ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-39



「・・・確か、男だったような気がするけど・・・・・」


千尋も、真山も、陣内も表情は驚きに満ちていた。


「な、何でそう言いきれますか」


と真山。西野は不思議そうに答える。


「・・・私より、身長が高かったような・・・・気がしたから・・・・」


「そ、それは確かですか」


「・・・えぇ。少しかがんでても私より背が高かったから・・・・」


「い、いやいやいや。よ~く思い出してみてください西野さん」


千尋はそう言いながら西野の肩をゆする。

西野が

「痛いっ」と言うと「すみません」と言って棒立ちするように手を離した。









「どうやら君の考えは間違いだったようだなあ、ハハッ」


本が並んだ部屋に、三人は移動して話を再開した。

真山がそう言って千尋の肩をツンツンと突くと千尋は真山を睨みつける。

真山は真顔になって突く手を止めた。


「ちょっと、整理してみましょうか」


千尋はそう言って立ち上がり、どうやって持ってきたのか少し大き目のホワイトボードをカバンから出し、壁にかけて、マジックペンを手に言った。


「死亡者は松本恵介。けが人は西野友海。いずれも、
ナイフで刺されてる事が確認されてます。

西野さんの証言によれば、犯人は男・・・・」

千尋がそう言うと、座っていた陣内が立ちあがってホワイトボードを見ながら言った。


「わかった!犯人は西野や」


陣内がそう言うと、真山は「なぜです?」と訊き返す。

陣内は真山の方を見てから言った。



「刑事の勘や。わしゃこの道十年やっとる。これが真相や」


陣内がそう言うと、千尋は無表情のまま言う。


「だったらどうして自分の腕を切ったんすか」


「そんなん、犯人候補から外れるためやないかい」


「とことんアホっすねェ。そもそも、西野さんは犯人候補に入る訳ないんすよ」


千尋がそう言うと、陣内も真山も神妙な顔をする。

陣内が言った。


「何でや。言い切れるんかいな」


「ええ、断定できますよ。いいですか、私たちが山口さんのカバンに入っていたナイフを持っているんです。と言う事は西野さんの腕を刺したナイフは別のナイフと言う事になりますよね。そうなると、ナイフは二個以上あったとしなければなりません」


千尋がそう言うと、真山が突っかかってきた。


「・・・だからどうした」


「思い出してみて下さいよ。あたしと真山さんが滝沢さんと別れたあと、玄関ホールで西野さんの声がきこえたでしょう?」


千尋がそう言い、真山は「ああ」と言ってから思い出すように言った。


「カバンがなくなったとかなんとかで・・・・?」


「そうです。西野さんの服装はスーツ。ナイフ一つ隠す場所なんてありません。カバンもポケットも隠す場所がないっつー事は、西野さんに自分の腕を刺す事は不可能なんすよ。見たところ、胸ポケットもなかったですしね」


「そうか。彼女はわざわざ腕を傷つける必要もなく、そもそも傷つけるための凶器がなかったのか」


真山がそう言うと、陣内はうずうずしながら言い返してくる。


「そんなん・・・・、厨房かどっかから包丁持ち出せばええやないかい」


「それも無理ですよ。この屋敷にある厨房はただ一つ。そこに入るためのドアもただ一つ。そのドアの前には警備員、さらには防犯カメラがありました。あれを潜り抜けるのはまず無理でしょうね」


千尋はそう言って壁に貼ってあった屋敷の間取り図を指さした。


確かに厨房と厨房に入るためのドアはただ一つしかない。


陣内は感心したように言う。


「それやったら、誰が犯人や言うんねん」


「さっきから言ってるでしょう。美冬さんです」


「何でや、根拠は何や」


「『殺人予告』は彼女本人が作成したものかと。あと、他にも色々と怪しい所が」


千尋はそう言って壁際にあった机の前の椅子に座った。
 


瞬間、一つ写真が落ちてきた。


写真は真山の頭に落下し、真山は「痛っ」と声をもらし、写真を手に取る。


「何だ、コレ」


そう言い、陣内と千尋もその写真を見る。