複雑・ファジー小説

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あなたを失う理由。 完結
日時: 2013/03/09 15:09
名前: 朝倉疾風 (ID: kWFjr3rQ)
参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/

どうも 朝倉疾風です。





性描写などが出てきます。

嫌悪感を覚える方はお控えになってください。



主要登場人物>>1

episode1 character>>4


episode2 character>>58


episode3 character>>100


episode4 character>>158



小説イメソン(仮) ☆⇒p


《episode1》
・まきちゃんぐ / 煙
   htt☆://www.youtube.com/watch?v=kOdsPrqt1f4


《episode2》
・RURUTIA / 玲々テノヒラ
   htt☆://www.youtube.com/watch?v=wpu9oJHg2tg


《episode3》
・kokia / 大事なものは目蓋の裏
   htt☆://www.youtube.com/watch?v=LQrWe5_q6-A


《episode4》
・Lyu:Lyu / アノニマス
   htt☆://www.youtube.com/watch?v=lSFYtyxojsI


執筆開始◎ 6月8日〜



Re: あなたを失う理由。 ( No.7 )
日時: 2012/06/09 23:12
名前: 朝倉疾風 (ID: GYxyzZq9)
参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/



◎ 柚々 様


 覚えております、覚えておりますとも。
 暖かいコメント、ありがとうございます。

 本当に拙い小説で申し訳ないですが、ゆったりと
 自分のペースでほにゃほにゃ書いていくので、
 応援してくだされば幸いです(・∀・)

 自分の書いたものを 「好き」 と言ってくれること
 ほど嬉しいことはありません。
 とても光栄です、ありがとうございます。○

 報われない流鏑馬を、そして毒舌な大瀬良くんを
 どうか見守ってやってください。 では(o・・o)/

Re: あなたを失う理由。 ( No.8 )
日時: 2012/06/10 18:24
名前: 朝倉疾風 (ID: GYxyzZq9)
参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/






 失恋をしたのは、これが初めてではない。
 今まで告白した回数は3回、告白された回数は2回。 そのうちオッケーしたのは0回。 オッケーされたのは1回。
 つまり、わたしは2回ふられていて。 そのカウントはさっきので1ポイント増えるわけだけど。
 あんなに拒絶されたのは初めてだった。 告白を振る人は大抵、それなりに相手に気を遣ってくれるものだと思っていたから。 「友達でいたい」 だとか 「好きって言ってくれて嬉しいよ」 だとか、必ずそういう言葉を添えてくれたのに。
 大瀬良くんはちがった。
 ショックだった。 まさか名前を知られていなかったとは予想外。
 でも、それもこれもすべて、相手が 「大瀬良くんだから」 という言葉ひとつでちゃんとした理由になるから不思議だ。

 彼はほかの人とは明らかに違う。

 彼だけ別の空間にいるような、どこか違うところを見ているような。 変な話になるけれど、本当にそんな感じ。 わたしみたいなのを気にいかけていることは無いのだと、そう確信していた。
 けど、それにしてもあんまりじゃないか。 あんまりすぎる。 泣きたい。 泣かないけれど。

 自転車をノロノロと走らせ、集合住宅の前の道を通る。 十字路を右に曲がって少し行けばわたしの家だけれど、その途中にこの辺では珍しい新築の大きな家がある。 アパートばかりのこの近所でこんな大きな家はなかなか見ない。 庭とかあるし、いかにもお金持ちそうだなーと思う家。 ちょうどいま、わたしはその家の前を通る。 家を横目にして自転車の速度を上げ、通り過ぎる。

 はずだったけれど。

「流鏑馬!」 いきなり大きな声で名前を呼ばれて、慌ててブレーキをかける。
 耳に酷くこびりつく錆びた音をたてながら、自転車は止まってくれた。
 何事かと振り返ると、先ほど横目にした大きな家から、見覚えのある男子がこっちへ走ってくる。
 同じクラスの図書委員、千隼くんだった。 名前は望む夢と書いてノゾムと読むらしい。 自己紹介で確かそういうことを言っていた。
 一度も外でスポーツなんてしたことがないような白い肌。 茶色の縁の眼鏡の奥で、優しげな瞳がこちらを見ている。 先生から気に入られそうなタイプだ。

「急に声かけてごめんな。 流鏑馬は今学校から帰ってきたのか」
「そうだけど……何か用だった?」
「いや、教室にあるノート持って帰ってなくてさ。 テスト勉強したいのに、忘れてしまってさ。 宝月先生が鍵持ってるだろ? あの人、そういうのにうるさいからなぁ」
「生徒指導だもんね。 でもたぶん大丈夫だと思うよ。 千隼くん、先生のお気に入りっぽいし。 学校、ここから近いから行ってきたら?」

 他人に 『優しい』 イメージを与える千隼くんは、大きな二重まぶたの目をパチパチさせて、形のいい唇の口角をニッとあげた。

「そうしようか。 宝月先生に怒られる覚悟でさ。 あの人のお説教長いから憂鬱になるんだけどなぁ」
「忘れ物をした千隼くんが悪いね」
「それもそうだな。 よし、じゃあ自転車で行ってくる。 制服だし、下校時間は過ぎているけど、校内には余裕で入れるだろうな。 ありがとう、流鏑馬」

 軽く手を振って千隼くんと分かれる。 彼とも2年生になって初めて同じクラスになったけれど、5月下旬の今となっては、家が近いせいかそれなりに親しい仲になっている。
 イメージどおり優しい人。
 彼に大瀬良くんに告白して振られたと言ったら、どう思うかな。
 驚かれたあとに慰められるかも。 勇者だと皮肉られることはないな。

「はあ……でも嫌いになれないんだよなー」

 そう、嫌いになんてなれない。
 あんなに誰かを見てトキメキを覚えたのは初めてだから。
 どんなに拒絶されようと、邪魔だと罵られようと、彼はまだわたしの名前を知らない。 まだ、わたしのことを全く知らない。
 知られて嫌われるのならまだ諦めもつくけど、知られないまま終わるのはどうしてもやるせない。

 何度でも言おう。 わたしは、彼が好きなのだ。


「その前に中間考査、終わらすぞー」




Re: あなたを失う理由。 ( No.9 )
日時: 2012/06/10 20:54
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: qt6P8gKZ)
参照: 初めましてです。

狒牙って言います、よろしくです。
色々なところで朝倉さんの名前を聞いたことがあるので、初めて読んでみました。
出だしの段階でちょっとシリアスな話なのかな、と思ったら想像以上でした。
大瀬良の最初のセリフがすでにびっくりでしたが、それで一気に何事かと引き込まれました。

あ、後ですね、>>5の高校の科目はおそらくですが『科学』ではなく『化学』かと思われます。
とりあえずうちの学校では。

Re: あなたを失う理由。 ( No.10 )
日時: 2012/06/10 21:16
名前: 朝倉疾風 (ID: GYxyzZq9)
参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/



◎ 狒牙 様


 初めてまして、朝倉疾風です。

 シリアスなお話は好きです。 人間の心情が複雑に絡み合っていて、胸が苦しいどころではなく、
 このまま殺して欲しいと言ってしまうような、そんなお話が大好きです。
 朝倉の趣味に偏っておりますが、それでも ああ、いいな。 と思ってくださる方がいてくださえば
 幸いでございます。

 誤字のほうですが、こちらで確かめたところ、確かに 『化学』 でございました。
 ご指摘、ありがとうございます。
 すぐに直しておきます。 では(o・・o)/

Re: あなたを失う理由。 ( No.11 )
日時: 2012/06/11 21:36
名前: 朝倉疾風 (ID: GYxyzZq9)
参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/




 元来、『勉強』というものは好きなほうだ。 いや、『勉強』というか自分の知らないことを知っていく感覚が好き、と言ったほうが正しいかもしれない。 
 昔から好奇心旺盛で、知りたい、やってみたいと思ったことはやらないと気が済まない性格だった。
 今でもノートを広げ、参考書を睨みつけ、明後日にある中間考査に備えている。 誕生日にもらったピンクの時計は、夕方の午後6時を指している。 辺りはまだ明るい。
 このまま、いつものわたしなら夕食の時間をはさんでも、最低4時間は机に向かっているだろう。
 いつもの、わたしなら。

「──大瀬良くん」

 それがなんだ。 どうしたんだ、わたしは。
 口を開けば英単語ばかり出てくるわたしが、いまは彼の名前ばかり呼んでいる。 ノートの空白のページには、決して上手いとは言えない彼の顔の落書き。 自分でもドン引きしてしまうほど、アレだ。 かなりキてる。
 涙が出ずに人って泣けるもんだなと、初めて知った。
 とりあえず勉強がまったくはかどらない。 これっぽちも進んでいない。
 携帯を開いて、一人暮らししている兄さんに勉強がはかどらないときの対処法を聞いてみる。 頭の良いあの人のことだから、なにかしら対策を考えてくれるだろう。
 メール、送信。

「──早いなぁ」

 相変わらず、メールの返信はどんな時間でも数秒で返ってくる。
 半ば呆れながらも受信ボックスを開いた。 






「まあ……普通っちゃあ、普通だったねぇ」

 午後6時13分。 わたしは勉強机に向かうことなく、ひとりでアイスを齧りながら、近くの中央公園に向かっていた。 それにしても暑い。 5月下旬と言えど、最近の地球さんは大変みたいだ。

 兄さんからきた返信は、たった一言。 『気分転換、外』 だった。
 つまり、外へ気分転換でもしてみたらどうかな、だろう。
 中央公園はわたしも気に入っているところだ。 遊具はあまりないけれど、敷地が広くて夏なのに涼しいから、家族連れや少年少女たちがわきゃわきゃと遊んでいる。
 集合住宅が多いから近所の目もあって、こういうところくらいしか遊ぶ場所がないんだろう。

 アイスのほかにも近くの自販機で買ったジュースを手に、やっとたどり着いた公園のベンチに腰掛ける。
 ふむ、なるほど。 涼しいし落ち着く。 嫌なことを忘れさせてくれる。
 けれど皮肉なことに、大瀬良くんを好きだと思う気持ちは忘れさせてはくれない。

「あ、ピエロだ」

 公園の広場でピエロが子どもたちに風船を配っているのが視界に入った。 色とりどりの風船が、ピエロのてから子供たちへと渡される。
 何かのイベントかと思ったけど、そんなことはないらしい。 個人でやっているようだ。
 よく耳を済ませなければ聞こえないオルゴールの音は、きっと近所のことを気にしているんだろう。
 ピエロはやってくる子どもたち全員に風船をあげている。 白い顔。 赤い鼻。 濃い目の化粧。 派手な衣装。
 青や赤やオレンジの風船が子どもたちに渡されて、彼らは母親の方へ走っていく。

 何を思ったのか自分でもよくわからないけれど、わたしの足は自然とそのピエロに向かっていた。
 ピエロはこちらを見て、不思議そうに首を傾げた。

「風船、いっこくーださーい」

 なんだろう、この人。 どこか少しだけ雰囲気が彼に似ていて、とても惹かれる。
 じっと穴が開くくらい彼を見つめる。 じーっと。 
 ピエロは気まずそうに視線をずらして、だけどたまらなくなったのか、

「邪魔なんだけど。 風船やるから消えろよ」
「……あ」

 大瀬良くんだ。 大瀬良くん。 大瀬良悠真くん。
 今日告白した彼が、目の前にいる。 こんな偶然ってあるだろうか。 今まで大瀬良くんと学校以外で会ったことなかったのに。

「大瀬良くん!」
「耳にキンキンするんだよ、アンタの声」
「なんで……なんでピエロなんてしてるの。 な、なんでぇ?」
「──バイト」

 答えてくれた。
 大瀬良くんが、わたしの質問に。 今までまったく話さなかったのに。

「バイトしてるんだ。 風船配ってるんだね。 えっと、なんでバイトしてるのかな」
「一人暮らしだし……」
「あ、ああ、そっか! そっかぁ……」

 バカじゃん。
 大瀬良くん、お母さんになにか、いけないことされてたみたいだし。
 バカだ、わたし。
 後悔が一気に溢れてきて、何か言おうと口を開きかける。

「あのさあ」

 そしてそれは、彼の言葉で遮られた。

「なんで俺に話しかけてくんの」 「好きだから!」

 自分でもこのタイミングで言うのはどうかと思ったけれど、考えるより先に口から溢れてしまった。 顔が一気に火照ってくるのがわかる。
 恋は盲目だというけれど、その通りだ。

「俺のこと知らないでしょ」
「大瀬良くんもわたしのことしらないじゃない」

 彼もわたしもお互いを知らない。
 なら、知ればいい。
 わたしのことを知って、彼のことを知って、それさえできればもっともっと距離も縮まるのに。
 大瀬良くんに詰め寄って、その化粧をしている頬を撫でてみた。 彼は無反応だった。

「わたしのことを知ればいいよ。 わたしは大瀬良くんのことを知ればいい。 それだけのことじゃない」

 少なくとも今日、大瀬良くんが一人暮らしで、ピエロ姿で風船を配るバイトをしているってことはわかったのだから。

「俺のこと知るって……。 アンタもけっこう勝手だよな」
「勝手だよ。 勝手にしないと、いつまでも他人のままだもの」
「聞いてたろ。 ろくな育ち方してないんだよ、俺は」
「バカだね、大瀬良くん」

 そして今日、わたしはもう一つ大切なことを知る。

「そんなことで、わたしは貴方を嫌いになったりはしないよ」

 彼がとても臆病で愛を欠く人だってことも。




              〆



 彼女が話すのはいつだってあの男のことだった。
 耳にこびりつく甘ったるい声。 その内容は全て、あの気味の悪い男の話。
 彼は必死で耐えた。
 心がどれだけぐちゃぐちゃになろうとも、自身をどれだけ傷つけようとも。
 彼女の幸せだけを願って。 彼女の笑顔だけを守りたくて。
 やつれた魂と壊れそうな心のまま、彼は嘘の仮面を被り続けた。

 すべては、彼女から災いを遠ざけるために──。



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