複雑・ファジー小説
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- あなたを失う理由。 完結
- 日時： 2013/03/09 15:09
- 名前： 朝倉疾風 （ID: kWFjr3rQ）
- 参照： http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
どうも 朝倉疾風です。
性描写などが出てきます。
嫌悪感を覚える方はお控えになってください。
主要登場人物>>1
episode１ character>>4
episode２ character>>58
episode３ character>>100
episode４ character>>158
小説イメソン（仮） ☆⇒p
《episode１》
・まきちゃんぐ ／ 煙
htt☆://www.youtube.com/watch?v=kOdsPrqt1f4
《episode２》
・ＲＵＲＵＴＩＡ ／ 玲々テノヒラ
htt☆://www.youtube.com/watch?v=wpu9oJHg2tg
《episode３》
・kokia ／ 大事なものは目蓋の裏
htt☆://www.youtube.com/watch?v=LQrWe5_q6-A
《episode４》
・Lyu:Lyu ／ アノニマス
htt☆://www.youtube.com/watch?v=lSFYtyxojsI
執筆開始◎ ６月８日〜
- Re: あなたを失う理由。 ( No.57 )
- 日時： 2012/07/17 21:50
- 名前： 朝倉疾風 （ID: FZws4pft）
- 参照： http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
病室の窓はカーテンが全て開けられていて、電気をつけなくても病室内は充分明るかった。
６人部屋の病室には４人の患者さんが入院していて、大瀬良くんは入って左側の一番奥で退屈そうにぼんやりしている。 入ってきたわたしに気づいても、やっぱり愛想笑いの一つもない。 ほんの少しだけ目を細めただけだ。
大瀬良くんが宝月に刺されて入院されてから、わたしは今日初めてお見舞いに……大瀬良くんに会いに来た。
「久しぶり、大瀬良くん」
「── 何しにきたの」
「何って……大瀬良くんに会いに来たんだよ」
ベッドの横にあった椅子に腰掛け、病院に来る前に買っておいたフルーツの詰め合わせをテーブルに置く。
大瀬良くんに今まで会いに来れなかったのは、千隼くんの家で見せたわたしの痴態のせいだ。 ジャストタイミングでわたしを庇って負傷した大瀬良くんを見て、タガが外れた。
もう怒りで自分を抑えられることができず、気づけば鼻血をダラダラと流しながら顔をパンパンに腫らした宝月が、虫の息になっていた。
刺された腹を抑えながら呆然とそれを見る大瀬良くんと、宝月を道具と切り捨てて助けもしない千隼くん。
すぐに正気になって警察に電話をしたんだけれど、あの時の暴走は致命的だ。 絶対に大瀬良くんに嫌われた。 ていうか引かれた。
いやでも大瀬良くんを傷つけたんだもん。 イラッとくるでしょう、普通は。
「ごめんなさい」
情けなさすぎて、わたしの口から出たのは謝罪だった。
「わたし、大瀬良くんがちゃんと来てくれるってわかってた。 わかってて……メールしたんだよ。 まさかわたしを庇ってくれるとまでは思わなかった……。 宝月が大瀬良くんを刺したとき、ほんとにキレちゃって、変なとこ見せて、ごめん」
確かに助けることを期待した。 あのままだったら絶対にわたしはピンチだったろうから。 大瀬良くんなら来てくれるって、そこを利用してしまったんだ。
くだらない悪趣味なヒーローごっこなんかで、彼を失うところだった。
その点だと千隼くんと同じなのかもしれない。
大瀬良くんがわたしを庇って宝月に刺されるなんて想定外だった。 そこまでしてわたしを守ってくれたなんて、夢みたいで嬉しかった。
そう、嬉しかったのだ。 大瀬良くんが怪我をしているのに、後から考えたら体中が火照るほど嬉しい。 わたしのために傷を負ってくれたと考えるだけで、ひどく幸せな気持ちになる。
ああ、もうだめだ。 大瀬良くんの顔が見られない。 恥ずかしすぎる。
「ひどかったでしょ。 わたしってキレたら何をするかわからないんだよ……あんな凶暴な女の子、可愛くないよね……。 恥ずかしいところ見せてごめん。 でも、嫌いにはならないで……」
俯いているから、大瀬良くんがどんな顔をしてこれを聞いているのかわからない。 なんか泣きそうだ、わたし。 だっさいなぁ。 好きな人に嫌なところ見られるし、怪我させちゃうし。
大瀬良くんはわたしが守らないといけないのに。
「アンタが何を言ってるのか、全然わかんねーんだけど」
「へっ？」
ポカッと頭をチョップにされた。 頭を上げる。 呆れ顔の大瀬良くんがわたしを見ていた。
「俺はべつにアンタに謝って欲しくて怪我したわけじゃねーし、アンタに泣きそうな顔されても困るだけだし。 つーかあんな意味深な電話されたあとに千隼の家の住所付きメールとか……逆に気になるし」
「大瀬良くん……」
「それに……安心しろよ。 アンタの清楚イメージなんかとっくに崩壊してっから」
ああ……やっぱり……。 やっぱりわたしは大瀬良くんが大好きだ。
どうしよう、大好きすぎる。 ギュッてしたい。 チュウしたい。 なんかとにかく大瀬良くんが格好良すぎて死ねる。 軽く死ねる。 あーいま死ねる。 まさかのデッドエンドなのか。
「大瀬良くん、わたしはやっぱり貴方が好きだよ」
「俺のことそんなに好き好き言って楽しいのかよ」
その頬が少しだけ赤く染まっているような気がして。 わたしはそっと手を伸ばす。
わたしより大きな男の人なのに、わたしより弱くて、怖がりで、だけどわたしを守ってくれる人。
「大好き」
大瀬良くんに触れられるだけでいい。 その心に指がかするほどの触れ合いがちょうどいい。
明るい病室の中、わたしは大瀬良くんの頬に少しだけ触れて。
このまま心まで侵食してしまいたいと、そんな自分勝手な思いを抱きながら。
けれど、まだ貴方には触れられない。
こうして体には触れられるのに、貴方の心だけには触れられない。
それだけが虚しいから、わたしは今日も黙ってる。
好きと言われるたびに、大瀬良くんの肩が少しだけ震えている。
まあ、でもいまは。
ハッピーエンド、万々歳ってことで。
episode１ 『あなたが触れない理由』 （完）
♪
今日もまた、手紙が挟まっていた。
広い家の大きな本棚。 いつも欠かさず呼んでいる本の、４２ページ目。
決して分厚くはないその本に挟まっている、一枚の手紙。
『 泣かないで 』
それだけ。
たったそれだけ。
それだけの言葉にも、少女は救われていた。 また手紙をくれた。 どこの誰かわからない。 名前も顔も年齢もわからない。
そんな相手に少女は密かに恋をしていた。
淡い恋心。 もう二度と抱くことはできないのだろうと思っていたのに。
手紙をきつく握り締め、少女は今日も苦痛な夜を過ごす。 暗闇の中でも少女が溺れずに浮いていられるのは、この手紙が光となり、希望となっているからだった。
「ありがとう」
episode２ 『あなたに愛される術』
- Re: あなたを失う理由。 ( No.58 )
- 日時： 2012/07/19 06:19
- 名前： 朝倉疾風 （ID: FZws4pft）
- 参照： http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
《 episode2 character 》
栗花落麻央 ツユリ マオ
流鏑馬とは同じ中学（大路第一中学校）で、現在は別の高校。
中学のときは流鏑馬・潮音の３人でよく一緒にいた。
自己紹介では「栗の花が落ちるで、つゆりって読みます」と言う。 誰に対しても敬語。
潮音とは家が近い。 何事にも淡白。
十八公潮音 ソヤキミ シオネ
流鏑馬とは同じ中学（大路第一中学校）で、高校には行っていない。
小さい声で喋るため、発言内容を聞き返されることが多い。 黒髪で色白。 趣味は読書。
父子家庭。
シズ
左利き。 気が荒く口調が悪い。
潮音に対しては優しく、また彼女を見守る兄のような存在。
十八公ミチル ソヤキミ _
潮音とは４歳年の離れた実兄。 大学生。
流鏑馬の兄とは知り合いで、彼のことを「奇人」と評している。
快活な毒舌家で、流鏑馬はミチルを苦手としている。
流鏑馬瑠依 ヤブサメ ルイ
流鏑馬笑日の５歳年の離れた実兄。
なぜかメールや電話などを秒速で返してくることができる。
周りから「奇人」と呼ばれるほど変わり者だが、笑日への愛はブラコン並み。
一人暮らし。 長身で細身、顔立ちも整っているためよく声をかけられる。
- Re: あなたを失う理由。 ( No.59 )
- 日時： 2012/07/20 14:01
- 名前： 朝倉疾風 （ID: FZws4pft）
- 参照： http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
episode２
『 あなたに愛される術 』
01
季節は夏真っ盛り。 もう既に夏休みとなっている。 クーラーが無ければ自室で体中の水分は抜けきっているだろう。 ザ・干物。
この涼しい空間から出たくない。 もう本当に出たくない。 さっきごみを捨てに外に出たけれど、もうダメだった。 蝉は五月蝿いし、気持ちが悪くなるほど太陽は照ってるし。 抜けきるどころじゃない、蒸発だ。 なめくじが塩をかけられて縮んでいくみたいに、わたしもああなってしまうかもしれない。 怖。 想像したら少しは寒気で体温も下がってきたかもしれない。
「── よし、行くか！」
そこまで思うのにどうして外に出なければいけないのか。
それはあれだ。
夏期講習というやつのせいだ。
１学期での中間、期末は散々だった。 それを愚痴ると周りは 「またそんな嫌味を！」 と言うけれど、わたしにとって順位を３０位も落とすことは致命的だ。
ちょっと……かどうかは別として、大瀬良くんについての妄想が過ぎた。 成績が落ちたことを兄さんにメールで報告すると、すぐ返信がきて、夏期講習を受ければいいと言われたのは、７月の中旬だった。
夏期講習。
正直、あまり気乗りはしないんだけれど、課題もどっさり出ている。 それを全て理解するにはかなり厄介だ。 講習は週に３日。 忙しくもなく、暇でもない。 それが一番いいだろう。
溶けるかと思った。 ほんの５分、自転車をこいだだけでこの暑さ。 汗に肌の色素成分が混じって、肌色の汗が流れているんじゃないかとすら思う。
異常だ、異常すぎる。
とりあえず目的の塾に着き、駐輪場に自転車を停めて扉を開く。
天国だった。
「ふほお……」
思わずそんな声が漏れるほど、そこは涼しかった。
汗が冷えて涼しい。 もうここから２度と出たくないとすら思う。 一階建ての塾の中はそんなに広くはなく、カーペットが所狭しと敷かれていた。 扉のすぐ近くには靴箱があり、そこに青色のスリッパがある。 土足厳禁ってことか。
スリッパに履き替えてから、塾長らしき女の人に話しかける。 授業が始まるまでまだ時間があるから、適当に座ってくれと言われて、本当に何も考えずに適当に座った。
座ったんだけれど。
「笑日ちゃん？」
「…………」
ひどく驚いた。 ここ最近、身の回りでそれなりに驚く事件があったんだけれど、それを上回る衝撃だった。
「やっぱり笑日ちゃんじゃないですか、お久しぶりです」
「あ……えっと……」
「もしかして麻央のことを忘れちゃったりしてますか。 １年ほど会っていないだけで、忘れたのですか。 泣きますよ、いますぐ泣きますよ」
「いや……忘れてないよ。 ただ、ちょっと驚いただけだから」
隣の席に座っていたのは、同じ中学の同級生で、それなりに仲が良かった少女だった。
- Re: あなたを失う理由。 ( No.60 )
- 日時： 2012/07/20 19:37
- 名前： ryuka ◆wtjNtxaTX2 （ID: .1vW5oTT）
第一話完結おめでとうございます！
ピンチ状態な流鏑馬ちゃんを助けに来た大瀬良くんマジカッコよすでした。宝月先生をフルボッコにした時の流鏑馬ちゃんの本気モードを見てみたいような……
病室での二人のシーンも最高でした。おい大瀬良くんそこ替われｗ
次回作も応援してます(´・ω・`)！
（あとぽっちり投票しました 笑）
- Re: あなたを失う理由。 ( No.61 )
- 日時： 2012/07/21 18:19
- 名前： 朝倉疾風 （ID: FZws4pft）
- 参照： http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
.。o○ ryuka さま
ありがとうございます
episode１ が無事完結できたのも、今まで朝倉を
応援してくださった皆さまのおかげであると
心から感謝しております
流鏑馬はかなり攻撃的な性格だということが
わかっていただけたと思います
彼女はやる人です、大瀬良くんのためなら
それなら大瀬良くんの見せ場が無いと思い、
急遽彼も役に立ってもらいました
一番彼を道具扱いしているのは 朝倉かもしれませんね
投票してくださり、大変ありがとうございます
本当に嬉しいです
ですが、朝倉はあまり大会に興味がないので
地味に影を薄くして （某バスケ漫画の主人公のように）
自分のペースでやっていけたらと思っております
コメント ありがとうございました (*´`)。。○
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