ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-44
「ホクロですよ。英寄さんにはないのに、英雄さんにはある」
千尋はそう言って写真を美冬に見せた。
千尋の言う通り、英寄にはあって、英雄にはない。
「そして、今まで河山さんの作品として出してきた作品はすべて弟子のマミヤさんのものです。だから、二十年間河山さんは悩んだ。どうしようかと。そこで来たのが貴方です美冬さん。・・・陣内さん、さっきの部屋から資料を持ってきてください。クリアファイルがありますから」
千尋がそう言い、陣内は嫌な顔をしたが渋々、また走って行こうとしたその時。
「これはマミヤさんの作品原稿です。河山さんとは筆跡が明らかに違う事がわかる」
真山がクリアファイルを持ってやってきた。
ファイルの中には原稿用紙がたくさん入っている。
確かに筆跡がかなり違う事が明らかだ。
「そしてそれを奪い河山さんに渡したのが、松本さんと西野さん、そして山口さんだ」
真山はそう言い、ファイルから一枚の紙を出した。
そこには『契約書』と書かれたものがあった。
「一部、 読みます」
真山はそう言って紙に目を向けた。
「私、マミヤコウタは河山英寄に作品を譲る事を認めたうえ、弟子と言う関係ではなくゴーストとして働く事を認めます。・・・ここに、三人のハンコとマミヤさんのハンコが押してあります。収入は三人と河山さんにいったんでしょうね」
真山がそう言うと、千尋は真山は少し感心したうえで美冬を見て言った。
「そして、そのマミヤさんの履歴書です」
千尋はそう言って真山の持っているファイルから一枚紙を出した。
【迷宮浩太】と書いてある。
「マミヤさんは迷宮と書いてマミヤと読む。珍しい名前の方なんすねぇ。だから作品すべてに『迷宮』ってついてたんすよ。そんで、そんな迷宮さんと貴方は婚約した仲だったんですよね」
千尋はそう言い、写真を手に取って言った。
「まず貴方が大事なものだと言った匂い袋。あれには確か、K・Mと刺繍されていたはずです。Kは浩太のK。Mは貴方美冬のM。でもそれだけじゃ証拠にはなりませんよね。でもこの写真に証拠があっちゃったりしてるんすよ。貴方と迷宮さんの手に、まぎれもない婚約指輪がはめてあるんすよー」
千尋はそう言って写真を提示した。
確かにその通りだ。
美冬は黙っている。
「吊り橋のロープに、黒い墨がついていました。カバンを盗む事ができたのは貴方だけ。西野さんの万年筆ですよね?ロープを切るのに使ったのは。でも西野さんのカバンだけを盗んだら怪しまれる。万年筆だけでも怪しまれる。だから貴方は二、三人のカバンを盗んだ」
千尋がそう言うと、真山が続いた。
「松本さんを殺し、山口さんに罪を被せ、西野さんを疑わせ、さらに殺して犯人に仕立てあげようとしたのはこれらの復讐ですよね。あぁでも、西野さんを襲ったのは貴方ではなく、貴方ですよね―――」
真山はそこで一度言葉を切り、ドアに向かって言った。
「出てきたらどうですか、滝沢さん」
そう言うと、ドアが開き、滝沢が入ってきた。
「・・・・なぜ、わかったのですか」
滝沢は入ってくるなりそう言った。千尋が言う。
「写真には、貴方も映っちゃってるんですよ。そんで、資料見つけちゃいました。松本さんは、貴方の息子である滝沢光弘さんを轢き逃げした過去があります。西野さんの言う男ってのは貴方です」

小説大会受賞作品
スポンサード リンク