複雑・ファジー小説
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- あなたを失う理由。 完結
- 日時: 2013/03/09 15:09
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
- 参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
どうも 朝倉疾風です。
性描写などが出てきます。
嫌悪感を覚える方はお控えになってください。
主要登場人物>>1
episode1 character>>4
episode2 character>>58
episode3 character>>100
episode4 character>>158
小説イメソン(仮) ☆⇒p
《episode1》
・まきちゃんぐ / 煙
htt☆://www.youtube.com/watch?v=kOdsPrqt1f4
《episode2》
・RURUTIA / 玲々テノヒラ
htt☆://www.youtube.com/watch?v=wpu9oJHg2tg
《episode3》
・kokia / 大事なものは目蓋の裏
htt☆://www.youtube.com/watch?v=LQrWe5_q6-A
《episode4》
・Lyu:Lyu / アノニマス
htt☆://www.youtube.com/watch?v=lSFYtyxojsI
執筆開始◎ 6月8日〜
- Re: あなたを失う理由。 ( No.192 )
- 日時: 2013/02/16 21:00
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
☆
梅雨の時期だからか、ここのところ毎日のように雨が降っている。
雨の日で思い出すのは、虎春と初めて会った時のことだ。静かなはずの雨音も、なぜかひどく耳障りに聞こえる。
大切な思い出のはずなのに、それは一人の男によって耐え難い悪夢にかわった。
一時は全てを忘れていたけれど、何がきっかけになったのか明日羽の記憶はきちんと元に戻った。正気になり、そして壊れていった。今までよりも深く深く。
「悠真……っ、行かないで、行かないで、お願い、傍にいてよ……っ」
狂いそうなほどの孤独感と焦燥感は明日羽の心をますます病ませていった。
傍にいてと、ただひたすらに囁きながら、そっと悠真の髪を撫でる。
自分の息子とこうなることを異常ともなんとも思ってはいなかった。こうでもしないと、悠真が自分から離れていきそうで、たまらなく怖かった。
「不安なの……お願い、母さんを抱きしめて……」
「 」
「虎春もアタシから離れていきそうなの。アタシにはもう悠真だけなんだよ」
「 」
「ほら、ね。悠真はアタシを裏切らない」
「 」
言いながら、射精する悠真の顔を見つめる。
その表情があまりにも綺麗で、悠真はじっと母親を見つめ返した。なんだ、この、吸い込まれそうなほど黒い瞳は。まるで暗示にでもかけられているような感覚に、ざらりと背筋に悪寒が走る。
一生、続くのか。
この地獄のような毎日が。
そう思うといっそ死んだほうがマシなんじゃないかと思えてくるが、この時の悠真は死に方すら知らなかった。
「ユウくん、お話があるんだけどねぇ」
明日羽と性行為をしたあと、風呂場で胃の中のものをすべて吐き出したとき、弥生に声をかけられた。
自分の精液がついた服を冷たい水で洗っている悠真を、弥生は無表情で見つめる。
この、決して幸せじゃない弟は、弥生から逃げない。
そういう確信があった。
明日羽からは逃げようと必死でもがいているけれど、それができずにいて、ぎゃくに自分にも明日羽に依存している部分があるから、余計に苦しんでいる。
そろそろ、そんな悪循環からも解放してあげようか、と。
長い長い説明を噛み砕いて言ってしまえば、弥生が持ちかけた話はこんなものだった。
悠真はそれをじっとじっと聞いていた。
瞬きもせずに。
「──で、どうするの?あとはユウくんが決めなさいって、あの人は言っていたよぉ」
「俺は……もう、どうだっていい」
掠れた声で悠真は答える。
「ヤヨ……俺ね、泰邦さんのところで……」
悠真が言おうとしたのは、ある白い子どもの存在だった。
自分よりもいくつか年上の、真っ白の彼女。もしかしたら男かもしれない彼女が言ってくれた。自分に頼れば、掬い上げてあげると。救い出してあげると。
「カミサマに会ったんだ」
「へぇ」
心底興味の無さそうな反応をされたのが、悠真は構わずに続ける。
「その子がね、俺を助けてくれるっていうんだ。だから俺は、その子と一緒にいたい。俺はもう、あの人が……母さんが怖い」
そのとき、チリリと弥生の心が傷んだ。
今までどんな悠真も受け入れてきた自分の存在よりも、そのカミサマとやらのほうが大きい存在になってしまった悠真を、どうしようもなく痛めつけてやりたいとすら思った。
拳を振り上げる。
悠真の視界はそれを捉えるけれど、なぜか避けない。
諦めてしまっているのだ。
自分に降りかかってくる何もかもを。
「ユウくん、ダメだよ……。もっと自分を大事にしなきゃさあ……」
自分が言えたことじゃない。
そんなことは誰よりもなによりも弥生自身が一番よくわかっていた。
「ヤヨは優しいね」
悠真は笑う。
久しぶりに笑った顔を見た。
変声期なのか声が幼い頃より低くなっている。
「ほんとうに優しいね」
──だから、“もう一度アイツをバラバラに壊す”。
──もう一度、夢を見させるんだよ。こんな辛い現実じゃなくて、酷い幻想だけで固められた夢。
そう言った虎春が明日羽にしたことは簡単だった。
明日羽の傷跡を抉る。ほじくり返す。ねじ込む。あの夜、流鏑馬凛太郎に襲われた日のことを言い聞かせる。悠真はもうどこにもいないと言い続ける。殴る。蹴る。服を脱がす。水をかける。自慰行為をさせる。
そんな荒業で、明日羽の人格を彼女が精神病院に入院していたときに戻した。
戻したと言っても完璧にではない。
弥生を見ても無反応で、目の前で手をひらひらと振っても、その焦点は合わない。呼びかけても、肩をゆすってみても、まったく反応は無かった。
「壊れたのぉ?」
「夢をみてるんだ」
虎春は優しく弥生に言う。
こうするしかないと自分に言い聞かせながら。
悠真があまりにも不憫で、けれど明日羽の虐待を止められる勇気なんてない。だったらせめて、明日羽が嫌な現実を見ないようにしてやればいい。
そんな思考が正常といわれるわけがない。
彼もまた、狂っていたのだ。
「弥生、明日羽のこと頼めるか」
「向こうの病院にぶちこんどけばいいんでしょぉ?わかってるよぉ」
「手続きはしてあるから。俺はこっちに残る。悠真と一緒に」
「悠真と住むのぉ?」
どうだろう、と虎春は笑った。
悠真は虎春の実の息子だが、自分が明日羽と体の関係があるせいか、虎春とはあまり話をしたがらない。少なくとも父親とは思われていないだろう。
「もしアレだったら泰邦くんに頼もうかな」
「頼りっぱなしじゃん」
「すまんな。俺もけっこう頑張ったんだわ」
「──キミは優しいねぇ」
優しすぎるから、辛くならないのかなぁ。
そう言う弥生の表情が、彼とダブる。
血が繋がっているから当たり前だけれど、ふつふつと腹の底から怒りとどうしようもないほどの殺意がごくわずかだがこみ上げてくる。
その殺意に耐えていると、ふふっと弥生が笑った。
「強姦魔の娘なんだから、弥生を殺しても誰もキミを咎めないと思うんだよねぇ」
優しいから、自分も娘として受け入れようとしている虎春の気持ちを弥生は気づいていた。
ぜったいに家族にはなれない。
けれど家族を守ろうとしてすべてを壊している虎春を、嫌いになんてなれるはずがなかった。
「ユウくんをよろしくねえ、パーパー」
くしゃくしゃに笑った顔が愛おしい。憎らしい相手の子どもなのに、愛おしい。
そのまま抱きしめてしまいそうになった。
でも、すぐ傍には抜け殻のようになってしまった明日羽がいる。
そんな彼女の前で弥生を抱きしめることなどできないと、彼はまた自分の優しさに押しつぶされそうになっていった。
- Re: あなたを失う理由。 ( No.193 )
- 日時: 2013/02/17 12:05
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
☆
今日から泰邦のアパートで暮らせと言われたとき、最初はかなり戸惑った。
明日羽もいない。弥生もいない。
ふたりはどこに行ったのかと問い詰めても、虎春は最後まで何も言わなかった。
遠縁の樽谷泰邦という男と、泰邦の恋人だという宇留賀仁美は頻繁に悠真に会いに来たし、その二人が必死で守っている白い彼女──あるいは彼も悠真を恋人のように大事にした。
明日羽から求められない日々は静かに過ぎていく。
虎春は悠真をアパートに連れてきた日以来、顔を見せなくなった。
大瀬良家の人間と完全に関係は絶たれたのだと、そう思った。
思っていた。
「うあっ、あ……ぐ、ああ……」
ただ、明日羽から受けていた性的虐待で負った傷は癒えるわけがない。
毎晩、思い出してはひどく吐き気がして、血が出るほど自慰行為をしては自分の精液を見て狂乱した。
汚い、汚い、汚いと何度も呟き、そのたびにズルリと記憶が抜け落ちていくような感覚がした。忘れたいのに忘れられない。思い出したくないのに、目を閉じればそのまざまざと蘇ってくる。
汚い。
穢い。
キタナイ。
「ユウマって、なんだかとても苦しそうだよ」
心配そうな目で木内好奈は悠真に声をかけた。
目を惹くその真っ白な髪は腰まで伸びており、中性的な顔立ちからはなかなか性別が判断しにくい。色素の薄い目で悠真を見て、彼の額に浮かぶ汗をべろりと舐めとる。
「私がユウマを救ってあげようか?」
「俺のことは放っといてくれ。いま……すごく吐きそうなんだ」
「だから中学校、休んでるんだ」
納得したように言い、好奈はベッドの上で丸くなっている悠真の髪を撫でる。猫のようなくせっ毛。
強がっているくせに内面は誰よりも傷つきやすいこの少年が、本当に愛しかった。
抱きしめて、一つになりたいとすら思う。
好奈は髪を撫でていた手を、今度は悠真の首筋に移動させた。次に鎖骨。次に、胸。
さすがに驚いたのか、悠真が怪訝そうな顔で好奈を見る。
「なにやってんの」
「私はさカミサマなんだよね。何人も何人も何人も人の苦しみを救ってきたんだよ」
そういえば前にもそんなことを言っていた。
カミサマなんてそんなもの信じているわけではないが、目の前の好奈の幻想的な容姿を見ていると、縋りつきたくなる気持ちが大きくなった。
「ユウマを救ってあげたいよ」
言って、好奈は悠真にキスをした。
長い舌が口内をかき回し、ぞわりと鳥肌がたつ。
カミサマとして性的虐待を受けてきた好奈もまた、歪みきっていたのだ。
救いとは、快楽であると。
好奈は悠真を救うためにやったことが、ぎゃくに彼にとってはトラウマ以外のなにものでもなかった。
そして、長い夜がふけていって。
そこにいたのは悠真であって、悠真でないものだった。
「なんなの、アンタ。髪が白いけど、気持ち悪くねえの?」
自分の隣で裸で寝ている好奈を見て、悠真はそう言ったのだ。
呆然とする好奈を、まるで害虫のような目で見下ろす。
「ここ俺の家だろ。アンタなんでいんの」
「ユウマ……?私がわからないの……?」
嘘だ、と好奈は思った。忘れている。悠真のなかで自分の受け入れたくない記憶だけがごっそりと抜け落ちていた。
今まで自分に向けられたことのない冷たい視線に戸惑い、好奈は自分のしたことを後悔した。
悠真が悠真じゃなくなった。
声をかけても不快な顔をするし、触れようとすると振り払われる。
悠真の態度に憤ったこともあった。
けれどすぐに思い直す。
悠真のなかの悪い記憶が失えたのなら、それは悠真を救えたことになるのではないか。思い出したくない、忘れたいと嘆いていたものがそのとおりになったのなら、悠真は何も恐れることはない。
だとしたら自分のしたことに意味はあったんだと。
何度も体を重ね、何度も記憶を上塗りされて、悠真のなかではどれが自分のことなのかまったくわからなくなっていた。
不安定すぎる自我を抱えながら、悠真はずっと一人を好んできたのに。
「大瀬良くんが好き」
そう言う彼女があまりにも自分を受け止めすぎるから。
「あ……俺、どこ行けばいいんだろうなぁ」
その彼女があんなに必死で逃げろと言うから。
どこに行けばいいのかわからず、適当に走っていたら前に流鏑馬笑日が住んでいたところにいた。
なんの特徴もない辺鄙な住宅街。いま非日常なことが起きているとはとても思えないほど平和だ。静かすぎる。人通りも少ない。
呑気に歩いている自分もどうかと思うけれど、実際に笑日からは逃げろと言われただけで、そのあとどうしろとは言われていない。
自分で考えろということか、と立ち止まって考えるが、あいにく知り合いもいない。
さてどうしたものかと、悠真が迷っていると、
「なんでここに大瀬良がいんだよ」
聞き覚えのあるような無いような声がした。
ふと顔をあげると、千隼望夢がいた。中学校から顔見知りだが、そんなに深い仲ではない。
笑日が嫌っているということだけは知っていた。
「学校の近くにできた古本屋が今日なぜか休みだったんだよなぁ。行って損したわー」
「……あっそう」
「そうだよ、ったく。んで、お前は何してんの。流鏑馬とセットなくせにあいついないじゃないか。喧嘩か?」
喧嘩ではない。それより最悪な事態だということは悠真もわかっている。
「なあ、お前って流鏑馬のことが好きなのか」
「直球だなぁ。俺も直球で返すけれど、アイツは人間としては好きな類だな。嫌悪感ってものを隠そうともしないだろ?裏表が無いというか、ハッキリしてるというか。そういうところ、俺はめちゃくちゃ大好きだ」
「きも」
「ひどいな。でもお前のそういうところも好きだ」
望夢がケラケラと笑いながら大きい一軒家に入っていく。
そうだ。ここは望夢の家だったと、悠真は思い出す。
「なあ、相談があるんだけど」
「珍しいね。いつも一匹狼きどってるお前が相談なんてさ。流鏑馬絡み?」
「──まあ、そんなところ」
面白い、と内心ほくそ笑んだ望夢は玄関の扉を開く。
「家には誰もいないから。お茶くらいは出すぞ」
「俺はジュースがいい」
「あっそう!」
- Re: あなたを失う理由。 ( No.194 )
- 日時: 2013/02/22 19:38
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
04
千隼望夢は目の前で悠々とくつろいでいる級友にジュースを出したあと、さてどうしたものかと考えを巡らす。希望通りのジュースが出てきて嬉しいのか、その級友は少しばかり、本当に微小に口元を緩ませてコップに口をつける。
機嫌が良いのなら都合がいい。
望夢にとってこの級友の扱いはあまりにも難しいものだったから。
「オマエってなんだか変わったよな」
一通り級友が落ち着くのを待って、望夢は話しかけた。
「流鏑馬の影響なんかねぇ。すっごい人間らしくなった」
「馬鹿じゃねえの。俺はもともと人間だって」
「いやそうなんだけど。そうじゃなくてさ。オマエはなんつーか……んー難しいな。あまり感情とか出せるほうじゃなかったから」
級友──大瀬良悠真とは中学一年生のころからの知り合いだ。胸を張って友達だと断言できるほどの仲ではないが、望夢は、そこらへんのやつらよりは自分は悠真を理解できていると自負していた。
もともと綺麗な顔のせいもあって近寄りがたい印象を与えていたが、顔よりも何もかもを拒絶する雰囲気がより一層彼を孤独にさせていた。と言っても、これはあくまで望夢の思っていた悠真であり、実際に彼がどういう心境だったかは定かではない。
「俺ってそんなに怖かったか」
「怖いというよりは……なんかあるなーって感じかな」
どこまで踏み込んでいいのかわからず、望夢は曖昧に答える。
実際に悠真には脳みその中がいったいどうなっているのかわからないほど混雑していて混沌としていて混乱しているのだから、無理もない。
悠真は少しだけ首を傾げて、
「俺自身も自分がなんなのか時々わからないことがある。すっげえ怖いから敢えて考えてないんだけどな」
コロコロと言葉を口の中で転がすような喋り方。
聞いていて特に不快感もないその声が、どこか不安定に震えている気がして望夢は少しばかり緊張する。
彼女のように悠真を宥められる自信はない。
いや、彼女が悠真を宥めているのかどうかはわからないが、ここでパニックになられても困る。
「流鏑馬がいろいろと手を焼くのもわかるわ。ちょいと過保護のようにも思えるけどね」
「──アイツのほうが意味わかんねえよ。俺のこと対して知りもしないくせに。最初はマジで頭おかしいんじゃねえのかと思った。今も思ってるけど」
流鏑馬笑日が異常だということを重視していないのは悠真だけらしい。その事実に苦笑しながら、望夢は空になった悠真のコップにジュースをもう一度注ぐ。
「オマエに対してはかなりご執心みたいだからな、流鏑馬は。こっちが嫉妬するくらい」
「流鏑馬はアンタが嫌いだろ」
「嫌われてるねえ、完全に。でも、それを隠すことなく堂々と言ってくるだろ?そこが俺は好きだな。それに関しては大瀬良。オマエも同じだよ。俺はオマエが好きだ。気に入っている」
「それ、さっきも外で聞いた」
「そうかそうか。ならよかった」
「あ、それで思い出した。相談があってきたんだよ」
都合がいい。
こっちが聞くより先に話してくれるのか。
「ん。なに?」
適当に相槌をうちながら、悠真の相談がなんなのかと少しばかり想像してみる。
笑日絡みのようだったから喧嘩なのかもと思ったが、どうしてもこのふたりが喧嘩をするようには思えない。というか想像ができない。まさかセックスだとかそういった類のことかと思って肩に力が入るが、笑日はまだそういう関係ではないと言っていたのを思い出し、これも違うなと望夢は考えを振り払う。
悠真は改まって相談があると言うわりにはどこか呑気そうにジュースを飲み干し、一息ついたあとに、なんら変わらない表情のまま言った。
「流鏑馬が殺されたかも」
「──うっ、へっ?」
変な声が出た。
あまりにも突拍子すぎて、さすがに脳が置いてけぼりをくらっている。
今、こいつは何を言った?
理解できずに望夢の思考が一回転する。
「ちょ、おいおいおい待てよ。なんでそう思うんだよ」
「さっき変な男……男?あー女ではないかな……なんか、殴られてて。ヤヨがいたような気もするんだけど……あれ?ヤヨって誰だ?」
「こっちが聞きてえよ!おい、おい、とりあえずオマエ、携帯貸せ。早くしろ馬鹿」
どうしてこんなにも平然としていられるのか。
悠真から携帯をとりあげ、笑日の番号に電話する。繋がらない、と思っていたが電源は切られていなかったのかコールが響く。
「大瀬良、それってどの辺りだ」
「ファミレスの近く。なぁ、やっぱりこれってヤバいことなのか」
「流鏑馬がピンチだろうな。だーちくしょう、出ねえ」
どうするか。
望夢は頭の中で必死に考える。
望夢の父親は警察署の人間だ。こういう事態があったのなら、真っ先に警察に駆け込むべきなんだろうが──
「アイツは警察が嫌いだからなぁ」
そうも言っていられない事態なのはわかっている。ただ、笑日だったら絶対に警察は頼らないだろう。あてにできないと一蹴して、自分の力で動く。
今回も悠真だけが無事にこうして来れたのは絶対に笑日が事前に彼に吹き込んだからだろう。自分の身に何かあったら真っ先に逃げろとか、悠真だけでも助かってくれだとか。
想像がつく。
笑日はいつだって悠真のことしか考えていない。
警察に頼れば、またマスコミは悠真のことをおもしろおかしく書き立てるかもしれない。悠真の地雷になりそうなことが次から次へと、彼にむかって問われていくだろう。そして少しでもおかしい言動をとれば精神科にぶち込まれるかもしれない。
そこまで考えて、笑日は今まで警察だけは避けていた。
「まいったな」
笑日を襲った人物だってまだ把握できていないのに、これ以上動くのは危険だ。もういっそ最終手段で警察に手を借りるか。
望夢が時計をチラリと気にしたその時、携帯の着信音が鳴った。
悠真のものかと思ったが、それは望夢自身のものだった。半ば安心しつつ、電話に出る。
「はい、もしもし。……あ、はい。ああ、そうです。二十年前、ですかね。ああ……あ?一件あったんですか?……それ、その資料、今すぐファックスで俺の家に送ってください。親父には黙ってますから。それじゃお願いしますよ?お願いしますね」
慌ただしく電話をきった望夢を、不思議そうに悠真が見つめる。その視線を振り払い、望夢はファックスを待つ。説明している暇はないし、説明してもなんのことだかわからないだろう。
つい最近、笑日に頼まれていたのだ。
──調べて欲しいの。二十数年前にこのあたりでレイプ事件があったかどうか。
「大瀬良、流鏑馬はオマエに何か言っていなかったか。どんな些細なことでもいい。なにか、引っかかるようなこと」
そう言われ、悠真は笑日との会話を思い出してみる。夕食の献立、帰り道での戯れ、寝言。ひとつひとつ思い出そうとしても、不自然に靄がかかるのはなぜだろう。
不思議に思いながらも思い出していくと、最近の夜の笑日の言葉が頭に反響した。
──大瀬良くん、わたしはきみを悪いことから守るけれど、そのためならきみにものすごく酷いこともしちゃうよ。ごめんね、馬鹿で。
──このままじゃわたしは殺されるんだろうなぁ。
「殺されるって言ってた」
そうだ。
あの時、笑日は確かに「殺される」と言っていた。
悠真が起きていることにも気づかないほど、笑日はまいっていた。
「殺される……?」
「誰かに会ったあとみたいだった。放課後、俺だけ帰るように言われて、すごく遅い時間に帰ってきたんだけど……俺が起きていることにも気づかなかった。普段のアイツなら絶対に気づくのにな」
そこまで危険だとわかっていたのにも関わらず、警察に言わなかったのか。
望夢は舌打ちをし、髪をかきわける。
これ以上ないほど自分が焦っているのがわかった。
その焦りを察したのか、ファックスが届く。
「おっせえ!」
「なんかすっげえ慌ててるな」
「慌てるよ!慌ててねえのオマエと流鏑馬くらいだ!」
そう怒鳴りながら届いた資料に目をやる。
そこには、知られることのなかった、裏に溶け込んで消えてしまいそうになっていた真実があった。
「これ、マジか?」
- Re: あなたを失う理由。 ( No.195 )
- 日時: 2013/02/23 03:16
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
・・・
鈍い音がした。
あとに続くのは、ひどい耳鳴り。頭痛までする。
体を起こそうとして、それが無理なことに気づいた。いや、べつに縄で体をグルグル巻きにされているとかそういうことじゃない。単純に頭痛がひどかっただけだ。
体を動かすたびにズキズキと、神経が焼き切れそうなほど痛む。
額に手をやると、ぬるりとした感触がした。見ると、血がべっとりと着いている。
あー思い出した。いろいろと思い出した。
できれば夢であってほしいなとは思ったんだけれど、どうやら現実らしい。
拉致られた。
もう情けなくてしょうがない。涙すら出てこない。
ゆっくりと辺りを見渡してここがどこだか確かめる。なんか、すっごい広い和風の家だった。
木の匂いがする。わたしが寝転んでいるのは畳の上で、周りは障子に囲まれていた。掛け軸や水墨画なんかもある。
ふと視線を下げると、畳にわたしの血らしきものがべったりと着いていて、この家主に申し訳ないと思った。
「んーいやしかしここはどこぞ」
わたし以外に人がいる気配は無い。
もちろん、大瀬良くんも。
あのあと、ちゃんと逃げ切ってくれただろうか。まさか追いかけられて一緒に拉致されたーなんてことはあるまい。殴られてから気を失ったせいで彼の安否が本当にわからない。
「ちっくしょ……あーいってぇ……」
頭痛に耐えながら立ち上がる。障子を開けて外に出ようかとも思ったけれど、一歩足を踏み出すたびにものすごく耳鳴りがする。
これ、けっこう重症なんじゃないか?
血とかけっこう出ているし、なにしろ頭だし。脳みそとか溢れてないよなと確かめながら、そっと障子を開けてみた。
同じような部屋が広がっている。
こうも四方八方障子があると、どこにいけば出口があるのか全然わからない。完全に迷子だ。とりあえず、適当に障子を開けては閉め、開けては閉めを繰り返す。
「なんでこんな広いの……ていうかここ誰の家よ」
何度か悪態をつきながら進む。
変わらない景色。気が滅入りそうになりながら、次の障子に手をかけようとしたその時、
「あーこらこら。なにどっか行こうとしてんだテメェ、殺すぞ」
「っ!?」
後ろから思いきり蹴られた。その振動でまた頭痛が襲いかかってくる。受身もろくにとれず、畳の上に転がった。うあ、めちゃくちゃ吐き気する。脳みそがものすごく揺れてる気がする。
「けっこう強く殴ったつもりなんだが、ここまで動けるとはなぁ。オマエ、ゴキブリかよ。生命力、異常に強いんだよなぁ、アイツら」
「──まあ、虫みたいな扱いには慣れてるけどね」
普段は年上には敬語を使うけれど、生憎いまのわたしはそこまで穏やかではない。今にも脳みそが溢れ出しそうなのだ。
安西虎春の姿が目に入る。
この目線からだと、昔の父親の姿とだぶる。
「久しぶり、安西。何時間くらいわたしは気絶していたの」
「ざっと二時間ってとこかねぇ。しっかし拉致されたのにやけに冷静だな、バカップルの片割れ。もっと喚くもんかと思ってたわ」
喚く?
こんなことでいちいち喚いていたらキリがない。それに喚いたとしても頭痛がひどくて無理だ。
「ろくな育ちじゃないからね」
「ハッ!さっすが流鏑馬凛太郎の娘だな」
「──あの人のことまで知ってるんだ。母さんから何か聞いた?アンタは母さんを一方的に知っているだけって言っていたけれど、本当は何かあるんじゃないの」
例えば母さんとそういう関係だった、とか。
安西は狂気じみた笑みを浮かべながら、わたしの前に腰をおろす。
「夜子さんのことは本当に一方的に知っているだけだ。直接会った……いや、見かけたことが数回だけ。かなりイッちゃってるっぽい感じの美人だったってことしかわかんねえなぁ」
「じゃあ……」
もう考えられるのは一つだけしかない。
「あの人の……凛太郎の知り合いなんだ」
「自分の父親のくせにあの人呼びか。相当なついてなかったのなぁ」
「嫌いだったから」
三年前に事故で死んだうちの父親は、かなり暴力的な人だった。よくその犠牲になっていたのは兄さんで、ふたりはしょっちゅう家の中で言い争いをしていた。
母さんはどちらかというと一方的に嬲られていた印象がある。抵抗しない人だったから、それがぎゃくにあの人を苛立たせたのかもしれない。
「殴られたり蹴られたりしたか?」
「まあ……。わたしはそんなになかったけれど、アンタが殺したうちの兄さんがよく殴られていたわね」
「ふうん。んーそっかそっかぁ。まあ、アイツはああいうやつなんだよなぁ。昔から馬鹿で単細胞なんだよ。そんなこと、口が裂けても言えやしなかったけどな。なあ、笑日。いっこ言いことを教えてやるよ。オマエが嫌うその暴力はな、アイツにとっては愛情表現のひとつなんだぜ」
愛情表現?
あの痛みでしかないものが?
「俺は流鏑馬とは幼なじみでさ、まあふたりともけっこうなワルだったわけよ。流鏑馬はかなり過激なやつでさ、喧嘩は強いわ容赦は無ぇわでけっこう有名だったわけよ。危険人物としてな」
「あー……うわぁ」
そんなやつが父親ってだけで目眩がする。母さんを見れば昔のふたりがどういう人かってことは想像していたけれど、なんかこう、他人からその話をされると妙に恥ずかしい。何やってんだ、あの人。
「流鏑馬には誰も近づかなかった。つるんでたやつらもビビッちまってさ。俺も正直、ビビってたっつーよりかは、うんざりしてた。何回もアイツのせいで危ない目にもあったし、あわされたし。でも、アイツは言うんだよ。“俺はトラさえいればそれでいいわー”ってな」
「トラ?」
「ああ、俺のこと。コハルって字が、虎の春って書くから、トラって呼ばれてた」
虎……。
ああ、思い出した。
「思い当たったみてぇだな。墨、あったろ」
「ありましたねぇ。背中に大きい虎の刺青」
もう何年も前のことだけれど、一度だけあの人の背中を見たことがある。大きく入れていたわけではないけれど、右肩に彫りかけの虎があった。
「なんでか知らんが……異常に俺にベッタリなやつだったんだよ。こう言えば可愛げがあるんだけど、実際は一週間に何回か殺されかけたな。いやぁ、マジで嫌いだったんだ。俺はアイツのことこれっぽっちも連れとも思ってなかった。それ言っちゃあ、俺の命が無かっただろうけどな」
「──だから、復讐で兄さんを殺した?そうじゃないわよね。あまりにも的外れだわ」
「ああ。全然違う。俺の復讐の理由はそんなチンケなもんじゃねえよ」
安西がわたしの頬をそっと両手で包む。触れられた瞬間、また一層頭痛がひどくなった気がした。
耳で囁かれる。
この人の復讐の理由を。
「明日羽をレイプしたオマエの父親を、俺の手で殺したかったんだよ」
- Re: あなたを失う理由。 ( No.196 )
- 日時: 2013/02/28 22:19
- 名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
安西虎春が話した昔話は、わたしにとってはどうでもいいことだった。
どうでもいいこと。
どうでもいい、昔話。
いや、今さら聞いたところでどうすることもできない、変えることのできない過去といったほうが正しい。
ダラダラと聞かされたところで、どうしようもないのだ。
「明日羽は金持ちの令嬢で、俺はどうしようもねぇチンピラだった。釣り合うわけがなかったんだが、俺は明日羽に惹かれててなぁ。アイツの、あの凛とした、何に対しても臆さない態度が好きだった。
まあ、流鏑馬にバレた時点で俺が明日羽と会うのを止めていれば、なんとかなったのかもしんねぇけど。アイツは夜子さんを孕ませてたから、少なくとも明日羽になんかすることはないって思ってたんだが……。まあ、舐めてたわな。俺も」
内ポケットから煙草を取り出して、ライターで火を点ける。わたしの嫌いな煙の匂い。嗅ぐだけで頭痛がより一層強まった。
「約束の時間、過ぎててさ。電話がきたのは警察からで。全部が終わってた。明日羽は病院にぶち込まれてたし、目撃証言もないわ明日羽がイッちゃってたわで捜査は難航してたしな。それに、明日羽の両親はその事件を公にするなとさえ警察に言っていたらしい。明日羽は、見限られたわけよ」
「──流鏑馬凛太郎が犯人だとどうしてわかったの」
「直感。明日羽が事件にあったって聞いたとき、アイツの顔が浮かんできた。殺してやろうかとも思った。嬲り殺しにして、八つ裂きにして、死ぬまで死なせないようにしてやろうかと思った。それももう無理なんだってわかった今となっては、どうしようもねえんだけど」
「どうしようもないから、その娘を拉致監禁したわけ?」
「いや……これは単純にキレてるだけだ」
わたし自身は何もしていない。
そう反論しようとしたけれど止めておいた。ここで相手を刺激させると何をされるかわかったもんじゃない。
口を閉じて、安西が何か言うのを待つ。
煙草を吸う動作がやけに遅く見える。時間が経つのが遅い気もするけれど、今は何時だ。
「なあ、聞いてる?笑日、聞いてるかー?俺はオマエにけっこうキレてんだぞー」
よそ見をしていたら、髪の毛を引っ張られた。
安西を見ると、目の前で煙草の煙を吐かれる。涙が出てきた。
「オマエさ、なんで悠真といんの?関わっていいわけないだろ、馬鹿野郎。なんのために俺が悠真をこっちに連れてきたと思ってんだよ。明日羽から助けたかったからだよ。それなのに、今度はこっちで流鏑馬と関わってるとか……なんだよこれ、笑えねえよ」
「笑わないで。わたしは本気なんだから」
「はぁっ?」
キョトンとされた。素で驚かれた。なんだか少しだけ傷つく。
わたしが彼を逃がしたのを見て、本気も本気だってことくらいわかってほしい。
大瀬良くんのためなら死んだっていいとすら思ってるんだ。
我ながら病んでる。病みすぎて真っ暗だ。
「わたしの父親がカス以下だってことはわかった。明日羽さんには申し訳ないことをした。謝っても絶対に許されないことを、わたしの父親は犯した。簡単に事故死なんてして、アンタの復讐の機会が永遠になくなって、本当に可哀想だとも思うし同情もするよ。
でもね、それはわたしの大瀬良くんを思う気持ちとはなんの関係も無いのよ。無関係。わたしと大瀬良くんにはなんの関係もないのよ」
親たちのいざこざなんて子どもには関係がない。わたしは大瀬良くんを好きで、大瀬良くんもわたしを好きなら、それでいい。
周りの人間たちの意見なんて聞いている暇がない。
正直うんざりしている。
こんな意味のわからないところまで連れてこられて、挙げ句の果てには酷い頭痛と煙草の煙たさで気が狂いそうになるし、なんだか父親のことで責められているし。
なんかもう、とことんツイてない。
「そう言うアンタは……大瀬良くんの、お父さんかしら。なんとなく雰囲気が似ている……ぼんやりと大瀬良くんとダブるのよね」
「やめろよ」
「じゃあ、弥生さんは流鏑馬凛太郎の子どもってことになるのか。わたしとは異母姉妹ね。兄さんを殺したのはわたしと大瀬良くんが恋仲だって知って、キレちゃったから?だとしたら子どもじみてるわね。お菓子を買ってもらえなくて泣いてる幼児みたい」
「やめろよ」
「ねえ、兄さんを殺したらわたしが悲しむとでも思った?バカね、アンタ。わたしは何をされても悲しまないわよ。ぎゃくに同情してあげる。アンタは可哀想なのよ。優しすぎる。だから、弥生さんにも愛情をあげようとしたんじゃないの?流鏑馬凛太郎の子どもの弥生さんに」
「やめろって」
「明日羽さんを好きなんだけれど、その明日羽さんが大瀬良くんに性的虐待をしていることが耐えられなくて。だから明日羽さんを置いて大瀬良くんを守ったんでしょう。明日羽さんから逃げた、と言い換えてもいいけれど」
「やめろよ!!」
目の前が光ってうわあああああ、いってだああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!
頭痛!頭痛がやばい!ついペラペラ喋っちゃった!
そりゃあ怒るよなぁこれだけ言ったら!
床に突っ伏して頭を抱える。吐き気もせり上がってきてさすがに我慢できないレベル。うわあ、胃液が不味い!
「明日羽を守りてえのにできなくて!弥生を愛さなきゃって思って!悠真のことを可哀想だなって思って!だから俺はやれるだけのことをしたんだよ!悠真が明日羽を抱くのを見てられなかったから!だっておかしいだろ!親子なんだぜ、アイツら!気色悪いっつうの!そうやって、壊れていく明日羽を見ていたら、なんだか自分まで怖くなって……っ、悠真が病んでいくのを見てられなくて、だからっ」
「でも、大瀬良くんはアンタを覚えていなかったよね」
古本屋で安西を見たとき、大瀬良くんは特に反応を見せなかった。
安西も他人のように大瀬良くんに接していた。
「アイツの記憶はウイルスに感染したパソコンなんだよ。都合のいいことだけがインプットされて、その他はデリートされる。ひっでぇもんだよ。ちょっと衝撃を与えたらバグで混乱するから、俺に関することを全部消した。簡単に、アイツは書き換えられる」
そのことはわたしも目の当たりにしたし、その部分を利用したこともある。
現にいまの大瀬良くんは、泰邦さんのこともヨシナのことも覚えていない。あれだけ一緒にいたのに、簡単に忘れている。
弥生さんのぶんだけ覚えていたのは、大瀬良くんのなかでそれだけ弥生さんを親しく思っていたからかもしれない。大瀬良くんにとっては弥生さんはたった一人のお姉さんだろうから。
「そこを利用したんだね」
「俺は、俺のやり方で明日羽も悠真も守った」
「それで?」
「でも悠真がオマエと関わるっていうのは見過ごせねえんだよ」
「だから?」
「殺すよ、オマエを。当たり前じゃねえか」
やっぱりそうなりますよね、はい。
なんて冷静に言っているけれど、実際はかなり焦っている。
ここでもし殺されたら、大瀬良くんとはもう二度と会えなくなるわけで。それは少し嫌だなぁーって思う。せめて大瀬良くんの前で殺して欲しい。そうしたら、大瀬良くんの目に、脳髄にわたしの姿が焼きついて、離れなくなると思うから。
「サヨウナラ」
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