ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-41



「さっさと教えて下さい」


そう言い、真山は咳払いをしてから言った。



「まず、河山さんが小説家としてデビューしたのは今から五十年ほど前の、一九六二年だ。河山さんは年に一作程出していたんだが、一九七七年から一九九七年までの間の二十年間、一作も作品を出していなかった」


「どーしてデビュー年がわかったんですか」

と千尋。



そう言うと真山は本棚の方へ近づいていき、左から二番目の棚の前で立ち止まると一番上の段を指さして言った。


「この棚はすべて河山さんの作品なんだが、一番上の段から古い順番に並べられていたんだよ」


真山がそう言い、千尋も真山の隣に行き棚を見た。

するとたしかに、一年ごとの作品が並べられていた。


「だが、さっきも言ったが一九七七年から急に次の本が一九九七年になっている事がわかる。他どの本棚を探してもこの間の年に出ている河山さんの作品はない。そして、その二十年間を経て、一九九七年からの作品の始まり方は一九七七年までの作品に比べて大きく変わっているんだ」


「一九七七年までの作品 の最初は【~の迷宮に迷い込んだ者たちへ】と書かれてるけど、それ以降の作品にはそれがない、ですか」


「ああ。それでこの二十年間で一体何があったのかと疑問に思ったんだ」


真山がそこまで言うと、陣内が言った。


「・・・で、誰なんや」


「まあまあ、焦らさんで」


千尋はそう言って微笑んだ。



・・・が、瞬間笑みが消えた。真山、陣内、千尋は驚きの表情を浮かべた。
 



なぜなら、扉の隙間から何やら煙が入ってきているではないか。



「・・・・ちょ、火事かっ!?」


真山がそう言い、口をふさいだ。

が、陣内が否定する。



「そしたら何で火災報知機鳴らんのですか!?」


「にょえぇぇっ!?火事じゃありません!・・・毒ガスですよ!」


千尋はそう叫び、口を塞いだ。


「ちょちょちょ・・・っ!これ・・・ヤバイぞォっ!」



千尋はそう叫びながら扉を叩いた。


その時、毒ガスとは何か違う臭いがした。


が、そんな事を気にしている場合ではない。


ドアは外から鍵がかけられている。・・・のか?



「開きません!外から鍵をかけられてるようです!」


そこで真山が言った。


「待て待て!内側に鍵がないのになぜ外からかけられる!?」


そう言われ、千尋は煙を手をよけながらドアノブの辺りを見た。


確かにそこに鍵穴などない。



「・・・じゃあ、外から何か重いものを置かれてるんですよ!」


「どっちみち出られへんやないかい!」


と陣内。三人はゲホゲホと咳をする。



「いいいい、一旦落ち着きましょう・・・!」



千尋はそう言い震えながら壁に頭を打ち付ける。



「お前が落ち着け!とにかく、出口を探すんだ!」


真山はそう言って壁を移動しながら叩いてみる。

もちろん開くはずがない。


「ちょっと待て!確か河山さんは弟子の事についてはあんまり語らなかったと言っていたな・・・・」


真山がそう言い、千尋は壁から一旦頭を離し、目をつぶりながら叫ぶ。



「そんな事分析してる場合かあっ!」


そう言ってまた頭を打ち付ける。


「違う!そしてそれを滝沢さんが無理矢理きいてしまった事によって河山さんは時々この部屋を抜け出して行ったと言ってただろう!」


真山がそう言うと、千尋は額から血を出しながら動作を止め、真山の方を見て言った。


「それだ!どっかに抜け道がある!陣内さんも探して下さい!」