髪がゆっくりと動いた。視線を向けられたロクはどきっとするも、ごく自然に彼の前へやってきて、手を差し出した。
「初めまして、ロクアンズっていいます! ええっと……王女様の、友人になるよう頼まれて……あれ?」
「こらっロク! 国王陛下の前でなんてことを……!」
「ははは。これはこれは、元気なお嬢さんだ。ロクアンズ、というんだね。どうかあの子のこと……元気づけてあげてほしい」
「うん。まかせてっ……くだ、さいませ?」
「……ったく……」
アルタナ王国の国王、ジースグランとの挨拶も済ませ、二人は彼の寝室から退出した。
「さてと……それじゃあ、俺はさっそく元魔の討伐に向かう。また後でな」
「えっ? あたしも行く!」
「お前には重大な任務があるだろ」
「だってだって……! そ、それにすごい数なんでしょ!?」
「そうだな。数はいまのところ、7体確認されているそうだが……俺はこれでも、戦闘部班の立ち上げで呼ばれた次元師だぞ? 一人で十分だ」
「そんなあ……。この前は、ピンチだったくせにぃ」
「あ、あれはたまたまだ! とにかくそっちは任せたからな、ロク」
「……むー……」
いかにも不服です、といった表情で頬を膨らませるロクに、コルドは背を向けて歩きだした。
ロクは、すぐ傍で待機していたメイドたちに促され、その場から移動した。
メルギースにある此花隊の本部もだいぶ大きな施設に分類されると思っていたが、さすが王家の人間が住まう王城というところは広さも内装もスケールがちがう。
まず天井が高い。そこから吊り下げられた数多のシャンデリアは煌々と輝き、真っ赤なカーペットが足元を呑みこんで延々と伸びていく広い廊下を余すことなく照らしている。壁には名画、廊下の曲がり角には花瓶台が設けられているので、城内はどこも侘しさを感じさせない。
目に映るものすべてが、王族のいないメルギース在住のロクにとっては珍しいものだった。
「こちらが第二王女殿下、ルイル・ショーストリア様のお部屋でございます。ロクアンズ様」
「……ふーん……」
ロクが連れてこられたのは、一際大きな扉の前だった。煌びやかで繊細な装飾が施されたその扉の迫力たるや、首を上下左右に傾けてやっと全貌が把握できるほどのものだった。
王女の部屋。それをロクは理解してかせずか、腕を持ち上げ、そのまま扉の表面をガンガンと叩きだした。
「もしもーしっ!」
「!? ロクアンズ様!?」
メイドたちがどよめくのも気にせずに、ロクは扉を叩き続ける。王族のいる部屋に訪れる者がすることとはとても思えず、メイドたちは騒然とした。
ロクは扉を叩きながら、声を張った。
「もしもーしってば! ねえルイル! いないのー?」
「ルイ……!? ロクアンズ様! その、ルイル王女殿下のお部屋です……! このようなことをなされては……」
「え? でもあたし、ルイルの友だちになれって言われたしなあ……。おーい、ルイルー!」
「──かえってッ!」
扉を叩く手が、ぴたりと止まった。
扉の向こう側から声がした。可愛らしい、幼い子どもの声だ。
「……ルイル?」
「かえって! かえってってば!」
「……って言われてもなあ……」
ロクが困ったように髪を掻いた、そのとき。
「なにを言ってもムダですよ」
藪から棒に声が飛んでくる。
ロクの注意が向かった先で、その声の主は銀のワゴンを連れて立っていた。白と紺のコントラストが目を引く召使用の制服に身を包むその人物は、少年だった。
「ガネスト様!」
「……あなた様が、メルギースよりいらっしゃったという、次元師様ですか?」
ガネストと呼ばれた少年と、目が合う。
ロクは、ガネストの姿をまじまじと見つめた。背丈は自分よりすこしだけ高い。レトヴェールと同じくらいだろうか。男児にしては大きな青の瞳をしていた。すこし長めでやわらかそうな髪は、淡い海を思わせる色だった。
黒を基調とした召使服をきっちりと着こなしている姿や落ち着き払った声色に、ロクはすこしばかり委縮した。
(この子、あたしやレトと同じくらいの歳……だよね)
「あ、うん。ロクアンズだよ。よろしくね、ガネスト」
「気安く呼ばないでもらえますか」
「へ?」
ガネストは冷めた口調でそう返すとロクの横を素通りし、ルイルの部屋の前までワゴンを転がせた。
「ルイル王女殿下。昼食のご用意ができました」
「……ガネスト?」
探るようにルイルが言った。しかし彼女はすぐに調子を取り戻して、
「いらない! かえって!」
「ルイル王女殿下。ここ数日、ろくに食事をとられておりません。体調を崩されてしまいます。どうか召し上がってください」
「いらないってばっ!」
一層強く返してきた。ガネストはここへ来たときとなにひとつ変わらない表情で、嘆息した。
「……ルイル王女殿下。お言葉ですが、あなた様は次期国王となる御方です。9日後には子帝授冠式が行われます。あなた様が子帝となられるのは、もう決まったことなのです。ご理解ください」
そのとき。扉の内側で、バンッ! と鈍い音がした。扉になにかをぶつけたのだろうか。ルイルは矢継ぎ早に投げ返した。
「ガネストのばか! 国王になんかならないって、ずっといってるでしょ! なんでわかってくれないの!? ……ルイルじゃないもん……国王になるのは、──おねえちゃんだもん……っ!」
言葉尻が、涙を交えて震えていた。周りのメイドたちは心配そうにオロオロとし始めたが、
一人、ガネストだけが冷淡に言い放った。
「あなたは、次期国王としての自覚がなさすぎです」
小さなうめきが、体を叩かれて喚くような泣き声に変わった。
「ちょっと言いすぎだよ、ガネスト」
「だから気安く呼ぶなと言ったでしょう」
「……なんでそこまでルイルに冷たくあたるの?」
「あなたこそ、理解ができないんですか?」
「な、なんだって?」
「ここは、アルタナ王国の王城です。ルイル王女殿下は次期国王となる御方で、あなたが気安くその名前を呼んでいい御方ではありません」
ガネストは鋭くロクを睨んだ。
なんて冷たい海の色なんだとロクは感じた。
「……このように、ルイル王女殿下はだれとも取り合おうとしません。部外者のあなたがなにを言ったところで、聞く耳を持ちませんよ。では、僕はこれで」
そう言うとガネストは、銀のワゴンをぐるりと回転させ、来た道をそのまま辿って行ってしまった。
周りのメイドたちはそんなガネストの後ろ姿を、ただ黙って見送った。
「いまの男の子、ガネストっていうんだよね?」
「え、ええ。ガネスト・クァピット様。アルタナ王国の王族は代々、生まれてしばらくするとクァピット家の人間から1人、側近を迎えるしきたりになっているんです。ガネスト様は幼少の頃よりルイル王女殿下に仕えてきたのです。王女殿下の指示のもとで執務の代行するのが主な役割ですので、執事という役職が近いかもしれません」
「執事? じゃあルイルの執事が、いまのガネストってこと?」
「ええ……。ですが、ルイル王女殿下の臣下として正式な任が下されたときから……ガネスト様はまるで別人のようにお変わりになって……」
「前はどんなだったの?」
ロクは何の気なしに質問したつもりだったが、メイドらしき女性は突然、パッと表情を明るくした。
「それはもう! いつもルイル王女殿下のお傍にいらっしゃって……片時も離れることなく! それにとてもお優しくて、ルイル王女殿下といっしょにいらっしゃったときは仲睦まじい、本物の兄妹のようで……」
「へええ……っ?」
予想だにしていなかった返答に、ロクは驚いた。
すでに後ろ姿もなくなった廊下の先と、固く閉ざされた部屋の扉とが、昔は兄妹のようだったという二人の現在を物語っていた。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.13 )
- 日時: 2018/06/10 01:18
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: NAPnyItZ)
第010次元 海の向こうの王女と執事Ⅳ
「……あ、そうだ。ねえ、子帝ってなに?」
「子帝、というのは次期国王様のことを意味します。この国では、現国王様の身になにかあってから次の国王様を選ぶのではなく、前もって次期国王様を決めておくのです。政治的混乱や民心の乱れを最小限に抑えるためにこの国で定められていることです。子帝に選ばれた王族の方は、必ず、次の国王様になります」
「……なるほどねえ」
『国王になるのは、──おねえちゃんだもん……っ!』──ついさきほどのことを思い出す。
本来ならば、第一王女であるライラ・ショーストリアがその子帝と呼ばれる地位に就くはずだったのが、不慮の事故によって彼女は亡くなってしまった。代わりに第二王女であるルイルがその役目を担うというのはごく自然な流れである。しかし心の内は単純ではないだろう。
ロクアンズはしばらく扉の表面を見つめていたが、ふっと踵を返した。
「また明日来るね!」
メイドたちに手を振りながら、ロクは長い廊下の奥へ消えていった。
*
「ルイル王女様のお嫌いなものはお出ししていませんよ。最近は特に、お出ししたものがそのまま調理場に戻ってきますから……。お嫌いな野菜も飲み物も、なおのことお出ししていません」
「じゃあ、好きなものを出してるのに食べないってこと?」
「ええ。もはやおやつとしか言えないようなものでも、召し上がらなくなってしまって……。すこし前までは、菓子は大好物でしたので、そればかり口にされていたのですが……」
「お菓子? どんな?」
「ケーキや焼き菓子がほとんどです。ルイル王女様は、焼き菓子を大変好んでおられます」
「焼き菓子……」
翌日のことだった。城内の調理場へと訪れたロクは、そこで調理師を見つけるなり声をかけた。話の内容は、ルイルの食べるものに関することだった。
ロクはしばらく唸ったのち、話題を変えた。
「ねえ、ルイルが籠りきりになった理由って、やっぱり第一王女のことで?」
「そうでしょうな……。ルイル王女様は、ライラ王女様のことを実の母上様のように慕っておられました。それが、突然ご逝去なさるとは……ルイル王女様も、困惑なさっていると思います。ライラ王女様が亡くなられてから、ひと月も経っておりませんし」
「そっか……。ねえ」
「あ、はい」
「ここ、ちょっと借りてもいい?」
「え?」
コートの袖をまくりながら、ロクは厨房を見渡して言った。
「ルイルー! おーい!」
広い廊下に、ガンガンと扉を叩く音が響き渡る。
ロクは昨日と変わらずルイルの部屋に訪れていた。
「いないのー? ルイルー! おーい!」
「……」
ロクの若草色の後ろ髪を見るように、ガネストが壁に凭れかかっていた。彼は特になにをする様子もなく、ただそこにいるだけだった。
「おーい、ってば! ……もー。じゃあさっそく、こいつの出番かな!」
ロクは、床に置いていた籠を持ち上げると、それを扉の前で翳してみせた。
「ルイル! いっしょにお菓子食べよっ! 作ってきたんだ~!」
ガネストはぎょっとした。「ジャーン!」というかけ声をとともに籠から布が取り払われると、そこには、奇妙な形をしたこげ茶色のなにかが山のように積まれていた。
「ね、食べよ!」
「ちょっとあなた、ルイル様になにをお出しするつもりですか!」
「うわっガネスト! なにさっ、さっきまで知らんぷりしてたのに!」
「こんなもの見せられて知らないふりはできません! それと呼び捨てはやめてください」
「なにおう!?」
ロクとガネストは菓子の入った籠を引っ張り合っていたが、ふと、彼のほうが手を離すとその中身ともども彼女はひっくり返った。
「いっ、たぁ~……」
「これでわかりましたか? 興味本位でルイル様に近づくのはやめてください」
「ちがうよ! あたしは真剣に……!」
「真剣に? なら、もうすこし真剣に菓子作りをしてください。さっきのあれは、とても人が食べる物とは思えない」
「な、なんでそんなことわかるのさ!」
「それくらいわかります」
ガネストは、眉をしかめて強く言い放った。
「掃除は僕がやっておくので、あなたはもうお帰りください」
「え、でも!」
「お帰りください」
重ねて言うと、ガネストは背を向けて歩きだした。掃除用具を取りに行くのだろう。
尻もちをついた状態からロクは立ち上がり、自分の手にくっついた菓子のかけらを払う。
ふいに、自分の足元で無惨に散らばっている菓子の山に目をやると、ロクはその中のひとかけらを手に取り、口に運んだ。
「まっず!」
遠くで歩いていたガネストがその大きな声に足を止めた。
思わず半身振り返ったが、一体なにがしたいんだと嘆息して、さっさと目を逸らした。
その翌日。ロクはふたたび、籠を持ってルイルの部屋の前に訪れた。
「ねえルイル! いっしょに食べよ! またお菓子作ってきたんだ、クッキーだよ! 今日は失敗してないからさ~!」
昨日とおなじように壁に寄りかかるガネストが、またかといった表情でロクを一瞥した。
「おーい、ルイルってばー!」
「……いらない」
かすかながら声が返ってきた。昨日とはちがって反応がある。このチャンスを逃すまいと、ロクはいくらか上ずった声で畳みかけた。
「でもルイル、最近あんまり食べてないんでしょ? あたしもいっしょに食べるから、ねっ! 食べようクッキー!」
「いらない! 好きじゃないもん!」
「……ええ? ウソ!」
「うそじゃないもん!」
ロクはその場で呆然と立ち尽くした。自分が持ってきた菓子の籠を見つめてから、
「……じゃあお花がいい? 一応摘んできたんだけど」
と、床に置いていた数本の花を掴んで持ち上げた。
「勝手に摘まないでくださいよ……」
「だって、ルイルの好きそうなものわからないんだもん。ねえガネスト、ルイルってなにが好きなの?」
「わからないなら諦めたらどうですか」
「やだ!」
間髪入れずにロクが答える。
清々しいほど元気のいい返事に、
「……どうしてですか?」
ガネストは眉をひそめて問い返した。
「え?」
「……」
ガネストは、ふっと視線を外す。彼がそれ以上なにかを聞いてくることはなかった。
沈黙が訪れる。
ロクは左手に籠、右手に花を握った自分の姿を見下ろした。
「……また明日、来るからっ」
赤いカーペットの表面をドタバタと蹴りながら、若草色の髪は遠のいていった。
ガネストは顔を上げた。おなじことの繰り返しだ。いつか「飽きた」と投げ出すだろう。そう心の内で唱える彼は知っているのだ。目の前の扉がいかに重く、厚い壁なのかということを。
そして。
その翌日も、そのまた翌日も、ロクはルイルの部屋に通い続けるが、その扉を開かせることがただの一度も叶わないまま──刻一刻と、『子帝授冠式』の日が迫ってきていた。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.14 )
- 日時: 2020/01/19 11:21
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: ObYAgmLo)
第011次元 海の向こうの王女と執事Ⅴ
菓子の籠とすこしの花を持ってルイルの部屋に訪れた日の、夕方のことだった。
ロクアンズはまたしてもルイルの部屋の前にやってきた。一日に二度来るのは初めてだな、とロクを注視するガネストだったが、
彼女は昼間と変わらない笑顔と、山のように菓子類を乗せたワゴンを連れて現れた。
「ルイル、お待たせっ! ごめんね、あたし気づくの遅くて……問題は味じゃなくて、量だったんだねっ!」
「……心配した僕がバカだった」
「さあっ! いっぱいあるから、たあんとお食べー!」
「そうですね。問題なのは味じゃなくて、その頭の軽さだと思います」
「な、なななんだとぉ!?」
「それと一日に何度も来ないでください」
「たくさん会いに来る作戦は失敗か……」そう独り言を吐きながら、ロクはワゴンとともに引き返した。小さなその背中は落ちこんでいるようだったが、こぼれんばかりの山の中からときおり菓子をつまみながら去っていくのを見て、ガネストはふたたびバカを見たと眉をひくつかせた。
当然、ルイルは部屋から出てこなかった。
その翌日。菓子や花ではやはり効果がないと、そう思ったロクが次にとった行動は、楽器の演奏だった。
「ルイル起きてるー? ロクだよ! いまからちょっと聴いてほしいものがあるんだ。いくよー!」
ロクは言いながら、ところどころ歪んだ長い箱のようなものを抱えて部屋の前で座りこんだ。その箱には糸のような細さから紐のような太さまで様々な弦が張られている。アルタナ王国の伝統的な楽器『オウラ』だ。彼女はそのうちの一本に指を添え、粛々と弾き始めた。
が、しかし。
素人が聴いても「下手だ」と理解できてしまうほどの不協和音が、ガネストの鼓膜に突き刺さった。
「やめてください! 追い出されたいんですか、あなたは!」
始まって数秒も経たないうちに楽器を取り上げられ、ロクはしぶしぶ引き下がった。
その後日も、ロクは楽器の種類や数を変えたり「わあー火事だ!」などとハッタリを騒いでみたりと、手札を変えながらルイルの反応を窺ってきたが、どれも失敗に終わった。
そうして、初めてルイルの部屋に訪れた日から、6日目の朝を迎えた。
「ルイルー! ねえ、『棒倒し』しようよ! これはね、あたしがまだ村にいたときに作った遊びで、まず木の枝を用意するの。たくさんね。そんで4、5本くらい使って束にしたものを5つくらい作って、それをちょっと遠くの土に軽く埋めたら準備完了! あとは軽めの石を用意して、順番に蹴ってくだけ。立てた木の枝の束をいちばん多く倒した人が勝ちなんだ!」
ロクは丸い桶のようなものを運びだした。ちらりとガネストが覗くと、そこには大量の砂が入っていて、止めるよりも先に彼女は廊下の真ん中で砂をぶち撒けた。
ほかにもどこで見つけてきたのかは定かでないが、木の枝で組み立てたいくつかの標的と、小石を取り出した。だから勝手に採集するなとふたたび言及したところで聞く耳を持たないだろうということは、さすがのガネストも学んでいる。ただ黙って、大きなため息をついた。
「いっくよ~……! えいっ! ……──やったあ! 2本倒れたっ! ねえ見てル……」
興奮した様子でロクは扉のほうを向いたが、壁に埋めこまれただけのそれは、なんの反応も示さなかった。
「ルイル、部屋出て見てみなって! すごいんだよほんとに! そんでいっしょに遊ぼうよ ! 楽しいよこれー!」
元気な声音はその扉の表面に弾かれると、広い廊下の中で行き場を失った。
「……んん~。これでもダメかあ……。ほんとに、どうしたら出てきてくれるんだろう?」
「だから諦めたほうがいいって言っているじゃないですか」
呆れを通り越した淡泊な忠告が、うわ言のように告げられた。
──ふと、
ロクはガネストのほうに向きなおった。
「……ねえガネスト、あなたはなんですこしも手伝ってくれないの?」
「は?」
「あなたはルイルの執事なんでしょ? だったらなんで、ずっとそこで突っ立ったまんまなの? ルイルを国王様にしたいなら、どうして説得とかしないの? その日が来るのを、ただ黙って待ってるだけなの!?」
「……」
「ルイルは不安だから部屋に籠ってるんでしょ! その不安を取り除いてあげたいとかすこしも思わないの!? ルイルのそばに一番いるのは、あなたなのに!」
「──よそ者のあなたに、いったいなにがわかるっていうんですか……?」
酷く冷たい瞳が、まるで弾丸のようにロクの口上を打ち止めにした。
「あなたこそ、ルイル王女殿下を愚弄しているんじゃないですか」
「なっ、なんだって!?」
「ここ数日にわたる不可解な行動の数々。それに伴っているのは成功ではなく、不信感です。まるで効果が見られないというのになぜ諦めようとしないのですか?」
「それは、だって、諦めたくないよ!」
「仕事だからですか?」
「え?」
「あなたはこの国で、『ルイル王女殿下の機嫌をとる』という、仕事で来たんじゃないんですか」
一瞬、喉の奥のほうで息がつまった。
「そ、れは……いまはそんな」
「諦めてください、次元師様。ルイル王女殿下の御心を乱し、殿下の御部屋の前で醜態をさらし、騒ぎ立てるなどという行為は今後一切お見過ごしいたしません。お引き取り願います」
ロクは、二の句を告ぐことができずに、ただの棒のように立っていた。
どのくらいそうしていたかは知らない。くるりと背を向けはしたが、感覚を失った足ではそれも覚えていなかった。
寝所のある宿舎の中を、意図もなく歩いていた。ぼんやりとした意識だけが前へ進む。いつまでも変わらない一直線上の赤色に時間の感覚を狂わされていた。縦に長い大きな窓から、夜の明かりが仄かに注ぐ廊下を、いつから徘徊しているのかもロクははっきり記憶していない。
「ロク?」
聞き覚えのある声に、はっとした。
「どうしたんだ、こんな時間に。それに隊服着たままで……。寝つけないのか?」
「……」
「……なにかあったのか? 俺でよければ聞くぞ」
向こうで話を聞こう。そうコルドに促され、同じ階にある談話スペースに足を運んだ。そこには簡素なデザインのソファが窓を向いておかれていた。ロクはどこか宙を見つめたままそのソファに腰をかけ、じっと俯きながら、ここ数日のことを話し始めた。
「なんか、どうしたらいいのかわかんなくって……。たしかに、ルイルのことは仕事だと思って来た。でもいまはそうじゃなくて……。外へ出してあげたいのに、その気持ちぜんぜん伝えられなくて、そしたらもう来るなって言われちゃって……」
ロクは細い両脚を抱きこんだ。膝に顎を乗せると、背中が丸くなる。
コルドはそんなロクをしばらく見つめてから、ふっと口元を緩めた。
「……お前にも、弱気になる瞬間があるんだな」
「え?」
「──そうだなあ、」
わざとらしい言い方で、考えるふりをしながら前に向き直ると、コルドはロクを見ずにこう続けた。
「俺の仕事、実はほとんど終わってるんだ。確認されてた元魔はとっくに討伐したし、最近は巡回に出てるだけで特になにもしていない。つまるところ、暇なんだ。巡回のついでに観光も終わらせたしな。でもお前は、まだだったろ?」
「……?」
「だからお前の任務……俺が代わりにやってもいいぞ?」
ロクは目を見開いた。
──どうする? とでも言いたげに、コルドは黙って返事を待っていた。
「……ううん」
絞りだした答えから、自然と、ロクは言葉を紡いでいた。
「あたしがいい。これはあたしの問題で……あたし、ルイルと話がしてみたいんだ。ほんとに。この気持ちにウソはひとつもない」
「そうか」
あっさりと返すコルドは、ロクの横顔を眺めながら言った。
「ロク、お前はそれでいい。そのままでいいんだ」
「? どういうこと?」
「まっすぐぶつかっていけ。言いたいことややりたいことを、ためらう必要はない。その相手が民間人でも王女様でも、お前はお前らしく、ぶつかっていけばいい」
「……」
「だってお前は、そういうやつだろ?」
ロクの頭に、コルドの大きな手が伸びた。くしゃりとかき回される。骨ばったその手は温かった。ちょっと痛いかな、なんて考えていながら、ロクの口から笑みがこぼれた。
「……うん。ありがとうっ、コルド副班」
顔を上げたロクの左瞳に、光が差した。淡い緑の石が輝きを取り戻す。磨かれた原石は、ときに宝玉の意義を惑わせるほど美しくなる。
コルドと別れたロクは、たしかな足取りで自分の部屋へと戻っていった。
- Re: 最強次元師!! 【完全版】 ( No.15 )
- 日時: 2018/09/07 17:14
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 0hhGOV4O)
第012次元 海の向こうの王女と執事Ⅵ
「おや、レト君じゃないか。こんなところでなにをしてるんだい?」
メルギース国の最大都市、エントリアに位置する次元研究所『此花隊』本部は、ちょうど昼時を迎えていた。
戦闘部班副班長のコルドと、班員のロクアンズがメルギースを発ってから、5日目のことだった。同じく班員のレトヴェールは、資料室で戦闘部班班長のセブンと出くわした。
「セブン班長」
「いまはお昼だろう? 食べに行かなくていいのかい?」
「俺、さっき起きたから。寝起きはお腹空かなくて」
「……ああ、そういえばロク君がそんなことを言っていたような……」
「なんのことだ?」
「いや、なんでもないよ」
レトは持っていた紙束に視線を戻す。セブンは、上からその紙面を覗きこんだ。
「元魔の出現地……?」
「……ああ、まあ一応。関連性がないとは思うけど……。ほんとに読みたいやつは届いてないし」
「本当に読みたいもの?」
「──神様の、出没情報」
低い声色。独り言のようだった。瞬間、空気が変わったことを察したセブンは、細心の注意を払いながら発言した。
「そうかい。彼らは人前に姿を現さないからね。たしかに情報は少ない」
「……。もし現れた場合、情報はここに来るのか?」
「来ると思うよ。資料室は特に、いつも新鮮な情報を届けさせてる場所だから」
「……そうか」
普段からあまり温度差を示さない声音であるがゆえに、そんなレトの微細な感情の変化を掴みきれずにいる。しかし思ったよりも穏やかな語尾だったなと勝手ながらに解釈したセブンは、自然に話を切り替えた。
「そういえばレト君。いま、コルド君とロク君がアルタナ王国にいるのは知っているかな?」
「ああ。何日か前に発ったんだろ。任務で」
「君も行くかい?」
レトはきょとんとした。珍しく年相応のあどけない反応を見せたレトに、セブンはくくっと笑う。
「もしかしたら、君の助けが必要になるかもしれないよ? ちょうど私も出るところだったし、途中まで送るよ」
「……いや、べつにいいよ」
「ロク君もいないし、どうせ暇してるんだろう?」
「……」
「あそこは観光するにもいい国だよ」
ニコッと微笑みかけるセブンだったが、返ってきたのは相変わらずの仏頂面だった。
深く息を吐きながら、机の上に紙束を置くと、レトはそのまま扉に向かって歩きだした。
「行かないのかい?」
バタン、と扉が閉まる。セブンは、やれやれと肩を竦めた。
所用を済ませ、支度を終えたセブンは、荷馬車の手配をするために厩舎に訪れていた。数人の人間が、馬に餌をやったり掃除をしていたりと、各々の活動をしている。
その中で、馬の頭を撫でていた男がセブンの存在に気がつき、声をかけた。
「セブン班長!」
「やあ、いつもご苦労様。さっそくで悪いんだけど一台出してほしいんだ」
「わかりました」
「しかしあれだね、援助部班っていうところは、仕事が多くて大変だ」
「そんなことはありません。たしかに仕事の数は多いですが、担当によって班もちがいますし、班員もすごい数なのでみんなで協力し合っているというか」
「はは。それはいいね」
此花隊における組織の一つ、『援助部班』。この組織の仕事内容は、主にほか組織のサポートを務めることだ。施設内の清掃や食堂での調理、依頼の手配、そして任務で外へ行く隊員たちのために馬を引くことも仕事の一つである。
セブンは舍内にいる馬を撫でていると、なにかに気づいたように目をぱちくりさせた。
「あれ? 一番速い子がいないね」
「ああ、さきほど戦闘部班の……金髪の子が乗っていきましたよ」
「え?」
「行き先は言ってませんでしたけど」
驚いて目を丸くしていたセブンの口元が、みるみるうちに緩んでいく。
そして、ぶはっ、とセブンは吹き出した。
「やっぱり面白い子だなあ」
「ど、どうかなさいましたか」
「いやー、なんでもない。動物は苦手じゃなかったのかな」
「?」
「それにしても……いったいいつ、馬術なんてものを会得したんだ?」
遠くにある門を眺めながら、セブンは感嘆の声をもらした。
*
7日目の朝。アルタナ王国の空はここのところ調子を崩しつつあるが、王城内で生活している者たちの心配が及ぶ範囲ではない。
大きな窓硝子の向こうにある曇天が、城内の廊下から陰陽の境を奪いとった。覚えた道は薄暗い影に呑まれていたが、グレーのコートは着実に目的地へと向かっていた。
コートの裾が大人しくなる。ロクアンズが足を止めたのは、いつもはいるはずの人物が、そこにいなかったからだ。
「あれ? ガネストがいない……どこかに行ってるのかな」
さほど気に留めることもなく、ロクはルイルの部屋の前まで歩いていった。
立ち止まる。ロクは、コンコン、と扉を叩いた。
「ルイル、おはようっ。いる?」
返事はなかった。しかしロクは笑顔を崩さなかった。
「ねえルイル。ひとつ聞いてもいいかな?」
返事を待たずに、ロクは問いかけた。
「どうして、王様になりたくないの?」
「……」
部屋の奥で、布の擦れる音がした。寝台の上で座っているのだろうか。予想外の質問にいささか動揺したように思えた。
「王様ってさ、国のことを一番に考えてて、支えて、そうして国中の人に愛される。どっかの国にはそうじゃない王様もいるかもしれない。でもそれはその人次第で……。ルイルだったらきっといい王様になれるよ」
「……なんで、ルイルのこと、しらないくせに」
冷たく突き放すような、それでいてどこかふてくされているような、幼い声が返ってきた。
「そうだね。あんまり知らない。だからもっとお話したい。ねえルイル、聞かせて? どうして王様になりたくないの?」
「っ、やだ!」
扉から、バンッ! と強い音がした。初めて訪れたときと同じだ。ルイルがなにかを投げつけたのだ。
「いやだっ! かえって! なんでそういうこというの……? ルイルは王様になんかならないっ!」
「だから、どうして?」
「あなたにはわかんない! わかんないよ! ……おねえちゃんがなるんだったの……ルイルは、ルイルは王様になんかなりたくない!」
「──もういないよ!」
ロクは、拳をつくって扉を殴りつけ、叫んだ。
「あなたのお姉ちゃんは、もういない! 亡くなってしまった人はもう帰ってこない! ルイルだってわかってるでしょう!?」
「ちがうっ! ちがうもん! いるもん! おねえちゃんはかえってくるもん……ルイルをひとりにしないって……いってくれたの……おかあさんもしんじゃって、ないてたルイルに、そういってくれたんだもん……だから、おねえちゃんは、かえってくるんだもん!」
ひくっ、と小さくひきつっていたのが、途端に大声で泣きだした。
ロクは耳を疑った。この国の王妃は亡くなっていたのだ。いまここで初めて耳にしたのも偶然にすぎず、おそらく何年も昔の話なのだろう。ロクは、息を吐いた。
「……あなたの気持ちもわかる。でもねルイル、ここで泣いてたってお姉ちゃんは帰ってこないし、なにも変わんな」
「わかんないよルイルのきもちなんか! だれもわかってくれない! ルイルは、ひとりぼっちで……だからだれも……ルイルのこと、これっぽっちもわかってくれないくせに! わかんないよ!」
「わかるよ!」
「わかんないよ!!」
ロクは口を噤んだ。周囲を見渡したがだれもいない。扉に背中を預けると、そのまま腰を下ろした。
窓硝子の向こう側は、降りだしそうな曇り空だった。
「……わかるよ」
ロクは、ぽつりと呟くように言った。
「あたし、拾い子なんだ」
静寂が訪れる。ルイルは、薄暗い部屋の中でゆっくりと首を動かして、扉のほうを向いた。
「拾われた子どもって意味。もともと、捨てられてたんだ。だからね、あたしにはお母さんもお父さんも、お姉ちゃんも……お兄ちゃんも、ほんとはいないの」
「……」
「だから、わかるよ。あたしも……ひとりぼっちだから」
灰色の雲によって閉ざされた空へ、二羽の白い鳥が駆けていった。
ロクは、静かに語りだした。
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